それでも、日本人は「戦争」を選んだ (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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レビュー : 71
  • Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101204963

作品紹介・あらすじ

膨大な犠牲と反省を残しながら、明治以来、四つの対外戦争を戦った日本。指導者、軍人、官僚、そして一般市民はそれぞれに国家の未来を思い、なお参戦やむなしの判断を下した。その論理を支えたものは何だったのか。鋭い質疑応答と縦横無尽に繰り出す史料が行き交う中高生への5日間の集中講義を通して、過去の戦争を現実の緊張感のなかで生き、考える日本近現代史。小林秀雄賞受賞。

感想・レビュー・書評

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  • 大学の先生が、栄光学園の中高生と質疑応答をしながら歴史の講義をしたもの。日清、日露戦争、第一次世界大戦、満州事変、日中戦争、太平洋戦争を扱う。教科書に載っているような端的に出来事と年号を覚えさせるようなものではなく、政治家や軍部、一般人、あるいは英国、中国、アメリカ、フランスはどう考えていたのか、なぜそのような行動に出たのかをじっくり考えさせる本。

    中高生よりも、中高年が読んだ方が良いかも知れない。一応受験では世界史を選択したので日本史にはそんなに詳しくない。とは言っても自分の国の歴史について知らないのはアホだと思って、後に多少勉強はした(つもり。)それでも知らないことがものすごくたくさんあった。

    日本が従事した戦争について、何となく分かったような気になっている。しかし、実際にツッコまれれば、知らないことばかり。目からウロコが5千枚落ちた。

    以下気になったことを箇条書きで。


    ・ベトナム戦争にアメリカが没入したのは、中国を喪失した体験があったから。(大マーケット中国が戦後共産化するのを止められなかった)

    ・英国が日本との不平等条約改正には、商法と民法の整備が必要だと主張した。

    ・ウィーン大学のシュタイン教授が伊藤博文に、権力分立構造などの憲法について教え、山縣有朋に主権線、利益線を教えた。

    ・国会開設を待ち望む民権派ですら、まず条約改正を望んだ。

    ・英国は日本の人生のとの戦争を後押しするのは、ロシアの代理が清だから。ゆえに日本との不平等条約を改正させた。

    ・1931年から1937年までに軍部が政治に介入するようになる。一般の人がどう考えていたか?国民の大半を占める農民の望む政策(小作人の権利を保障する)は既存政党からは出てこない。農村を大切にしてくれたのは軍部だった。

    ・パリ講和会議での山東権益に関して、ドイツのものを日本に渡すのではなく、返してくれとの中国の要求に対して、クレマンソーは、フランスは日本と密約を結んでいるので、日本が欲しいというものにはイエスと言わねばならないと言った。

    ・内田外相は満州国建設のとき、国連脱退すると声高に主張した。しかし松岡洋右は、妥協すべきだとする。英国は日本に対して、和協委員会の審議に、アメリカや中国を入れるべきだと提案する。内田はアメリカやソ連が入ると日本に厳しい結論が出ると考えたが、実際はアメリカは日本に厳しいスティムソンからハル国務長官に代わったことで国内問題に集中するようになり、ソ連は餓死者が出るほどの国内改革が迫られていたので、どちらも日本とケンカする気はなかった。

  • 我が国の現首相をはじめ政権与党議員の愚かさがよく理解出来る本。政治システムが機能不全となっている現在、懐古趣味の年寄りのポチに成り下がっている文科省の検定などやめて、本書を中学、高校の教科書に採用して欲しい。我が国の報道機関が取上げないため国内ではほとんど知られていないが、国際的に常識になりつつあるトランプの米国とその唯一の親友が率いる我が国の北朝鮮問題を契機とした世界的な孤立。そんなものに付き合わされたくないので、今回の総選挙では是非とも自民党を大敗させたいと思う。再読してさらに理解を深めたい。

  • 母が満州で生まれたこともあり、なぜ満州という国があったのか、なぜ日本は戦争をしたのか、なぜ人はそもそも戦争をするのか、とずっと疑問に思っていた。

    その答えを知ることができた(ような気がした)のは、今まで
    「NHKスペシャル 日本人はなぜ戦争へと向かったのか」「おじいちゃん戦争のことを教えて(中條高徳)」のふたつ。

    が、本書を読んだ上では、上の2つの情報はほんの一部でしかなかったことが分かる。

    NHKスペシャルでは、国民がマスコミに煽られて圧倒的に戦争を支持したのだ、とあった。しかし本書では、その国民がなぜ戦争を支持したのかを多角的に分析する ー 経済的な背景(国民の50%を超える農民の困窮)、選挙制度の問題(農民の意思が反映されない政治)、軍部の見立てと意図(ソ連攻防のための満州重視、軍隊を長期的に維持するために国民の支持の必要性、そのための選挙運動さながらの国民への満州の魅力アピール...)

