- Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101205328
作品紹介・あらすじ
どうしようもなく好きになった。体が溶けるほど求め合い、もう二度と離れられないと知った。運命の恋なのに、涙が止まらない。なぜならあなたは人妻だから-。強く惹かれあい、もつれあい、傷つけあう二人の女性「なつめ」と「吹雪」。幼い子供を守るために、壊れかけた家庭を再生しようという吹雪の夫「マツキヨ」。相容れぬ二つの絆で結ばれた者たちが織り成す、愛と赦しの物語。
感想・レビュー・書評
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わたしにとっての、中山可穂さん2冊目。
最初が『弱法師』だったので、どきどきしながら手に取った。と、いうのはこの人が堂々と女性の恋愛をセックスを描くからで、わたし自身がこのひとに引きずられてしまうんじゃないか、と危惧していたから。
中山さんは、「ジャガイモよりサツマイモが好き」という、文句をすごくさらりと言ってしまうものだから、どうしたって魅力的だ。
本書にしても、「切った爪がお前を恋しがる」という自由律詩がするりとダイナミックに入ってくる。
わたしにその真意が理解しきれる時がくるのか、、はわからないけれど(未だ方向性定まらず)、体験してみたいとも思ってしまう。
いい意味で怖いことだ。
登場人物それぞれの視点と、少しずつずれた時間軸の3章立て。わたしは終章の「魔王」が好き。
出てくる女性がいちいちすべて魅力的で、大胆で、純粋で儚くて、美しいのはどうしてだろう。
きっと中山さんが、そうした女性の一番心のやわらかいところ、一番よわいところを知っていて、そしてそれをとても美しく見られる女性だからだろう、と勝手に思ってしまう。
熱が出たみたいな気持ちになる1冊。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
恋愛でこんなにも激しい感情、私もする時が来るのか
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登場人物3人それぞれが語る三部構成。
同性愛者の女性2人と女性に妻を寝取られた男性。
特に最後の男性の壊れそうで壊れないギリギリの心理状態の描写がリアルで切なく応援したくなる。前半2部が濃密な感じから3部はさわやかさすら感じるので読後感はすっきり。 -
読み始めは極めて挑発的な作品だと思うのだけれど、次第に様々な揺らぎが加わっていく。
海のような小説だ。
浅瀬から沖へ漕ぎ出し、海底へと沈んで行く。
しかしその海底にあるのは絶望ではなく、全てを包み込む愛だ。
著者特有の、暴力的に感情をぶつけて来る文章に終始喉をつかまれたような息苦しさを覚えるが、それは彼女にしかない力だ。
何度読み返しても感嘆する。 -
妻を女に寝取られたマツキヨへの愛しさが止まらない。
連作集で、語り手が変わることの面白さを久しぶりに感じた。
女性同士の恋愛の物語を読んだのは初めてだったけれど、とても熱かった。 -
「男遊びは嫌だけど、女の子とならいいよ」─同性愛者の妻を持った夫のこの一言の、なんと優しく、重いことか。悪意がこれっぽっちもなくとも簡単に人をきずつけることができるのだということに改めてショックを受ける。夫がまぎれもない善人であるから特に。
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主要な登場人物3人の視点で書かれた3編の連作短編集。3人ともに理解に苦しむ所があるし、でも人間らしい自分勝手さに好感が持てるし。大人は各々自分のこれからの道を見つけた感じで終わるが、嵐はどうなのかな。吃音が治ったことだけは救い。まっすぐに成長しますように。
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相手が同性だろうと異性だろうと恋愛の形に決まった形はなくて、もしあるとすれば「二人の形」が無数にあるんだろう。
人妻ばかり選ぶなつめが吹雪に離婚を迫るのは、なんだかなと思った。吹雪が子供を置いて、家に帰らなくなるのもその気持ちはよくわからない。
マツキヨは異性同士の「恋愛の形」しか知らないし、きっと一生理解出来ない。受け皿が無いと言うのはそう言うことで、そこに拒否が無いだけまだマシと言うか。人が良いのは伝わった。
「自分の形」を誰かに添わせてみんなが幸せになればいいと思う。 -
すごく良かった
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人妻吹雪との恋に溺れていくなつめは、深みにはまるにつれて彼女の夫マツキヨに対して強烈な嫉妬を燃やすが、マツキヨは女同士の恋愛は問題ないと寛容な態度。
一つの濃密な恋が終わり、新しい恋、新しい生活が始まるその過程を、なつめ、吹雪、マツキヨの3人を視点とした3つの物語でつなぐ。
せっぱつまった感情が支配する前半に比べ、後半は安らかと言っていいくらいゆったりとしている。そのせいか、今まで読んだ彼女の作品の中では、特別に落ち着いた印象を受けた。