朝が来るまでそばにいる (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 623
感想 : 32
  • Amazon.co.jp ・本 (252ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101200538

作品紹介・あらすじ

火葬したはずの妻が家にいた。「体がなくなったって、私はあなたの奥さんだから」。生前と同じように振る舞う彼女との、本当の別れが来る前に、俺は果たせなかった新婚旅行に向かった(「ゆびのいと」)。屋上から落ちたのに、なぜ私は消えなかったのだろう。早く消えたい。女子トイレに潜む、あの子みたいになる前に(「かいぶつの名前」)。生も死も、夢も現も飛び越えて、こころを救う物語。

感想・レビュー・書評

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  • この世のものではないものたちと、生きているものたちの物語

    愛する人との死別の物語
    これを「暗くて悲しい話」と片付けられたらどれだけ楽だろうかと思う。大好きな人ともう永遠に会えない。なら、鬼になっても連れて行く。その感情は否定できない。
    私に限って起こらないことだと誰にも断言できないからだ。

    朝が来るまでそばにいる。
    暗く悲しい夜は必ず来るけど、一緒に乗り越えよう。
    そう行ってくれているようなタイトルのままに、
    どの物語も暗い、悲しい気持ちの後に少し前を向ける優しさを放っている。

    綾瀬まるさん、すきだなぁ

  • 一言でこの小説を表すとすれば、哀しいホラー短編集だと、私は思う。
    全6編のうち3編は死というものが前提にあって、残りの3編にもどことなく死の匂いのようなものが漂っている。
    怖い中にも湿り気や情緒があって、とても日本人好みの内容だと思う。死者の念や想いの強さが、鬼や奇鳥や地縛霊に姿を変えてこの世に取り憑く。そこには人の哀しみが溢れている。

    ホラー要素はほとんどない一編「眼が開くとき」がとてもエロティックで良かった。いらやしい要素や直接的な表現は全くないのだけど、とてもエロティック。だけどある意味でとても恐ろしい物語でもある。
    憧れや恋心は片目瞑って相手を見ているくらいがちょうど良く長続きもするのだろうけど、何かのタイミングで両目が開いてしまう時がある。その瞬間憧れは遠のき、そこから先本物の愛に変えてゆけるかどうか…という。

    全体的に、人の念を強く感じて、読んでいる最中はとても気が重かった。愛する者に対する死者の執着とか、過去の傷を忘れられない生者の苦しみとか。
    突然という形で自分の命が断たれた時にもしも愛する人がいたら、自分はどうするのだろう?と考えたりもした。自分が死んだ後もその相手が幸せに生き続けてくれたらそれで良いと、立派なことが思えるだろうか。
    もしかしたらこの小説の中の夜に潜む者のように、相手に執着して、一緒に死んでも良いから側に居て欲しいと願ってしまうのかもしれない。奇怪なものに形を変えてしまうくらい、愛して、狂ってしまうこともあるのかもしれない。

    近頃よく読む作家さんの中で、彩瀬まるさんは特に好きだ。単純に読み物として面白いのと、読んでいて人に対する愛情というか温かみを感じるところが、とても好きだ。

  • 彩瀬まるさんが、彩瀬まる初心者向けに「暗い方ならこれ」と勧めていた作品。

    いつも、上手に表現できないんだけど、良い。

    「君の心臓をいだくまで」では、お腹の子が上手くいかなかったかもしれないことに落ち込み、生活すらままならなくなる主人公の元に、不思議なおばさんが現れる。
    やがて、そのおばさんが主人公を追い詰めていくんだけど、最初に作ってくれたすき焼きが、どうにも美味しそうで……。

    肉が、人の肉を彷彿とさせるシーンは次の「ゆびのいと」にも現れる。
    我儘な妻と、優しい夫の新婚夫婦。
    妻は新婚旅行に行く間もなく亡くなり、亡くなったはずなのに彼に夕飯を作り、共に眠る。
    そんな生活を繰り返すうちに、夫はどんどん、生きている人間が踏み込んではいけない領域に入っていくのだけど……なんだか「耳なし芳一」のような、怖いんだけど、哀しさがあって、場面が靄がかっているという、物語のような味わいがあった。

