小島 (新潮文庫)

  • 新潮社
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本棚登録 : 152
感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101205441

作品紹介・あらすじ

「絶対に無理はしないでください」豪雨に見舞われた地区にボランティアとして赴いた〈私〉は、畑に流れこんだ泥を取り除く作業につく。その向こうでは、日よけ帽子をかぶった女性が花の世話をしていた。そこはまるで緑の小島のようで――。被災地支援で目にした光景を描いた表題作のほか、広島カープを題材にした3作など14編を収録。欧米各国で翻訳され、世界が注目する作家の最新作品集!

感想・レビュー・書評

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  • 小山田浩子『小島』新潮文庫。

    14編から成る短編集。

    私小説と言うのだろうか。或いは純ブンガクと言うのだろうか。改行の無い初めて見る文体で日常の光景や口から発せられる言葉が垂れ流したかのように、ただ綴られる。

    明確なストーリーがある訳ではなく、例えば表題作の『小島』では広島の豪雨被害の被災地のボランティアという特異な体験が描かれているが、普通の小説のようなドラマティックな展開も無ければ、はっきりとした結末も無い。全ての短編がこの調子で、自分は新聞に挟み込まれた広告か何かを読んだいるのかなと空虚な気持ちになった。

    小山田浩子は世界が注目する作家らしい。私小説もブンガクも全く解らなくなった。

    本体価格750円
    ★★

  • 描写の巧みさ。

  • ざらりとした現実描く 小山田浩子さん「小島」 タイトルへの思い | 毎日新聞(2021/7/7有料記事)
    https://mainichi.jp/articles/20210705/k00/00m/040/160000c

    小島 小山田浩子著 新潮社 2090円 : 読売新聞(2021/08/15)
    https://www.yomiuri.co.jp/culture/book/review/20210814-OYT8T50165/

    小山田浩子『小島』は、画一性をせまる共同体のくびきをきびしく拒絶する棘のような短編集 | レビュー | Book Bang(文藝2021年秋季号 掲載)
    https://www.bookbang.jp/review/article/695238

    小山田浩子の本棚掘り | 中国新聞デジタル
    https://is.gd/NVNPAS

    Philippe Weisbecker – Yvon Lambert Paris
    https://www.yvon-lambert.com/collections/philippe-weisbecker

    小山田浩子 『小島』 | 新潮社
    https://www.shinchosha.co.jp/book/120544/

    --------------------------------------
    阿波しらさぎ文学賞 終了のお知らせ|徳島新聞社(2023/12/19)
    https://www.topics.or.jp/articles/-/1011515

    徳島文学協会 | 文學で人生をもっと豊かに
    https://www.t-bungaku.com/

  • ずっと気になっていた初読みの作家さん。
    改行が少ないので若干目が疲れるけど、この世界観、嫌いじゃないかも…と思いながら読んだ。

    『異郷』でのカープが負けると気分が落ちて機嫌が悪くなるとか、『継承』でのカープが大量点を取られるとチャンネルを変えるとか、負けた次の日のスポーツ欄は読まないとか、ああそうそう。分かる。分かる。一緒。一緒。(恐らく)カープファンあるあるよね。

