- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101209814
作品紹介・あらすじ
平穏な時間。それ以外に欲しいものなんて何もない――。山崎由実はすべてを捨てて家を飛び出し、知らない町の古びた薬屋に辿り着いた。店主の平山タバサは、由実を薬局の手伝いと家事全般の担い手として住み込みで雇ってくれた。見ず知らずのわたしを、なぜ……。謎めいたタバサの本心はわからぬままだが、由実は次第に新しい生活に慣れてゆく。誰しもがもつ孤独をたおやかに包み込む長編小説。
感想・レビュー・書評
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行ってはいけないと自分のどこかが止めている。
ただ、心を少し離れるともっと深いところにあるふと顔を出すどろどろとした澱が体から出して欲しいと叫んで、行ってしまう。
どうにもならないことがこの世にはあるのだと言われた気がする。
幻想的でいて不穏で引きずられそうなのに、逆らいたくない。
怪しい小説に出会いたい方は是非。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
表紙が可愛かったので完全なるジャケ買い。
そして失敗。
不思議な話は好きなのに全く引き込まれなかった。
残念。 -
こんなに薄い1冊なのに読み終わるまでに長い時を要した。それだけ読みたくない気持ちが勝っていた。
摩訶不思議系というか、よく分からない空気感の小説はたまにあるが、それにしてもよく分からなさすぎ。
あまりに常識の範囲を逸脱していて、共感できる箇所が一つもなかった。
私は、読んだ時にどれだけその世界に入れるか、人に共感できるか、というのを求めて小説を読むのだが、はたしてこの物語に人を受け入れる余地はあったのだろうか…。
高評価を下す人もいるようなので、選択したことが間違いだったのだと思う。
最近の江國香織さんの描く物語に雰囲気が似てるようにも感じた。
この人の本は昔は好きだったが今は読んでも面白くないことを踏まえると、単に歳をとったということかもしれない。 -
どこに落ち着くのか全く見通しができなくて、読了するまで不安でしようがなかった。そしてタバサが何を考えているのかも不安で仕方ない。ただ人は結局は一人で越し行かなければならないということなのだろうか?リカーシブルの必要性も薄かったかなぁ。
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最初から最後まで、状況がよくわからなかった。
現実なのか夢なのか。
彼女が接する人たちは存在するのか幻なのか。
タバサは医療従事者として正しいのか悪なのか。
何とも言えない読後感。 -
この本の中には確かに街があり、その世を隔てた小さな街の秩序に代々従いながら生き続ける人たちがいます。薬屋のタバサはその街で、街の人達や店を訪れる人達の生から死までを預かりますー
そして代々引き継がれてゆく薬屋の仕事ー
短命な薬屋の嫁達ー
タバサの子を産み終えた「わたし」もまた、、、
心地よい読後感ではないものの、不思議な世界への読書体験でした。
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一種の幻想小説とも言える、御伽噺めいたファンタジー小説。
見知らぬ平穏な町に、いつのまにか暮らしている主人公。
古びた小さな薬屋の、風変わりな店主に拾われ、住み込みで働くことに。
主軸の二人の素性や来歴について、情報は小出しにされるも、詳しい経緯は明かされず。
人物像も淡白にぼかしたまま、個性も出さないように書かれている。
薬局の客たちとのやりとりを通じて、町の情景もぼんやりと描かれるものの、人々の言動はどこまでも謎めいており、それらは明確に収束されることなく、静かに世界が閉じていく。
終始、現実との接点が曖昧で、若干のホラー風味も混じった、儚げな雰囲気に幻惑される。 -
子どもを二人生んだ山崎由美という女性の視点から描かれる物語。
由美は二人子どもを産み、一人は亡くし、もう一人を捨てて、この町にやってきた。
何かに耐えられなくなったからだが、それが何かは読者にはわからない。
店と家事の仕事をする代わりに、彼女は平山タバサを店主とする薬局に身を寄せる。
薬屋として代々町の人々の生と死の現場尾立ち会ってきたという平山家。
いったい彼は何者なのか。
彼の処方する薬はどういうものなのか。
そして、この町は、異界なのか。
異界、とすれば、これは「高野聖」の男女反転ヴァージョンか?
あるいは「砂の女」の?
