悟浄出立 (新潮文庫)

  • 新潮社 (2016年12月24日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (240ページ) / ISBN・EAN: 9784101206615

作品紹介・あらすじ

おまえを主人公にしてやろうか! これこそ、万城目学がずっと描きたかった物語――。勇猛な悟空や向こう見ずの八戒の陰に隠れ、力なき傍観者となり果てた身を恥じる悟浄。ともに妖魔に捕えられた日、悟浄は「何も行動せず、何も発言せず」の自分を打ち破るかのように、長らく抱いてきた疑問を八戒に投げかけた……。中国古典の世界を縦横無尽に跳び、人生で最も強烈な“一瞬”を照らす五編。

みんなの感想まとめ

多様な視点から中国古典文学の脇役たちに焦点を当てた短編集は、万城目学の独特な視点と表現力が光る作品です。『悟浄出立』では、沙悟浄を主人公に据え、彼の内面的な葛藤と成長を描きます。他にも、三国志や史記の...

感想・レビュー・書評

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  • 時折やってしまう、S潮文庫の呪縛による、内容未確認予約物件。悟浄は、沙悟浄のことでした。
    中国古典文学の多少脇役にスポットを当てた短編集5編。
    この作品を書くに至った万城目学さんの序文に、すごく、いいね!っと思いました。彼は、高校時代の現文テストに出題された小説に心奪われた。その後、それが中島敦の「わが西遊記 悟浄歎異」と知る。中島敦は33歳で亡くなり、これは未完といったところ。そして、万城目学さんがその歳になり、そのオマージュに挑戦となる。
    私は高校の現文の教科書で読んだつもりの森鷗外の寒山拾得のラストが心残りで時々思い出していたのですが、それが寒山拾得縁起のラストであったことがわかった時、ようやく納得したような気持ちだったですね。若い時代の出会いって、忘れ難い。(最近は、一昨日登録した本もあやしい)

    悟浄出立 西遊記より
    沙悟浄視線の猪八戒考察。
    趙雲西行 三国志より
    張飛・趙雲・諸葛亮の蜀への船上物語。
    虞姫寂静 史記より
    四面楚歌の元 虞美人草の虞姫の悲恋。
    法家孤憤 史記より
    燕の刺客、荊軻 同音の名を持つ男との分岐点
    父司馬遷 史記 「李陵」中島敦
    娘の榮から見た、大御所司馬遷。
    どれも読み物として面白いのだけど、私が中国古典を読んでなくて、中島敦も西遊記を読んでないんですよ。なので、どの部分が万城目学さんの創作なのか、どのぐらいフィクションなのか、わからないのが残念でした。
    猪八戒って、天界にいた時は、シュっとしたイケメンで、地上に落とされた時豚とぶつかってあの姿というのは、西遊記からなのかしら?

    • ちゃたさん
      おびのりさん、こんばんは。

      万城目さんも中島敦もだいすきな作家さんです。ただ、中島敦の方が圧倒的に密度が濃いです。読みごたえ抜群ですし、短...
      おびのりさん、こんばんは。

      万城目さんも中島敦もだいすきな作家さんです。ただ、中島敦の方が圧倒的に密度が濃いです。読みごたえ抜群ですし、短編が多いです。中島敦をお読みになってのおびのりさんのレビューが楽しみな私です。失礼しました(^o^)
      2023/02/03
    • おびのりさん
      オーダーいただきました!
      中島敦さん、読ませていただきまーす。
      オーダーいただきました!
      中島敦さん、読ませていただきまーす。
      2023/02/03
    • 土瓶さん
      新潮文庫を丸かじりするおびのりさん。
      さすがです( ̄ー ̄)bグッ!
      新潮文庫を丸かじりするおびのりさん。
      さすがです( ̄ー ̄)bグッ!
      2023/02/03
  • 実は、私が"万城目学"の名を最初に意識したのはこの文庫本。パラパラと目次を見ただけで、中国古典が好きな人ならすぐに気付くタイトルがずらりと並ぶ。

    1 「悟浄出立」 西遊記のメンバーの一人•沙悟浄を主人公とした物語。
    2 「趙雲西航」 三国志の蜀の軍人•趙雲子竜を主人公とした物語。
    3 「虞姫寂静」 秦を滅ぼした項羽の寵姫•虞美人を主人公とした物語。
    4 「法家孤憤」 秦の始皇帝暗殺未遂事件と法家思想政治の顛末の物語。
    5 「父司馬遷」 史記の著書•司馬遷の娘から見た父の物語。

