ポスドク! (新潮文庫)

  • 新潮社 (2017年12月25日発売)
3.48
  • (11)
  • (32)
  • (45)
  • (6)
  • (1)
本棚登録 : 374
感想 : 38
サイトに貼り付ける

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

Amazon.co.jp ・本 (416ページ) / ISBN・EAN: 9784101212210

作品紹介・あらすじ

瓶子貴宣は、月収10万円の私大非常勤講師。博士号を持ち実力も抜群なのに、指導教官の不祥事で出世の道を閉ざされた。しかも姉が育児放棄した甥、誉を養ってもいる。貧乏でも正規雇用を諦めない貴宣の前に、千載一遇のチャンスが。だが誉を引き取りに姉が現れ、家庭問題まで勃発─。奮闘するポスドクの未来はどうなる! ?  痛快かつ心温まる、極上のエンタテインメント。『マル合の下僕』改題。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 友人のポスドク(曰く、忍者のようにありとあらゆる学会に影のように出没し、手裏剣のように名刺を撒き散らす)のことを思い出しながら、楽しく読むことができました。

    博士課程を修了したのち、非常勤の助手や講師として大学に残る「ポストドクター」。主人公の瓶子貴宣伝(へいしたかのぶ)は女子大の非常勤講師として月収10万円のワーキングプアでありながら、実姉の置き去りにした甥を育てる三十男。大学内で専任のポストを得るべく奮闘する主人公を描いたエンタメ作品です。

    大学に残るドクターの「人生」を垣間見ることもできますし、主人公や甥のキャラクター、またなにかと主人公の前に表れて鬱陶しがられる薬膳という登場人物も魅力的です。
    物語としての「ヤマ場」もしっかりとありましたし、主人公のセリフ回しも痛快で、すらすらと読むことができました。

    ただのエンタメ作品、というわけではなく、育児放棄をした「クズ姉」しずるとのやりとりなどから、「どう生きるか』ということについてもメッセージ性があるように思います。

    特に
    「俺の座右の銘はいろいろある。……中でも一番心がけているのはこれだ。”一瞬のスッキリより一生の得”。……いくらやり返したいからと言って脊髄反射的に喚きちらしたり暴力に訴えるのは節足動物のやることだ。脊椎動物は知恵をもつべきだし、自分の行動をつねに二度美味しいにするには冷静さが必要になってくる」
    というセリフや、
    「決して泣き寝入りはしない。心を負けたままにはしておかない。負けた事実はしかたないが、それをバネに変えるところまで頭の中にイメージを固めてしまえば、心まで負けたことにはならない。……昨今よく言われる生きやすく生きる、というキーワードはたしかに人間にとって大事なことのひとつだろう。けれど、生きやすく生きるためにはなにより知恵が必要なのだ。逆境をパワーに変え、あるいは受けたダメージを効率よくアドバンテージに変換するためには、頭を使って考えることが大事だ。だれもが生きやすく生きようと思ってできるわけではない。だったら、大人が子供に教えるべきは、この思考のスイッチだ。知恵と教養は精神を助け、いずれは身を助ける」
    という述懐はとても響きました。

  • 自分の知らない、大学の先生たちの世界。
    語りに緩急がありとてもおもしろく読んだ。
    低収入に予想外の扶養家族を抱え、懸命に前を見ることしかできない、余裕のない瓶子の様子が不憫で、でもコミカルで。暗くなり過ぎないトーンが読みやすかった。
    大人になって自分の性格なんてなかなか変えられない。今いる「自分」をどう操縦するかが肝要なんだなぁと思ったり。
    いろいろ終わってしまった後に、薬膳が瓶子に長々と語るシーンが印象的だった。
    「そうかな。言えばいい。”助けてください” って」
    「自分だけがズル賢くて人の幸福を妬んでいると?」

  • 分野による違いはあるかもしれないけれど,ポスドクの置かれている状況がよくわかる。厳しい中でも負け戦に挑んでいく主人公の心意気がかっこいい。そして,同居の甥っこの誉くんや登場人物たちがいい味を出していておもしろく,一気に読んでしまった。

