月まで三キロ (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 579
感想 : 31
  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101207629

作品紹介・あらすじ

「この先にね、月に一番近い場所があるんですよ」。死に場所を探す男とタクシー運転手の、一夜のドラマを描く表題作。食事会の別れ際、「クリスマスまで持っていて」と渡された黒い傘。不意の出来事に、閉じた心が揺れる「星六花」。真面目な主婦が、一眼レフを手に家出した理由とは(「山を刻む」)等、ままならない人生を、月や雪が温かく照らしだす感涙の傑作六編。新田次郎文学賞他受賞。

感想・レビュー・書評

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  • 心がホッとする短編集

    月まで三キロ:人生に草臥れて自殺を考えている男とタクシー運転手の一晩の出会いの物語

    星六花:気象庁で働く奥平さんに惹かれていく富田千里の物語、奥平が進める『首都圏雪結晶プロジェクト』は二人の距離を縮めてくれるのか?

    アンモナイトの探し方:少年と老人のアンモナイトの発掘物語・・・少年の悩みと賢者のような老人の間に交わされる会話には惹かれるものあり

    天王寺ハイエイタス:家業の蒲鉾屋を継ぐことになる主人公は次男?彼の家系より出でる長男達は突然変異の自由人が多い・・・叔父と、兄貴と次男の物語

    エイリアンの食堂:親子二人で切り盛りする食堂に同じローテーションでメニューを頼む不思議な女性客が来る?娘が言うにはプレアデス星人らしい・・・。そんなプレアさんと親娘の3人の物語

    山を刻む:家族から母親という理由だけで当然の如くこき使われる生活に疲れ一人登山をする主婦?火山学の先生とその生徒と山で出会い行動する内に主婦は決断をくだす!

    新参者の富士:OL二人が軽めの富士登山!研究者から富士山の意外な一面を教えてもらう・・・


    どの話も理系の知識がふんだんに盛り込まれてはいるが読みやすく嫌味臭くない!むしろ、もっと教えて下さいという感じです!

    どの話も未来の幸せに加速していくような話(紙飛行機を飛ばす時の手を離す迄の物語)
    最近、殺伐としたミステリーばかり読んでいて本書がオアシス的な役割を果たしてくれました!

  • とても良かった!読み友さん大絶賛に触発されて購入。

    初読み作家は、地球惑星科学の博士。あとがきに「科学の世界と人間ドラマを融合させた」と著者。

    私には、月、雪、化石、素粒子、火山など疎い分野への驚きと、心にジワっと広がる温かさの融合でした。悩み、迷う人たちが、しっかり顔を上げて前を向く、そんなひとすじの光が集まった一冊。

  • 6編の短編集。どれも良かったなぁ・・・。
    小学生の朋樹がアンモナイト掘りのおじいさんと交流する『アンモナイトの探し方』が好き。なんでも"わかる"気になっている小生意気な少年と、キンキンキンという石を割る音。地道な発掘作業を通して、膨大な時間や努力の積み重ねを、尊いものとしてみせてくれる。
    「科学に限らず、うまくいくことだけを選んでいけるほど、物事は単純ではない。」

    母を亡くした少女・鈴花と、居所の定まらない研究者の女性・プレアさんが会話する『エイリアンの食堂』もいい。母の死後、宇宙やオカルト系に興味を持つようになった鈴花に、素粒子と宇宙を見つめるプレアさんが語りかける。
    「わたしが使っていた水素は、きっといつか他の生き物が使う。わたしが死んだあとも、繰り返し繰り返し、ずっと」
    「ずっと――」
    鈴花は母親の存在を感じる術を探して、神秘の世界にひかれていた。その気持ちを、科学の言葉が満たしてくれるシーン。

    ずっと、繰り返し、そんな言葉に対して私は脆弱さを感じる。ずっとなんてない、輪廻なんてない。それは現実主義だと思っていた。でもプレアさんの語る"ずっと"の裏には、大気に・・・宇宙に満ちる小さな粒々の存在が確固としてあるのだ。
    目に見えなくても確かに在るものを、信じられるのは一つのつよさだ。永遠というものの弱さを思ってしまう私を、ふたりは置き去りにしていく。