    国民と経済と政治と軍部と世界の動きが、うねりを創るがごとく、戦争を生み出したのだという事実。

    私が幼い子供に満足な飯も与えられないような貧しい農家の主であったなら、やはり満州の侵略を支持しただろうか。

    1人の国民は、歴史に対して何をすることができるのだろう、と考え込んでしまう。

  • 著者は東京大学文学部、1930年代の外交、軍事を専門とする。


    国民の正当な要求を実現しうるシステムが機能不全に陥ると、国民に、本来見せてはならない夢を擬似的?見せることで国民の支持を獲得しようとする政治勢力が現れないとも限らない。著者は危惧する。



    南北戦争後のアメリカ、リンカーンの演説にも見られるように、膨大な戦死者が出たとき国家は新たな社会契約、すなわち広い意味での憲法が必要となる。それは日本国憲法制定の背景でもある。

    戦争の犠牲の大きさや総力戦という戦争の仕方それ自体が、戦争をしている国の社会を、内側から変容させざるを得ない。



    胡適の「日本切腹、中国介錯論」は初めて知った。
    胡適はすぐれた才能を蒋介石にかわれ、駐米国大使となった人で、1935年、「日本切腹、中国介錯論」を唱えた。

    中国に対して思うままにふるまう日本から中国をまもるには、米ソ両国と日本を戦わせるしかない。

    「アメリカとソビエトをこの問題に引き込むには、中国が日本との戦争をまずは正面から引き受けて、二、三年間、負け続けることだ」といったという。
    しかもこの時点で、太平洋戦争の流れを予言したかのように言い当てている。

    これには驚いた。
    胡適のような人材を登用する仕組みは、現在に至っても日本にはできていないように感じる。

  • 読もう読もうと思っていた本が文庫になっていたので購入。

    日清戦争から第二次世界大戦終戦まで約50年。高度成長から今まで位の時間で、制限選挙の制限度合いの変更であったり、世界恐慌や飢饉もあるなかでの政治について、中高生への講義。

    戦争というと構えてしまうけれど、政策の一つと考えると一大政策における首脳部の考え方と施策、そして国民への広報方法についての参考になる本。

    戦争が政治の延長なら、政治は国民の生活の延長で、生活は自身の安全保障とも捉えられるので、経済的な計算をせずに感情的なメリット・デメリットで捉えている国民も多かったようなのはBrexitとも同じ模様。

    失敗の本質的な意思決定についての話は少なめで、どちらかと言うと危機感から出てきている意思決定についてと、国民感情の醸成と言ってもいいような部分での話と、目的を決めたら突っ走れ的な高度成長期にも通じるお話。

    今も昔も中国はドイツと組むのだなとか、Windows、インターネット、スマホ、SNSのようなものが国民の意思決定に関係してきている以上、いろいろな国の社会秩序に影響を与えていると考えられるから、民主主義国家以外においてはルソーの言う戦争状態に当たるのでは?とか、政策のサンクコストは経済的なことだけでなく政策立案推進者の面子によるのであるなら、いかにしてそれを回避するべきかとか色々と考えさせられる内容だった。

    他界した切れ者の大叔父が陸軍士官学校出で、「金時計組は頭のレベルが違う」と言っていた。そのレベルの人間があのような施策なら、それをさせるのは信心的な思想であろうか。

  • まるで教室で授業を受けているかのようにさらっと読まされた

  • 明治から昭和にいたるいくつかの戦争に焦点を当て、日本の歴史について、有名進学校学生(中高生)に対する講義を書き起こしたもの。著者は、全く同じ視点で同じ時代を捉えた「戦争の日本近現代史」(新書版)を出しており、もちろん論点も同じであるが、今回の本は、中高生を対象とした講義録であるため、理解しやすくわかりやすい内容となっている。また、中高生の興味をひく面白いトピックを豊富に入れ、容易に読み進めることができた。著者の研究は深く、論理的である。また、講義を受ける学生は、中高生とは思えない鋭い発言が多く、その優秀さに驚かされた。

  • 歴史的な事件を、なるべく客観的にオーソドックスな解釈を試みながら、戦争へのプロセスを説明するように努めているとは思います。多くは『成程そうかと』思い、『そうか!』と思う事もあるのですが、『そーかー?』と思う事もある。筆者は哲学的な史観をお持ちのようで、歴史に進化的な流れを見出しているのか、いくらなんでもそれはこじつけではないだろうかと時々思います。不思議と読みながら竹内久美子さんの進化論を思い出すんですよね。本作は、高校生とはいえ歴史研究部への講義を編集したものなので、一般高校生には難しいと思う。

  • 此のような歴史の学び方を学校でもさせるべきである。左翼の視点も入っているように感じるが、史実、データに基づいた中央から議論を進めている。
    いずれにしても、あの戦争を左翼の9条念仏や感情ではなく、総括しないといつかまた同じ道を歩むことになる。

  • だいぶ以前には結構勉強したつもりだったんですが、忘れてます(^_^;)
    戦争を中心とした日本の近代史。高校生への授業、という形で行われた講義をまとめたもの。
    こういう仕事をしている東大の教授もいるということに、少し安心します。
    未来の暗い、不安の多い時代(^_^;)

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著者プロフィール

加藤 陽子(かとう ようこ) 
1960年埼玉県に生まれる. 1989年東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了(国史学). 現在:東京大学大学院人文社会系研究科教授. 主著:『戦争の日本近現代史』(講談社現代新書, 2002年), 『戦争の論理』(勁草書房, 2005年), 『満州事変から日中戦争へ』(岩波新書, 2007年), 『それでも, 日本人は「戦争」を選んだ』(新潮文庫. 旧版は朝日出版社, 2009年), 『昭和天皇と戦争の世紀』(講談社学術文庫. 旧版は講談社, 2011年), 『戦争まで』(朝日出版社, 2016年), 『天皇はいかに受け継がれたか』(責任編集, 績文堂, 2019年)ほか.

「2019年 『天皇と軍隊の近代史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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