博士の愛した数式 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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レビュー : 2827
  • Amazon.co.jp ・本 (291ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101215235

作品紹介・あらすじ

「ぼくの記憶は80分しかもたない」博士の背広の袖には、そう書かれた古びたメモが留められていた-記憶力を失った博士にとって、私は常に"新しい"家政婦。博士は"初対面"の私に、靴のサイズや誕生日を尋ねた。数字が博士の言葉だった。やがて私の10歳の息子が加わり、ぎこちない日々は驚きと歓びに満ちたものに変わった。あまりに悲しく暖かい、奇跡の愛の物語。第1回本屋大賞受賞。

感想・レビュー・書評

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  • 私がお仕事をしている市内では、良書巡回図書という、現場の先生と生徒からは 残念ながら、大変不評な(笑)事業が行われています。

    事業が決定されるまでのいきさつも、は?なにそれ?って感じでしたが、まあ、そこはおいといて、そんななかでもこれはよかった!というのが、

    中3で巡ってくる本のなかに、この本があったこと。中学生は、はっきりいって巡回図書なんて読みません。学校側も、じっくり読ませてるヒマなんてない。

    でも!ですよ。
    この本に関しては、受験で忙しい3年生が、本当によんで、おもしろいです!と、図書室に報告に来る。

    私が事前にオススメしまくってたのもあったでしょうが、やっぱり作品の力でしょうね。記念すべき、第一回本屋大賞受賞作品です。

    わたしは、学生のころから数学が 好きじゃなくて、ただ受験のために解く、ぐらいの意識しか持ってなかったんですが、

    この本を読んで、生まれてはじめて、

    無機質な数字が、温度をもったあたたかいものに、思えたんです。

    自然のなかに存在する、美しい法則みたいなもの・・・数学って、美しかったんだ・・・

    そして余談なのですが、博士が記憶を失くした日の日付というのが、わたしの誕生日と同じで。
    月と日までは、わかります。でも、西暦まで同じだと、さすがに5度見(笑)くらいしました。

    この本と、私が
    作中にでてくる 友愛数のように、
    つながっていた 気がしたんですね。

    というわけで、とても 思い出深い作品です。

  • 美しい話だった。やっと読めてよかったです。

  • 数学はキライじゃないのにここまでずーっと数式ならべられると後半はほんと辟易した。とても評判がよく話題になったお話だったけれど、やはり受け付ける個人差もあるのかと。
    閉鎖的な内容も心が閉じ籠っていくようで苦手かな。

  • 久しぶりの再読。
    80分しか記憶が保持できない博士と、主人公とその息子のルートくんの物語。
    博士のルートくんへの愛情、ルートくんの博士への細やかな気配りがとても優しく、切なかった。
    特に野球観戦に誘う時のルートくんの「博士にとあは、どんなことも突然起こる。毎日僕達の何倍も緊張してなくちゃいけない」、「ちびた鉛筆てメモを書いて、身体に貼っている博士を見ると泣きたくなる」と言ったセリフが切なくて、優しくて、でもうれしくて、泣けてしまった。
    博士は、主人公とルートくんと会って過ごして、記憶は残ってなくても、五感できっと覚えていて、幸せを感じてくれていたんじゃないかと、強く願ってしまう。
    また何年。何十年かして、ふと思い出したとき、読み返したい。

  • 有名だから知ってはいたが、初めて手に取った。

    80分しか記憶が持たないから"かわいそう"ではなく、80分しか記憶が持たないけど"あったかい"と常に思いながら読み進めることができた作品だった。

  • 高校生の時に知り、6年経ってようやく読んだ本です。名前だけは知っていました。想像とは違ったのは數學好きの人が愛した公式か何かだろう、と思って読みました。
    まず、この本を高校生のときに読めばもっと數學が楽しくなったんじゃないか、ということ。數學の美しさや數字に秘められた魅力を感じ取りました。 また主人公、息子そして博士の関係性。息子の前だけ禮儀正している博士や無邪気に息子を喜んで受け入れる様子が目に浮かびました。記憶がもたないというのは辛いことです。本人は忘れてしまっても覚えている周りも。そして忘れてしまっているんだと思う本人も。
    最後の方の誕生日のとき、急に覚えていなくなったときには記憶障害の進行性を感じ、鳥肌が立ちました。
    また義姉との関係性は曖昧なままに終わりましたが、事故当時、どういった経緯で二人でかけたのか、またどうして全てを義姉はわかっていたのか、とても気になります。
    そして、驚いたのは施設に入ってからも会うことを許していること、また誕生日プレゼントにグローブをわざわざ買ってきたところですね。あの喧嘩を止めた公式の意味が未だにわかりません。読み足りない証拠ですね。
    

  • 大きな盛り上がりや転換はなかったけれど、3人で過ごす時間が非常に丁寧描かれていて、非常に没入できた。
    暖かく、穏やかな物語。

  •  今さら、何を言うことがあるのでしょうか。今でも、皆さんお読みになっていらっしゃるのでしょうか。「いい話」の典型ですね。
    https://plaza.rakuten.co.jp/simakumakun/diary/201910260000/

  • 終始、ほっこりとした気持ちにさせてくれました。普通だとこういったものを扱うと、気持ちが暗くなったり、涙を誘うような物語を想像してしまいます。
    しかし、この作品は言葉が丁寧に繊細に描かれていて、明るく優しい気持ちにさせてくれました。
    教授と家政婦親子との日常が淡々としているのですが、小川さんの空気感なのか、ほんわかと包み込むような雰囲気に誘われてくれたように感じました。
    また、数学が好きな自分にとっては、共感できるものも多くありました。数学用語が多く綴られていますが、かみ砕いた解釈で伝えてくれますので、数学が苦手な人でもとっつきやすくしてくれるかも…と思います。
    心が浄化されたような作品でした。

