薬指の標本 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 7877
レビュー : 1096
  • Amazon.co.jp ・本 (185ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101215211

感想・レビュー・書評

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  • 『薬指の標本』と『六角形の小部屋』の2つの短編。どちらの作品も、人の心が求めている心地よさをうまく突いているなと感じた。夢を見ているようなストーリーとリアルで美しい表現は、読んでいて不思議な世界に引き込まれる。小川さんの短編はもったいない。もっと読みたくなる。

  • 全体的にうっすらと油膜の張った淡い世界感、そんな印象を受けた。
    どこか謎目いていて微笑で縁取られた不思議な設定。

    頬に火傷をおった少女の言う『燃えてなくなってしまったもの全部、きのこと一緒に封じ込めてもらいたいんです』という言葉から、標本の意義を感じとることができる。

    機械に挟まれ、サイダーを桃色に染めながら沈んだ薬指の欠片、素敵だ。
    消滅を描いたおはなし。

  • みな何かしらの思いを胸にその標本室を訪れる。
    標本されるのは物だけではなく、それ自体にまつわる記憶や思い。
    そうやって自分から分離した何かと対峙し、訣別する。

    私にも標本があると気付いた。
    訣別するためのものじゃなく、振り返り、思い出し、愛しむための標本だ。

    そう、本そのものである。

    なるほど納得。
    だから私は本を手元に置きたがっていたのだな。

    自らが表現できない気持ちの代弁。
    経験できない物事への憧れ。
    取り戻せない時間と悔恨。
    そして、気付かない振りをしてきた禍々しい思いの転嫁。

    本の中にあるのは私とは無関係のフィクション。
    けれど、そこには私の五感や感情の記憶へと導くリンクが貼られている。

  • 記録。

    こういう雰囲気好きな女の子って結構いるだろうなぁー

  • タイトルに惹かれた。

    時間を閉じ込められた標本たちに囲まれながら、
    弟子丸氏に閉じ込められていく「私」。
    古びた標本室、たくさんの標本、浴室のタイル、羽ばたくことのない蝶、
    散らばったタイプ、火傷の少女、黒い靴、
    そうして私は彼に「薬指の標本」を依頼する―

    透明な文章で紡がれる、奇怪で静かな物語。
    読み終わった後に切なく残る甘い痛み。
    この世界観は、小野さんならでは。



    「彼はわたしの標本を大事にしてくれるだろうか。時々は試験管を手に取り、漂う薬指を眺めてほしいと思う。わたしは彼の視線を一杯に浴びるのだ。 」

  • 小川洋子作品を読んだのはこれが初です。出会ってしまいました。
    『博士の愛した数式』が映画になって話題になってた頃、どちらを読むか迷ってお手頃価格のこの文庫を手にしました。
    当時、帯がかかっていたんです。「フランスで映画化決定!監督ディアーヌ・ベルトラン、主演オルガ」と。
    その帯のことを頭の隅にいれつつ、スイスイ読み進む物語の中、少しずつ耽美が沁みだしているディテールや空気を感じつつ、そしてついに、靴と浴槽。
    そりゃフランス映画になるわぁと大いに納得。
    物語というより、中の世界感とその作り方にものすごく魅せられました。
    小川作品で最初に出会ってよかったと深く思ってます。

  • 小川洋子さんの作品って美術館みたい。
    どの文章も安定していて、うつくしくて、じっとしているのに
    心の奥の方に訴えかけてくるような。
    そしてぼーっと読んでると、いろんなものを見落としてしまう・・・

    表題「薬指の標本」が素敵です。
    こういう、うすら寒い話、いいよね~
    衝撃的なできごとは何一つないんだけど、ずーっと静かな緊張を強いられている感じ。
    「足が靴に侵される」っていうエピソードがなんだかものすごく恐ろしかった。なんであれ過剰は恐ろしい。