  • ある生保の調査によると、男の子の将来なりたい職業の1位が『学者、博士』だと言う。
    まぁまて、この本を読んでから決めても遅くはあるまい。
    が、なるべく早目に読ませる事をお勧めする。
    決して、反対してはいけない、意固地になるから。

  • 面白かった。平均月収10万円のワーキングプアというポスドクの悲惨な状況を面白く読めるのは個性溢れる登場人物のおかげだろうか。
    最後の最後で主人公が逆境の中でも自信を取り戻したシーンは印象的だった。

    学歴は超一流でも、アカデミアの世界に埋もれてしまっているポスドクは数多くいるのだろう。
    水月昭道の『高学歴ワーキングプア』を再読することにする。

    「想像しろ。考えろ。考え続けろ。
    いつだって頭を使え。お前には武器がある。
    大勝利をおさめたいわけじゃない。
    一生研究者でいるために、その頭で、知恵で、負け戦のプロになるのだ。

    それが、学んで勝つってことだろ。」

  • 多分にライトノベル的要素が含まれているものの,ポスドクの生態の一端を垣間見ることはできる.能力よりも運とタイミングがものをいう.世知辛い.

  • 文庫帯の「今すぐ100億円欲しい。」というパワーワードに惹かれ読み。
    ポスドク瓶子、安定志向なのになぜかワープア。未婚なのに扶養家族あり。彼がかつて思い描いた研究人生とは違う現実を辛辣なコミカルさで綴る一作。
    がんばれ瓶子。その粘着質さめっちゃ好き。

  • ただただ楽しんだ くすっとなって、涙もこぼれ、一気読み 自分もドクターまでは残らなかったけど、大学院に進み、大学に残る、という現実を垣間見、悲哀も知り、舞台の真実味を感じつつ、、、

    主人公たちの真摯に、そして強かに生きていく姿勢に応援したい気持ちになった 自分の武器(頭脳)を使い、泣き寝入りはしない、彼らに痛快で優しい気持ちにもなるエンタメ小説!

  • オムライス。甘酸っぱいケチャップライスも中に刻まれたピーマンの苦味も玉ねぎの甘さも全部全部優しいふわふわの卵に閉じ込められてしまうような。
    主人公がバタバタしているようで家族として成立していて、その二人の関係の安定性にホッとして、ポスドクというものを書いているのだけど、家族のお話として紹介したいなあと思う。挿絵?の漫画もテンポ良くて好き。
    ご馳走様でした。

  • 20240727
    利口な人は問題を解決する。
    賢明な人は問題を避ける。

  • 額賀澪の『青春をクビになって』を読んでポスドクの悲哀になんとも言えない気持ちになって、こうした類の小説ってこの時代だからあるんじゃないかと思い探したら見つけたタイトルもそのもののポスドク。コミカルに描こうとしているけど、卑屈さもなんだかかわいそうになって笑えない。きつい世界だ。なんで研究する人ってこんな境遇に追いやられたんだ?

  • 初めて知ったポスドクの世界。自身の専門分野を追求するのはやりがいがあっても、楽ではない。博士号で実力があっても、月給10万とは厳しい。本当にそんな世界なんだろうか…と思うところもありましたが、興味深い世界でした。
    お仕事だけでなく、家族問題も大変で姉にはモヤッとしっぱなしでした。誉くんが良い子で良かった。

  • 高殿円の知識の幅に毎回踊らされる。

    全く無縁な大学教授の世界を垣間知れて良かった。

  • バカ小説。

    関西の私立女子大で非常勤講師をやっている貴宣のもとに、姉の子供である誉が転がり込んできた。しかし貴宣は週に数コマの授業を請け負って、その報酬10万円をもらうだけの貧乏ポスドクである。そこへ、急死した教授の抱えていたプロジェクトの後任の話が持ち上がる…。

    えー、取材しろ。以上。

    ひどい。
    まあ、歴史感性学とか男根学とか、荒唐無稽のよくわからない専攻ばかりなのは、お話なので目をつぶるとしても、そもそもの瓶子貴宣がポスドクじゃない。その時点でズッコケル。

    ポスドクであるためには、まず大学内の住所に相当する研究室に属していなければならない。それに対し、この本に出てくる貴宣は、いわば「流しの講師」であり、研究室がない。つまり住所不定である。そんなやつがおるか。それに、住所不定の流しに講義を頼むバカ大学が有るか。

    住所不定というのは、結局物語の最後まで不安要素として残ってしまう。そこにテーマ中に重くのしかかる「貧乏」という要素なのだが、少なくとも研究室に属していれば、日割りで月に10万円は貰えるわけで、講義の10万円を加えて20万円である。それではいかんのか?

