闇の女たち―消えゆく日本人街娼の記録― (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (592ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101204567

作品紹介・あらすじ

「お兄さん、お兄さん……」暗闇から小さな声が染み出す。路上に立ち客を引く。声の主は街娼である。焼け跡の時代、彼女らは「闇の女」と呼ばれ街に溢れた。だが現在その姿を探すのは難しい。日本各地で長年に亘りこの商売を続ける者たちから聞き取った貴重な肉声。なぜ路上に立ったのか? その実像を描き出す。闇の中で生きる女たち、男たちに光を当てる傑作ノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • どんどん減り続け、高齢化が進む街娼(男娼も含む)のインタビュー。自分では選ばないであろうジャンルなんだけど、僕の読書好きがいい意味で知られているので仕事先でもらいました。読んでみると面白い。

    まず、筆者の長期に渡る調査力と行動力がすごいなと。全国各地のスポットに通い、インタビューにこぎつける、あとがきを読むと調査をするだけして、実際に文庫化されたのはだいぶ後になってから...。実現するのがわからなくても常日頃からネタをストックしておく必要があるんだろうなと仕事人の振る舞いを感じました。

    こうやってインタビューを読んでみると街娼と一言で言ってもほんとに人それぞれで食っていくためにその選択肢しかなかった人や、自ら進んでなる人、ポリシーを持って仕事として楽しんでやる人など様々。多く共通してるなと思うのはお金の回り方。全盛期の稼ぎはすさまじい。でもお金に対する考えはまたそれぞれで、またすぐ手に入るからと派手に使うのもいれば、必要なところまで貯めてさっさと身を引く人もいたりで面白い。

    後半は街娼の歴史に触れており、その時の社会情勢に応じて形を変えていく様子が記されている。人間が人間であるかぎりこういう文化は形を変えながらも続いていくんだろうなーと思った。

  • 街頭に立って客を引き体を売る、街娼と呼ばれる人たちへのインタビューと日本の街娼の歴史について書かれているルポルタージュ。
    結構高齢(50~70代?)の人が多いことにまず驚いた。あと、闇の女といいつつインタビューの半分が男娼だったのも驚いた。オカマさんたちの話はあけすけでえぐいけど、面白かった。インタビューは大体2000年前後のもので、戦後の赤線青線と言われた時代から街頭に立っていた人達の生の声は、歴史的価値があるんじゃないだろうか。

  •  まず、風俗業界用語のようなものをある程度知っていないと、せっかくのインタビューの内容がわかりにくいかもしれない。もやもや、ふわふわと捉えどころがない。
    ピンサロとヘルスの違いは何?とか、読みながらなんとなくわかるようにも書かれている言葉もあるけれど、よくわからない言葉が多い。無知を晒すようだけれど、赤線、青線も然り。聞いたことはある。でもよくは知らない。そんな言葉がたくさん出てくる。時代や世相もそう。

     この本は、第一部が街娼のインタビュー、第二部が戦前、戦後の日本街娼史で構成されているので、時代背景や基本的な知識がない人は、第二部から読み始める方が良いように思えた。

     何となくこの手の話はタブーというか、自分のいる世界とは関わりが無いように思えたり、特殊な人が好んだり、経済的に困った人がお金を稼ぐために仕方なしに入る世界であり、搾取されてボロボロにされて不幸でみじめな人生を送る、というようなイメージがあった。
    でも、そんな自分の持っていたイメージも、ひどく偏ったものだったと強く感じた。

     当時、結婚によって陋習たる家族制度を自ら維持する女たちにとっては、肉体をもって強く変革的に生きていこうとする女たちが目障りだった。蔑む一方で、道徳観念に縛られない生き方に、時には嫉妬や羨望が、そして恐怖があったのではないだろうか。

     このところフィクションばかり読んでいたせいか、久々にガツンときた一冊。

  • 期待はずれ。
    ただのインタビューの羅列。
    もっと深く濃く掘り下げて欲しかった。
    せっかくの題材がもったいない。

  • いわゆる「街娼」へのインタビューをまとめたノンフィクション。オーラルな物語によって炙り出される人間の生きる様は生々しい。家族とは?男とは?女とは? いまやLGBTも含め、「私が生きる」とはどういうことなのか。これは異世界のこと、と、差異化するのは間違い。

  • 夜鷹、ステッキガール、パンパン、立ちん坊…名称は時代とともに変われど男女問わず、店や組織に所属することなく春をひさぐ街娼の聞き書き。
    高年齢化が進みいずれ消え行くであろう日本人街娼に的を絞り記録したこと。意味は特にないかもしれないが、性風俗と世相は切っても切れない関係で、世の中をこうした目線で見るとまた違った角度からの日本の戦後が見えてくるような。本書に出てくる皆が皆、昔は(稼げるいい時代で)よかった、という話はするものの後悔ないとあっけらかんと語る姿は「プロ」である。

    『女とは結婚し家庭に入り子供を産む』といつしか周りからもまた自らも敷いたジェンダーのレールから勇気を出して飛び出した反逆者なのだと。人生を自由に謳歌する権利はあると声高にではないが彼女(彼)らは心中に抱えて夜な夜な街に立つのだ。

  • 本書はおの大部分が、いわゆる「街娼」と呼ばれる人たちへのインタビューからなる。テープ起こしは大変な作業だったと推測されるが、なかなかの文章力というか、言葉遣いに独特の味を持たせてリアリティがある。大体は2000年前後に行われたようだが、当時はまだそのような人たちが普通にいたのだろうか。現在では外国人を除いて殆ど消えていると思うのだが。

  • 彼女たちの人生、深堀するわけでもない、テープ起こしレベルのインタビュー原稿。時間の無駄だった。

  • 「闇の女」=街娼を生業にする人たちの、一部はインタビュー、二部は研究史。
    特に一部が生々しく、語り草に引き込まれる。

  • これはねぇ、ほんますごい。取材への執念。第2部はほんとに歴史研究やね。パンパンの語源面白かった。

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著者プロフィール

「スナイパーEVE」(ワイレア出版)「お尻倶楽部」(三和出版)などで連載するかたわら、有料メルマガ「マッツ・ザ・ワールド」を毎月、原稿用紙換算で500枚から1000枚程度配信している。

「2009年 『クズが世界を豊かにする』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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