ザ・ロイヤルファミリー (新潮文庫)

  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (624ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101206936

作品紹介・あらすじ

お前に一つだけ伝えておく。絶対に俺を裏切るな――。父を亡くし、空虚な心を持て余した税理士の栗須栄治はビギナーズラックで当てた馬券を縁に、人材派遣会社「ロイヤルヒューマン」のワンマン社長・山王耕造の秘書として働くことに。競馬に熱中し、〈ロイヤル〉の名を冠した馬の勝利を求める山王と共に有馬記念を目指し……。馬主一家の波瀾に満ちた20年間を描く長編。山本周五郎賞受賞作!

感想・レビュー・書評

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  • 早見和真さんの山本周五郎賞受賞作「ザ•ロイヤルファミリー」
    馬と馬主とその家族と関係者達の20年間を描かれた壮大なドラマ。

    山王耕造という馬主の秘書栗須の目線から丁寧に描かれる山王家の話と耕造の愛馬達の物語。
    ここがこの作品のかなりのキーポイントで主人公が馬主、馬主家族、騎手、生産者、調教師、観客と違いその人達の中でかなり中立的立場の人間。遠からず近からずの主人公目線で描かれていることが一つの魅力だと感じる。

    作品は2部構成。
    1部は山王社長と愛馬によるG1制覇に向けての「希望、ホープ」
    2部は親の意志を継いだ息子耕一による「家族、ファミリー」
    1部と2部は単独でも作品として独立できそうだが、合わさる事でより「継承」というテーマに拍車をかけている。

    競馬は「ブラッドスポーツ」とも言われ、一概にギャンブルとは言い表せない側面も持つ。
    日曜日にはスポーツ新聞各社が一面に競馬の記事を集めるのはスポーツとしての認知なのだろう。

    その血の継承を馬だけでなく馬主さん騎手にまで投影しており、大きく感動させられる作品だった。
    耕造から耕一へ、ホープからファミリーへ。
    当然両者のライバル達も血の継承をしている。この作品の醍醐味。
    人馬一体とは一般的に馬と騎手との関係を指す言葉だが、此方の作品では馬主と馬に当てはめたい言葉。
    何より登場人物がみな人間臭く、そこも好感を持てた。

    かくいう自分も30年以上馬券を買い続けてきたが馬主に憧れた事は一度もない。
    ただし競馬を馬券を愛する者において馬主さんという存在がいなければ競馬自体が存在しない、そういう意味では本当にありがたいと感じている。
    過去の名馬「オグリキャプ」「トウカイテイオー」最近では「サイレンススズカ」「ディープインパクト」「オルフェーヴル」「アーモンドアイ」等自分のみならずファンを虜にしていた馬達。
    ロイヤルホープ、ロイヤルファミリーにも完全に魅せられてしまった。
    しかしそれ以上に耕造、耕一に魅せられた。
    競馬をしない人でも楽しめるであろう最高の作品だった。

  • 2020年第33回山本周五郎賞

    人材派遣会社のワンマン社長の馬主としての生き方を描きながら

    競走馬の血統
    家族の血筋
    師弟の血脈
    それぞれの継承を絡ませて読ませるのです
    馬主にも 牧場にも 騎手にも
    当然お馬さんにも 継承の物語が創られます
    継承は 引き継ぐだけでなく
    先行く者を超えてこその継承
    騎手のコミックは何作か読んだ事がありますが
    馬主の思いは初体験
    しかも 競馬未経験 競馬場未訪問
    それにも関わらず 小説中盤の第一部終盤
    ロイヤルファミリーの親となるロイヤルホープの引退戦の有馬記念を
    ハナ先で良いから勝てや!って
    思いながら読んでいるのに気が付き
    良い作品なのだと認めるところなのです

    解説は今野敏さん
    そうです、私も早見さんは「イノセントデイズ」
    が印象的でした
    あの作品と同じ作家さんとは驚きです
    どちらも好きですけど


    • おびのりさん
      1Qさん なんか えっち
      1Qさん なんか えっち
      2024/09/20
    • おびのりさん
      ひまー
      ぜんぜん詳しくない友人に 大井誘われてます
      賭事やらないけど
      1,000円くらいかけておくと
      楽しそうです
      たぶん一度行くと気が済む...
      ひまー
      ぜんぜん詳しくない友人に 大井誘われてます
      賭事やらないけど
      1,000円くらいかけておくと
      楽しそうです
      たぶん一度行くと気が済むかもだけど
      お馬さん見てきたい

