あとかた (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 701
感想 : 54
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101203812

作品紹介・あらすじ

実体がないような男との、演技めいた快楽。結婚を控え“変化”を恐れる私に、男が遺したもの(「ほむら」)。傷だらけの女友達が僕の家に住みついた。僕は他の男とは違う。彼女とは絶対に体の関係は持たない(「うろこ」)。死んだ男を近くに感じる。彼はどれほどの孤独に蝕まれていたのだろう。そして、わたしは(「ねいろ」)。昏(くら)い影の欠片が温かな光を放つ、島清恋愛文学賞受賞の恋愛連作短編集。

感想・レビュー・書評

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  • 現代の恋愛を描いた短編連作集。読み進めるごとに彼の彼女の姿が浮き彫りになっていく。読む手が止まらなくなる。
    傷つきたくないから踏み込まない、遺すべきもの、それぞれの愛のかたち...。チリチリ、チクチクする気持ち...。しばし余韻に浸ろう。

  • かたちだけを求める恋愛はものすごく虚しい。

  • 著者の恋愛観は一貫している。果たしてそれが愛と呼べるのか不確かなものの中にこそ本質が潜んでおり、暴力すらも愛との境界は曖昧だということを。

  • 傷だらけの登場人物たち。

    この本は恐らく出会うべき時というものがある本なのだろうと思う。

    どれもこれも痛々しく生々しい物語であって、なかなか感想が湧きにくい。

    傷だらけであるからこそ、愛してくれる他者を深く激しく求めてしまうのだろう。

    そのあり様は極めて暴力的であって、本来欲しいはずの共感や理解、愛情とは正反対にも映る。

    他者と交流すること、会話をすること、愛することはひょっとしたらどこか互いに傷を付け合うことなのかもしれない。

    この痛々しい、生々しい物語に言葉がなかなか出てこない。

    ひょっとしたら、出会うべき時に出会わなかった本だったのかもしれない。

    こういう本は恐らく、出会うべきタイミングがあるのだろう。

    時間を置いてまた再読したいし、出会うべき人もきっといる本だと思う。

  • うろこがよかった。
    こういう救われる話がいい。

    てがたとゆびわは、
    こうやって結婚したって子どもいたって、
    2人がずっと幸せじゃないってリアルというか、
    納得感あるんよな。

    ねいろもなんか分かるよね。
    嫌われたくないから、煩わせたくないから、失いたくなるから、
    我慢して物分かりのいい顔をしておけば不満や寂しさを必死に見ないふりをしていた。
    気持ちに正直に生きることが難しいので終わるのがちょうどいい。

  • 読んだあとの思いはあとかたもなく、
    消え、なかった。

  • 連続して千早作品を読んでみた。 短編集だが一つ一つの物語がリンクしてる感じは湊かなえの「告白」や伊坂作品に近い感じ。 女性作家が書くこの手の作品は女性特有の価値観で書かれてるものが多くて好きではないが、この作品は男性目線での感情や心情がとても繊細に描かれてて共感が持てる。 決してハッピーエンドではないが読後感がとても良く穏やかな清らかな気持ちになる。 他作品もとても楽しみ❗

  • 「恋愛連作短編集」とあり、ある短編に登場した人物が別の短編で他の形で登場する。とりわけ、1編目に出てくる男はあちこちに出てくる。物語に登場した時はそんな気配もなく、川上弘美の『ニシノユキヒコの冒険』の主人公のような、太宰治のような、女性の間をゆらりとするような人物に感じたのが、ページが進むごとにそれだけではない面が見える。ふわりふわりとした印象だった男性はその自死ゆえに、意外なほど人々にその影響を残す。ほんの一文、一言出てきただけの人物が、別の章では語り手として登場する。
    同じ作者の『西洋菓子店プティ・フール』とは雰囲気も読後感もまるで異なる。他の作品ももう少し読んでみよう。

  • 低温火傷。
    そんな言葉がしっくりくる温度。
    千早さんの綴る世界はそんな感じ。

    ふわふわと漂っているように見えて
    時にとても冷たく、時に燃えるように熱い。
    現代人の微妙にアンバランスな心理の表裏を巧みに描く人だ。

    短編集だが、終始 人との繋がりに形を持たせたいのに形にしてしまうのが怖かったり、はたまたどう遺せば最善なのか、曖昧な形ないものに翻弄されながら日々を送る主人公たちの話。
    ゆらゆら不安定な心情描写がどこかリアル。なんだよなぁ。

    収録タイトル
    ほむら / てがた / ゆびわ / やけど / うろこ / ねいろ

  • 再読でも面白かったです。
    自分の恋愛観にしっくりくる恋愛小説は川上弘美さんのものだな、と思っていたのですが、千早茜さんのものもかなりしっくりくることに気付きました。
    千早さんの恋愛小説は、表面は冷淡なくらい淡泊なのに、底の方では温度の高い青い炎が揺らめいている印象です。
    空虚感を持っていても、それでも、誰かと一緒に生きていこうとか、傷付いても人と関わっていこう、という思いも抱きます。
    それでもいいよ、という赦しというか、こんな自分でも生きていてもいいかも、と思います。
    お話は「やけど」「うろこ」が好きです。藤森と松本のこれからは明るい気がして。
    千影さんも好き。皆さん幸せになれたらいいなと思いました。

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著者プロフィール

1979年北海道生まれ。2008年『魚神』で小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。09年に同作で泉鏡花文学賞を、13年『あとかた』で島清恋愛文学賞、21年『透明な夜の香り』で渡辺淳一賞を受賞。他の著書に『からまる』『眠りの庭』『男ともだち』『クローゼット』『正しい女たち』『犬も食わない』(尾崎世界観と共著)『鳥籠の小娘』(絵・宇野亞喜良)、エッセイに『わるい食べもの』などがある。

「2021年 『ひきなみ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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