広重ぶるう (新潮文庫)

  • 新潮社
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  • 本 ・本 (512ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101209555

作品紹介・あらすじ

描きたいんだ、江戸の空を、深くて艶のあるこの「藍色」で――。武家に生まれた歌川広重は絵師を志すが、人気を博していたのは葛飾北斎や歌川国貞。広重の美人画や役者絵は酷評され、鳴かず飛ばず。切歯扼腕するなかで、広重が出会ったのは、舶来の顔料「ベロ藍」だった。遅咲きの絵師が日本を代表する「名所の広重」になるまでの、意地と涙の人生を鮮やかに描く傑作。新田次郎文学賞受賞。

感想・レビュー・書評

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  • 浮世絵師・歌川広重の一代記。
    フォローしている方のレビューを見て「読みたい」に入れていた。

    私が子どもの頃に初めて浮世絵を認識したのは、当時流行っていた切手収集のカタログの中だった。
    国際文通週間に発行された「蒲原」や「箱根」、「日本橋」や「三条大橋」などの「東海道五十三次」の絵柄は記憶も鮮やか。「月に雁」は「見返り美人」と並んで手が届かないものの双璧だった。
    いずれも安藤広重(当時はそう呼ばれていた)の作品で、以来、葛飾北斎とともに浮世絵の巨頭として認識する。

    そんな広重だが、この本では、口は悪いが基本的には武家の出らしく真面目な人、という感じで描かれる。
    その人柄ゆえ、要らぬ苦労もたくさんあって、そこはご苦労様だが、その割には最初から最後まであまり成熟が見られず、時折出てくる北斎のいくつになっても滾るエネルギーと生臭さに比べるとやや魅力に薄い印象。
    景色を見ればスラスラと筆が走り、創作の呻吟があまり描かれないのもやや不満。
    終盤は義弟の借金のかたに枕絵を描くはめになったり(ここで描くのに難儀する場面が描かれるのが皮肉)、安政の大地震が起こったりで物語に動きが出たが、そこまではやや平板な展開。

    版元や摺師とのやり取りや自分が描きたい絵のために意に沿わない仕事もこなす絵師の仕事振りに加え、時代の世情や背景が細かに描かれたところには、興味深く読んだ。
    ネットで絵を確かめながら読み進んだが、「名所江戸百景」をはじめとして知らなかった絵も多くあり、「日本橋」の変わり図のことや「木曾海道」「双筆五十三次」の合作の経緯などが知れたのは良かった。

  • 面白かった!久々にシンプルに面白かった!

    歌川広重、東海道五拾三次。
    随分前に読んだ(学んだじゃないの?)教科書の記憶しかなかったので、Googleさんと一緒に絵を見ながら読んだ。

    広重ブルーを知らなかった無知な私だけれど、そのブルーが生まれる過程を知ると、なるほど〜と絵を見て妙に納得。これは是非本物を見たくなる。
    それと広重の江戸っ子気質、口の悪さ。それでも滲み出る性格の優しさ、真面目さ。それが絵に表れている。ああ、とてもいいわ〜。

    北斎も出てきて、北斎のキャラクターにもすごく興味が出た。この方も一筋縄ではいかない感じ。いや、いいわ〜(笑)次は北斎の本も読んでみよう。

    欲を言えば、広重と北斎の会話をもっと聞きたかったかなあ。

    • へぶたんさん
      ベルリンで作られたから、ベルリンの青…ベロリンの藍…もう言いにくい!ベロ藍で!ってとこでしょうか笑
      なんか江戸っ子ーって感じですね(^-^;
      ベルリンで作られたから、ベルリンの青…ベロリンの藍…もう言いにくい!ベロ藍で!ってとこでしょうか笑
      なんか江戸っ子ーって感じですね(^-^;
      2024/05/11
    • なおなおさん
      へぶたんさん、チャンス到来!
      6月23日(日)6:10〜NHKで3週連続でドラマ再放送します。いち早くへぶたんさんにお知らせしたくて(^^)
      へぶたんさん、チャンス到来!
      6月23日(日)6:10〜NHKで3週連続でドラマ再放送します。いち早くへぶたんさんにお知らせしたくて(^^)
      2024/06/18
    • へぶたんさん
      なおなおさん♪
      嬉しい情報ありがとうございます!
      今週だ!再放送だ!わーい♪
      どんな感じなのか楽しみ〜(((o(*゚▽゚*)o)))♡