    ひんやり不思議な一冊です。

  • 薬指というのは
    恋における大々的な象徴ですよね。
    という感じで手に取った作品。

     「標本」っていう単語にもなんとなく
     その時の自分と合うものがあったな、そういや。


    わけわからんことはあるっちゃあるけども
    「これはこうだ!」とか
    あまり詳しくは語らないところが
    こっちの想像力っていうんかな、
    そういうのが試されてる感じがたまらなく面白い。

    何より抽象的なものが好きな自分は特に(笑)


     こわいねぇ。

      自分もいっそ「  」してもらうかな


    でもなんというか
    恋ってそういうもんだよね。
    半端じゃなく

     “全身全霊”



    それからこれは二篇の短編集で
    もうひとつの作品の「六角形の小部屋」

    これまた好き。


     どっちのほうが好き?

    と聞かれたらきっと


      こっち

    と答えるでしょうな。

  • ★5です!!この人、いい!!好み!!今まで読まず嫌いでした(笑)
    もうこれからこの人の本全部読むー。
    読み終わりたくない、と思える本、久しぶりに出会いました。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「この人、いい!!好み!!」
      チョッと、ネットリした独特の雰囲気がありますよね。表紙デザインも、いつも素晴しくて、それが楽しみでもあります。
      「この人、いい!!好み!!」
      チョッと、ネットリした独特の雰囲気がありますよね。表紙デザインも、いつも素晴しくて、それが楽しみでもあります。
      2013/08/01
  • 大好きな1冊。小川洋子=『博士の愛した数式』と思っている人が多いと思うけど、この小説こそが彼女の真骨頂だと思います。
    きのこに始まり、音、傷跡・・・といった無機質なものまで何でも標本にしてしまうという標本屋。このシュールな設定の中で、静かに流れる主人公の時間。
    グロい描写の中に美しさがあって、幻想的な世界に酔いしれてしまいます。
    静謐な世界は、感情的な部分がそぎ落とされているようだけど、これは究極的なラブストーリーなのです。
    「閉じこめること」を生業とする標本技術師に贈られたあまりにもぴったりくる靴。その靴を常にはくように言われた主人公。
    ある意味で「閉じこめられている」彼女の恍惚。究極の束縛、嫉妬・・・究極の恋情の形な気がします。
    映画化されたのがフランスというのも頷けるなぁ。先日、この映画を観ましたが、うーん。期待が大きかっただけにイマイチでした。

    • ぴろこさん
      >nyancomaruさん
      『ミトン』『ママ』『レター』、私も好きですよ☆
      『ミトン』は『チェブラーシカ』のテイストに近いけど、『ママ』は初...
      >nyancomaruさん
      『ミトン』『ママ』『レター』、私も好きですよ☆
      『ミトン』は『チェブラーシカ』のテイストに近いけど、『ママ』は初めて観たときちょっと不気味でしたが…なんか魔女っこメグちゃんのノンみたいで(^-^;

      チェコアニメはイジー・トルンカが好きです♪
      2012/09/02
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「『ママ』は初めて観たときちょっと不気味」
      ソ連時代の物資不足の行列の話ですが、、、確かにママは青白くて。。。

      「チェコアニメはイジー・ト...
      「『ママ』は初めて観たときちょっと不気味」
      ソ連時代の物資不足の行列の話ですが、、、確かにママは青白くて。。。

      「チェコアニメはイジー・トルンカが好きです♪ 」
      私もトルンカは大好きで、トルンカの絵本は邦訳・チェコ語版等を合わせて50冊くらい持ってます。
      アニメーションでは「バヤヤ」と「チェコの古代伝説」が好きです。
      2012/09/03
    • ぴろこさん
      >nyancomaruさん
      「バヤヤ」も民話が元ですよね~♪
      私は「手」がトルンカとの出会いでした(^-^)

      チェコアニメって言うと、クル...
      >nyancomaruさん
      「バヤヤ」も民話が元ですよね~♪
      私は「手」がトルンカとの出会いでした(^-^)

