本当はひどかった昔の日本: 古典文学で知るしたたかな日本人 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 208
感想 : 23
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101205168

作品紹介・あらすじ

昔の日本では、子供は健やかに育てられ、家族は愛に満ちていた……なんて大嘘。『古事記』や『枕草子』『源氏物語』『宇治拾遺物語』をひもとけば、育児放棄や児童人身売買、マタハラに介護地獄、ストーカー殺人から動物虐待まで、現代に負けない残虐悲惨な話だらけ! しかし、それでも逞しくて人間味あふれる日本人の姿を、日本文学の古典から読み解く文芸ワイドショー。

感想・レビュー・書評

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  • とかく、昔はよかったと(特にお年寄りー読み手も含む笑)口にしてしまう人々に、著者は古典を解説しながら、そんなことはありませんと、解き明かす。
    『古事記』から始まり、『日本霊異記』『宇治拾遺物語』、果ては『枕草子』『源氏物語』まで、日本の古典を渉猟し、原文と現代語訳を並列してくれる。
    そして、育児放棄や児童人身売買、ストーカー殺人や動物虐待の話など、古典にも記されており、けっして現代だけの事件ではなく、いずれも昔からあった出来事で、昔のほうがむしろ残酷だったと、著者は明かす。
    それにしても、巻末に掲げられた主要参考文献の膨大さには、圧倒されてしまう。

  • なかなか興味深かったです。
    昔は良かったなんて、幻想。。。
    あとがきにもありましたが、未来を今を前向きに見ることが出来そうな感じです。
    本の中身はもっとおどろおどろしいところもありますが。
    学生の時、古典は苦手だったけど、今と感覚が違うから理解できなかったから。けど、そこが面白いんだなと歳をとると理解できるのか?!
    作者の他の本も読んでみよう。

  • 「昔はよかった」に一石を投じるべく産まれた本、らしいのだが、本当にそうだとするとあまりにも安直。そもそも頭空っぽの大人が思考回路を通さずに口にする「昔はよかった」が示す"昔"というのは、殆どが頭の中で勝手に美化している彼らの過去の時代のことであって、決して何百年も遡るような古典ではないはずだし、仮にそうだったとしても、環境も価値観も習慣も常識も全く違う現代と過去を比べて、捨て子や虐待の件数がどうの拷問の残虐さがどうのと説き、だから現代に生きる我々は幸福だ!と結ぶのはあまりにもナンセンス。現代に生きる苦しみは現代に生きる我々にしか解さないし、逆もまた然り。「昔はよかった」「近頃の〇〇は〜」に始まる文句は確かに不愉快だが、あらゆる時代で口の端にのぼる言葉ならば、もう殆どひねくれた年寄りの様式美だろう。

    上記のような視点で読むと大変に苛々するが、単純に知見を広げるという意味ならば、古典は実に面白いと思った(折々「だから現在は幸せだね」視点が出てくるのを丸っと無視すればの話)。特に興味深かった点を下記に。

    ・親をなにより尊ぶ儒教思想と、現世の幸不幸は前世の善悪業の報いであるという仏教思想の強い影響。子供の立場の弱さ、虐待されても親を欠片も恨まない小林一茶、美醜が重要な価値観だった平安中期。
    ・学生の頃は害悪だとしか思えなかった「生類憐れみの令」が捨て子や病人、動物(犬以外も)を守る画期的なものだったなんて、、、綱吉見直した。これは参考文献読みたい。
    ・いざというとき村を守るために、捨て子や乞食を養う合理的システム。
    ・「結婚して子どももたくさんできました。めでたしめでたし」は特権階級しか家族を持てない時代の究極のハッピーエンド。
    ・江戸時代における、一夫婦当たり育ち上がる子供数の全国平均は二人。ついでに言うと死別によらない離婚率が二〇〇〇年代のアメリカ並み。
    ・舌切り雀の原話は、同居する子や孫に馬鹿にされながら暮らす二人の老女が主人公。
    ・日本人の奴隷売買を禁じ、奴隷解放を求めた豊臣秀吉。
    ・「さんせう太夫」の拷問のエグさよ、、、
    ・奈良、平安、江戸時代も子供や身障者、老人の刑事罰は比較的軽かった。
    ・明治、大正時代の民間座敷牢を調査した「精神病者私宅監置の実況」。図書館にあるみたいだけど読む勇気ないな、、、
    ・孤児である夕顔をセックスの果てに死なせ、挙句その死を隠蔽する光源氏。一方で、美醜が前世の善悪業によるものとされる価値観の中であえて醜い末摘花を娶りもする。紫式部の突き抜けた発想。
    ・美しい娘だけでなく、美貌と聡明さを備えた女房を揃えることによって天皇の来訪を誘う平安時代の外戚政治が、清少納言や紫式部といった才能あふれる女達を産んだ。
    ・ニニギノ命は醜いイハナガヒメを拒んだため、「岩のように盤石な命」は得られなかった。
    ・「ブスを妻にすると戦死しない」「ブスは武運を高める」という考え方が武士の時代にあった。平安時代の反動じゃないの、、、?
    ・仏教伝来初期に、仏教を信じれば「金・米・女」が沢山手に入る、という逸話がなければピンとこなかった平安時代の日本人の性質は、神にも仏にも節操なく現世利益の祈りを捧げる現代日本人にも脈々と受け継がれている。

    源氏物語は絶対に引用されるだろうなとは思っていたけど、後半になるにつれ頻出度が上がって、しかも面白かったので、小学四年生時に相応のものを読んで以来、改めて読破したいなと思った。著者訳の源氏物語があるみたいなので是非ともそれを読みたい!と思う程度には面白い本でした。