    3〜5は史記が題材。どれもスピンオフ的な視点で物語が作られていて面白い。お薦めを一つ選ぶとしたら「虞姫寂静」。虞美人の秘めたるエピソードが胸を打つ。これで興味を持ったならば、司馬遼太郎の「項羽と劉邦」を読むと面白いんじゃないかな。良い読書ができました。

  • 題名作は、西遊記の悟浄を主役に仕立て上げた作品だ。中国史における助演者を主役にしたり、スピンオフであったりの5つのストーリーで構成されており、万城目学さんらしく面白い。

    趙雲西航は三国志の蜀の軍人である趙雲子竜が主役。
    虞姫寂静は秦を滅ぼした項羽の寵姫の虞美人が主役、夏目漱石が思い浮かぶ。
    法家孤憤は秦の始皇帝暗殺未遂事件と法家思想政治の顛末が描かれている。
    父司馬遷は史記の司馬遷について、娘からの視点で描かれている。

    こうした確固たる方向性がある中で、登場人物の人間らしさをクスリと笑顔にさせる表現が、万城目学さんらしさを感じた。
    ただ、私は中国史にはさほど興味がないため、読むのが少し辛かった。

  • 万城目さんのは、映像化されてるのは、全部観てる!
    (そんなんばっかやな(・・;))
    で、はじめて本読んだ。
    何か、あらすじなどに、惹かれて。
    西遊記、三国志などのサブキャラをメインにしての短編5つ。
    スラスラ読めるし、なかなか面白い。
    好みは、やっぱり「悟浄出立」かな?
    ・結果が全てではなく、過程も大事!
    ・先頭に立って、道のない道を行く厳しさ(楽しい事もいっぱいあるけど)
    何か、今にも通じるもんもあって、ジーンときた!
    後書きにあたる?「著書解題」も面白い。
    中島敦さんの「わが西遊記」を読みたくなった!

  • 万城目さんが、高校時代の現代文のテストで、中島敦の「悟浄歎異」にとても感動し、若くして亡くなった彼に代わって、続きを書こうと思い立った短編集。

    古代中国の歴史から題材をとっており、主人公ではなく、脇役目線で書かれているのがおもしろいです。「西遊記」だったら、悟空ではなくて悟浄。「三国志」だったら、劉備や曹操ではなくて、趙雲が主人公です。

    最も心に残ったのは、「虞姫寂静」。四面楚歌という言葉で有名な、垓下の戦い。戦に行く前の宴の場面。虞美人が、戦に赴く項羽や兵士達の前で舞を踊り、その後、自害してしまうという話です。大昔の話で、資料も少なく、色々な解釈があると思いますが、万城目さんの虞美人の描き方、一見、弱く、守ってあげたいような女性でありながら、最後の戦いの前で、剣を持ち、涙一つ見せず、凛として舞う姿は、心に迫るものがあり、とても感動しました。

    「ホルモー」や「鹿男」など、いつもの万城目さんの文体とは違い、落ち着いた、しっとりした文章も良かったです。5つの短編すべておすすめです。

  • 中国の古典を元にして書かれた短編集
    西遊記だったり、三国志だったり、史記だったり

    その中から『主役の周囲にいる人物を中央に置き、その視点でもって主役を観察し、ひるがえって自己を掘り下げる、という心の動きを描いた(P.6)』お話になってます
    例えば沙悟浄から見た孫悟空・猪八戒、趙雲から見た諸葛孔明・張飛、虞美人から見た項羽といったように

    んでまあこれがめちゃくちゃ面白い!

    物語が進んで主人公の心がどう動くのか、それぞれのお話での決意の方向がどれも魅力的でたまりません

    お気に入りは『悟浄出立』と『虞姫寂静』

    そういえば西遊記のお話って何故かなんとなく知っているんだけど、ちゃんと読んだ記憶もないんですよね
    万城目先生に一から書いてもらいたい、読みたい!なんて思っちゃいました

  • 5編からなる短編集。西遊記の沙悟浄、三国志の趙雲、史記の虞姫、同じく史記の荊軻、最後に司馬遷、一般的には主人公にはならない脇役に焦点を当てた物語。
    私の一番好きだったのは、タイトルにもなっている「悟浄出立」の最後の悟浄、悟空、八戒の天竺へ行く道を尋ねるシーンです。
    中国史に興味がある方は読んでみては如何でしょうか。