    これを機に他の作品も読んでみようと思う。

  • 2021年4月単行本。
    2023年11月文庫化。
    「広島カープ三部作」というプチ特集あり。

    以下駄文つらつら。
    十代の頃、大西巨人のようなロジカルな男性と較べると、女性作家って感性でしか書いていないから読むのが辛い、と思っていたし、標榜していた。
    三十前後で文芸誌を漁っていたころは、女性作家ってこんなに妊娠出産生理を題材にすることが多いんだなやっぱり感性的なんだな脳じゃなく身体の一部が優位なんだなと思い、むしろ女性作家ならではの着眼点だよねーとか、わかったつもりになっていた。
    四十を越えた今、己の不明を恥じる、とか、その考えを反省している、とか、過去の自分を蔑めるようになった、とか、切り離したいわけではない。
    単に頭が悪く差別的だったと相対化できるようになった上で、でも基本はあの形のままのおじさんに成り果ててしまっていると思う。
    が、当時読んだ女性作家が、今読んでいる女性作家が、いや大昔から女性作家たちが仕掛けてきた、遅効性の爆弾の、爆炎や爆風を浴び続けている現状は、わかるようになった。
    たとえば本書でも男性社員に囲まれた飲み会で居心地悪い場面があるが(「けば」)、男性陣の企まざる品性の低さをハッキリ描写するその視線に、筆致に、「ライブ・ア・ライブ」でいえば「あの世で俺にわび続けろオルステッドーッ!!」に匹敵するレベルの、怒りが込められている。
    十年前の自分だったら、おお剣呑剣呑、とか冷やかして白を切ったかもしれないが、今は小説爆弾を、読んで喰らってぐったりして、スッキリできない。
    それは一般的なフェミニズムという概念をお勉強でわかったということではなく、小山田浩子という作家が書いた小説の強烈な味だからこそ、だし、小山田浩子の感じる生きづらさが、たとえば女性として扱われることという一例であって、本書で描かれた居心地の悪さは、男性読者にも別の形で覚えがあるものなので、男女という線引きではなく人間一般とか日本人とかに訴求するものだということ。
    本書は全体的にホラーだとも言えるが、非業の死の怨念とか、目の前にいる殺人鬼の暴力性とかではなく、人が共同体(家族でも職場でも何でも)に投げ込まれて、もみくちゃにされた挙句壁にこびりついた肉片が怨念化して、読み手になすりつけられている……みたいな。
    「園の花」の余韻に身震い。
    また多少後味よさげな三部作の中の、たとえば「異郷」で、語り手が気づいていない広島の風土に面白みを最初は感じるが、でもやっぱり人が集団になって発する不気味さがじわっと滲んできて、やっぱり不快。
    完全に連想しただけだが、人間ってこんな生きものでもあるのだなとハッとさせられた古井由吉「先導獣の話」や、吉田知子「お供え」やに連ねたい短編集。

  • 短編集。
    印象に残った話をいくつか記録。

    ▼ねこねこ
    結局あれはなんだったの?猫じゃなかったの?娘の「ねこにみえた?」が怖かった。
    ねこねこ ねこねこ ねこじゃなーい
    のフレーズが頭に残る。
    私がこの本の担当編集だったら、多分「ねこねこ」をタイトルにしてたと思う。

    ▼園の花
    娘の話から気付いた母親の子供時代の話になっていて、記憶と現実が入り混じる感じがなんかリアルだなと思った。
    こういうなんとなく生きづらくて孤立してた子供時代描写が上手い気がする。
    お話の終わり方が怖かった。すれ違った子が持っていた植物があの毒のある植物に見えた瞬間電話が鳴る。聞こえてきた子供たちの悲鳴を、何か起きたのではないかと不安にさせる書き方。

    最後の方、謎にカープの話が多かったけど、なにかそういう雑誌とかに出してた話なのかな。
    自分に子どもができてかはもう一度読んでみたい。この人の描く子供の様子がどれくらいリアルなのか、知りたい。

  • どこかの誰かのいつかの何気ない日常だけど、物語の端々に非日常が見え隠れしていて、それが読み手を不安にさせる。でも気になって読むのをやめることができない。

    「かたわら」と「異郷」が特に好き。

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著者プロフィール

1983年広島県生まれ。2010年「工場」で新潮新人賞を受賞してデビュー。2013年、同作を収録した単行本『工場』が三島由紀夫賞候補となる。同書で織田作之助賞受賞。2014年「穴」で第150回芥川龍之介賞受賞。他の著書に『庭』
『小島』、エッセイ集『パイプの中のかえる』『かえるはかえる』がある。

「2024年 『小さい午餐』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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