兵士は起つ: 自衛隊史上最大の作戦 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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レビュー : 13
  • Amazon.co.jp ・本 (357ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101190150

作品紹介・あらすじ

津波に呑まれながらも濁流の中を自力で泳ぎ、人々を救助した隊員たちがいた! 自らの家族の安否も確認できないままでの救助活動、遺体と向き合う苛烈な日々……。そして非常事態に陥った福島第一原発では、世界が注視する中、全国からさまざまな部隊が召集されていた。自衛隊を追い続けた著者二十年の歳月が生み出した緊迫と感動のノンフィクション。兵士シリーズの最高傑作。

感想・レビュー・書評

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  • 東日本大震災の時に実際に被災しつつも救助活動等にあたった隊員への取材結果をまとめた本。

    その他、普通に隊員に取材した結果をまとめた本もシリーズ化されている。
    彼らの「普段の生活」を知るには良いかも。

    「軍隊またはその他の実力組織」というのは何十万人、何百万人で構成される「自己完結型組織」だから、ある意味「運用要領がマニュアル化されている社会そのもの」なところがあって、それについての知識を得るというのは、ミリタリー関係なしに面白い。

  • 東日本大震災発生時とその後における、主に東北の自衛隊員の働きを追った記述。ありがとうございました。

  • 本当にお疲れ様でした

  • その存在の是非を常に問われてきた組織の中で、最前線に立って「戦う」人たちのノンフィクション。
    彼らの戦いは奪うことでなく救うことで、であればこそ未曾有の大災害の中、危険を省みず救命にあたった自衛隊の皆さんには本当に頭が下がる。
    彼らの仕事が「奪う」ことに変わらないよう願うばかりです。

  • 有川浩

  • 抑制された筆致が余計に津波の凄絶さを物語る。あまりにも凄惨すぎて何度か本を閉じた。果敢に救助活動に立ち向かうも、そこに存在するのは遺体累々。過酷過ぎる現場で幾度も嗚咽しながらも、これ以上傷まぬよう、細心に遺体を運ぶ自衛隊員。

    ひとりの自衛隊員が呟く。
    ◉「来るか来ないかわからない<いつか>のために備えている。その<いつか>が今日遭っても明日遭ってもいいように」
    ◉「自衛官は活躍しないまま退官することが一番いいんです」

    震災から5年。あの衝撃や記憶が薄れていく中、今日も明日も「有事」に備え、激しい訓練に励む自衛隊員がいる。どうか、その訓練が徒労に終わることを祈るのみ。

  • 自衛隊員に地道な取材活動している著者ならではの、自衛隊員が新聞報道されていない個々の活躍を描いたノンフィクション作品。
    安易な自衛隊批判の反証材料や大規模震災の描写資料としても価値がある作品。

    圧巻なのは、通勤途上の自衛隊員達が津波に罹災しながら、生命の危機にある救助を要する人達へのリミットである72時間を意識し、出せうる限りの救助活動をする描写は、感動させる。

    また、福島原発へ決死の冷却作業を冷静沈着な陸上自衛隊員の姿には、日頃の鍛錬や準備の重要性に気づかせてくれる。

    この作品を読んで思ったのは、
    将来、政治判断ミスで、国益がない国際紛争に巻き込まれ、自衛隊員を殉死させるのは、国家の重大な損失になるだろう。
    彼らは、最期の切り札として温存すべきであり、国民として愛すべき公務員であると断言しても言い過ぎではないと思います。

    時系列が分かりづらかったぐらいが難点で、何も言うことなしのノンフィクション。
    過去に、自衛隊批判した大作家殿って誰?と思わず調べたくなります。

  • 東日本大震災の際の自衛隊の働きは目覚しかったが、ニュースになったものばかりでなく、その陰にあった夥しい数の隊員の活躍やドラマが本書には汲み上げられている。家族の安否を気にしながら、その無事を確かめることもせず任務を遂行した隊員たちには頭が下がる。そういうことを本書は改めて思い起こさせてくれた。
    本書のテーマとは関係ないのかもしれないが、震災時に世界中から賞賛された住民の秩序ある行動に裏で、火事場泥棒のような行為があったり、助け合いの精神を発揮した住民がいた一方で我が身第一の人もいたことが印象に残った。また、著者の大江健三郎に対する厳しい批判も印象的であった。

