爪と目 (新潮文庫)

著者 : 藤野可織
  • 新潮社 (2015年12月23日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (173ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101202716

作品紹介

あるとき、母が死んだ。そして父は、あなたに再婚を申し出た。あなたはコンタクトレンズで目に傷をつくり訪れた眼科で父と出会ったのだ。わたしはあなたの目をこじあけて――三歳児の「わたし」が、父、喪った母、父の再婚相手をとりまく不穏な関係を語る。母はなぜ死に、継母はどういった運命を辿るのか……。独自の視点へのアプローチで、読み手を戦慄させる恐怖作(ホラー)。芥川賞受賞。

爪と目 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 久しぶりに、何のためでもなく、「ただ活字を読む」という欲のためだけに読み終えました。時間に追われているときに読む、良質な短篇はこの上ない至福ですが。ああ怖かった。
    帯の「史上最も怖い」という言葉は的を得ているからこそ、究極のネタバレというべきか、予感を促しすぎる意味で読者からすれば勿体無いような気もします。
    事実、悍ましいと感じる要素が沢山詰まっています。具体的な言葉で分析し始めようものなら自分の世界にピキッとひびが入ってしまいそうな感のある、人の奥底にある不気味な禁に触れてしまっている作品です。
    語ることの出来る要素で面白みを感じたのは、やはり「目」の役割です。解説にあった、動物の目の発達の過程の説明を含めて、考えさせられるところ、日頃考えることと繋がるところがありました。物事から恣意的に目を逸らせば、人はその物事を無かったことに出来て、ある種の独裁者になれるということ。でも、、、ということ。「目を閉じれば同じ」という言葉が出てくる宇多田ヒカルさんの歌をふと思い出しました。人は疲れてしまうと思考を停止して、目を閉じて、次に開く頃には状況が変わっていることを期待したりするものです。それは必ずしも現実逃避を示唆しているのではなくて、日常における睡眠も同じでしょう。でも、、、がいっぱいあります。自分の住んでいる世界に見たいものと見たくないものがあるということと、目が開いている限り物事を見続けなければならないこと、をどう理解すればよいのでしょう。自分で一生付き合って戦うしかないのでしょうけれど、戦うのに疲れてしまった人は他の存在を精神で殺してしまうのでしょう。私は目が見えることは尊いと思っていて失いたくありません。それでも、一見「できる」という良い機能に思われるものが、「できることをしない」という選択肢を危険を孕んでいるという事実は心に留めておくべきだと思っています。
    久しぶりに、心の向くままに目的もなく言葉を綴った気がします。少し気持ちが休まったのでこの辺りで。

  • 連れ子のわたし視点で語っているが、幼稚園にいるはずの時間帯までも把握してしまっている。。何故。怖いは怖い。それより不気味さが勝つ。眼ん玉はしっかりと見ています。 

    2話のしょうこさん、どういうこと?(・o・)だれ?川端くん?

    3話子供の頃よくあった似たような噂話。なのにゾクゾクする。ちびっこ広場に少女の霊がいないと証明できるといいですね、お母さん。

  • 「史上最も怖い芥川賞受賞作」という触れ込み。語り手の「わたし」は幼児、「あなた」は父親の再婚相手。「あなた」は「わたし」の父親と不倫。「わたし」の母親はある日ベランダで自殺とも事故ともつかぬ不慮の死を遂げ、父親は「わたし」を連れて「あなた」と再婚します。3歳の娘がこんなふうに話せるわけもなく、その違和感が読み手の不安を誘って面白い。特に美人でもないのになぜか男性の興味を惹いて女性からは敵意を持たれる「あなた」。母性にも欠けているけれど、「わたし」を持てあまし気味だった父親は、「あなた」が来てくれて安心します。「あなた」が与えるスナック菓子をぼりぼりと食べ続けて「わたし」が太っていく様子が手に取るようで不気味。衝撃度としては高いですが、この手法は一度しか通じないと思われ、以降の作品はどうなるか。表題作以外の2編もつかみどころなく、どれも単に思わせぶりだと言えなくもありません。次も手に取るかと言われると厳しいかも。

