最後の恋―つまり、自分史上最高の恋。 (新潮文庫)

  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101201238

作品紹介・あらすじ

もはや、少年少女が出会うような、初々しい恋じゃない。変わらない恋心なんてない、そんなのとっくに知っている。だけど…。大人になっても「こんなの初めて」ってあったんだ。すれ違いや別れをくり返してきた彼らだけが知る、「最初で最後」のかけがえのない瞬間たち。8人の作家が描き出す、経験してきたすべての恋を肯定したくなる珠玉のアンソロジー。最後の恋、それはつまり、自分史上最高の恋。

感想・レビュー・書評

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  • 食わず嫌いはやはり良くないですね。

    本書を借りた時、タイトルにげんなりきた。もう勘弁してよ~、こんなの全く興味ないし~と思った。

    でも、予想に反して楽しめた。(だから、☆をサービスして4つにしてみた。本当は3。←我ながらめんどくさい)

    収録作品は以下の8つ。
    春太の毎日 三浦しをん
    ヒトリシズカ 谷村志穂
    海辺食堂の姉妹 阿川佐和子
    スケジュール 沢村凜
    LAST LOVE 柴田よしき
    わたしは鏡 松尾由美
    キープ 乃南アサ
    おかえりなさい 角田光代

    タイトルから読む気が失せていた私にとって、一番目が「春太の毎日」だったことは、本書を読み続ける気力を大いに高めてくれる嬉しいサプライズだった。これはいい。さすが三浦しをんさん。可愛い作品をありがとうという感じだった。

    あとは、柴田よしきさんの「LAST LOVE」も良かった。私が苦手なゴテゴテの恋愛ものだったけれど読了感がいい、というか。それから、角田光代さんの「おかえりなさい」もなんだか心に残ったなぁ。
    阿川佐和子さんの小説は初めて読んだけれど、「へぇ、こういうの書かれるのねぇ」と興味深かったし。

    サクッとサラっと短編を読みたい方にはオススメです。

  • 8人の作家さんによる最後の恋をテーマにした珠玉のアンソロジー。
    短編で「最後の恋」を描くってどんな感じ?
    と興味本位で手に取った一冊。

    「春太の毎日」三浦しをん
    「ヒトリシズカ」谷村志穂
    「海辺食堂の姉妹」阿川佐和子
    「スケジュール」沢村 凛
    「LAST LOVE」柴田よしき
    「わたしは鏡」松尾由美
    「キープ」乃南アサ
    「おかえりなさい」角田光代

    「春太の毎日」は、三浦しをんさんの『きみはポラリス』で読んでいたので2度目だったが、やっぱり可愛らしくて素敵な作品だった。

    他に印象的だったのは、松尾由美さんの「わたしは鏡」。割と早い段階で結末が予想が出来てしまったが、なかなか斬新だった。

    それと、角田光代さんの「おかえりなさい」はノスタルジックでどこか幻想的な趣がよかった。

    『最後の恋』つまり、自分史上最高の恋。
    ・・・赤面しそうなタイトルの割に、8人の作家さん其々の個性豊かな作品が楽しめる短編集だった。
    個人的にはもっと甘めな内容をイメージ?期待?していたのでちょっと物足りなかったが、これはこれで面白い作品だった。

  • 8人の女性作家さんが忌憚なく表現する最後で最高の恋の話。女性目線の一途な気持ち、複雑性、計画性、駆け引きなど面白い反面、やっぱりわからん!となるものまで多様な内容だった。●●の春太が女性飼い主に思いを馳せる話しはニヤニヤ笑った。一番響いたのは谷村さんのヒトリシズカ。毎年彼に会うための長距離移動。彼と漸く一緒に過ごせるという時期に起きた辛い出来事。彼を想う切ない気持ちからジーンとなる。男性作家さんのアンソロジーよりも女性作家さんの圧倒的勝利でした。読友さんお薦め作品を堪能。三⑤谷⑤阿⑤沢④柴⑤松⑤乃④角④