  • 自衛隊は災害救助に徹するよう、役割を明確にできないのだろうか。寡黙で任務に忠実な組織。がしかし、同時に軍隊であるという現実…

  • 有川浩氏の解説「抑制された筆が掘り起こす覚悟」の書き出しの一文
    「これほど強い意志に貫かれた原稿は他に知らない。」

    他の「兵士」シリーズには、少しの明るさがあったように思うのだが、この作品ではそれもない。ただただ圧倒されるばかりであった。

    以下、長いけど引用。知っておいてほしい。

    -----
    P.287
    もう半世紀以上も昔の話だが、のちのノーベル賞受賞日本人作家が、彼と同じ年頃の防衛大学校生を捉えて、『ぼくは防衛大生をぼくらの世代の若い日本人の一つの弱み、一つの恥辱だと思っている』と、およそ一級の文学者とは考えられないような、相手の人格をも全否定する、薄汚い蔑みの言葉を投げつけたことがあった。さらにこの作家は止めの一撃のようにして、『そして、ぼくは、防衛大学の志願者がすっかりなくなる方向へ働きかけたいと考えている』と書きとめたのである。きらめくばかりの才能に溢れ、「戦後民主主義」のスター的存在だった若き作家の容赦ない言葉は、いまでは考えられないほどの大きな影響力をもって社会に広がり、それでなくても風あたりが強かった自衛隊への逆風をますます強めて、当時の防衛大生に限らず多くの自衛隊員とその家族に心の棘となって突き刺さった。
    言葉にした本人はとうに忘れてしまったのかもしれないとしても、言われた人々は、言われた言葉をずっと忘れない。
    それもまた言葉の力である。そのことに代表されるように、自衛隊は戦後長らく「日陰者」として不当な扱いを受けつづけ、戦争放棄といっさいの軍備の否定を掲げた「憲法九条」があれば日本の幸福は守られると信じ切っていた、マスコミの冷たい視線にさらされてきたのである。だが、その『恥辱』とされた自衛隊のヘリが被爆の危険を冒して原発に海水を投下する模様がNHKHによって全国に生放送され、それを日本人の多くが見つめていたこの瞬間は、自衛隊が、はじめて圧倒的多数の国民から、日本人と日本を守ってくれる〈最後のとりで〉として認知され、心から頼りにされた瞬間だった。
    震災後、ノーベル賞作家は、脱原発の旗手となった。
    しかし、あの三月の、この瞬間、原発の暴走を食い止めるためフクシマの最前線に、彼がいみじくも『ぼくらの世代の…一つの恥辱』と吐き捨てた防大生の後継者たる自衛隊員たちが、未曾有の危機の前に身を挺して立ちはだかったことについて、思想信条を越えた感謝のしるしとして「ありがとう」や「ご苦労さま」の言葉を彼ら隊員にかけることはなかった。まるでいまも「日蔭者」として自衛隊の存在など、この老作家の眼には入っていないかのように……。
    -----

    もうひとつ。本書ではこういう場面はなかったが…
    「大震災の時に避難所にいると「俺だって家族が見つからないんだよ!」と叫び声。近づくと自衛隊員がしゃがみ込んで号泣していて…」
    http://oniyomediary.com/archives/44695023.html

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著者プロフィール

1952(昭和27)年、東京都生まれ。一橋大学社会学部卒業後、読売新聞記者を経て執筆活動に入る。1986年に新聞社の舞台裏を克明に描いた『メディアの興亡』で大宅壮一ノンフィクション賞を 受賞。1996(平成8)年、『兵士に聞け』(小学館文庫)で新潮学芸賞を受賞。以後、『兵士を見よ』『兵士を追え』(ともに小学館文庫) と続く「兵士シリーズ」を刊行。七作目『兵士に聞け 最終章』(新潮文庫)で一度完結したが、現在雑誌『マモル』にて、「兵士シリーズ 令和伝『女性自衛官たち』」を連載中。ほかに小説『汐留川』『言問橋』(ともに文藝春秋)、『私と、妻と、妻の犬』『デルタ 陸自「影」の兵士たち』 (ともに新潮社)など著書多数。

「2020年 『OKI――囚われの国』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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