  • 中国文学には教科書やドラマで触れてきた程度の知識と興味しかなかったが、とても面白かった。著者解題もあってとっつきやすかった。もし学生時代に読んでいたら、もっと漢文に興味を持てたかもしれない。
    歴史書って堅くて想像の余地がないものだと思ってた。「そうでもないよ〜面白いよ!」って万城目先生にうまく中国文学を布教された感じがする…

  • 短編それぞれの根底に共通する物哀しさが心地良かった。

  • 万城目学さんの短編集。
    沙悟浄の真の姿、一度は見たかったな。
    意外と三蔵法師が天然で面白い。
    虞美人草の話が好きでした。

  • ついに直木賞作家となった作者といえば、京都ラヴァーズな、歯切れの良い文章と会話の掛け合いが楽しいエンタメ作家…という印象を、昔読んだ初期作たちの思い出とともに持っていたが、その初期作に混じって、こんな短編集も書いていたのか…とおどろき。
    中島敦インスパイアから始まる、著名な中国の故事・逸話に材をとった短編たちは、派手さとも荒唐無稽さとも無縁な、文章も相まって朴訥だけれど温かみのある読後感を得られ、とても気に入った。

    とくに、「常山の趙子竜」の名乗りに馴染みのある三國無双世代の我々としては、その名乗りから膨らまされた話にも読める、「趙雲西航」が刺さった。

  • 遠い世界だった中国の歴史の世界を私も一緒になって肌で感じられて、中国史のとりこに
    それも万城目さんらしく人間味あふれる魅力的な人たちにしてくれました
    はまりすぎて中国語も習い始めてしまいしまた
    私の世界を大きく広げてくれた1冊

    短篇集で読みやすく、何度も読み返すほど好き

  • 図書館で借り。
    日本小説の文庫本コーナーで見かけて。
    筆者と同じく私も学生時代を京都で過ごしたので、勝手に親近感を抱いていたのであった。
    『鴨川ホルモー』は原作も映画も観た。栗山千明かわいかったなあ。
    『鹿男あをによし』『プリンセス・トヨトミ』は義母に貸してもらって読んだ。面白かったなあ。
    と思いつつ借りたのだった。

    『悟浄出立』
    ・序を読んで、中島敦の『わが西遊記』読みたくなった。
    ・西遊記の面々が、かっこよすぎる…!脳内ではドラマ『西遊記』夏目雅子バージョンで再生されたわけだが、かっこよすぎるのだ。
    ・所詮すべては過程ではないのか?と現実に倦んでしまった八戒が、天界から人間界に堕ちてきて、「過程こそがいちばん苦しい」「人間界ではそこ(過程)に最も尊いものが宿ることもある」と語る。思わずハッとしてしまう。おとなになって訳知り顔で過ごしている自分は、どうなのだろう。
    ・p48 八戒の台詞「好きな道を行けよ、悟浄。少し遠回りしたって、また戻ればいいんだ。もっとも、出来ることなら、最短の道をお願いしたいけどね」痺れる…八戒のくせに…!

    ここまで読み終わったところで、万城目学「八月の御所グラウンド」で直木賞受賞のニュースが飛び込んできた。おお。タイムリー。受賞インタビューなんかを見てても愚直というか、なんだろう、ちょっととぼけた感じだけどすごく引き込まれるというか。おめでとうございます!

    ・虞姫寂静
    「四面楚歌」、中学生か高校生の時に漢文の授業でやったなあ、と思いつつ。項羽とその愛人、虞美人のお話。
    当時の私にとっては無味乾燥な漢字の羅列でしかなくって、ふうん、という程度の感想しかなかったのだが、どうして。なかなか。ドラマチックで女の情念というか、母性というか。

    ・法家孤憤
    法こそがこの世界を束ね、人びとを公平に導く唯一の存在だと俺は信じている。p164
    あとがきと合わせて読むと味わい深い。秦の始皇帝(秦王政)を暗殺しようとした荊軻にまつわるお話。

    ・父司馬遷
    「士は己を知る者のために死す」。これも高校生の時に漢文でやった。司馬遷が書きしるした言葉だったか。
    李陵を擁護したため宮刑(去勢する刑罰)を受けた司馬遷とその娘の話。中島敦の『李陵』、読みたくなった。

  • 悟浄出立、虞姫孤憤が面白かった。猪八戒をそういう目で見たことはなかったわ。「こっちが西天ですよ、と書かれた立て札が、どこかに用意されているとでも思ったか?ただ、自分が行きたい方向に足を出しさえすればいいんだよ!」「好きな道を行けよ、悟浄。少し遠回りしたって、また戻ればいいんだ。もっとも、出来ることなら、最短の道をお願いしたいけどね」