ただ、母性の問題が底に感じられるところは、そういった先行作品とは違っている。
平山家に嫁いだ女性たちは、みないつの間にか、どこかからやってきた人ばかり。
おまけに短命だ。
由美もまたタバサの息子を産み、こういう平山家の女に列するのだが…。
少年になった息子が彼女につきつける「約束」とは何か。
ずっと平山家にいたという老女のマサヤさんも謎の存在のままだ。
物語の序盤に、由美にかけた「ころんでしまうよ」という言葉は、果たして助言か、呪いか。
何の構えもなく読んで、横っ面をひっぱたかれた。
ホラーといってくれれば、そう思って読んだのに。 -
お願いだから男女の仲にならないでくれと願っていたが予感が的中してしまった。物語の雰囲気は好きな部類だが恋愛が絡むと心に不快なものが残る。
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夢と現実の間を行き来するような、不思議なトーンの小説。非現実的である一方、ファンタジーというには生々しく、それで結局何なの、というフラストレーションもないではないけど、独特の読後感が味わいどころか。
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始終、夢のなかにいるような、
夢か現か定かでないような。 -
生きている現実と0.5mmずれた世界をみているような空気感。
産まれでるいのちと、死にゆく魂がふわふわと漂っていく。
登場人物の一人一人が、幻なのか、実体があるのかわからなくなる。
さらさらとした不穏な描写が文学の力を感じさせてくれた。 -
表紙が綺麗なのでずっと気にかかっていた。
思いのほかどんよりと、物語のなかに出てくる池のようなお話だった。
解説のひとが書いていたけど、うん、たしかに不気味。
でもなんというか夢中夢のような、、、
湿気があるというのとなにか違う、独特の不気味さだな。
読後のスッキリ感がなくてずっと心に残って、あれって、、、ってなるやつ。
そういうのだいすき。
でもたぶん、今の自分の心持ちがあまりそういうの欲してなくて、むしろ受け止めたくなくて、だからちょっと深いところまで沈まないで読んでしまったかも。 -
何も難しいことはない。描かれる人も、建物も、食べ物も、なにもかも、これまでに見てきたものの中からイメージできる。言葉だっていたって普通だし、わかる。なのに何故だろう。始終、「不思議」で「わからない」。淡々と進み、捉えどころがなく、続きが気になって、あっという間に読み進む。東直子さんの作品は初めて読んだけれど、これまでに読んだことがない、予想できない世界だった。小説はもし実写映画化するなら…と考えながら読み進める。タバサは長谷川博己さん、由実さんは伊藤歩さん、かな。
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夢の中を漂うような、さ迷うような気分にさせられるお話でした。
まず、物語の舞台となる町がどこなのかわかりません。この世なのか、あの世なのか、はたまたこの世ではないどこか別の場所なのか。そこで暮らす人々も、現世とは異なるゆっくりと流れる時間の中で、半分眠っているように生きています。主人公の女性にしても、どこからどのようにしてこの町にたどり着いたのか、まったく有耶無耶で、本人自身にもわからない有様です。何かつらい過去があったようなのですが、それが何だったのかさえわかりません。
なんだか恐ろしく、淀んだ雰囲気のお話なのですが、読み進むうちにどんどん惹きこまれ、まるで生と死、この世と異世界、時間と空間の狭間を揺蕩うような気分になってしまいます。だからといって不快ではなく、できればずっとこの物語の世界に浸っていたいと思うのは、歌人でもある作者の言葉の選び方が秀逸だからでしょうネッ。
これは人間の生に関する、根深い部分を描いた物語だと思います。
べそかきアルルカンの詩的日常
http://blog.goo.ne.jp/b-arlequin/
べそかきアルルカンの“スケッチブックを小脇に抱え”
http://blog.goo.ne.jp/besokaki-a
べそかきアルルカンの“銀幕の向こうがわ”
http://booklog.jp/users/besokaki-arlequin2 -
捉えどころのない感じでふわふわと読み進めていたが、最後一気に、え?えっ! ってなる。
あれは一体なんだったんだろうと、ある意味後味が残る作品。 -
何だか、病んでいる人の心の世界に入り込んだ気分。
ずっと平らな印象で、何というか、全ての登場人物に感情がない感じ?
タバサと山崎さんには愛を全く感じないし、妊娠した喜びや困惑も、淡々としすぎている。
とても現実味のない話でした。
パラレルワールドなのかも。 -
読み終わりたくなかったのに。
読み終わったら、迷子になってた。 -
全てを捨てて知らない町の古びた薬屋に辿り着いた山崎由実。謎めいた店主の平山タバサと町の住人。孤独の本質を問う長編小説。
例えれば小川洋子作品のような、不思議な世界観のお話。モヤモヤ感とふわふわ感が同居しながらも、チクッとした痛みを所々で与えてくる。 -
全体的に靄のかかっているようなぼんやりした不気味さをまとっていて、よく分からない小説だった。
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まぼろしのような、ずーっと夢のような、中身は最低限の具体物であとは全部抽象で描かれていて、だけど飲み込める。
わたしはこういうお話が好きなほうなので、今後も胸に抱えて行きたいくらいですが、苦手な人は苦手かな。まあ、本はだいたいそういうものだけど。
とにかく、気温の低い日とか、雨の日とか、そういう日に読みたい本です。静かで、低温で、横たわっているような。 -
池、もしくは沼のような小説。ジャンルもミステリなのかファンタジなのか、はたまたホラーなのか判別不能。終始、謎めいた作品でした。
あらすじ(背表紙より)
平穏な時間。それ以外に欲しいものなんて何もない―。山崎由実はすべてを捨てて家を飛び出し、知らない町の古びた薬屋に辿り着いた。店主の平山タバサは、由実を薬局の手伝いと家事全般の担い手として住み込みで雇ってくれた。見ず知らずのわたしを、なぜ…。謎めいたタバサの本心はわからぬままだが、由実は次第に新しい生活に慣れてゆく。誰しもがもつ孤独をたおやかに包み込む長編小説。 -
完全にタイトルと装丁買い。
最初は私が誰で、タバサの性別もいまいちわからず…。
なんだろう。少しずつ主人公の氏名がわかり、なんだかとらえどころのない、夢のような日々が描かれている。幻なのか現実なのか…境界線を行ったり来たりしているような感じ。
そして、ラスト。
これまでぼんやりゆっくり物語の時が流れていたのに、展開(?)が一気に早まったような気がして、ついていけずに終わってしまった。
私とタバサの過ごした時間は夢だったのか、現実だったのか…。 -
タバサという名は、「奥様は魔女」というドラマに出てくる娘の役名(男なのに)を母がつけ、薬屋の看板までも変えてしまった、とエピソードを語るくだりが、冒頭ある。
それを暗示するかのように、主人公の周辺で不穏で不気味な出来事が起こる。いつの間にか何処かへ連れて行かれてしまう不思議な読後感。 -
特に最後、迷子になる