薬屋のタバサ (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 188
レビュー : 25
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101209814

作品紹介・あらすじ

平穏な時間。それ以外に欲しいものなんて何もない――。山崎由実はすべてを捨てて家を飛び出し、知らない町の古びた薬屋に辿り着いた。店主の平山タバサは、由実を薬局の手伝いと家事全般の担い手として住み込みで雇ってくれた。見ず知らずのわたしを、なぜ……。謎めいたタバサの本心はわからぬままだが、由実は次第に新しい生活に慣れてゆく。誰しもがもつ孤独をたおやかに包み込む長編小説。

感想・レビュー・書評

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  • タバサと聞いて即座に「奥様は魔女」と気づく年代であるがゆえに、タバサ=女の子、と思い込みで読み始めてしまって失敗。おっさんか。作者にその意図があったかどうかはわからないけど(数ページ性別は明かされない)(でも全裸シーン序盤であるのに性別わかる描写をしないのはやはり意図的なのか)脳内修正にとても苦労しました。

    客観的に見てタバサというキャラクターはそれなりに魅力的なはずだし(薬局だから白衣、誰にでも敬語、無機質で生臭さがない、常に温厚で声を荒げたりしない、家族を失い天涯孤独、わけありっぽい)、なにやらワケアリでやはりけして若くもないらしい主人公女性がそんなタバサに拾われ、薬局で働くうちに彼に惹かれていく・・・というベタな展開も想定内ながら自然な流れのはずなのに、なぜかしら、全然タバサを好きになれない。主人公にも共感できない。感情をあらわにしないタバサが突然バスルームに主人公を引っ張り込むところも違和感しかなかったし、大変露骨で恐縮ですが、後半二人がセックスする場面もとても不愉快で、気持ち悪い、という感情のほうが自分の中で勝ってしまった。無味無臭の無機質な世界にいたのに、急に生臭い他人の体臭を嗅がされたような気分とでもいうか。

    主人公が迷い込んだ、タバサの住む町はおそらく生者と死者の境界のような場所で、死んでからあの世へ行くまでの溜まり場のような場所なのか、あるいは死者が生まれ変わりを待つ場所なのか、それでいてそこに居つく人も出産する人もいるからよくわからないけど、まあそういう世界観自体はとても好きなのだけど。

    東直子の作品は最初の「水銀灯が消えるまで」と「とりつくしま」までは好きだったけど、どうもそれ以降は主人公の幼稚さに苛立って好きになれないことが多く、今回も、実は子供を二人捨ててきた母親である主人公が、中途半端な好奇心を発揮したり、少女じみた言動をすることに常に潜在的にイライラしながら読んでいたのだと思う。自己憐憫の強いタイプには気持ちが寄り添えない。結果、世界観や設定は好きだけどキャラクターを好きになれない小説は、作品としても好きになれない、とわかりました。

  • 表紙が可愛かったので完全なるジャケ買い。
    そして失敗。
    不思議な話は好きなのに全く引き込まれなかった。
    残念。

  • こんなに薄い1冊なのに読み終わるまでに長い時を要した。それだけ読みたくない気持ちが勝っていた。

    摩訶不思議系というか、よく分からない空気感の小説はたまにあるが、それにしてもよく分からなさすぎ。
    あまりに常識の範囲を逸脱していて、共感できる箇所が一つもなかった。

    私は、読んだ時にどれだけその世界に入れるか、人に共感できるか、というのを求めて小説を読むのだが、はたしてこの物語に人を受け入れる余地はあったのだろうか…。
    高評価を下す人もいるようなので、選択したことが間違いだったのだと思う。

    最近の江國香織さんの描く物語に雰囲気が似てるようにも感じた。
    この人の本は昔は好きだったが今は読んでも面白くないことを踏まえると、単に歳をとったということかもしれない。

  • 夢と現実の間を行き来するような、不思議なトーンの小説。非現実的である一方、ファンタジーというには生々しく、それで結局何なの、というフラストレーションもないではないけど、独特の読後感が味わいどころか。

  • 始終、夢のなかにいるような、
    夢か現か定かでないような。

  • 生きている現実と0.5mmずれた世界をみているような空気感。
    産まれでるいのちと、死にゆく魂がふわふわと漂っていく。

    登場人物の一人一人が、幻なのか、実体があるのかわからなくなる。
    さらさらとした不穏な描写が文学の力を感じさせてくれた。

  • 「薬剤師の、正確な指」という表現がものすごく好きだった。なんだかどきどきした。

  • 表紙が綺麗なのでずっと気にかかっていた。
    思いのほかどんよりと、物語のなかに出てくる池のようなお話だった。
    解説のひとが書いていたけど、うん、たしかに不気味。
    でもなんというか夢中夢のような、、、
    湿気があるというのとなにか違う、独特の不気味さだな。
    読後のスッキリ感がなくてずっと心に残って、あれって、、、ってなるやつ。
    そういうのだいすき。
    でもたぶん、今の自分の心持ちがあまりそういうの欲してなくて、むしろ受け止めたくなくて、だからちょっと深いところまで沈まないで読んでしまったかも。

  • 絵画を鑑賞するような一冊。

    知らない町にたゆたうようにたどり着いた山崎由実。
    住み込みで働くことになった薬屋は、
    「タバサ」という名前の男性が営んでいます。

    この町に暮らす人々も、
    そしてタバサの調合する薬も謎めいています。


    著者の東先生は、短歌結社「かばん」に所属する歌人。
    そのため言葉への思いやりが感じられます。
    書かれる文章は絵画的。

    印象派の展覧会で、絵画を一枚ずつ鑑賞しているような
    気分で読める本です。

  • 2017年11月読了。

    この本をはじめに手にとったのは春と初夏のあいだで、小雨続きながら空が明るかったのを憶えている。たおやかでするするとしているのに、うっすらと澱のようなものが残る物語..。
    「過去のとうめいな鱗は、どこかで、何かに触れる」----その時は冒頭のあたりのみを読み、予感めいた言葉をしばらく胸に留めるままにしていたのだけど、
    あることをきっかけにはっとして、再び新しいこの文庫版をぐっと手にしました。

    薬屋の主人タバサ、亡くなった母ルリさん、町のみんなの不安を吸い込む老女マサヤ、そして主人公の山崎由実。
    みなどこか正体不明なところがあり、お話も、誰かが見てる輪郭の溶けた夢の中みたいな心地と、現実ぽさが混じりあう。人がもっている重さ、軽さを受けとめていきながら、連綿と何かが続いていくのを感じられ、そして時々こわいくらいに艷やかで生々しい。歌人である東さんのこの幽幻な筆致..自分の日常にまで忍びよってくるような、「書くこと」の凄みを感じます。

    ところで私、未だに自分の新姓がニックネームのようというか、姓のない名前だけの世界にいるような感じがしていて。そういう、自分の中のどこか「割り切れなさ」みたいなことのいくつかが、この物語と奇妙に交流しあっているようなところもあるのかも。性と姓、生における、様々なことを思いました。

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著者プロフィール

1963年広島生まれ。歌人、小説家。絵本や童話、イラストレーションも手がける。「草かんむりの訪問者」で第7回歌壇賞、『いとの森の家』で第31回坪田譲治文学賞を受賞。歌集に『十階』、小説に『水銀灯が消えるまで』『とりつくしま』『さようなら窓』『薬屋のタバサ』『晴れ女の耳』、エッセイ集に『短歌の不思議』など。穂村弘との共著に『回転ドアは、順番に』がある。

「2019年 『しびれる短歌』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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