機巧のイヴ (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101207919

作品紹介・あらすじ

天府城に拠り国を支配する強大な幕府、女人にだけ帝位継承が許された天帝家。二つの巨大な勢力の狭間で揺れる都市・天府の片隅には、人知を超えた技術の結晶、美しき女の姿をした〈伊武 〉が存在していた! 天帝家を揺るがす秘密と、伊武誕生の謎。二つの歯車が回り始め、物語は未曾有の結末へと走りだす──。驚異的な想像力で築き上げられたSF伝奇小説の新たな歴史的傑作、ここに開幕!

感想・レビュー・書評

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  • 江戸時代を舞台にしたSF。機械仕掛けで、全く人間と区別がつかないイヴをめぐっての4つの連作短編集。思いが寄せられる程度によって、機械仕掛け(機巧)の人形の心の具合が決まって来るのだ。機械仕掛けの蟋蟀、相撲取り、幕府隠密、天帝、天帝を守る隠密、絡繰り師などが入り乱れて、話は次々と展開する。思いを寄せるから魂が生まれる!?では、その思いを寄せる人間の魂はどこから来たのだろうか。攻殻機動隊のゴーストというのを思い出してしまった。機械のタチコマたちには、ゴーストはあったように思うのだが。イヴはお千度参りなどをして、人間になる事を願っているが、既に人間の魂を持っているのだ。

    • goya626さん
      そういや、続巻を図書館にリクエストしないといけない。蔵書にはなかったのです。
      そういや、続巻を図書館にリクエストしないといけない。蔵書にはなかったのです。
      2021/10/11
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      goya626さん
      早く届きますように、、、
      goya626さん
      早く届きますように、、、
      2021/10/11
    • goya626さん
      にゃ~
      にゃ~
      2021/10/12
  • 普段あまり手にすることのないSF、時代物、そんな一見して交わることのなさそうな2つのジャンルが掛け合わさるととんでもない作品が生み出されました。

    その名は「機巧のイヴ」。

    主人公を変えながら進む5作の連作短編が生み出す衝撃の面白さ。

    江戸時代を匂わせる時代設定の中で、現在の科学技術でも創り出すことが出来ない人知を超えた技術の結晶、美しき女の姿をした〈伊武〉が存在!

    いわゆる人型ロボット(アンドロイド)なのですが、無論、ICチップもコンデンサも、モーターさえも入っていません。

    所謂、からくり人形です。

    しかし、この伊武がなんともいえないぐらいに魅力的なんですよねー。

    続編買わなくちゃ。

    説明
    内容紹介
    SF×伝奇=未体験ハイブリッド小説!!
    「歴史的傑作! この女に命が無いのなら、命とは一体なんなのか」(?大森望)
    天府城に拠り国を支配する強大な幕府、女人にだけ帝位継承が許された天帝家。二つの巨大な勢力の狭間で揺れる都市・天府の片隅には、人知を超えた技術=オーバーテクノロジーの結晶、美しき女の姿をした〈伊武(イヴ)〉が存在していた! 天帝家を揺るがす秘密と、伊武誕生の謎。二つの歯車が回り始め、物語は未曾有の結末へと走りだす──。驚異的な想像力で築き上げられたSF伝奇小説の新たな歴史的傑作、ここに開幕!
    目次
    機巧のイヴ
    箱の中のへラクレス
    神代のテセウス
    制外のジェぺット
    終天のプシュケー
    解説 大森望
    出版社からのコメント
    大森望、絶賛!!
    ロボットと時代小説。一見、ほとんど正反対の両者をみごとに溶け合わせて、ほとんど前例が見当たらないほど独創的な物語を組み立てたのが、本書『機巧のイヴ』。古今のSF時代小説の中でも指折りの、まさにインスタント・クラシックーーこの先、SFの歴史に古典として長くその名が刻まれるだろう名作だ。
    内容(「BOOK」データベースより)
    天府城に拠り国を支配する強大な幕府、女人にだけ帝位継承が許された天帝家。二つの巨大な勢力の狭間で揺れる都市・天府の片隅には、人知を超えた技術の結晶、美しき女の姿をした“伊武”が存在していた!天帝家を揺るがす秘密と、伊武誕生の謎。二つの歯車が回り始め、物語は未曾有の結末へと走りだす―。驚異的な想像力で築き上げられたSF伝奇小説の新たな歴史的傑作、ここに開幕!
    著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
    乾/緑郎
    1971(昭和46)年、東京生れ。2010(平成22)年、『完全なる首長竜の日』で『このミステリーがすごい!』大賞を、『忍び外伝』で朝日時代小説大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

  • 想像力が爆発する時代SF 『機巧のイヴ』 (乾緑郎 著) | 書評 - 本の話
    https://books.bunshun.jp/articles/-/2628

