阿修羅ガール (新潮文庫)

  • 新潮社 (2005年4月24日発売)
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  • 本 ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101186313

感想・レビュー・書評

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  • 疾走感とハチャメチャ感が満載! パンクでキュートな少女の思考を味わえる作品 #阿修羅ガール

    またもや変態世界に引き込まれてしまった…

    相変わらずのグルーヴ満載の文章で、もはや文字の麻薬。少女のパンクな脳みその中を、山盛りで堪能させていただきました。

    本作はなんといっても主人公の少女が最高!

    彼女はなにもかも楽しいことが最優先で、自分の気持ちに鬼正直。純粋で幼稚で馬鹿な魅力がたっぷり伝わってきました。しかしこれは真理だと思いますよ。

    仕事、政治、人間関係、経済、社会、戦争、宗教などなど、生きていると考えないといけないことがいっぱいあるけれど、楽しんで生きなきゃ自分に嘘をつくことになる。所詮、生命が尽きるまでの暇つぶし。死ぬのも含めて楽しめば最高ですわな。

    でも「愛」に関しては、乙女な部分を持ってる。めっちゃキュートで愛くるしいの。完全に爆裂少女に翻弄されまくった作品でした。

    例によって完全に人を選ぶ舞上先生の純文学でしたが、私は大好きです。

    ■推しポイント
    我が国 日本には死刑制度というのがあります。
    賛否ありますが、現存している以上、現代にも必要なんでしょう。
    ただ本書を読むと、主人公の少女から伝わってくる想いがひとつあります。

    どんな奴でも良いところがひとつくらいあるでしょ。前向きに楽しく生きようよ。

    これが人としての素直な願い、人を思いやる気持ちだと思いますね。
    まぁもちろん、悪いことなんてやらないで欲しいけどさ。なかなか難しいですね。




  • #阿修羅ガール
    #舞城王太郎

    人からの勧めと三島由紀夫賞入口で読み始めた1冊。

    殴り書き感想文失礼します。

    雰囲気に慣れるまでちょっと時間がかかったけど、内側から物語を読み進めれるようになってからは本当に一瞬で読んでしまった

    浴びるほどの言葉の流れの中から
    たまに顔見知りの感情を見つけたり。

    話し言葉のような文章で主人公の軽さ?を感じるのに、起こってることはかなり重い。
    そのギャップに戸惑いながら、続きが気になってどんどん読み進めてしまったという点ではかなり面白い読書体験だった。

    なんというか本がずっと喋り続けてくるような小説だった。笑
    急な坂道で何気なく走り出してみたら止まらなくなって、どんどん勢いが増してくあの感じでずっと読んでた、疾走感がすごい。秒速120メートルくらいで転がってった。

    夢の中の中学生強いのツボだった
    中学生、頑丈。

    奇譚でしたわ。

  • なんだか、インパクトのある小説。冒頭から女子高生愛子のインモラルな独白にギョッとさせられます。これがいまどきの女子高生の等身大なのかと思うと子を持つ親は穏やかではないですね。いきなりグッチ裕三が出てきたりハリウッド映画のキャラクラーが出てきたり、やたらチープな演出は女子高生の考え方や経験の範囲をリアルに描写しようとしているかららしい。客観的な視点で物語を描くというより、女子高生から殺人鬼まで当事者目線で物語を進行させていくので低俗で稚拙で不愉快な表現がすごく多くて読むに耐えない人も多いんじゃないかと思う。文体の触れ幅がとても大きくて極端に感じます。表現は飾らない分直截的で過激だけど、それをメタ的な視点から哲学的に解釈しようとする視点があるので、全て必要だからやってることだろう。2chの無責任な書込みとか神戸の連続児童殺傷事件とか、現代が抱える病的な側面もなぞりながら、それら全てを「仏」の心で許そうとするアプローチとか、理解の範囲を超えたものもあったりして、面白いんだけどとらえどころがない。
    そもそも駄作として切り捨てられずに、三島由紀夫賞を受賞したり芥川賞候補になったりして文学性を評価されていることに驚きを隠せない。現代文学の世界てここまでリベラルで許容範囲が広いのかと。