      2024/09/20
    • おびのりさん
      ビマキさん
      ビール飲んで
      本と一緒に馬券ポチりましょ
      ビマキさん
      ビール飲んで
      本と一緒に馬券ポチりましょ
      2024/09/20
  • 面白かった…のかな。

    馬主、競馬界隈のお話。知らないこと沢山で、それはそれで面白かったんだけれど。
    読み始め、それはないでしょ?の展開や、語り口の独特さに馴染めずページがなかなか進まない。

    でも後半からは謎の勢いで読了。
    レースがある度、次はいけるでしょ!の応援する気持ちが何回も裏切られ…いや、裏切るっていうんじゃないって本の中で言ってたな。気持ちが昂ってわーがんばれーってなるのに、もやっとして終わるというか。結果どうなったのよ!?ってしばらく分からない。

    あ、もしかして競馬してるのってこんな感じなのかしら?
    この前電器屋さんで、テレビに映ってる競馬の番組をつい立ち止まって見てしまったわ。確実に見る目が変わったね。これだから読書やめられない。

    そしてこの本のテーマは「継承」「世代交代」
    これも私世代には、なかなかキツイお話でしたわー。
    いや、もちろん世代の若い方ですよ?(絶対違う)

  • 文学書評
    読書レベル 中級
    ボリューム 619頁
    ストーリー ★★★
    読みやすさ ★★★
    ハマリ度  ★★★
    世界観   ★★★★
    知識・教養 ★★★★
    読後の余韻 ★★★★★★!
    一言感想:
    競馬好きな方、感動したい方にオススメの1冊です!競馬好きな方、絶対にハマります!

    私は全く競馬がわからず、競馬への感情は、(大変失礼ながら)馬の競争でお金を賭けて何が面白いのか、、、という程度の気持ちでした。が、Book YouTuber(マサキさん)が、競馬を知らない人でもめちゃ泣ける!感動!とオススメしていたので手に取りました。読後、競馬好きな方の気持ちがものすごく理解できました。実は競馬を通じて競走馬をはじめとする様々な物語(ストーリー)を見ているんだな〜っと。

    読み心地ですが、「です、ます調」の文章という事もあり、私的には最後までなかなか感情が乗りきれませんでした。そして、最後の最後まで苦しい展開が続いたのも、読んでいて正直苦しかった(キツかった)です。

    しかし!読後の余韻に★6をつけました!モヤモヤの感情はたった1ページで全て救われました(笑。こんな終わり方もアリなんだ!っと。その1ページに釘付けとなり、暫く眺めながら感傷に浸ってしまいました(笑。私にとって、この読後感は凄まじく印象的で初めての体験でした。

  • 少し厚いのでGW用に取っておいたこの本、3年振りに京都開催となった天皇賞(春)を観に行く電車の中で読み始めた。
    新しくなった競馬場では、午前中のレースからファンファーレの度に拍手が湧き、その雰囲気がとても良かった。

    親子二代に亘る馬主と彼らにゆかりの血統の歩みが、馬主につくレースマネージャー・栗須の目を通して語られる。
    馬主の家族の物語で、JRA賞馬事文化賞というのはともかく山本周五郎賞ということだしちょっと期待していたのだが、それほど面白くなかった。
    特に前半、ロイヤルホープとそのオーナー山王耕造の話は、馬にも人にもどっちつかずの平板な話で、競馬の話なのでサクサクとは読めるが、あまり感興が湧かず。
    後半、耕造と愛人の間に生まれた耕一が登場し、「相続馬限定馬主」という制度のことは初めて知ったが、ロイヤルホープの仔ロイヤルファミリーとともに、人も馬も父子が繋がっていく話になって、ようやく前半の話が活きてきたようには思った。
    ただ、この耕一やライバルである展之らは馬主として振る舞うにはあまりに青く、もとより狂言回しの栗須には彼らを導く度量もなく、人間のほうのドラマはあまりいい気持ちでは読めなかった。
    馬のドラマにおいては、ロイヤルホープと鎬を削ったライバルたちの、その子どもたちが相まみえ、それぞれの引退戦となる有馬記念までに流れる時間の経過や、レースシーンと結末に、血の継承という競馬の面白さが詰まっていたように思った。
    その後のロイヤルファミリーの戦績は蛇足でしょう。