    乾緑郎 『機巧のイヴ』 | 新潮社
    https://www.shinchosha.co.jp/book/120791/

    他にも「ねなしぐさ 平賀源内の殺人」「見返り検校」とか面白そうな作品が、、、

    • goya626さん
      猫丸さん
      この人の「完全なる首長竜の日」も面白かったですよ。作者の写真、私から見ると、髭のお兄ちゃんですなあ。
      猫丸さん
      この人の「完全なる首長竜の日」も面白かったですよ。作者の写真、私から見ると、髭のお兄ちゃんですなあ。
      2021/08/30
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      goya626さん
      タイトルだけは知ってます。映画になったから、、、
      goya626さん
      タイトルだけは知ってます。映画になったから、、、
      2021/08/30
  • 友人に薦められて読みました。最初は世界観についていけず、正直いまいちかなと思いながら読んでいました。しかし、エピソードを追うごとに世界観への理解が深まり、読めば読むほど面白く感じる。そんな不思議な小説でした。決して読みやすくはないですが、非常に味わい深い物語です。途中でやめなくて良かったです。

  • いやいやこれは面白い。時代もの(特に伝奇もの)はほとんど読まないので、アンテナにひっかからなかったのだが、こちらでフォローしている方のレビューにひかれて読むことに。こういう出会いは嬉しいなあ。

    SFとして特段の驚きがあるわけではない(むしろ結構首をかしげたくなるところもある)のだけど、そんなことは気にならないくらい、読ませる読ませる。これは「完全なる首長竜の日」と同様の感想で、でも、こっちがより巧みで華麗な作品世界が構築されていると思った。映像的というより、何と言うか「絵画的」な感じ。残酷であでやか。クールで艶っぽい。一歩間違うと、並のライトノベル的薄っぺらさに陥りそうな題材が、鮮やかな手つきで見事に料理されている。

    冒頭の「機巧のイヴ」の世評が高いようだが、私はこの連作全体の構成が実に巧みであることに感嘆した。後になるにつれてお話しに広がりが出てくるところがいいし、蟋蟀に始まり、また蟋蟀で閉じるところなんか本当にうまい。ジャンルSFではあまりこういうのないんだよね。

    読み出してすぐ、イヴはなぜか壇蜜の姿で脳内劇場が展開。「神代の神器」にしてはちょっと色っぽすぎるけど。

    • ま鴨さん
      たまもひさん、お久しぶりです。
      拙レビューがささやかながらお役に立てたようで、何よりです。

      イヴが壇蜜!!人によってイメージが違うも...
      たまもひさん、お久しぶりです。
      拙レビューがささやかながらお役に立てたようで、何よりです。

      イヴが壇蜜!!人によってイメージが違うもんなんですねー。
      鴨的にイヴは「恋に恋する、男を知らない生娘」のイメージで、それこそ女性のカリカチュアとも言える歌舞伎の美しい女形役者の造形を想起させます。どこからイメージの多様性が生まれるのか、興味深いです。
      2018/03/26
    • たまもひさん
      お久しぶりです。コメントありがとうございます!

      いやほんと、イヴってもっと硬質って言うか、実際のところを知らないからこその色気と言うか...
      お久しぶりです。コメントありがとうございます!

      いやほんと、イヴってもっと硬質って言うか、実際のところを知らないからこその色気と言うか、壇蜜さんのイメージとは違うんですけどねえ。なぜか頭に浮かんで離れなかったんですよ。これはやはりワタクシがそういう方面にはあまり豊穣なイメージを持たないゆえであろうかと。

      続篇の連載がスタートしているようですね。楽しみです。またいろいろ紹介してください。
      2018/03/27
  • とても面白かったです。
    時代物とSFがぴったりと合わさっている連作短編集で、最初のお話からこの世界に惹き付けられました。
    自動人形として機巧が存在している、江戸時代を思わせる世界。
    独特の要素はたくさん盛り込まれているのですが決してごちゃごちゃしてなくて、魂は、心はどこにあるのか、どこからやってくるのか…このことを色濃く考えさせられます。
    オートマタの伊武を始め、登場するキャラクターたちが皆さんとても魅力的でした。
    オートマタと言ったら「からくりサーカス」の人形たちを思ってしまいますが、こちらの自動人形も素敵。
    物語の世界は思いもかけない場所へ進んでいって、終盤は切なかった…初めましての作家さんでしたが、続編も読みたいです。

  • 時代劇アンドロイド物短編集。ただただ、最高。

  • 非常に面白かった。
    魂はどこからくるのか?本当にそうだよな
    不思議でならない。

  • これはすごい作品!あえていうなら「時代劇版ブレードランナー」とにかくめちゃめちゃ面白かった!

    五つの連作短編集。それぞれが単独でも楽しめる上に、読み通すとさらなる感慨に浸れる構成。
    最初の作品は小噺のような伝奇のような、つかみとしては見事としか言いようがないお話し。
    その後に続く二作目以降はより連作の様相が強くなっていき、読み応えも俄然増す。
    徐々に明らかになっていく「伊武」の正体。その謎解きの過程がまた見事。
    そしてその「伊武」がとても魅力的で可愛らしい。甚内、春日、そして天帝といった登場人物たちもまた実に魅力的。

    そして大森望さんのあとがきでの絶賛ぶりが熱い!
    初めて読んだ作家さんだったけど、他の作品も読んでみたくなってきた。映画化された『完全なる首長竜の日』の作者さんだったのか。