  • 何らかの理由で少し人生に立ち止まっている主人公達が、科学者的な人と出会う話。それぞれの研究分野で扱う自然や物理法則とかの絶対的な存在の中に生きる意味とか人生との共通点を語る彼らの言葉と、彼らの想いとか、苦悩にも触れて、これからの一歩を踏み出す切っ掛けを見出していく構成。天文学、考古学、物理学、火山学等々と沈んだ気持ちから前に向かい始める良い話の融合。新鮮な発見を色々と感じながらほっこりさせて貰えました。

  • #読了 2021.10.17

    全6篇の短編集。伊予原作品は初読み。 1話目の「月まで三キロ」はタイトル的になんとなく「星のかけら/重松清」をイメージしていて、小中学生がメインのほのぼのキラキラストーリーかなぁなんて思ってたら、とっても大人の話で、1話目からボロボロと泣いてしまった。

    専門的な話がするりと人間味を帯びながら入り込んでいて、作者は地学の専門家かな?と思ったら、神戸大学理学部地球科学科卒業、東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。専門は地球惑星物理学。ひえー。
    元々はミステリーを書きたかった人らしいんだけど、トリック殺人もの書く作家はごまんといても、専門知識を語りながら人間の心を救うストーリーを書ける作家は稀有だよね、きっと。

    月、雪、化石、海の堆積、宇宙、火山。堅苦しいはずの専門用語や数字が、なんだか人間の心情に重なる。心折れかけてる主人公たちだけど、最後はどのストーリーも小さな兆しを感じられて、穏やかな感動がある。主人公たちそれぞれの葛藤が少し和らいで、昨日とは少し違う気持ちのいい一歩踏み出す姿は、自分もちょっと頑張ろうかなって気持ちにさせてくれる。
    特に6話目の「山を刻む」は、家族の中で自分の優先順位を当たり前に1番低くしながら、毎日旦那や子供のために頑張る主婦に読んでもらいたい。泣いちゃう。そしてちょっと救われる。

    ◆内容(BOOK データベースより)
    「月は一年に三・八センチずつ、地球から離れていってるんですよ」。死に場所を探してタクシーに乗った男を、運転手は山奥へと誘う。―月まで三キロ。「実はわたし、一三八億年前に生まれたんだ」。妻を亡くした男が営む食堂で毎夜定食を頼む女性が、小学生の娘に伝えたかったこと。―エイリアンの食堂。「僕ら火山学者は、できるだけ細かく、山を刻むんです」。姑の誕生日に家を出て、ひとりで山に登った主婦。出会った研究者に触発され、ある決意をする―。―山を刻む。折れそうな心に寄り添う六つの物語。

  • 地球の寿命からしたら、人間の営みとか温暖化とかも、たとえ、人類が滅びても、それはほんのちっぽけなことだと聞いたことあるけど…
    (理系おバカの私なので表現が間違ってたらごめんなさい)

    そんなことを思い出しながら読んだ、じわっとくる6つの短編+特別掌編が1つ(単行本にはあったのかな?)

    月まで三キロ
    星六花
    アンモナイトの探し方
    天王寺ハイエイタス
    エイリアンの食堂
    山を刻む
    特別掌編 新参者の富士

    どのお話も、科学的知識がいっぱい出てくるのですが、難しいとか、そういうことはありません。
    一人の誰かが、そしてその周りの誰かが、ちょっとしたこと、ちょっとでもない大きな喪失や悲しみ、でも、どこへ行こうか…と考えてるときに出会う人とのお話。どれも素敵なお話でした。好きだなぁ。

    読みやすいのに、深くって、ミステリーじゃないけど、ちょっとした意外な展開があって、心が暖かくなる…本のグループで大人気だったのも頷けます。初読み作家さんでしたが、読んで良かったなぁ(*´꒳`*)