  • 8人の作家さんの短編恋愛小説
    タイトル通り「最後の恋」がテーマなのだけど、
    それぞれに違った趣があった。

    三浦しをんさんのは、とても可愛らしい感じだったし、
    沢村凛さんのは、なるほどそういう人もいるだろうなぁと、いかにも巷に居そうな人の話で入りやすかったし、
    柴田よしきさんのは、辛さと怒りに満ちた感じだったし、
    角田光代さんのは、何というか優しい寂しい気持ちになれる感じだった。

    恋愛小説はあまり読まないけど、サクッと読む分には気分転換になるかな。

  • 「最後の恋」をテーマにしたアンソロジー。
    作風がそれぞれよく出ている。
    三浦しをんさん、乃南アサさん、角田光代さんの作品が好き。
    ”最後の恋  つまり、自分史上最高の恋”で、こんな風に書けるなんて。。
    面白い一冊でした。

  • 恋は落ちるもの…月並みなセリフを思い浮かべながら読んだ。

    10年以上積読してた本書は、女性作家8人のアンソロジー。
    命を賭け身を削るような恋愛の話しは少なく、予想よりライトな物語がほとんど。

    印象に残った【ヒトリシズカ】と【わたしは鏡】は切なく、【LAST LOVE】は強さを感じた。
    【海辺食堂の姉妹】は寓話でしょうか?(笑)

    落ちてしまった恋が熟成し、いつしか愛情へかわって人生を送れているか⁈ 確かめたり、振り返ってみたい時にオススメ(^^)

  • (LAST LOVE より)
    最後の恋。
    これで最後。
    それは、ラスト、という意味じゃなくて、ベスト、という意味なんだ。
    今、好きなひと。
    今、好きになったひと。
    そのひとのことが、今まででいちばん好き。
    そういう意味なんだ。


    私は今、年甲斐もなく恋をしている。
    いや、いくつになっても恋は恋だと思うから何ら恥じる事はないのだけれど。
    今まで幾度となく恋はしてきた。
    この人とずっと一緒にいたいと思ってきた。
    始まりは夢中になったものだ。
    だけど、これが最後の恋になればいい、だとか、最後の恋にしたい、とは思ってこなかったような気がする。
    どこかで、本当にこの人でいいのかな?この人なのかな?という思いがあったような気がする。
    そんな私は何度も離婚を経験して今に至っている。
    そしてそんな私が今、最後の恋にしたいと強く思っている。
    こんな風に思える相手と出会えて、恋をして、二人の未来を考えたりなんかして。
    そりゃあ毎日が幸せいっぱい夢いっぱいなんて事はないけれど。
    今まで恋をした相手とは終わってきたわけだから、〇か‪✕‬で言えば✕の、失敗だったわけだから、最後の恋ではなかった事になる。
    このまま人生が終わるか、このまま今の人と一緒にいられれば、これが最後の恋になる。
    先の事は誰にもわからない。
    未来を心配しても今答えが出るわけではない。
    だから今を積み重ねていくしかない。
    そんな思いを抱えながら、この本を手に取りました。

  • 8人の作家が紡ぐそれぞれの物語は異なる味わいで享受できますが、胸キュンのツボに入ったのは乃南アサさんの「キープ」。
    ローテンション人生だった主人公の奇跡。アラスカの氷が一気に南国アイランドにたどり着いて、ココナッツを結実しそうな勢いの恋心が手に取るように伝わります。そして、角田光代さんの「おかえりなさい」は夫婦の別れを描いていますが、日が西に傾く頃の一瞬の美しさを目に焼き付けようとしたくなる心情に。
    ラストラブって初恋と違った切なさ、ノスタルジーを感じさせてくれますが、1つ分かったのは恋心が終わったという定義だけではないということ。最後が永遠という意味に限りなく近いということも分かりました。

  • 手に取ったのはMEN'Sを読んだので女性編も、という安直な理由。
    個人的には女性作家の恋愛小説は苦手な部類に入るものが多いのだが
    このアンソロジーは期待以上に当たりが多かった。