    ■捨て子、育児放棄満載の社会
    ■昔もあった電車内ベビーカー的論争
    ■虐待天国江戸時代
    ■本当はもろかった昔の「家族」
    ■マタハラと呼ぶにはあまりに残酷な「妊婦いじめ」
    ■毒親だらけの近松もの
    ■昔もあった介護地獄
    ■昔もあったブラック企業
    ■昔もいた?角田美代子
    ■いにしえのストーカー殺人に学ぶ傾向と対策
    ■若者はいつだって残酷
    ■心の病は近代文明病にあらず
    ■動物虐待は日常茶飯
    ■究極の見た目社会だった平安中期
    ■昔から、金の世の中

  • むかしむかし、あるところに、
    で、始まる昔話にも沢山の残虐なお話があります。
    昨今、幼児虐待、ネグレクト、少年犯罪など残忍な事件が多いと感じている人もいるだろうけど、それは今に始まったことではない!
    と言う考察とお話。
    たしかに、事件が増えたんではなく、絶対数はさほど変わらず明らかになる数が増えたんであろうとは思う。
    日本人は平和、温厚など言われるけど、根本は違うのかな。
    大塚さんの著書は初めてでしたがとても読みやすいです。

  • <目次>
    はじめに
    第1章 捨て子、育児放棄満載の社会~昔もあった大阪二児餓死事件
    第2章 昔もあった電車内ベビーカー的論争~「夜泣きがうるさい」と子を捨てるようなシングルマザーに迫る村人たち
    第3章 虐待天国江戸時代~伝統的「貧困ビジネス」の実態
    第4章 本当はもろかった昔の「家族」~虐待の連鎖も描かれていた「東海道四谷怪談」
    第5章 マタハラと呼ぶにはあまりに残酷な「妊婦いじめ」
    第6章 毒親だらけの近松もの
    第7章 昔もあった介護地獄から舌切り雀の実態
    第8章 昔もあったブラック企業~リアル奴隷の悲惨な日々
    第9章 昔もいた?角田美代子~家族同士の殺戮という究極の残酷
    第10章 いにしえのストーカー殺人に学ぶ傾向と対策
    第11章 若者はいつだって残酷~「英雄」か「キレやすい若者」か
    第12章 心の病は近代文明病にあらず
    第13章 動物虐待は日常茶飯~そして極端なペット愛好
    第14章 究極の見た目社会だった平安中期
    第15章 昔から、金の世の中

    貴族と比較して、庶民。
    わざわざ書き記されているのだから、残酷が一般的な証拠というのには留保必要。
    また庶民、武家、江戸庶民、地域差、時代差で留保をつけず古典の庶民はというのは言い過ぎ。
    親孝行第一主義の浸透、仏教間の浸透もグラデーションだろうし。
    とはいえエピソードの面白さは間違いない。
    またこういう見方は「古典に生きる」ひとつのやりかただ。

  • 捨て子ネグレクト満載、夜泣きがうるさいと子を捨てるよう迫る村人たち、伝統的貧困ビジネス、家族の虐待の連鎖、妊婦イジメ、独親だらけ、介護地獄、ブラック企業、家族同士の殺戮、ストーカー殺人、残酷な若者、心の病、動物虐待、見た目社会、金。

    昔は良かった、のイメージだけの昔を、リアルに教えてもらいました。子供向けのお話、などではかなりソフィスティケートされていたのですね。

  • まあまあ、興味深い読書ではあった。
    自分は、教育勅語に代表されるような体制迎合優等生的な儒教道徳へのアンチテーゼとして読んだのだが。
    結果として、古典文学に日本人の残酷さが沢山見出されるんだなーと感心した。
    ただ、古典文学だけをワラント(こんきょ)にしたクレーム(主張)は、理論的には弱い。
    逆に、近現代の話です統計などを引用している部分は、実証的です面白い。
    コンセプト上上記のような弱点が不可避ではあろうけど、もう少し他の資料にあたるなりなんなり、根拠面を補強してもよかったのではないか。
    一々そんな文句をつけるのは野暮か?

  • 歴史

  • 昔は良かったという嘆きを覆してくれる、昔はもっと酷かったという話。古典に書かれた実証であるが、ひどい話に暗さはなく、さばけた語り口が良い。古典に興味が湧いてくる入門書でもある。2018.4.22

  • 人間関係で最近話題になってるヒドイ話(ネグレクトやマタハラやストーカー)は、実は遥か昔からある、 と著者が古典を引き合いに出して説明する本。 確かに昔は人権なんて言葉なかったろうし、ヒドイ話はたくさんあったんだろうなと思う。 ただ、夜泣きで村を追い出される話にはちと驚いた。そこらへんはおおらかだと思ってたから。 まあ人間そう変わらないよね。 ただ、古典の記述は記述として、そこからの結論の出し方に著者の思い込みが多々入っているようにも思えた。

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著者プロフィール

1961年横浜市生まれ。古典エッセイスト。早稲田大学第一文学部日本史学専攻。個人全訳『源氏物語』全六巻、『源氏の男はみんなサイテー』『カラダで感じる源氏物語』『ブス論』『愛とまぐはひの古事記』『女嫌いの平家物語』(以上、ちくま文庫)、『快楽でよみとく古典文学』(小学館)、『ひかりナビで読む竹取物語』(文春文庫)、『本当はひどかった昔の日本』(新潮社)など著書多数。

「2016年 『文庫 昔話はなぜ、お爺さんとお婆さんが主役なのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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