    最後に印象的だった文章を引用。それぞれ352頁より。
    「人の体を細かく腑分けしても、機巧と同様、その人の心を現すものや感情や記憶を思い起こさせるものなど、一切出てこないのだ。」
    「魂とはどこからやってくるのか。そしてどこに隠れているのか。それがずっと疑問だった。」
    「誰かに気に掛けられたり、愛されているからこそ、それに応えるために、(中略)、人のように振る舞うことができる。その振る舞いの中に命がある。」

  • 将軍が治める「天府」の城下、幕府精錬方手伝を務める釘宮久蔵の元に、一人の侍が訪れる。馴染みの遊女にそっくりの「機巧人形(オートマタ)」を作って欲しいと依頼する侍の前に現れたのは、生身の女性と区別が付かない美しい機巧人形の伊武(いゔ)。久蔵はこの伊武をベースに遊女の機巧人形を作ってみせると言い放ち、その後侍の元に遊女そのものの女が訪れる・・・

    いやーーー、これはやられました。めちゃくちゃ面白いです!何と艶やかな世界観!

    文化文政時代の江戸に酷似した「天府」を舞台に、機巧技術を巡る権謀術数が繰り広げられる短編5本による連作です。連作集のタイトルにもなっている冒頭の作品「機巧のイヴ」が、その後の大きな流れとはあまり関わらない単独の「掴み」の作品であるにも関わらず、完成度が恐ろしく高い!ミステリとしても十分なクオリティを有する傑作です。
    その後、実質的にこの社会を支配する「天府」と、女系継承により伝統的な権威を保持する「天帝家」との確執を背景にする陰謀がストーリーの通底音として立ち現れ、釘宮久蔵と伊武、その他のキャラクターも否応なく時代の流れに巻き込まれていきます。この過程の絶妙な「伝奇時代もの」感と「SF」感のバランスの取り方が、素晴らしいですね。

    正直なところ、SFとしてのツメは甘いと思います。オートマタもの・人工知能ものSFとして見ると突っ込みどころは満載ですし、そういう観点から評価できない、という意見も散見されます。
    それでも鴨がこの作品を評価したいのは、このユニークさ極まる世界観の構築ぶり。現実に存在した江戸時代後期の社会をベースに、「いやそれあり得ないでしょ」と言われる一歩手前ギリギリのレベルで独創的なアイディアを加味し、日本の伝統文化に慣れ親しんだ人にもそれなりに楽しめる良質なフィクションを立ち上げたこの技は、たぶんSF一辺倒の人材には出来ないんでしょうねー。SF大好きで、同時に歌舞伎や文楽や古典落語も大好きな鴨にとって、羨望すら覚えるセンスの良さです。

    これ、ぜひ新作歌舞伎にしてください!
    伊武は中村七之助丈、天帝は尾上菊之助丈、甚内は中村勘九郎丈がいいなー。釘宮久蔵が悩みどころだな、大物役者が良いよね・・・松吉は尾上松緑丈かな・・・春日は若手の真女形が良いかな・・・
    なんて楽しみ方も出来る、知られざる傑作ですよ!

    • たまもひさん
      こんにちは。
      これは面白そう。「完全なる首長竜の日」の著者ですよね。「完全なる~」には、ここでま鴨さんが書かれていることと同じような感想を...
      こんにちは。
      これは面白そう。「完全なる首長竜の日」の著者ですよね。「完全なる~」には、ここでま鴨さんが書かれていることと同じような感想を持ちました。SF的には既視感があってもの足りないような気もするけど、すごく達者で、鮮やかな世界観があると思いました。
      表紙とかタイトルの印象でスルーしてたけど、読んでみようかなあ。
      2017/12/24
    • ま鴨さん
      たまもひさん、コメントありがとうございますヽ(^o^)ノ

      そう、たまもひさんが仰る通り「達者」!その一言に尽きる作風だと思いました。
      ...
      たまもひさん、コメントありがとうございますヽ(^o^)ノ

      そう、たまもひさんが仰る通り「達者」!その一言に尽きる作風だと思いました。
      この作品は、単行本が出た時から、明らかにヴィリエ・ド・リラダンを意識したタイトルが気になっていて、そのうち読もうと思ってたんですが、予想以上の大当たりでした。続編もあるようで、今から楽しみです。
      2017/12/24
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著者プロフィール

1971年東京生まれ。小説家・劇作家。2010年『完全なる首長竜の日』(宝島社)で第9回「このミステリーがすごい!大賞」を、『忍び外伝』(朝日新聞出版)で第2回朝日時代小説大賞を受賞しデビュー。2013年『忍び秘伝』(文庫化タイトル『塞ノ巫女』)で第15回大藪春彦賞候補。近年は作品の英訳版が発売され、中国のSF雑誌にも掲載されるなど、海外での評価も高い。『機巧のイヴ』シリーズ(新潮社)、『見返り検校』(新潮社)、『僕たちのアラル』(KADOKAWA)、『ツキノネ』(祥伝社)、『ねなしぐさ 平賀源内の殺人』(宝島社)など、著書多数。

「2020年 『ドライドックNo.8 乾船渠八號』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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