私にふさわしいホテル (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.59
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本棚登録 : 966
レビュー : 102
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101202419

作品紹介・あらすじ

文学新人賞を受賞した加代子は、憧れの〈小説家〉になれる……はずだったが、同時受賞者は元・人気アイドル。すべての注目をかっさらわれて二年半、依頼もないのに「山の上ホテル」に自腹でカンヅメになった加代子を、大学時代の先輩・遠藤が訪ねてくる。大手出版社に勤める遠藤から、上の階で大御所作家・東十条宗典が執筆中と聞き――。文学史上最も不遇な新人作家の激闘開始!

感想・レビュー・書評

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  • 本好きにはたまらない、最高のエンタメ小説でした。
    主人公は小説家を目指す31歳の女性。ところどころ現実とリンクしていて、途中、思わずにやり・・・どころか心の中で思いっきり笑いました。

    まず、これは6つの章からなる物語で、どれもこれもまるで違った味なんです。思い返してみても、ドロップ缶からドロップを出すような楽しみに溢れていて、本当におもしろかった。章ごとにきちんとひと段落つくのですが、通勤中に読んでいてあまりのおもしろさに、職場に着いてもその章を読み切るまでは自席で読み続けてしまったほど。

    朝井リョウさんの「武道館」を読んだ時も、アイドルがこの本を読んだらどれほど励まされることか、と思いましたが、作家がこの本を読んだら・・・きっと笑って頷いて勇気づけられるんだろうな、なんていう風に思いました。
    そして朝井リョウさんと著者の仲の良さが垣間見れて、そんなところもにやにや。朝井さんだけでなく、戦友へのエールにもなっているのが素敵ですよね。

    華やかに見える作家も、よく地道で孤独な作業だ、なんていいますよね。普段は見れない舞台裏をちらりと見せてもらった気もして、そんな部分も楽しめました。
    編集者たちの記述も見所です。

    どうしても手に入れたいものを手に入れるために、形振り構わず貪欲に突き進む姿は、もしかしたら無様かもしれないけど、格好いいし、胸を打つ。
    章を追うごとにおもしろくなって、次はどんなとっぴょうしもないことをしてくれるのかと、わくわくしっぱなしでした。

    「あーおもしろかった」で終わらせない最後の章の存在が、苦味となって裏切ってくれるのがまたクセになりそうです。小説という形を取って、思い切り好きなことを詰め込んだかのような1冊は、読んでいて本当に快気でした。どの登場人物もキャラが立っていて最高。本好きな方にほど、ぜひぜひ手にとってもらいたい1冊でした。

  • あっと言う間に読んでしまった。
    (あらすじ引用)
    文学新人賞を受賞した加代子は、憧れの〈小説家〉になれる……はずだったが、同時受賞者は元・人気アイドル。すべての注目をかっさらわれて二年半、依頼もないのに「山の上ホテル」に自腹でカンヅメになった加代子を、大学時代の先輩・遠藤が訪ねてくる。大手出版社勤める遠藤から、上の階で大御所作家・東十条宗典か執筆中と聞きーー。文学史上最も不遇な新人作家の激闘開始!

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    加代子が次々と相手を騙していき成功を手にしていくのは読んでいてスッキリしました。東十条宗典との良いライバル関係や、編集者の遠藤との関係。柚木さんの作品はまだ『ナイルパーチの女子会』『さらさら流る』しか読了してないけど、男性の登場人物が好意的に描かれているのは初めて読んだ。

    小説家って好きなこと仕事にしていて、それが売れるんだったら本当に良い仕事だなとなんとなく思っていたけれど、思った以上にメディアの都合に振り回されていたり、不特定多数の人間に悪評を言われたりと、結構シビアな世界……。

    小説の中に朝井リョウさんが出てきていたので、彼の作品も読んでみたくなりました。
    石田衣良さんの解説も読んでよかったです。

  • 作家が出版業界をえがくと、毒舌になりがちで、本作もまさにそう。
    ブラックユーモアたっぷりのドタバタコメディ。

    加代子の、いかなる手段を使ってでも欲しいものを手に入れる、たくましさ、しぶとさ、執念は、いっそすがすがしいほど。
    嘘八百、あくどいこともしていながら、ふしぎとドロドロせず、カラッと明るいのは、キャラがたのしいから。
    いつも反発しあう大御所・東十条も、編集者・遠藤先輩も、おもしろい。
    強烈な言動に、パワーをもらえる。