  • この作品のテーマは継承です。
    親から子へ子から親へと、脈々と紡がれていく
    競走馬に魅せられた親子2代のお話です。

    馬を持つことが、どれだけ大変かと改めて認識できました。選ばれた者だけが、許される別世界です。
    馬を持つことができても、勝てるとは限りませんし、どれだけいい馬でも、運が左右する難しい世界です。その中で、ロイヤルの冠がついたサラブレッドたちの日々を馬だけでは無く、馬主、騎手、生産者、調教師目線で語られる物語がとても、リアリティーがあり面白かったです。

  • 泣けるとか感動とか、大変に言われていたけど、そういうのはなかったですね。
    余韻がすごいという、なんとも素敵な一冊です。

    一貫したマネージャー英治の語り口調は、なんだか自分の秘書なのではないかと錯覚するような文体です。
    ロイヤルファミリーとは馬の名前であり、家族であり、チームなんだと、読後はこのタイトルにされた意味がしっかりと腹に落ちます。

    最後の有馬記念の臨場感は素晴らしく、ファミリーの一員になった気持ちて応援しました。

    そして何よりラスト1ページが秀逸すぎる!!
    この1ページがあるだけで、いろんなドラマが想像できて本当に効果的なページでしたね。

  • 最高でした。個人的に競馬が好きだと言うことも大いにあると思うが、それを差し引いてもとても良いと思います。

    また忘れた頃に読み返そうと思う。

  • 競走馬と人々の継承をテーマとした、馬主一家の波瀾に満ちた20年間を描く長編小説。

    父を亡くし、空虚な心を持て余した税理士・栗須栄治は、ビギナーズラックで当てた馬券を縁に、人材派遣会社ロイヤルヒューマンの社長・山王耕造の秘書として働くことに。
    競馬に熱中し、『ロイヤル』の名を冠した馬の勝利を求める山王と共に、栗須は有馬記念を目指すことになる。

    この作品は競馬を題材としているものの、競馬を知らない方でも楽しめる。
    むしろ、競馬を知らない読者ですら夢中にさせるほどの熱量と、読んでいる時の没入感は凄まじいの一言に尽きる。
    オーナー・レースマネージャー・ジョッキー・調教師・記者……競馬に携わる登場人物たちの夢や希望を背負い、一心不乱にコースを駆ける競走馬はとても美しく、疾駆する姿や愛くるしいしぐさに至るまで、作中の表現描写は感嘆のため息すら出るほどだった。

    物語は第一部と第二部に分けられているのだが、私は第一部のラストレースで号泣。主人公の栗須と同じく、「がんばれ!」と叫びそうになりながらページをめくり続けた。
    第一部の感動に比例するかのように、第二部は晴れやかな読後感を味わうことができ、競走馬と人の縁の継承、そして確かな未来への希望を感じ取った。
    これから読む人は、ぜひこの小説ならではの「ある仕掛け」にも注目してほしい。

  • 解説:今野敏氏!先生、ネタバレしてます(^^;;
    読了後に読んで正解。

    皇族の話ではなく、競馬界の物語は、栗須栄治の丁寧な語り口で綴られる。

    ひょんなことから、豪快な馬主の山王耕造のマネージャーとなるクリス
    。馬を見る目がないので『人』を見て決める山王。
    その『王』の字にちなんで、持ち馬達に『ロイヤル』の名をつけている。

    競馬をよく知らなくても、とても楽しめた。高揚と興奮でレース展開には、文字を追う目が馬と一緒に走ってしまった! 

    競走馬の末路…でも競馬が無くなればサラブレッドも絶滅、も印象的だ。テーマは【継承】

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著者プロフィール

1977年神奈川県生まれ。2016~2022年に愛媛県松山市で執筆活動に取り組む。現在は東京都在住。2008年に『ひゃくはち』でデビュー。2015年に『イノセント・デイズ』で第68回日本推理作家協会賞、2019年に『ザ・ロイヤルファミリー』で山本周五郎賞とJRA馬事文化賞を受賞。その他の著作に『95』『あの夏の正解』『店長がバカすぎて』『八月の母』などがある。

「2023年 『かなしきデブ猫ちゃん兵庫編  マルのはじまりの鐘』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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