萩原朔太郎詩集 (新潮文庫)

著者 :
制作 : 河上 徹太郎 
  • 新潮社
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本棚登録 : 717
感想 : 33
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101197012

感想・レビュー・書評

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  • 精神的に疲れ果てていた時に、丁度本屋を通りがかった私。
    これは本で癒すしかない、と物色していた際に、新潮文庫のお洒落なカバーが目に止まり、(ヨルシカとのコラボカバーと言う事に後で気付きました。)何となく中身をパラパラと見てこの本に即決。

    荻原朔太郎さんは学校の授業で少し嗜んだ程度で、しっかりと読むのは初めて。
    月に吠えるの序文で「詩とは感情の神経を掴んだものである。生きて働く心理学である。」と書かれているのを読んで得心が行く。

    成程…だからあの状態の私はこの詩集を選んだのか。
    本当に美しい言葉の数々で、すっかり世界観にハマってしまい、大正ロマンから昭和のノスタルジィまでどっぷり浸れました。

    多くの人が時々、激しい孤独感や無力感に襲われ不安になる事があると思うのですが、この詩集を読むと孤独の達人である荻原さんがこれでもかと言う位に寄り添ってくれます。

    余談ですが【地下鉄(さぶうぇい)にて】という詩で、「なに幻影(まぼろし)の後尾燈」を「なに幻影(まぼろし)の恋人を」に掛けていて、ジャパラップの原点がここに…と下らない事を考えてしまう位に、この本のお陰で疲れが飛びました。

    あと、解説が昭和25年当時のものなのも、世界観を崩さなくて非常に良かったです。

  • お気に入りは『猫』、『遺伝』、『自然の背後に隠れて居る』、『虚無の鴉』、『寂寥の川辺』です。
    特に好きなものが『猫』。初めて読んだ時の衝撃が未だに忘れられません。そんな出逢いがこの先もあったら嬉しいです。

  •  萩原葉子を読むうちに、どうしても萩原朔太郎を読まねばと思い図書館から借りてきたのが本書です。
     圧倒的なのは、やはり「月に吠える」。私はこれまで萩原朔太郎の何を知っていたのかと思うほど「月に吠える」は凄みがありました。

    《地面の底に顔があらはれ、
     さみしい病人の顔があらはれ。》

    《凍れる節節りんりんと
     青空のもとに竹が生え、
     竹、竹、竹が生え。》

     私自身はとても詩の良い読み手とは言えないのですが、萩原朔太郎が命を削って書いた「月に吠える」から時代が下るに従って、少しずつ健康的になっていくのが感じられ、詩人にとってそれが良かったのか悪かったのかわからないけれど、「凄み」は減っていったように感じます。

     「青猫」の「序」に次のように書かれていますが、よくわかります。《処で学問や技芸ならば、修養によつて日々に進歩を重ねることが有り得るだらう。然るに詩は学問や技芸でないから、詩人の経歴に成長といふ言葉有り得ない。詩人は幾年詩を作つても同じことで、今日の詩が昨日の詩にまさるといふやうなことは全くない。(中略)/生命には成長がない。人の年老いて行くことを、たれが成長と考へるか。老は成長でもなく退歩でもない。ただ「変化」である。》

     圧倒的な「月に吠える」以外で良かったのは、「死なない蛸」。河上徹太郎の解説は、さっぱり理解できませでした。私の勉強不足もあるかもしれないけれど、意味不明。とはいえ、魅力的な詩集のため、読んでいるうちに、手元に置いておきたくなり書店で購入しました。

     尚、ただいま世田谷文学館にて「月に吠えよ、萩原朔太郎展」開催中です。
    2022年10月1日(土)~2023年2月5日(日)

  • 「月に吠える」の「序」にやられた!
    『詩は神秘でも象徴でも鬼でもない。詩はただ、病める魂の所有者と孤独者との寂しいなぐさめである。』

    以下お気に入り。
    竹 二編
    さびしい人格
    群衆の中を求めて歩く
    青猫
    旅上
    など。

    しかしなんといっても最高なのは、

    死なない蛸

    である。

  • 私が初めて意識し、感銘を受けた詩は吉野弘の「I was born」だが、詩を読むという行為は朔太郎から始まった。
    「死なない蛸」 である。



    今でも忘れない。
    この詩を初めて読んだその時の衝撃を、
    恐ろしいほどの欠乏。
    『死なない』
    つまりその終わりのない欠乏を抱えてうごめいている姿を想像して
    孤独というよりかはそのものすごい痛みに、
    それも胸をえぐられるかのような鈍い痛みに満たされたものだった。


