ブータン、これでいいのだ (新潮文庫 み 58-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (262ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101204864

感想・レビュー・書評

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  • ブータンが国をあげてかかげる目標として有名なのが、
    GNH(国民総幸福量)の拡大です。
    GNHという指標自体が珍しいですよね。
    日本やアメリカのようなGDP(国内総生産)拡大、
    すなわち経済最優先ではなくて、
    経済はもちろんみんなの幸せのためには重要なのだけれど、
    そこを一番にもってこないのがブータンの流儀でした。

    そんなヴィジョンで国民を引っ張る国ですし、
    のどかで牧歌的で、そして幸せにほのぼのと国民が暮らす国、
    というようなイメージを僕は持っていました。
    物質的には恵まれていなくても、精神的には豊かなのだろう、と。
    それはそれで当たっているところもありますが、
    だからといって、純朴で素朴で清廉で、というわけではありません。
    そこのところは、本書で現実のブータンを読んでいくことでわかっていく。
    僕らが抱いているブータンのイメージは「夢の国」としてのものですが、
    実際は、現実として、危うさや歪みをかかえた世界だったりもするようです。

    でも、彼らの「幸せ力」については、見習うべきところがあります。
    楽観的で、ある種の諦めがよい方向に働いている。
    これには、ブータンの人々が信じているチベット仏教の影響が多大にあるようです。
    チベット仏教は命は輪廻転生すると説く宗教で、
    たとえば、そこを飛んでいるハエは何年か前に亡くなったお隣さんのおじいちゃんかもしれないし、
    そうじゃなくても誰かの生まれ変わりだろうから叩いて殺したりしない、
    殺生はしない、というような特徴があります。
    そして、生まれ変わることが前提なので、現世への執着がなく、
    それがよい意味での諦めに繋がっているように本書から読めました。

  • 「世界一幸せな国」と言われていて、どんな生活をしている国なのだろうかと知りたかったが、今回この本を読んで自分たちの価値観とは全く違っていて面白かった。

    ブータンでは、1週間以上先の予定は覚えられないから約束しない。
    仕事もほとんどの人が定時で帰り、19時まで仕事をするとワーカホリックと言われる。
    など、基本的には皆、自分のペースで仕事をするため、基本的に目標も達成するまで数ヶ月・数年と遅れるのが基本となっている。
    マイペースで無理をしない、仕方ないと受容する。森鴎外の「高瀬舟」のように足ることを知っている民族なのだと思った。

    ただ、「仕方ない」と何事も受容する精神で、失敗にも寛容で怒ることもあまりないが、仕事や業務などある一定以上の負荷をかけられると逆ギレすることがある。

    個人的にはブータンの人たちのように何事も「仕方ない」と受容できるようにもなりたいと思うけれど、受容できないからこそ頑張ってそれを良くしようとする気持ちも生まれるから、その間で揺らぎながら自分なりの良いバランスで進みたいと思った。

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