      チェコアニメって言うと、クルテクくんとかが日本では人気だと思うけど、他にも名作いっぱいありますよね~!!
      2012/09/04
  • 2006-12-20
    ・標本室へ向かう主人公の潔さ
    ・透明な文章だからこそかえってぞくぞくする。
    ・さらっと読める割に後に残る。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「そかえってぞくぞくする」
      小川洋子って優しさ一杯の時と、ゾクっとして背筋を伸ばし直す気持ちにさせる時の二種類はありますね。。。
      「そかえってぞくぞくする」
      小川洋子って優しさ一杯の時と、ゾクっとして背筋を伸ばし直す気持ちにさせる時の二種類はありますね。。。
      2012/07/12
  • 不思議な仕事を持つ男に惹かれていく女性の話、二話。
    一話の「薬指の標本」の男は、お客さんから頼まれた標本を製作し、それを倉庫に保管するのを生業とする。
    主人公は受付として雇われる。
    じわじわと男の世界に絡めとられていく。
    ちょっと怖くもエロティック。
    ペローの童話「青ひげ」を思い出す。

    二話は、謎の六角形の小部屋を展示する男である。彼は母親と小部屋と共に旅をしている。
    その小部屋に入った人たちは、中でしゃべりたいことを好きなだけしゃべる。
    一人の時に好きな事を喋ればいいようなものであるが、案外こういう場はいいかもと思った。
    私的なことを、だれも聞かないけど、ちょっと社会性を持った場所でしゃべる。
    キリスト教では、懺悔という場がある。牧師さんに話を聞いてもらうので、ちょっと違うが、牧師さんは他言しないという前提がある。そして、その罪はしゃべったことで許されるとされている。
    六角の小部屋は何も言わず懺悔を聞いてくれる牧師さんそのものなのかもしれない。

  • 2019.10.10読了。
    今年37冊目。

  • 不気味な世界観の2作。
    文章が美しく、読んでいて心地よい時間が流れました。小川洋子さんの作品、だいすき。

  • なんというか不気味、というかなんというか、そして最後にどうなるかわからないから、さらに強くなるというか…!

  • 再読。名を呼びたいから名ではないすべてのものを教えてほしい、と口にしてしまうのかと思った。
    ひんやりと冷たい建物の中を流れていく標本技術士とのひそやかな時間。あちらとこちらは薄いガラス板一枚で隔てられ、分かちがたく癒着している。ほのかに漂う官能の香り。ただ靴が導くまま歩いていけばいい。身体の身動きはとれなくとも、心は解放されていく。心の奥の封印された部屋がひとつひとつ開かれていく。ただ身をゆだねて眠りたい。薬指を捧げるだけでは足りない。
    抑えきれない独占欲が自ら標本になることで叶えられた瞬間の恍惚のとき。

  • 2作品。薬指の標本の方は静かで暗くて不気味な雰囲気の中引き返せない恋愛をしていく。六角形の小部屋の方は声に出す事で何かが変わっていくって感じかな。言いたいことがいまいち掴めなかった。

  • 博士の愛した数式しか読んだことがなかったのでびっくりした。

    あるとないが倒錯する世界がすごい
    素敵な標本になって愛でてもらえるといいねぇ

  • 引き込まれた。

  • いつもの小川洋子です。ちょっと川上弘美とかぶるけど、こちらの方が
    より現実的かな。

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著者プロフィール

小川 洋子(おがわ ようこ)
1962年、岡山県生まれ。高校時代に文芸を志し、早稲田大学第一文学部文芸専修入学。在学中から文芸賞に応募。卒業後一般企業に就職したが、1986年の結婚を機に退職、小説家の道に進む。
1991年『妊娠カレンダー』で芥川賞、2004年『博士の愛した数式』読売文学賞、本屋大賞、2006年『ミーナの行進』谷崎潤一郎賞、2012年『ことり』で芸術選奨文部科学大臣賞、2013年早稲田大学坪内逍遙大賞をそれぞれ受賞。芥川賞、太宰治賞、読売文学賞、河合隼雄物語賞などの選考委員を務める。
『博士の愛した数式』は映画化され、大ヒットとなった。受賞作以外の代表作として、『薬指の標本』『人質の朗読会』『猫を抱いて象と泳ぐ』。

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