    実在する作家の名前も多数登場。
    中でも、朝井リョウの登場にわらう。
    仲のいい間柄ならではの使い方。

  • ポップにコメディタッチで描かれてる小説だけど、内容はけっこうハードというか、よくよく考えてみるとけっこう怖い。
    主人公は小説家の有森樹李(本名・中島加代子)。文学新人賞を獲得したときにとある不運に遭った彼女はなかなか小説家としては大成せず鬱々とした日々を送っていたが、大学の先輩でもある編集者の遠藤にけしかけられたことがきっかけで、のしあがっていくことを決める。

    小説家だからこそ知っている、編集者と小説家の関係性や、文学賞の序列などがかなりリアルに描かれている。
    角田光代とか川上弘美とか実在する小説家の名前も登場したりしておもしろかった。某男性作家なんて、台詞もある役として出てくる。

    才能があるからといって小説家として大成するわけではない、ということはしみじみと感じた。アーティスト気質の真逆にあるような政治力もきっと必要な世界。
    フィクションの中にあるノンフィクションの部分を感じて、少し複雑というか、知らない方が幸せな感じもするというか。
    それなのに物語自体はおもしろいんだから憎い。笑

    自分の力で欲しいものを掴みにいく、そういう気概は希望を叶えるためには大いに必要。だけどいつの間にか目的がすり変わっていく、そういう恐ろしさも孕んでいる。
    憎しみを力に変えても、結果的にはあまり幸せにはなれないのかも。

    軽いのに重いっていう不思議な読後感。エンタメ系に分類されそうなのに。

  • これまた、楽しい世界。
    小説家って、憧れる!

  • 史上最悪の新人賞受賞作家によるドタバタサクセスストーリー⁉︎
    あらゆる手段を使ってのし上がっていく様は愉快痛快楽しくサクサク読めた。ただ先輩への復讐のために子供を使おうとしていたところでは不愉快極まりなく、とっとと成敗されてしまえっ!と怒りながら読んだ。
    出版業界などに対してこんな風に描いちゃっていいの?とハラハラしたり。
    でも、なにがいいって最後にある石田衣良さんの解説でしょう。余計なひと言によって星1つ増やしました。

  • 作家が作家と業界を描くとこうなるのか。。こわっ。
    しかし、有森も東十条も遠藤もとても魅力的なのが。。すごっ。

    有森はエピソードごとに作家として成長し
    成長とともに人格も変わっていく。
    エピソードとエピソードのすきまの年月に作者は一言も触れず
    回り舞台のように さっと時間が進むのが小気味よくて効果的。

    有森の姿はしかし 極端なだけで私たちと変わらない。
    私たちと異なる決定的なところはイノセンス。
    作家を作家として生きながらえさせるのは 
    「書かずにはいられない」何か純粋な心の動きなのでしょう。

    実生活がどろどろしていようが 怨念を内に秘めていようが
    作品を書く そのこと自体が純粋なのでしょう。

    だから私は 有森と東十条が嫌いになれなくて。
    そうして作家ではない遠藤の存在だけが 
    ストーリーの展開につれて薄れていくようで。

    知らなかったものをたくさん見て 感じることの多い作品でした。

  • 主人公めっちゃバイタリティある!!
    途中で朝井さんが出てきたのはビックリでした。小説家の現状がこの通りであるなら、想像以上に大変なお仕事だなぁと思った。

  • 自分が売れるためなら、姑息でも反則でも、取れる手段なら何でもする!
    正義心とは真反対な、むしろヒールっぽい加代子の無鉄砲さと奔放さが痛快。
    そして、そんな加代子に振り回される大御所文豪、東十条氏がコミカルで面白い。
    加代子の大学演劇サークル時代の先輩であり、担当編集者の遠藤先輩よりも、加代子&東十条氏の方が良いコンビなのでは?とニヤニヤしながら読んでしまう。

  • ドタバタと忙しいけど元気がでる。

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著者プロフィール

柚木麻子(ゆづき あさこ)
1981年、東京都生まれの小説家。立教大学文学部フランス文学科卒業。2008年に「フォーゲットミー、ノットブルー」で第88回オール讀物新人賞を受賞し、2010念二同作を含む初の単行本『終点のあの子』を刊行。2014年に『本屋さんのダイアナ』で第3回静岡書店大賞小説部門受賞。2015年『ナイルパーチの女子会』で第28回山本周五郎賞受賞、直木賞候補に。2017年『BUTTER』で直木賞候補。2019年、『マジカルグランマ』が第161回直木賞候補となる。

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