    始めてこの詩を読み解いたのは授業でのひとこまだった。
    教師はしきりにこの詩の意味と解説を行っていた。
    憶えていない。
    ただ、とてもつまらなかった。
    しかし今思えば詩の観念を選択することなく平等に子供に伝えようとしていた、あえてこの詩を授業で取り組もうとした彼女の心意気は賞賛に値する。
    その行為は私のように心傾く子供を生むことが出来るのだ。
    そうして先人達の偉大な言葉、芸術、美は松明の火のように次にと伝えられていくのだろう。
    なんてね、


    実際、彼の詩全般はあまり好きではない。
    でも、
    朔太郎はどうあろうと自分の中で別物の存在だ。


    『私どもは時々、不具な子供のやうないぢらしい心で、部屋の暗い片隅にすすり泣きをする。
    さういふ時、ぴつたりと肩により添ひながら、ふるへる自分の心臓の上に、やさしい手をおいてくれる乙女がある。
    その看護婦の乙女が詩である。
    私は詩を思ふと、烈しい人間のなやみとそのよろこびとをかんずる。
    詩は神秘でも象徴でも鬼でもない。
    詩はただ、病める魂の所有者と孤独者との寂しいなぐさめである。
    詩を思ふとき、私は人情のいぢらしさに自然と涙ぐましくなる。 』
             (「月に吠える」序文より)



    詩を読むことは理解ではないと私は思う。
    詩は線と線が交わる一瞬の快楽だと私は思う。
    その一瞬の快楽を初めて私に教えてくれたのは朔太郎だ。


    初心忘れるべからずと読み返してみてよかった。
    自分は動いている。
    とまた自覚させてくれた一冊。
    しかし戻ったな、と

  • 詩は難しい
    それは萩原氏本人も言っていることだが、その時々の感情をその人の匂いをもたせて文章の中に落とし込んでいくからだ
    非常に抽象的で難解な芸術
    これは一種のシュールレアリスムなのだろう
    だからこそ、ボヤけた映像の中に美しさをハッキリと見出すこともできるのだろうけど

    抽象的ではあるが、受け取り方は読み手によって千差万別
    はたまた、読み手の中でもその時々で意味が変わっていくから面白い
    詩は生きている

  • 「山に登る」「見知らぬ犬」が、いま読んでもよい詩と思う。群馬のお客様とのお取引をきっかけに、群馬の方のメンタルを知りたくて再読。過去に自分が何を考えていたか思い出すとともに、今の自分を奮い立たせてくれる。時間の流れを感じることができた。

  • 酒と云うには饐えている。けれども、言葉の端々に満ちた酒精が抜けきっていない。下手をすると、酔う。

  • 読んでいて、哀しいというか虚しいというか、痛みというか、
    言葉にするのが難しい、
    心が欠けて、その欠落を何とかうめようとするような、つらさを感じた。

    あまり楽しくはなかった。
    読んでいて、つらくなった。

  • やけに収録されてる詩が少ないなと思ったら、裏表紙みて理解。これ、それぞれの詩集から代表的なのを抜いてきた、選り抜き集って事なのですね。これを入門編として気に入ったら、それぞれのちゃんとした作品集を読みましょう、と。

    初期の作品たちはどれも脳内でイメージが浮かぶ、視覚的な所が好きですね。しかもちょっと不思議な風景になりそうな、色味は蒼色~黒色 って感じの。

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著者プロフィール

萩原朔太郎
1886(明治19)年11月1日群馬県前橋市生まれ。父は開業医。旧制前橋中学時代より短歌で活躍。旧制第五、第六高等学校いずれも中退。上京し慶応大学予科に入学するが半年で退学。マンドリン、ギターを愛好し音楽家を志ざす。挫折し前橋に帰郷した1913年、北原白秋主宰の詩歌誌『朱欒』で詩壇デビュー。同誌の新進詩人・室生犀星と生涯にわたる親交を結ぶ。山村暮鳥を加え人魚詩社を結成、機関誌『卓上噴水』を発行。1916年、犀星と詩誌『感情』を創刊。1917年第1詩集『月に吠える』を刊行し、詩壇における地位を確立する。1925年上京し、東京に定住。詩作のみならずアフォリズム、詩論、古典詩歌論、エッセイ、文明評論、小説など多方面で活躍し、詩人批評家の先駆者となった。1942年5月11日没。

「2022年 『詩人はすべて宿命である』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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