    似た雰囲気のある「よるのふち」には、妻を亡くした夫と、子供の兄弟二人という設定で書かれている。
    妻を、母を、喪ったことを受け止めることと、慣れない家事をしながら生活しなければならないことのバランスが保てず、静かに膠着していく家族。
    影に潜み闇に連れ込もうとする何かと、母のハンドクリームの香りという、苦しくなるような対比を、小学生の長男が語る。
    エンディングの父に、ちょっと泣ける。

    「それまで居た場所から千切られて、今まで考えたこともない、目も耳もきかない真っ暗な場所へ連れて行かれる。好きな人たちとも二度と会えない。二度とっていう概念の意味が分かって、すごく怖い」
    「明滅」から、お気に入りのセリフ。

    「眼が開くとき」は好きな人が多いみたいだから、省略。「かいぶつの名前」は、オビを『よるのばけもの』を書いた住野よるが寄せていることを思うと、すごい。

  • 豪雨の現在に読んだら、「明滅」がとても心にきました。
    人ではないものや、想いが強過ぎて鬼になりそうな人もいるけど、それを救うのもまた人なのかもしれない。鬼になるのをとどまらせるのも、一緒に堕ちてあげるのも。
    朝がくるまでそばにいる…朝がくるまでの暗闇ではあなたのそばにいるよ同じ闇に引きずり込みたいから、なのか、あなたの闇に朝がきて光が差すまでそばにいるから、なのか…どちらも出てくるお話たちが良かったです。

  • 夜はこの世とあの世が近くなる。
    しかし、朝が来るまでしかそばにはいられない。
    嫌でも肉体的な別れはあるのだけれど、行ってしまった方の精神的な別れはあるのだろうか。


    収録作品:君の心臓をいだくまで ゆびのいと 眼が開くとき よるのふち 明滅 かいぶつの名前

  • 何とも言えない、言葉で表せない薄暗く生々しいそんな短編集。

  • 1.君の心臓をいだくまで:お腹の子供の死が受け入れられない妊婦と黒い鳥。
    2.ゆびのいと:火葬した妻が家に帰ってくる。
    全体的に死の匂いがする暗い短編集。

  • 読み始めは苦手かとと思って、
    気乗りしないまま3つ目のお話を読んで
    一気に「最高だ!!」ってなった。
    夢なのか現実なのか妄想なのか
    生きてるのか死んでるのか分からない世界
    想像が弾むお話はやっぱり面白い!!
    眼が開くとき は、彩瀬まるさんっぽい。
    これと、よるのふちが好きでした。
    夏っぽい…ちょっと怖くてヒヤッとする。

  • 死んだもの関係のお話は“怖い”がついて回るのだけど、読み終わったあとはその怖さが別のものに変化している気がした。怖さの正体の訳がちょっとわかったからかもしれない。生きているものが飛び越えられない境界線を行ったり来たりして、その怖さの正体の一部分を明らかにしてくれた。
    死んだら終わりだと思うのは、単に生きているものの視点だもんなって思えた

  • この作家さんすきだなあ。ゆびのいと、がよかった。

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著者プロフィール

1986年生まれ。2010年「花に眩む」で第9回「女による女のためのR-18文学賞読者賞」を受賞しデビュー。著書に『あのひとは蜘蛛を潰せない』(新潮社)『骨を彩る』(幻冬舎)『神様のケーキを頬ばるまで』(光文社)『桜の下で待っている』(実業之日本社)がある。自身が一人旅の途中で被災した東日本大震災時の混乱を描いたノンフィクション『暗い夜、星を数えて――3・11被災鉄道からの脱出――』を2012年に刊行。

「2021年 『OTOGIBANASHI』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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