薬指の標本 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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レビュー : 1096
  • Amazon.co.jp ・本 (185ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101215211

感想・レビュー・書評

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  • 小川氏らしい、さわやかな筆致の短編小説。女性一人称の視点で淡々と描かれる日常のなかのちょっと不気味な話。2編とも似たようなストーリーで、「わたし」がどこかの隙間に入り込んでしまうような感覚。このあとどうなっちゃうんだろう?と思わせながら終わる。
    ここに書くのもナンだが、「博士の愛した数式」は傑作だった。一方、妊娠カレンダーは何がいいのかさっぱり分からなかった。

  • 2014.11.8 - 11.9
    (185P)

  • ☑薬指の標本
    ☑六角形の小部屋

    解説 布施英利

  • 初めて読んだ時には、『標本』について色々考えた。自分の過去、傷つき、重たさを完全に切り離してどこか安全な場所においておけたら、と標本室のある世界が、標本室がなくても同じことを違う手続きで出来る、この世界にいるだろう人達のことが羨ましくなった。
    心の負担となる過去さえ、その存在を消したいわけではない。大切に守り、保管しておきたい。それは自分の一部だからだ。ただの物ではなく、自分の思いそのものだ。時間、思い、空気等がそれに注がれ、馴染み、切り離せなくなってしまった。だから破棄することはできない。

    今日読み返して、標本技師の彼のことを考えた。
    一見中性的な穏やかさを持った男性、その奥に潜む熾烈さ、サディズム、隙の無さ…標本という美学に執着し、標本となるものを強烈に惹きつけて、遅効性の解けない毒で何処までも侵食してしまう。
    靴だけじゃない、目線、言葉、身のこなしまでもが、相手を彼の意のままにするためのツール。それが無意識のものでも。標本以外のものへの徹底的な無関心、その冷ややかな残酷さ。
    恐ろしく、危うく、魅惑的な男…主人公が、徹底的に囚われたままでいたい、完全に侵食されてしまいたい、彼の標本になりたいと願うのも無理はないと思う。

    このようなことが、淡々とした平和的な文章で書かれている。
    不完全なものを完全に描き切っている、世界が完結していると思った。
    次に読んだ時にはまた違う感想を抱くのかと思うと楽しみだ。

  • まさに耽美。
    日本語と云うのは、こんなにも妖艶で、官能的に使えるんだね。
    なんだろう、いつもこの人の本を読むと、夕焼けに照らされた商店街や田舎道を思い出す。
    なんか現実味がないのかな。

  • 『薬指の標本』と『六角形の小部屋』の2つのお話が入った1冊。共に、非常に不思議な感覚にとらわれてしまうセピア色のお話でした。あまりに不思議すぎて、自分がどこにいるのか分からなくなってしまうような感じでした笑

  • 結末は...?怖い...と夢中で読んでいたので、薬指の標本のラストに気づかず、続きだと思って六角形を読み始め、あれ。となりました。笑
    あとは想像にて、という形なのでしょうか〜
    読み進めるにつれて、もしかして?とだんだん怖くなってしまいました(>_<)

  • 残念ながら、合わなかった…こういう「すこしふしぎ」系の話は難しい。これも年のせいなのか??でも標本室には勤めてみたい。

  • とても奇妙でいて、文のところどころに艶めいた色気を感じられる本。不思議でちょっと不気味だが、同じくらいの美しさがある。素敵。

  • フランス映画「薬指の標本」を観てから読んだ 地下室のあの湿度のたかさや、別世界のような標本室の空気感が文章からひしひしと伝わってきて凄い 無音のおそろしさ

  • ラストにはもう、はまり込んでいたので
    次の章「六角形の小部屋」を読み進めて、はてな。
    標本技術室が六角形なのかと思っちゃったよ…!
    3ページくらいでやっと気付いた。

    まあそのくらい。不思議な空気感にずっと
    薬指の標本みたく浸っていたい気持ちになる。

    生々しく耽美的な感じがフランス映画のようだと思ったら
    既に映像化されていたようで。少し気になります。

    何故、弟子丸という名前なのかも気になります。

  • あいかわらず透明感のある文章を書くな、と。一方で、序盤のミドリさんや、ホームパーティでの美知男の様子など、ひとが嫌悪感を抱くような表現も上手いことを知った。

  • 「薬指の標本」★★★★
    「六角形の小部屋」★★

  • 「失う」ことによって「在り」続ける。
    二篇どちらも
    「封じ込めること」がキーワードだろうか、
    過去の感情を、記憶を。

    「薬指の標本」の
    身体の一部を失うという生々しい痛みが官能的だ。

  • ふんわりほんわかな物語なのかと思っていたのだが、予想に反してひんやりしっとりしたお話だった。

  • Her Japanese as No.1.

  • 「本当はそういうものを持っているのに、
    気づいていないだけなのかもしれないし、
    最初から標本なんか、必要としていないかもしれない。」

    私にもあるのかなと思って考えてみたけど
    いまのところわからない。
    カタリコベヤはあってもいいかも。

  • 図書館で何かに導かれるように手に取った本。静かで音もない物語。描かれる恋愛模様は妖艶で少し危険な雰囲気を醸し出しています。弟子丸がくれた靴をこのまま履き続けていると、脱げなくなって、いずれ自分の”足”になってしまうのではないか、という描写が怖いけれどステキだなとも思いました。

  • 依頼人が持ち込む何もかもを標本にして封じ込める標本屋。小指の先をなくし清涼飲料の工場を辞め、そこの事務員として働き始めた“私”は、ある日標本技師から、自分の足にぴったりと合う靴をプレゼントされる。「これからは、毎日その靴をはいてほしい」

    放課後の学校の廊下のようにひっそりとしている中、静かな狂気と美しさを垣間見たような感じがしました。清らかな透き通った文体で描かれるどこか浮世離れした世界。薬指がちぎれる描写は生々しくなく、淡い色合いの水彩画を見ているような気分になりました。小川洋子さんの作品はこれが初めてでしたが、紅茶のお供に似合いそうなお話だなあという印象を受けます。このまま静けさと共に体が消えていくのではないか、そんな読後感のある一冊でした。

  • 今回の明るいボヤキテーマの最高峰はサッカーだろう。足蹴にし、頭突きをかまし、手ではさわってやらないボールのあわれ。ラグビーのボールは、敵と奪い合って大切に自分ちへ持ち帰ろうとする。対してサッカーのボールは、自分の陣地には入れさせまいとキーパーなる警備員を置き、こんなもの相手の陣地に蹴り込んでおけというまるで疫病神扱い。ホントだ。

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著者プロフィール

小川 洋子(おがわ ようこ)
1962年、岡山県生まれ。高校時代に文芸を志し、早稲田大学第一文学部文芸専修入学。在学中から文芸賞に応募。卒業後一般企業に就職したが、1986年の結婚を機に退職、小説家の道に進む。
1991年『妊娠カレンダー』で芥川賞、2004年『博士の愛した数式』読売文学賞、本屋大賞、2006年『ミーナの行進』谷崎潤一郎賞、2012年『ことり』で芸術選奨文部科学大臣賞、2013年早稲田大学坪内逍遙大賞をそれぞれ受賞。芥川賞、太宰治賞、読売文学賞、河合隼雄物語賞などの選考委員を務める。
『博士の愛した数式』は映画化され、大ヒットとなった。受賞作以外の代表作として、『薬指の標本』『人質の朗読会』『猫を抱いて象と泳ぐ』。

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