まぶた (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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レビュー : 261
  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101215228

感想・レビュー・書評

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  • 自分からは遠いけれど、決して非現実的ではなく。世界のどこかで、ひっそりと紡錘がれているような奇妙な話。小川洋子の話を読むと、汽水域、の言葉が思い浮かぶ。海水と淡水がひそかに混じりあった、煩くもなく、落ち着いた世界。そこには海水で生きるものの淡水で生きるものとの生と死が静かに拮抗しつつ、微妙なバランスを保っている。作品の完成度でいうと、「海」の方が綿密で、魅惑的。

  • 小川洋子さんの短編小説の読後感は夢から覚めたときに「夢か…」と思う感じに似ている気がします。
    行間の読ませ方、心象風景や空気ですら感覚に響かせる表現が好きです。同じ言葉を使っているのに、なんでこんなに文章の雰囲気を変えられるんだろう…

  • 会いたいのなら今会えるだけ、と掌の中の死は物語っている。細く小さな銀色の愛くるしさに海老がぴょこっと跳ねてヤモリがキラっと光ったの。
    触れられぬものに触れようとするように、不確かなものを確かに感じていたい。埃降り積もる朽ちていく世界の片隅、君の香りだけ嗅ぎ分けた。
    君の瞼の曲線が、過去も現在も僕の心を掻き毟り溺れて奪っていったのさ。瞼を切られた相棒がカラカラと回し車を鳴らす音に、バイオリンの不規則で不安定な音階が重なり絡まり愛し合う。ほら、ハートの葉っぱが笑っているよ。いつまで待ち続けても来ない便りのように、物寂しく私は海の向こうに永遠を見る。

  • 【私がタイピストになった理由】

    私が通う専門学校はもともとタイピスト養成学校だった。今でこそ、IT専門学校などと名乗っているが、昔この場所には女学生が溢れ、溢れ返っているのに皆無口でひらすらに細かい活字の海を飛び回っていたのだ。

    小川洋子にタイプライターはとてもお似合いだった。それもとても古くそして、管理の行き届いた美しいタイプライターだ。適度に使い込まれ、それでも汚れてはいないタイプライター。小川洋子がタイプライターという七文字を打ち込む姿を想像しただけで、私は幸せな気持ちになるのだ。私にとってタイプライターは特別な存在になった。小川洋子の作品にはその描写がなくても、いつもどこかでカタカタとタイプライターの音が聞こえるように思える。新しく読む作品の中にその七文字を見つけた時は私は舞い上がってしまった。そして、この作品の中にも幸せな七文字はひっそりと紛れ込んでいる。

    私は思う。今でも、タイピストという仕事があったなら、私はなにを置いてもタイピストを目指しただろう。無口で言葉を愛せる仕事にもしもつくことが出来たのなら、とても幸せなのにと夢想した。

  • 日は小川洋子の小説「まぶた」(新潮文庫、2004年)を紹介します。
    たまに本棚を整理すると、「なんでこの本買ったんだっけ」という本が出てきませんか?
    私にとっては、「まぶた」がまさにそんな一冊でした。本棚整理中に発見したのですが、そんなに小川洋子の小説を読んでるわけでもなく、いつ買ったのかも、なんで買ったのかも全く思い出せなかったのでとりあえず読み返してみました。そして思い出しました。
    「まぶた」に収録されている、「バックストローク」という短編がとても良かったので買ったんだ…!と。
    「バックストローク」は水泳選手だった弟の話です。読み終わった後、やるせないような、どうにもできないような、かなしいような気持ちになりますが、とても心に残ります。全くうまく説明できませんが、とても短くてすぐに読める本なので、気が向かれましたらぜひどうぞ。

  • ふわふわ浮いているような、今朝見た夢を思い出すときの感覚に似た小説。あまり深く考えずに読むべきかな

  • 小川洋子さんらしいというのか、「身体描写」とそれに伴う不気味な雰囲気や世界観が感じられた。
    どの話にも「生と死」に関することが共通して書かれており、そこから何を感じとっていくかが自分の中での課題。
    小川洋子さんの作品をもっと読了してから丁寧に読み直したいと思う。

  • 読んだ後は少し寂しくなる話が詰まった短編集。小川洋子さんの小説は体の一部だったり、親しくしていた人だったり当たり前のようにそこにあるものを失うお話が多いですね。

  • 恐怖と愛情の関係は案外遠くない。感覚器官が鋭すぎて生きづらい人たちしか出会うことのできない世界。表舞台のちょうど反対側、憧れとはほど遠い世界。そこにわたしは確かに憧れている。まぶたの中で、1番好きなお話しはどれだろうと思っても、決められないふしぎ。結局ぜんぶ好きという結論を出して、本を閉じる。

  • 短編8作。
    作品を読み終えるたびに深く重たいため息が出る。
    足りない何か・・・。
    息苦しさを覚えるくらいに濃密な世界。
    この閉塞感が心地よいのだ。

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著者プロフィール

小川 洋子(おがわ ようこ)
1962年、岡山県生まれ。高校時代に文芸を志し、早稲田大学第一文学部文芸専修入学。在学中から文芸賞に応募。卒業後一般企業に就職したが、1986年の結婚を機に退職、小説家の道に進む。
1991年『妊娠カレンダー』で芥川賞、2004年『博士の愛した数式』読売文学賞、本屋大賞、2006年『ミーナの行進』谷崎潤一郎賞、2012年『ことり』で芸術選奨文部科学大臣賞、2013年早稲田大学坪内逍遙大賞をそれぞれ受賞。芥川賞、太宰治賞、読売文学賞、河合隼雄物語賞などの選考委員を務める。
『博士の愛した数式』は映画化され、大ヒットとなった。受賞作以外の代表作として、『薬指の標本』『人質の朗読会』『猫を抱いて象と泳ぐ』。

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