    春太の毎日(三浦しをん)
    『きみはポラリス』にも収録されてるから読んでるはずなのに全く記憶にない(爆)。
    春太が何者なのか途中で気がついたという。
    読み終わってからSEX MACHINEGUNSの『犬の生活』が脳内リピ(笑)。
    改めて歌詞を読むとまるっきり内容がリンクしている。

    ヒトリシズカ(谷村志穂)
    よく考えてみたらこの方の小説は読んだことがなかった。
    文体の印象は『結婚しないかもしれない症候群』の頃と変わらないかな。
    この話のからくりも途中から薄々わかってきた感じ。
    女性作家の書く恋愛小説としては王道な気がする。

    海辺食堂の姉妹(阿川佐和子)
    当たりのうちのひとつ。
    昔ばなしか民話かっていう感じの語り口なのにも拘らず
    登場する姉妹のキャラと役割がイマドキだというギャップが面白かった。

    スケジュール(沢村凛)
    初めて読んだ作家さん。
    この中ではいちばんテーマに沿った話だと思う。
    淡々と話が進む中で、主人公が見せる『最後の』恋へのこだわりと
    人生のスケジュールを遵守することに対する執念がなんとなく怖かった。

    LAST LOVE(柴田よしき)
    終盤に差し掛かるところまでは、いちばん苦手なタイプの話だと思ってたのだが
    残り3ページほどの婚約者と猫のくだりで、印象が当たりへとひっくり返った。
    『このひとでいい。このひとが、いい。』という1文が印象的。

    わたしは鏡(松尾由美)
    この方も初めて読む作家さん。
    ミステリ寄りと見せかけて、謎解きがちゃんと恋愛小説に機能しているのがすごい。
    個人的な感想だが、この話の読後感がいちばん切なかった。

    キープ(乃南アサ)
    『スケジュール』や『LAST LOVE』と雰囲気が似ている。
    違うのはどんでん返し感が薄いところ。

    おかえりなさい(角田光代)
    離婚届を出す寸前というリアルさと、老婆との遣り取りの実感のなさ。
    ふたつが絡み合って醸し出される空気感がとても不思議な話だった。

  • 「春太の毎日」は春太がかわいかった!麻子に向けるまなざしの優しくてあたたかいことといったら・・・!最後の春太の独白(?)が切なかったけど、とても優しい気持ちになれるお話でした。

    「ヒトリシズカ」は悲しかったです。悲しい中に切なさと狂気とが混じっている感じがしました。こんな最後の恋は辛すぎる・・・。

    「海辺食堂の姉妹」、おもしろかったです。妹が倒れたことによって、明かされる妹の性質。面白い姉妹です。姉さんよかったね!

    「スケジュール」はナウシカの件とアイデンティティの件がおもしろいなと思いました。そして、まさかのラスト。自分の中のルールは都合よく臨機応変に変えるもんですよね(笑)

    「LAST LOVE」はタイトル通りこの作品集のテーマと一番直結してました。最後に高橋が猫を持ってやってきたところから、とてもきゅんきゅんしてました!

    何気に一番この作品集のなかで好きだったのは「わたしは鏡」でした。
    作中作の「わたしは鏡」とリンクしている「わたし」の最後の恋。最後のいずみの告白はどきどきしたし、とても潔くて切なかったです。「田村いずみではない別の誰か」が幸せな人生を歩めますように。
    謎解き風のお話の進み方もおもしろかったです。

    「おかえりなさい」は独白っぽい感じで少し不気味なお話を聞いている感じでした。ぎらぎらした夏、ゆらゆらした大学生の夏休みという気だるい感じと、暗く冷えた老婆の部屋がすごくリアルに想像できました。不思議な夏のエピソードのようで、宗教などが出てきてなんだか現実的なお話でした。

    さまざまな「最後の恋」のとらえ方があって、このシリーズおもしろいです。

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著者プロフィール

作家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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