  • ここのところ舞城王太郎中毒で、順番に読んでるんだけど、このネット社会で舞城王太郎が覆面作家であり続けてるのは奇跡なんじゃないかと思っていろいろネットサーフィン(死語)してたら、舞城王太郎女性説に遭遇した。
    軽くショック。全くその発想は無かった。
    でもその後で舞城王太郎のTwitterアカウントを知って見てたら自画像を女性の姿で描いてるし、女性説の根拠も説得力あって、ひょっとしてあるのか?女なのか?と疑い出した。
    そしたら読書家の友人が「そう言われるとそうかもしれないと思う。前に読んだ女性一人称の作品、全く違和感なかった」と言う。
    それがこの作品なのかは確かめてないけど、私にとっては初めての女性一人称の舞城王太郎作品。

    なんか、変な話だった。
    平たく言うと、女子高生の精神世界を書いた話。
    いろいろえげつなく人が死んだり殺されたりするけど、特に解決しない(ぐるぐる魔人の事件くらいか)し、けっこうファンタジーなことが起こるし。
    ヒトの内面なんて見たことないから、こういう造り(?)の人も居るかもしれない、とは感じた。
    で、個人的にエロ話する女が苦手なので、この作品はあまり好みではなかった。ただ、確かに女性一人称としては違和感はなくて、今では舞城王太郎はほぼ女性なんじゃないかと思うようになった。
    残念。
    なんだろ、男性だったら許容できた自分がいる。そういう先入観?で判断されたくないから舞城王太郎は覆面作家であり続けるんだろうし、性別で好き嫌いが変わるのはどうかしてると分かっちゃいるけど、そう思っちゃったんだから仕方ない。
    まぁとにかく、男だとしても女だとしても舞城王太郎の一人称は男性目線がしっくり来る。私にとって。

    あらすじを説明するのが難しい。文庫本のウラスジが良く描けてる。
    舞城王太郎4作目なので読んでる方にも慣れが来たのか、それほどインパクトを感じなかった。これ以前の作品のような強いメッセージも受信しなかった。
    そういう意味じゃ穏やかな作品かもしれない。
    あと、アイコがラストで得た「人間は100%悪くはなくて芯の芯に良いところがある」ってのは、確かにそうだけど残忍な殺人者に当て嵌めるとなると私は抵抗力の方が勝る。

    好きって感情が原動力となってるわけじゃないのに他人のために動ける陽治が一番ホトケだった。

  • ようやく読み終わった。舞城王太郎は基本的に混沌としていて荒唐無稽だ。それでも作者の言葉遣い、論理は読者を離さない。特に表題作ではない「川を泳いで渡る蛇」が好きだった。蛇の神話と僕たち人間による行動は神に見られているのか。それらを織りなす短編が美しい作品。

  • キモチワルイ。覚せい剤キメた人の思考を覗いたような。
    ……………でも読み切れる。ふしぎ。気持ち悪い。



     どうせ自分もほかの読者と変わらないレビューを書いているのだろう。ということはこの本は成功だ。



    「人が人で足りえるのは社会性を持っているからである。
     だから本能丸出しの人間の行動や言動は気持ち悪くてしょうがない。なぜならそれは、人のカタチをした人ではない何かクリーチャーがうごめいて見えるから。」

     この文言を思い出したな。人なのに人じゃないから気持ち悪いんだな。よく表現できるな、むき出しの本能なんて。





     そしてこの本を読んですっきりしてしまった人は「赦し」を求めていたんだろうな。

     これを読み切れれば、すべてを受け入れられる気がする。

  • まいじょーーーーーさーーーーーん!! 今まで読んでいなくてごめなさーーーい!! 好きです!!