  • 途中途中で区切りはあるけれど、なぜか続きが読みたくなる小説。
    幽霊とかのホラーではなく、ごく普通の日常に潜むホラー。

  • 芥川賞を受賞した時から、「2人称」の小説ということで話題になっていた。私もその点に惹かれ、文庫落ちした機会に購入。
    父の不倫相手で後に父と再婚する「あなた」について、当時三歳だった「わたし」が語る、という構成をとっている。

    一般的に三人称でつづられている物語は神の視点に立って書かれているため、記述されている内容は物語の中の「事実」であり、疑う必要はない。これを逆手にとって仕掛けを凝らし記述内容への信頼性を揺らがせるものもありはするが、それも前述した三人称への信頼性が前提にあるから成り立つものだ。
    一方で「読者」に対する「語り手」がいる場合、作中の出来事も「語り手」のフィルタを通じて読者に渡されている。素直な作品では「語り手」の内容を疑う必要はなく、そのためこういった語り手の(ひいては作者の)恣意性に注意を払うこともない。ただ「読者」の世界と作品世界を橋渡ししてくれる存在というだけだ。だが、私の好きな「信頼できない語り手」と呼ばれるジャンルでは、その名の通り「語り手」がこちらに手渡してくれた物語は果たして事実なのか、という大きな疑いを持たせる。
    この作品は「わたし」は存在しているものの内容はひたすら「あなた」について語ったもので、時に「あなた」の内心まで勝手に語っている。正直物語としては「あなた」を「わたし」という言葉に置き換えて一人称で綴っても内容はそれほど差はなく思える。では何故二人称を選んだのだろう。
    読者に当事者意識を持たせて作品世界に巻き込むとか複数の目的があったのことだと思うが、私は理由のひとつはこの「あなた」の人物造形にあるように思う。
    「書く」ということは一度自己の内部を見つめ直し、再構成することだ。私は子供の頃、映像作品がノベライズされた場合、一人称で語られているものは苦手だった。語られている筋が原作通りであっても違和感を覚えて落ち着かなかったが、多分それは映像作品では見られない、作中人物の内面に触れたような気がしたからだと思う。
    この作品の「あなた」はあまり物事を深く考えず、他人に興味が薄い、だからこそ場の空気に流されやすい。作中何度も強調される視力の悪さそのまま、物理的にだけではなく心理的にも「見えない」「見ない」人物だ。そんな彼女を描くにあたり、一人称は最もそぐわない。そんな風に内省する人物ではない。だからといって神の視点である三人称では、客観的にすぎて、この不穏な空気は生み出せなかっただろう。
    そしてこの話を「わたし」が語ったと考えると、本来分かるはずのない「あなた」の感情や行動を経験したかのように当たり前のように語るという、静かな異常性も浮かび上がってくる。最後の一行に象徴されるように、「わたし」にとって「わたし」と「あなた」はの境目そのものが曖昧になっているのかもしれない。そう考えると、これも「信頼できない語り手」の1ジャンルだなと思った。
    「あなた」とこちらに語りかけているように見せかけて、その実読者の感情移入を最初から拒否している作品なので、共感したとか何度も読み返したいとかいう感想は抱かなかった。ただこの人称の技巧には素直に感心させられた。他の作品ではどんな小説世界を見せてくれるのか楽しみだ。

  • 意匠を凝らしていると余程のモノでないと結構辛いですが、本作まさにそれ。
    何処か書き手が酔っている感じがするし、そもそも怖くないというか嫌だが目を逸らせない小説を読まされていると思えなかったなぁ。悪意がストーリーとしての悪意に昇華していないというんでしょうか?

  • 2017年5月14日に紹介されました!

  • 怖いというより不安になる。
    中盤で自己を飾り立て顕示する日々が、「透き通る」と形容されてたことに、それまで唯一まともに見えていた主人公の母も相当病んでる(自覚あるんだ)なと思いました。
    人を愛せないのは不幸だけれど、そんな人を愛してしまう人ほどは不幸ではないのかもしれない。
    他の二編も不安になる。ホラーは好きだけどエンタメ要素0なので、なんでお金払ってまでこんな嫌な気持ちにならなきゃならないの…てなる。

  • 芥川賞発表作品収録の「文藝春秋」で読む

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