  • ショートストーリー、沙悟浄目線の西遊記が良かった。

  • 悟浄出立
    天界の名将『天蓬元帥』の成れの果てが猪八戒!?西遊記を読むと猪八戒はトラブルメーカーでお調子者でセコくてスケベ、孫悟空を出し抜こうとする事、数知れず・・・沙悟浄と三蔵に度重なる連帯迷惑をかける。そんな豚が天の川水軍で八万の兵士を率いていたなんて悟浄でなくても信じられないですよね。そんな疑問を八戒に投げ掛ける沙悟浄の話。

    趙雲西航
    三国志の蜀の名将『趙雲子龍』と張飛、孔明が劉備の蜀奪の時の援軍に向かう時の話、趙雲は張飛よりも年上だったんだと初めて知る。孔明の蜀への憧れと孔明の遍歴を見れば成る程と思える。
    カッコいい趙雲では無く渋い趙雲でした。

    虞姫寂静
    項羽の武は中国史上最強!!劉邦に敗れた敗因は張良、陳平の離間の計による軍師范増との訣別。同時代の名将韓信の将器を国士無双と呼ぶならば項羽の武力は『三千世界無双』と言っていいだろう!
    そんな項羽の奥さん虞美人との別れの夜のお話

    法家孤憤
    始皇帝が皇帝になる前に燕の刺客に暗殺されそうになる話。地図と将軍の首で昔漫画で読んだのを思い出す。李斯が思い描く法治国家は現代において完成形を見るのか?李斯に聞いてみたい。

    父司馬遷
    腐刑になった人の家族の話!史記の作家司馬遷が計に処され3年後から話は始まる。



    万城目学が古代中国が舞台の話を書くというだけでワクワクしませんか?

  • 著者の作品は好きで、色々と読んでいるが、それらの作品とは一線を画す内容。
    生意気ではあるがこんな作品も書けるんだ、と感心してしまった。
    結構好き。

  • 「鴨川ホルモー」をはじめとする万城目学氏の作品はいくつか読んだことがあり、面白い話を書く人、奇想天外なストーリーを書く人 というイメージだったが、本作はだいぶ違う。そして私好み。中国古典を題材に、深みのある内容、心に刺さるフレーズ、描写の巧みさ(スケール感、血腥さ、悲哀など)で、読み手の心を揺さぶってくる。

  • 万城目学作品だが、これまでとは異なり、原作から想像を膨らませた短編集。様々な作品をキャラクターそれぞれの目線で感情や行動が描写されているため、どれも主体者の目線で情景やエピソードが感じられる。おすすめは表題作よりも、虞姫寂静。
    万城目氏、中島敦や沙悟浄が推しとは、やはり面白い。

  • この本を読んでいると、久々に中国史に関する本を読みたくなった。中国史は謎が少ないけど、題材にすると書き手によって特色が出るストーリーになって面白い。

    万城目学は著者解題で中国史にミステリー要素が少ないのは、司馬遷がいたからだと主張している。司馬遷によって緻密に歴史が記録されたため、司馬遷以降も中国史は正確に書かれていると主張している。この主張はなるほどなと感嘆した。いつかは史記を読み、司馬遷が情熱を出した文を読みたいものだ。

    この本はいくつかの短編によって構成されている。その中でも、この本のタイトルである悟浄出立に込められたメッセージに胸を打たれた。「過程にこそ素晴らしさがある」というメッセージは、現代の結果だけを求める風潮に一石を投じているのではないだろうか?

    1番面白いと感じたのは、虞姫静寂だ。虞にスポットを当てており、あまり記録が残っていないため万城目学が思い描く虞に対するイメージがありありとこの話に表れていると思う。項羽のかつての妻であった虞に似た女を虞としての役割を与えるというのは、万城目学の妄想力が無ければ思いつかないだろう。

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著者プロフィール

1976年生まれ、大阪府出身。京都大学法学部卒。2006年、『鴨川ホルモー』(第4回ボイルドエッグズ新人賞受賞)でデビュー。2024年、『八月の御所グラウンド』にて第170回直木賞受賞。ほか小説に『鹿男あをによし』『プリンセス・トヨトミ』『偉大なる、しゅららぼん』『とっぴんぱらりの風太郎』『バベル九朔』『ヒトコブラクダ層戦争』『六月のぶりぶりぎっちょう』など、エッセイ集に『ザ・万歩計』『ザ・万遊記』『万感のおもい』などがある。

「2025年 『新版 ザ・万字固め』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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