      あ...
      なおなおさん♪
      嬉しい情報ありがとうございます!
      今週だ!再放送だ!わーい♪
      どんな感じなのか楽しみ〜(((o(*゚▽゚*)o)))♡

      あ、朝早いから録画予約しとかなきゃ♪
      2024/06/18
  • 阿部サダヲ!

    特集ドラマ『広重ぶるう』放送日決定のお知らせ - NHK
    https://www.nhk.jp/g/blog/q14m-3h425/?bnk20240215

    【書評】『広重ぶるう』 藍に魅せられた浮世絵師 - 産経ニュース(2022/7/3)
    https://www.sankei.com/article/20220703-B5C3CGZSB5NUXJW5VAN2FWKD6E/

    「広重ぶるう」書評 江戸を愛し、ひたむきに生きる|好書好日(2022.07.23)
    https://book.asahi.com/article/14676870

    梶よう子 『広重ぶるう』 | 新潮社
    https://www.shinchosha.co.jp/book/120955/
    (単行本)
    https://www.shinchosha.co.jp/book/336854/

  • 絵師として芽が出なかった歌川広重が
    「べろ藍」と出会い、江戸百景を描くまでを駆け抜けるように描いた作品
    本人の苦悩や想いがべらんめえ口調で語られながら進んでいく中で、たくさんの人が手をさしのべてくれることに
    広重の人柄や、描く風景画がどれだけ凄かったのかが伝わってくるようだった
    物語にふさわしいラストを向かえたときには
    青い空を見上げてこの空の色を広重は描きたかったのかもと思いを馳せた

  • 「広重ぶるう」
    NHKで阿部サダヲさん主演ドラマ(同名)を見てとても良かったので原作読み。
    さらに良かった!

    広重といえば風景画。
    広重の出身や絵の才能が認められるまで、名が売れてから、を知ることができた。

    同心(下級武士)で火消しだった広重は、イメージにあるとおりの江戸っ子。威勢がよくて宵越しの金は持たないような人。連れ添いの妻は夫に逆らうことなく金の工面にも文句を言わずに夫の絵を陰で支えている。

    広重は江戸の町が大好きで、ふらりと出かけてはなにげない風景を描いていた。
    また火消しの仕事のためか、空や風をよみ火の回り方を先回りした。鳥の目、俯瞰の目を持っていた。
    これらが身を結んだのかおもしろい構図を生み出し、旅路の風景や江戸の町を版画にして当時の庶民に喜ばれた。


    広重といえば風景画だが、ほかの歌川一門は美人画だったりで画風がまるで違う。
    当時は美人画や錦絵がもてはやされ、広重の風景画はまったく売れなかった。
    兄弟子の国貞(美人画)、国芳(錦絵)らとの人気の格差もいまの名声のある広重しか知らない私には驚きだった。

    歌川一門は名前が似てて混乱するので、ネット情報で頭を整理。
    http://artistian.net/utagawaha/#i-9

    好き勝手やっているが、妻の加代への愛がふかく『大好き』があふれていた。加代も目立ちはしないが内女の功のおかげで広重の名が今に残っているのはまちがいない。
    弟子の昌吉を我が子のようにかわいがっていたのも印象に残る。この二人には涙なしにはいられない……。
    師匠の歌川豊広が広重に手ほどきした回想も思いが募る。
    短気な広重だが、妻や弟子への愛、師匠への思いなどから人情深さのある人で、だからこそあの名画を次々に描けたのだろう。

    江戸の浮世絵を語るのに北斎をとおらずにいられないが、ここでも要所要所で現れる。まるで妖怪?!
    圧倒的な絵のうまさ、度肝をぬく構図、存在感、広重が刺激をうけたのはまちがいない。
    ベロ藍の色もさきに北斎が使っていたようだが、この藍を効果的に魅せる『広重ぶるう』がうまれた感動!!

