鼓動―警察小説競作 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (469ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101208459

感想・レビュー・書評

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  • 新潮社・編『鼓動 警察小説競作』新潮文庫。

    たまに古本屋で購入するなら、古くて少し珍しいアンソロジーが良い。様々な作家の傑作短編を僅かな散財だけで楽しめる。本作は、大沢在昌、今野敏、白川道、永瀬隼介、乃南アサという5人の作家による5編収録の警察小説アンソロジーである。

    乃南アサ以外の4人の作家の短編が甲乙付け難いくらい面白かった。

    大沢在昌『雷鳴』。珍しい『新宿鮫』シリーズの短編。雷鳴轟く雨の晩に酒場を訪れた一人のやくざ者。ウイスキーのお湯割りグラスを傾けるやくざ者の後に酒場の扉を開けて入って来たのは……短編ながらしっかりしたプロットで最後の最後まで楽しませてくれる、これぞハードボイルドといった逸品。

    今野敏『刑事調査官』。定年間近の谷平史郎刑事調査官が女性キャリア心理分析官の島崎優子と共に2つの擬装殺人事件に挑む。難事件の捜査を通じて後輩を育てようとする谷平史郎のべらんめい口調が心地よく、島崎優子の鋭いプロファイルによる事件解決の課程も面白い。安心して読める秀作。

    白川道『誰がために』。涙無しには読めない、愛娘を凌辱された挙げ句に惨殺された過去を持つ2人の父親の苦悩と葛藤を描く傑作。犯人の少年たちに極刑を願うも、そこに立ちはだかるのは少年法の壁……元刑事の朝河信三が法律事務所を訪れ、弁護士の矢口に世間を賑わせている64歳の老人によるやくざ者殺害事件を教唆したのは自分であると告白する……事件の背後にあるのは……最後に感動の……

    永瀬隼介『ロシアン・トラップ』。ハードなピカレスク警察小説。永瀬隼介の作品は殆ど読んでいたが、その中でも群を抜いて面白かった。警察官の妻として官舎に暮らすうちに強い閉塞感を味わっていた石田勢津子は偶然再会した高校時代の恋人のトオルと不倫に走る。中古車販売を営むトオルには裏の商売があり、勢津子はロシアンマフィアのイリヤ・ワシリーに引き合わされる。警察組織の中に巣くう悪と転落していく淫乱女の勢津子……

    乃南アサ『とどろきセブン』。最後の最後に軽いノリの警察小説が……つまらん。しかも、一番ページ数を割きやがって。

    本体価格629円(古本110円)
    ★★★★★

  • 5作品収録のアンソロジー。どれも面白かった。「雷鳴」はかなり短いけどラストに意外な真実がわかって「あっ」と思うし「誰がために
    」は悲しいけど優しさが溢れていて良い。交番勤務の若手巡査が主人公のほのぼの感が癒される「とどろきセブン」も良い。でも一番心に残ったのは「ロシアン・トラップ」。愚かな女が巻き込まれた犯罪に不正をする警察官、ロシアマフィアの男も登場し逃亡し捕まりかけ。。のハードボイルドだけど純粋にロシアマフィアの男が男気があってカッコ良かった。

  • さすがおもしろかった

  • 今年の正月に新年初の一冊として読んだが、「誰がために」は正月早々読むには重すぎる内容だった…

  • 読了。

  • 久しぶりの警察小説は、やっぱり落ち着くわぁ。
    アンソロジー本。未読な作家さんが2名も入っているので、楽しみ。

    【読間……一篇ごとレビュー】

    ●雷鳴●
    …安定の“鮫”。キャラが確立してる分、短くてもしっかり味わえた。反面、“鮫”を知らない読者にはあまり意味が分からなかったのでは??

    ●刑事調査官●
    …今野敏は、安心して読めるね。ただ、“心理捜査官”の登場は必要あったのか??
    …筆者の別シリーズのスピンオフ的な位置付けなのだとしたら納得もできそうだけど。。

    ●誰がために●
    …白川道の初読み。少年犯罪と少年法、遺族の憤り……題材としてはよくある内容だが、そこに込められた“想い”はひしひしと感じられた。
    …重く暗い物語だが、読みやすい文体には好印象。機会があれば、長篇も読んでみよう。