  • なんだろう。この心が温かくなる感じ。
    小川洋子さんの紡ぎ出す文章の美しさと暖かさ。
    日々の生活に追われ殺伐とした心が真っ白で太陽の香りで満たされたシーツに優しく包まれていくような心地よさ。
    いくらでもこの文章を目で追っていけるような、そして文章から生み出されるこの美しき世界に取り込まれていくようなそんな感じがするのです。

    小川洋子さんの小説を読むのは『密やかな結晶』に続いてまだ2作目ですが、もう完全に小川洋子さんの生み出す文章の心地よさに身をゆだねてしまっています。

    『コンビニ人間』や『消滅世界』のような普通の生活をまるで異次元世界のように描くことができる村田沙耶香さんの小説にも中毒性がありますが、このごく普通の生活のなかにある美しい部分、それだけを抽出して読者の目の前に広げてくれる小川洋子さんの小説にもまた違った意味での中毒性があるのです。
    例えるなら、村田沙耶香さんの小説が日頃歩いている道がいきなり崩れ落ち、気がつくと全く価値観の異なったパラレルワールドに迷い込んでしまっているような気持ちにさせられるのだとしたら、小川洋子さんの小説は日頃歩いている道に落ちている石ころが実はダイヤモンドだったり、エメラルドだったりということを気づかせてくれるような小説だと言えば分かりやすいでしょうか。それくらい、何気なく過ごしている毎日の生活には小さいけれどかけがえのない美しいものが詰まっているということを小川洋子さんの小説は教えてくれるのです。

    それから、この『博士の愛した小説』を読む前に事前に(これは偶然ですけれど・・・)、サイモン・シン氏の傑作『フェルマーの最終定理』を読んでおいたことが、本書を読むときに非常に役に立ちました。
    本書は、ある自動車事故から「記憶が80分しかもたない」という障害を負ってしまった数学者である博士が主人公なのですが、自分が数学者であった時の記憶ははっきりとしているので、障害を負った後でさえ、数学への愛はまったく以前と変わっていません。そんな博士のお世話をすることとなった家政婦の「私」とその10歳の息子・ルート(これは本名ではなく、博士が息子に付けたあだ名です)との数学を通じた交流が描かれるのです。

    本書には、「友愛数」「完全数」などという数学の神秘がなんども出てくるのですが、これは『フェルマーの最終定理』を事前に読んでいたので「ああ、あのことね」と難解な数論の話もついていくことができました。『フェルマーの最終定理』には数々の数学者が登場するのですが、この主人公の博士も彼らのように数学の美しさに取り憑かれた一人なのだなと、本書を読みながら一人で勝手に納得していました。

    それからもう一つ個人的に良かったことは、この小説の舞台が1992年のことなのですが、ルートが大の阪神タイガースのファンだったこともあって、本書には当時の阪神タイガースの試合の動向や選手の名前などが頻繁に出てきたところです。僕も、ちょうどこの頃、阪神タイガースのファンとして一番応援に力が入っていた時期で、背番号00を背負った亀山やパチョレック、久慈、和田、ノーヒットノーランを達成した湯舟、メジャーに行く前で若手とした大活躍していた新庄などの名前と出会うたびに、学生だった当時の僕の記憶が色鮮やかに浮かびあがり、この小説を読むことで僕だけの楽しみ方が出来たことでした。
    そして、阪神タイガースが博士の数学と絶妙に結びつき、博士の記憶の中で燦然と輝く阪神の大投手・江夏豊の背番号の秘密とが相まって、このラストへの壮大な伏線となっているところは見事でした。

    本書は、記憶が80分しかもたない博士と、家政婦の「私」と、その息子ルートとの「大人の愛の物語」と言い切ってしまっていいと思います。
    そこには、ドロドロとした恋愛ではなく、あくまでも真摯で崇高な愛の姿が描かれます。
    数学への愛、尊敬すべき者への愛、家族愛、庇護されるべき小さき者への愛、そして秘めたる愛。いろいろな形の愛が描かれ、そして、その一つ一つが暖かな光となって、この小説を読む者の心の中に優しく灯っていくのです。

    小川洋子さんの描くこのような美しく柔らかで暖かな小説は、僕の読書人としての今後の人生に非常に大きな部分を占めていくことになるのは間違いないと思います。
    本当に素晴らしい読書経験でした。ありがとうございました。

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著者プロフィール

小川 洋子(おがわ ようこ)
1962年、岡山県生まれ。高校時代に文芸を志し、早稲田大学第一文学部文芸専修入学。在学中から文芸賞に応募。卒業後一般企業に就職したが、1986年の結婚を機に退職、小説家の道に進む。
1991年『妊娠カレンダー』で芥川賞、2004年『博士の愛した数式』読売文学賞、本屋大賞、2006年『ミーナの行進』谷崎潤一郎賞、2012年『ことり』で芸術選奨文部科学大臣賞、2013年早稲田大学坪内逍遙大賞をそれぞれ受賞。芥川賞、太宰治賞、読売文学賞、河合隼雄物語賞などの選考委員を務める。
『博士の愛した数式』は映画化され、大ヒットとなった。受賞作以外の代表作として、『薬指の標本』『人質の朗読会』『猫を抱いて象と泳ぐ』。

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