    どれも好きなのだけど、月まで〜と
    山を刻む、が特に好き。でね、ラストの新参者の富士も、良かったんですよ〜。あ!エイリアンの食堂では、大好きな曲、キリンジのエイリアンズが聞こえました。

    かなりポジティブなワタシですが…最近、何のために生きてるんだろう?って、よく考えるんです。よくわからなくなっちゃって…。
    でも、こんな作品に出会えると、地球人として生きてるだけでいいのかな?なんて大きな気持ちになれる気がしました。

  • じわじわと染み出てくるような「誠実」を味わえる短編六篇。

    直木賞候補作『八月の銀の雪』で一躍有名になった伊与原新さんの作品。こちらは新田次郎文学賞受賞作。

    悩みを抱えた人たちが、日常のふとした出来事に癒される物語。理系の知識が嫌味なくふんだんに盛り込まれている。

    「月まで三キロ」
    あれよあれよと転落してしまったアラフィフ男性は月まで三キロの場所までたどり着き何を見たのか。人生ってちょっとしたきっかけで転落してしまって救ってもらえない。その中でどう生きて行けばいいのか、と考えさせられる。

    「星六花」
    40代のラブロマンスか友情か。ほっこりしました。雪の結晶を見つけてみたくなりますね。

    「アンモナイトの探し方」
    都会から来た少年と住んでいる街の発展を願った男性の物語。

    「天王寺ハイエイタス」
    本書では少し異色かな?登場人物が一癖あって面白い。

    「エイリアンの食堂」
    シングルファーザーと娘とリケジョ。伊与原さんは特別じゃない「そこにいる人」を書くのが本当にうまいと感じる。

    「山を刻む」
    平凡な女性が子育てが終わってからの生き方を模索するとこうなった。いや、勇気ある決断だな。面白かったです。

    後書きではなく逢坂剛さんとの対談が掲載されています。創作秘話のような小説の書き方を話されていて興味深かったです。

  • これは、理系作家だからこそ書ける物語だと思う。6編の短編集だが、一番面白かったのは「月まで三キロ」と「エイリアンの食堂」。

    月まで三キロとはどういうことかと思えば、まさかの案内標識。物理的には近くなくとも、心の距離は月まで3kmなのではないかと思った。

    木星の衛星エウロパ、土星の衛星タイタン、エンケラドス… 海があって、生命体もいるかもしれないという可能性とはいえ夢のある話に心打たれるものがあった。人類と同じ138億年にできた水素原子を体に持っていて、広い意味で兄妹なのかと思いを馳せてしまった。

  • 理系作家・伊与原さんが綴る人情噺。表題作を含めて6篇の短篇+特別掌編、さらに逢坂さんとの対談まで収録したおいしい1冊。単行本はどうなんだろうとちょっと気になる。
    どの作品もよかったが、「星六花」「天王寺ハイエイタス」「エイリアンの食堂」が特に好き。理系の小ネタがストーリーによく絡んでいて、まさに伊与原さんにしか書けない世界だと思う。

  • 理系の人たちってカッコいいなー芯がある生き方してる気がする。

    そこに人間味が絡まってくるとなんて重厚感。

    『月まで三キロ』は泣かされたけど、ほかの作品は心に静かに残る感じでした。

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著者プロフィール

著者紹介
1972)年大阪生まれ。神戸大学理学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科で地球惑星科学を専攻。博士課程修了後、大学勤務を経て、2010年『お台場アイランドベイビー』で横溝正史ミステリ大賞を受賞。2019年『月まで三キロ』で新田次郎賞を受賞した。著書に『磁極反転の日』『蝶が舞ったら謎のち晴れ――気象予報士・蝶子の推理――』『博物館のファントム 箕作教授の事件簿』『ブルーネス』『ルカの方舟』『梟のシエスタ』など。

「2020年 『コンタミ 科学汚染』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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