    そんないい加減な大学組織の描写のおかげで、得体のしれない脳波を取るという研究もぼんやりして、特に面白みもなく終わってしまった。

    難をあげればたくさんで、書かれたという2014年時点で35歳だと、私大だろうが国立大だろうが、免除職制度は終わっているので、常勤職についても奨学金の返済義務が生じる。「”査読付きの”論文読みましたよ」も絶対言わない。洗剤の宣伝の載っている学術誌って何?そんなの業績にならんやろ?

    ストーリーの方は、ここまで読んだ方なら分かる通り、大学内の話は脇道であり、家に帰ってから、甥の誉との関係の部分がメインであり、またこれがダラダラと盛り上がりもなく読むところがないのである。

    全体に読めなくはないがメリハリのないストーリーであり、最低限なされていてほしかった章分けも存在しないため、とにかく締まりのない文章という印象であった。

    終盤で事件とその復讐という部分も、結局は誰も悪役にしないような作り。そのくせ姉のしずるは悪人のままなんだよなあ。なんか恨みでも有るんか?

    所々に、古い大学に関する妙にリアルな描写が現れるのは、この作者が修士程度は研究室に関わっていたのだろうとは推測する。特に『竹繊維による抗菌機能の解析』は、作者の修論テーマじゃないの?他の研究テーマに比べて、書き方がリアルだし。

    まあしかし、取材しないなら書くな、編集も責任持ちたくないのなら書かせるな(解説がないのも責任が取れんからだろ?)というレベルの話で、小中学校生向けで、大人は読まないような少女漫画の原作くらいならいいんじゃない?

    ところで、改題された元のタイトルが意味不明。『マル合』って何?理系では使わない表現?

  • 最近の溢れ返ったポスドク達。結局、とっても研究に没頭してそれに生涯注ぎ込みたいと思う人以外は就職難民なのね。上のポストを得るにはやはり世渡りの才能なのね。
    甥っ子は少し賢過ぎて、いい子過ぎてちょっと‥
    ところで、月収10万円で二人生活出来る?

  • ポスドクの苦しさ、専任講師への気持ちや仕事の大変さ、家庭の騒動が描かれているとはいえ、話が長い。
    これだけのページ数を読んでも『読んでよかった!』って思う作品もあるけど、これはそうじゃなかったなぁ。
    もうちょっとコンパクトにまとめてくれたらよかったんだけど。

  • ☆信州大学附属図書館の所蔵はこちらです☆
    http://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB25177871

  • テンポが良いのでするする読みやすい。大学教授とか研究者が皆主人公みたいな人だったら良いのになぁ、と思う。

  • 2020.08.09

  • ポスドクの生態がライトノベル風に描かれている。少し設定が現実離れしているような気はする。アカデミアの世界に興味のある方はぜひ。

全35件中 1 - 20件を表示

著者プロフィール

1976年兵庫県生まれ。2000年『マグダミリア三つの星』で第4回角川学園小説大賞奨励賞を受賞しデビュー。主な著作に「トッカン」シリーズ、「上流階級 富久丸百貨店外商部」シリーズ、『メサイア 警備局特別公安五係』、『シャーリー・ホームズと緋色の憂鬱』、『マル合の下僕』、「カーリー」シリーズ、『剣と紅 戦国の女領主・井伊直虎』、『主君 井伊の赤鬼・直政伝』(文藝春秋)など。2013年『カミングアウト』で第1回エキナカ書店大賞を受賞。漫画原作も多数。

「2023年 『忘らるる物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

高殿円の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×