    2015.10.14.書。

    ●ロシアン・トラップ●
    …永瀬隼介も、初読み。
    女性目線の、ハードボイルド(笑)。

    硬質な文体は、嫌いではない。長篇も、手頃そうなのを見かけたら読んでみよう。

    ※しかし、イリヤも撃たれたか。。。明るい未来なはずは無くとも、とりあえずハッピーエンド(?)にしてあげても良かろうに。。。


    ●とどろきセブン●
    …連作短編集「駆け込み交番」にて既読の一篇。その一冊の中で一番面白かったのが「とどろきセブン」だった記憶があるが、詳細までは失念。

    よほど気に入った1~2冊を除くと、普段は一度読んだ小説を読み返すことはないのだけど……“面白かったという記憶”を頼りに再読開始♪

    読間。2015.10.15.書。

    読了。
    ↑の記述に、一部訂正。『駆け込み交番』内で一番好きだったのは、本著ではなく『人生の放課後』だった(苦笑)。

    もちろん本著「とどろきセブン」も面白かったよ♪

    「人生の放課後」……謎に元気な老人グループ“とどろきセブン”の、裏の顔(真の顔?)が判明する一篇で……本書を読んで気に入ったなら、ぜひともそちらも読んでほしいと自信をもって勧められる。



    一冊トータルでは……
    ★3つ、7ポイント。
    2015.10.17.了。古。

  • 警察官はすごい

  • 好きな警察ものばかりのアンソロジー。
    大沢在昌さんは初読だったが、
    是非「新宿鮫」を読んでみようと思った。

  • 「雷鳴」いいねぇ!これはいい!

  • 警察ものの短篇集
    あんまり好きじゃない

  • 【雷鳴 大沢在昌】
    最後の文章に釘付けでした。まさかそんなラストとは全く考えていませんでした!さすが!

    【刑事調査官 今野敏】
    警察小説って組織、とくに上とは対立する事が多い中、この作品の人物は温かみを持った、血の通った刑事だった。
    今野敏、これから数々の作品を読ませていただきます。お付き合いよろしくお願いします。

    【ロシアン・トラップ 永瀬隼介】
    少し…描写が目に余る所もあるが警察の黒い一面が想像し易く、実際にあるように錯覚させられました。

    【とどろきセブン 乃南アサ】
    人柄を買われ老婆に可愛がられる新米警察官。
    クラブの仲間が齎した情報の真偽のほどは?

  • 大沢先生の「雷鳴」はお見事!の一言に尽きる。
    すっごいな~あの短さであの満足度。

    乃南先生の「とどろきセブン」はタイトルからして秀逸。
    で、内容が「あれ?伏線ばらまきっぱなし?」と思っていたら、ちゃんと続編があるのですね。
    設定がナイスではありませんか。超現代っ子新米警察官と、ちょっと謎のお年寄り七人組。面白い!!

    永瀬先生の「ロシアン・トラップ」も短編(中編?)にしては素材てんこ盛り。大したものです。
    ほか二編も味わい深い。

  • (収録作品)雷鳴(大沢在昌)/刑事調査官(今野敏)/誰がために(白川道)/ロシアン・トラップ(永瀬隼介)/とどろきセブン(乃南アサ)

  • 『新宿鮫』読んだことがなかったけど、それの番外編みたいな掌編『雷鳴』はなかなかよかった。

  • 雷鳴→元を知らなかったけどあのメチャ短い短編で詰まった内容、最後興奮してしまいました!

    刑事調査官→2番って感じでよかったです。淡々と若手達を育てるおっちゃん。

    誰がために→おも〜〜い。世の中が考えないようにしていることを考えされられました。被害者の人権ってなんだろう。

    ロシアン・トラップ→少しエロティックでロシアンマフィアが格好良かったです。惚れた。

    とどろきセブン→一番軽い内容でしたがやはり〆。スッキリと本を閉じれました。年寄りは年期が入っていますね。バカにしちゃいけない。


    わたしは雷鳴と誰がためにとロシアン・トラップが好みでした。

    ただどれもガッツリ濃厚警察モノを期待していた人はガッカリな感じだったでしょうね。全体的にあっさりとした仕上がりでしたから。

    「決断」の方に☆4つで、内容トントンなのでこちらも☆4つ。

  • 警察小説の新規開拓に、と思って手に取ってみた。大沢在昌さんの『雷鳴』はラストに驚かされた。あんなにも少ないページ数で、本当に見事としか言いようがない作品。白川道さんの『誰がために』はものすごく悲しい話で、そして胸にくるものがあった。乃南アサさんの『とどろきセブン』は若き巡査の奮闘っぷりが読んでいて清々しかった。

  • 警察小説というよりも、かなり叙情的な色合いが強かった。しかしどれも胸にくるお話ばかり。
    特に『誰がために』がよかったです(*´ー`)

  • 「決断」同様に警察小説のアンソロジーである。白川道の「誰がために」は胸が熱くなった。大沢在昌の「雷鳴」は短編であるが秀逸。「新宿鮫」シリーズの鮫島が登場するのにはビックリ。乃南アサの「とどろきセブン」は、彼女の「ボクの町」という作品に登場する交番勤務の聖大が登場する。こういった作家ごとのそれぞれのシリーズものにリンクしているのが面白い。

  • 警察小説てんこ盛り

  • 読んだ日 2007.1 (借:熊本市東部図書館)(9) 

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