クローゼット (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.76
  • (25)
  • (55)
  • (41)
  • (6)
  • (1)
本棚登録 : 712
感想 : 48
  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101203829

作品紹介・あらすじ

十八世紀のコルセットやレース、バレンシアガのコートにディオールのドレスまで、約一万点が眠る服飾美術館。ここの洋服補修士の纏子は、幼い頃の事件で男性恐怖症を抱えている。一方、デパート店員の芳も、男だけど女性服が好きというだけで傷ついた過去があった。デパートでの展示を機に出会った纏子と芳。でも二人を繫ぐ糸は遠い記憶の中にもあって……。洋服と、心の傷みに寄り添う物語。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 真っ白な服飾美術館を舞台に、服飾修復師の纏子の再生のおはなし。
    著者の服飾に対する愛情がひしひしと伝わってくる。

    素敵なものがたりだったなあ。自分の作品を本当に大切にしているんだろうなあ。
    読んでいるこちらも、ゆっくりと噛み締めて読みすすめる。
    晶、纏子、芳のような主要人物だけでなく、周りの大人も魅力的。
    写真家さんは石内都さんを彷彿とさせるよね。

    ウィスキーのように、また時間を重ねて読みたい一冊。

  • 強さ、脆さ、生きづらさを語りつつも静謐...。知らんことも多々あったが、そんなことはどうでもいいぐらい身に纏った鎧、価値観、こだわりに鋭いメスが突き刺さる...。今、この作品に出会えて良かった。クロージングも好みでした。読めば服を買いたくなる一冊。

  • これ、今読んで良かった。
    キラキラしたスパンコールやビーズ、ひらひらした繊細なレースで彩られた洋服の話かと思ったら、心の奥底の、正しくクローゼットの扉の奥とでも呼ぶべきであろう箇所を刺激された。すとんと落ちてきた。
    洋服が沢山出てきて、そしてそれらを大事に扱う人々を想像する度に、何だか優しい気持ちになれた。

    ただこれは、洋服とは何ぞやという話だけではなく、他人から見た自分に対して押し付けられた価値観とか、こうあるべきとかそういったことに、どうやって対峙していけばいいのかとか、そういう面もあるんだろうなと感じた。

    それは、纏子にとっての修復士の仕事であり、芳にとっての好きな洋服を着ることなんだろう。
    私にとっての"それ"は何なんだろうな。


    このクローゼットというタイトルは、自分が自分でいられる場所とか物だったり、安心出来る場所、心の拠り所のようなものを引っくるめているのかな、なんて思った。

  • 芳と同じように、美術館の衣装たちを見たくて知りたくてページを捲った。表現が美しく、本当に目の前にあるかのように思えた。

    人に寛容であること、許すこと、傷と共に歩むこと…ありそうでなかった素敵な結末。
    自分の中にある偏見について考えてさせられた。そしてクローゼットを見直し、服を大切に着ようと思った。

  • 服で武装ではなく、自分らしさを纏いたい。
    何に対しても、よく見て、丁寧に。

  • 生きて、生き抜くことが、相手に負けなかった証、相手の影響力が自分において大きくなくなった証になることがあるよね。
    ちょうど自身に無意識の異性への警戒心があることに気づきどう処理するのが良いのか考えていたときに読み始め、シンクロに驚く。

  • 長編は初読みの作家さん。
    とても静かで、ぴりりとした雪の日のような緊張感のある雰囲気。白い建物のイメージもはたらいているかもしれない。
    芳がデパートで、昔のクリノリンやコルセットに出会うところ、美術館の収蔵庫で宮廷服の刺繍に出会うところ、纏子がアンティークレースを眺めるところ、八重桜色のドレスを直そうとするところ・・・
    服と一人で向き合うときに、心情と服が重ねられているシーンが印象深い。なんのために作られたのかを思うとき、ひるがえって自分自身はどのように在りたいのかを考えさせられるという・・・。
    愛を注ぐ対象とは、そのような映し鏡なのだなと思う。私は服のことをあまり愛してはいないが、たとえば植物を前に、自分について考えることもある。
    そうやって、服をよすがに生きてきた芳、纏子、晶が出会うことで、鏡が2面、3面になり変化が起こる。ゆっくりだが着実な歩みが好ましく、見守っていたくなる。

    巻末の、モデルにした財団のキュレーターと作者との対談もおもしろかった。

  • 服とはなんなのだろうなぁと考えてしまった。
    私かお洒落をする時は試験等に勝ち負けが決まる時。
    お洒落して、余り好きではないアクセサリーをつけて、御守りの指輪を右手の中指に嵌める。
    それが私の戦装束。
    そんな事も考えてしまった一冊です。

  • あぁ、やっぱり千早茜さん好きだなぁって思える一冊。
    千早茜さんのお話を読むといつも感じるのが、冬の朝のような、凛としつつも優しい静けさ。登場人物がさまざまな過去や痛みを抱えているけれども、それぞれがお互いを色んな形で支えて、救われてる。私も優しい言葉に救われている1人。
    今回の作品では、服の描写が本当に美しくて、私も実際に美術館へ行ってみたいと感じた。服への接し方がこれから変わっていく予感。

  •  ひらひらのスカートはぶりっ子。でも、ほんとは着たかった。プリキュアの変身した衣装、おもちゃ売り場に行く度に立ち止まって眺めてた。
     今は着たいと思わないけれど、あの時の「着たい」をもっと大切にしたらよかった。
     「〜らしさ」は使い方を間違えたらだめだ。

全48件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1979年北海道生まれ。2008年『魚神』で小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。09年に同作で泉鏡花文学賞を、13年『あとかた』で島清恋愛文学賞、21年『透明な夜の香り』で渡辺淳一賞を受賞。他の著書に『からまる』『眠りの庭』『男ともだち』『クローゼット』『正しい女たち』『犬も食わない』(尾崎世界観と共著)『鳥籠の小娘』(絵・宇野亞喜良)、エッセイに『わるい食べもの』などがある。

「2021年 『ひきなみ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

千早茜の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
辻村 深月
砥上 裕將
伊坂 幸太郎
森見登美彦
カズオ・イシグロ
瀬尾まいこ
有効な右矢印 無効な右矢印
ツイートする
×