    我々は絵師に注目してしまうが、ここまで絵が売れるには彫り師刷り師、そして版元の力も大きく影響する。
    版元とのやりとりは金のにおいがプンプン、しかしそれを超える作品や絵師への推し愛もあった。


    感想を書いていて改めて思った。
    この作品はアート小説であるが、同時にふかく人間愛を彫り込んである。

    ドラマでは小説の前半のみだったが、江戸の晩年の広重まで書き切ってある。
    江戸の話になると必ず出てくる「火事と喧嘩は江戸の花」。
    こちらでも何回も火事に見舞われる……(しかも火消しの広重には無縁ではいられない)
    すべてを失う失望感と、そこからの再生を、江戸っ子はくり返す。

    全編を堪能できて良かった。

  • ヒロシゲブルー。海外では知られてるのに日本人の自分はノーマークかね、おかたじけだよ 江戸時代を読むと1番心踊るし空想する。北斎の生き様は忠実に出ててあーやっぱそうかと頷いたけど、重さんはどうなんだろうか、火消しから忠実になぞっているが豪胆さと気の小ささとがしっくり来ないかなあー 加代や豊国を通して引き立ててる気がした 重さん掴みきれてないって事 朝風呂の重さん。それより弟子の陳平がお辰を嫁にして二代目で さらに虎吉がお辰と再婚するとかめちゃくちゃ気になったので。

  • 新版画の美術展へ行ったことがきっかけで版画をもっと知りたいと思い購入。「広重ぶるう」という題名も気に入った。
    絵師と版元の関係や絵師同士の交流も描かれており、江戸時代後期の町の風土や空気も感じ取ることが出来、より版画を理解することが出来た。物語りはイメージさせてくれるのが良い。
    歌川広重が携わった作品を是非見てみたい。

  • 久しぶりに小説が読めた。歌川広重のぶるう、ベロ藍、プルシアンブルー。自分は何かを面白がる眼を持っているだろうか?多分あるんだと思う。私は絵ではなく写真を撮る。創作意欲が湧いてくる、そして好きなことをやりたいと思わせてくれる面白い作品だった。

  • 広重が好きなので、思わず手に取ったけど、一気読み。
    名所は広重。なるほどこんな風に出来上がったのか。風景のそこかしこに登場するおじさんは、いい味だしてるから、人物画がダメとは、思えないけど。風景を描くための人なのだとしたら納得。
    また、広重の絵の見方が変わってくるかも。
    ドラマも楽しみ

  • 描きたいんだ、江戸の空を、深くて艶やかなこの「藍色」で――。
    武家に生まれた歌川広重は絵師を志すが、人気を博していたのは葛飾北斎や歌川国貞だった。一方、広重の美人画や役者絵は、色気がない、似ていないと酷評ばかり。絵は売れず、金もなく、鳴かず飛ばずの貧乏暮らし。それでも、絵を描くしかないと切歯扼腕するなかで、広重が出会ったのは、舶来の高価な顔料「ベロ藍」だった……。『東海道五拾三次』や『名所江戸百景』を描き、ゴッホを魅了した〈日本の広重〉になるまでの、意地と涙の人生を描く傑作。新田次郎文学賞受賞作。

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著者プロフィール

東京生まれ。フリーランスライターの傍ら小説執筆を開始、2005年「い草の花」で九州さが大衆文学賞を受賞。08年には『一朝の夢』で松本清張賞を受賞し、単行本デビューする。以後、時代小説の旗手として多くの読者の支持を得る。15年刊行の『ヨイ豊』で直木賞候補となり注目を集める。近著に『葵の月』『五弁の秋花』『北斎まんだら』など。

「2023年 『三年長屋』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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