    って感じだった。
    疾走する文体、ぐいぐい引き込む躍動感、混沌と俗、でもって「愛」。
    女子高生のアイコが頭の中で考えたことがそのまま文章になっているかのような文体は、リアルタイムなスピードを持っているかのようで圧倒される。彼女が思うちょっとしたことがみょーに生っぽくて、日常というものが持つ均衡と、それゆえの不自然さをよく表現している。

    思考はつまづきもするし、二段跳びに駆け上がりもする。好きな男の子のことを考えていると照れるし、それと同じレベルで暴動とか命とかのことを考えたりする。もちろん、その問題の程度の差とか範囲の差とかは彼女もなんとなくわかっているんだけど、それと並行して感情は見て、聞いて、話している。刺激がいっぱいなのがわかる。彼女のアンテナがびんびんなのがわかる。彼女の中に言葉があふれているのがわかる。

    森はこれ映像で観たらトラウマレベルだよ、と思うくらい怖かった。いきなりはじまってびっくりした。グルグル魔人のところも怖かった……視界が狭いというか、限られた視界しかない世界を見ているみたいな感覚になって、森の場面とは違う不安さを抱いた。
    正直に言うと、阿修羅云々のところは、ちょっと性善説すぎやしないかな、アイコ? と思ったけれど、まぁ彼女は彼女なりに思うところがあるのだろう、と思っておく。

    舞城さんに出会いましたので、これからじっくり読んでいきたいと思います。ほくほく。

  • 下北沢B&Bにて行われた文芸トークイベント「成長と感情とストーリーと」にて闘う文芸家と賞賛されておりました三人のうちの一人でございます舞城王太郎先生であります。なぜ闘う文芸家であるかと言いますとそれは文芸素人であるワタクシには分かりかねます。そうですノリだけで買った男がワタクシでございます。


    ラノベなのか何なのか

    そんな闘う文芸家であらせられる舞城先生ではありますが、文体も全くもって闘っております。いやむしろ喧嘩を売っております。もちろん舞城先生のことでありますから意図的に書いておられることは途中で一人称を変えていることからも察して余りあることではございますが、それにしても主人公のアイコが酷いのであります。現代女子高生の心情は皆さんこのようなものなのでしょうか。違うに決まっているかとは存じますがそれでも共感を呼ぶからこそ舞城先生が先生と呼ばれる所以でございますからして、ますます分からなくなってくる昨今みなさまは如何お過ごしでしょうか?


    あなたとわたしのグルグル魔人

    それでも面白いところはあります。正直なところ始めの3分の1で投げてしまおうかとスローイング・ブックしてやろうかと本気で思わざるを得なかったことを告白致しますが、後半になるにつれ文体に慣れていくにつれ面白い箇所がございました。それはそうでございます。そうでなければ先生であるが訳が無いのであります。
    さて、それがどこかと申しますと内容にまで踏み込まないといけなくなりまして、内容に踏み込まないといけないということは本書の重要な部分を白状してしまわないとも言い切れませんのでして、つきましては抽象的なもの言いでご勘弁いただきたく存じます。
    つまり、本書の面白いところは脳内フィクションフィクションである点と情け容赦ない描写にあると存じます。
    読まれる際にはスローイング先を確保されることをご注進申しあげておきましょう。

  • 良かった。奇譚と生々しい現実のバランスがなんともツボ。本編も良いがその後の短編がすごく好みだった。

  • 文章から来る圧力というのかとにかく勢いが凄い.少し困惑したものの面白かったです.

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著者プロフィール

1973年福井県生まれ。2001年『煙か土か食い物』でメフィスト賞を受賞しデビュー。2003年『阿修羅ガール』で第16回三島由紀夫賞を受賞。『熊の場所』『九十九十九』『好き好き大好き超愛してる。』『ディスコ探偵水曜日』『短篇五芒星』『キミトピア』『淵の王』など著書多数。2012年『ジョジョの奇妙な冒険』(荒木飛呂彦著)の25周年に際して『JORGE JOESTAR』を刊行。近年は小説に留まらず、『バイオーグ・トリニティ』(漫画・大暮維人)の原作、トム・ジョーンズ『コールド・スナップ』の翻訳、短編映画『BREAK』や短編アニメ『龍の歯医者』『ハンマーヘッド』の原案、脚本、監督などを手掛けている。

「2015年 『深夜百太郎 入口』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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