博士の愛した数式 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (291ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101215235

感想・レビュー・書評

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  • 2017/06/12
    小川洋子さんの作品を読んでいると、自分が主人公としてその場に存在してストーリーを体験しているような気分になる。それほど繊細な言葉で綴られた文章。決してドラマのような大きな事件が起こるわけではなく、普段の生活の中で私たちが見逃しがちな出来事をすくいとって作品にしてあるように思う。自分は数学は嫌いだったけど、博士の話を聞いていると、不思議ともっともっと数について知りたいと思えてくる。ほんとに不思議な作品でした。

  • 博士とその周囲との関係性の、どれもがすごくピュアな「愛」でできている。ルートとの絆や、江夏への敬愛や......形は様々でも、どれもが胸にジンとしみる。記憶が続かないからこそ、博士の愛は常に純粋なものに更新されていくのでしょうね。
    数学の世界の、崇高で奥深い雰囲気にも魅惑される......優しさと高尚さが入り混じった不思議な余韻。

  • 80分しか記憶しておくことが出来ない。
    毎朝同じように初対面の挨拶がおこなわれ、体のあちこちには忘れてしまって困らないようにとメモが貼られている。
    たったひとつ、博士が興味を示すものは数字だけだ。
    淡々と過ぎていく時間と、タイガースファンという共通点のあった「私」の息子と博士の交流。
    80分を過ぎてしまえば博士の中には何も残らない。
    でも、記憶に残らなかったとしても…けっして無駄な時間ではない。
    そこには感動もあればあたたかさもある。
    数学は苦手だったけれど、捉え方によってこんなにも違う感じ方があるのかと…。
    優しさは「好き」という気持ちで構成されている。
    博士が好きだから、一生懸命に博士の話にあわせようとする息子。
    哀しいけれどあたたかい。
    優しい気持ちを大切にしたい…とあらためて思う。
    こんなふうに静かなあたたかさに満ちている物語に出会えたことに感謝!!

  • 映画化でも話題となった小説。80分しか記憶できない数学者と家政婦、その息子ルート(愛称)の心のふれあいを描く。話のあたたかさと数字の面白さにも目を向けさせてくれる。博士の一言一言をいとおしく感じられる。

  • 記憶が80分しか持たない老数学者と家政婦の私と息子のルートが主人公の物語。 とても暖かいのに神様は理不尽だなとも思わせられる。 ルートと博士、私と博士。ルートと私。そしてルートと博士と私。 どの関わりも手放しの愛情がきめ細やかに描かれていて。じんわりと暖かくなる。 そして、老数学者の手によって魅せられる数字の世界の鮮やかさに惚れ惚れしてしまった。 一度でいいから数字と式の羅列を「レース模様」と感じてみたい。

  • 本を1/3ほど読み進めただけで、友愛数や完全数という、今まで全く聞いたこともなかったような数字について理解している気になり、楽しくなっていた。物語中に登場する数字の1つ1つが、小川洋子さんの文章によってとても深い魅力をもつ特別なものとして伝わってくる。

    数字は人間の存在するずっと以前からただそこに在り、それを人間が学問しているのが、数学なのだと知った。

    誰ががある時0という数字を発見したことについて博士は、「無を数字で表現した。非存在を存在させた。素晴らしいじゃないか。」と褒めたたえる。確かに。こんな風にして数字や言葉は、目に見えないものを見えるようにするんだろう。物語の随所に、はっとするような大切なことが散りばめられていた。

    そして、数学や数字に対する畏敬や愛が、物語全体に溢れている。どこか哀しさの漂う、けれども愛情あふれる物語。

  • 「実生活で役に立たないからこそ、数学の秩序は美しいのだ。」

    このセリフは数学をまさに愛しているからこそ発せられるのだと思った。好きだけでは到底出てこないと思う。彼の周りに流れる穏やかな空気が、読んでいてとても心地よい。

  • 「目には見えない永遠の真実」

  • とても良かった!記憶が持たない博士という時点でストーリーが見え見えだけど、数学的な要素なども絶妙に取り入れられていて、飽きずに読めた。人を想う気持ちなど素敵に描かれていて、本当に素晴らしい作品。

  • 今年は本書の参考文献になっている「フェルマーの最終定理」を読み、数学検定を受け、そして何より大学の数学科の教授(どうも数論を研究しているようだ)と知り合いになったので、殊の外興味を持って読むことができた。
    80分で消えてしまう記憶は想像できそうで難しそうだ。先日この本の教授と同じように記憶を持ち続けることが出来ない方のドキュメンタリー番組を見た。絶えずメモを取りながらでないと日常を送れないのは不便さを通り越し、辛い毎日だろうと思ったのだが、本人はいたって明るく生活しようとしている姿が心に残っている。
    最近経験したこれからのことが、80分しか記憶が続かない教授と家政婦母子の間の心の交流に一見味気ないと思われる数字が役に立ったのは、まだ明かされていない数学の答えがそこにあったからなのかもしれない思わせてくれる。

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著者プロフィール

小川 洋子(おがわ ようこ)
1962年、岡山県生まれ。高校時代に文芸を志し、早稲田大学第一文学部文芸専修入学。在学中から文芸賞に応募。卒業後一般企業に就職したが、1986年の結婚を機に退職、小説家の道に進む。
1991年『妊娠カレンダー』で芥川賞、2004年『博士の愛した数式』読売文学賞、本屋大賞、2006年『ミーナの行進』谷崎潤一郎賞、2012年『ことり』で芸術選奨文部科学大臣賞、2013年早稲田大学坪内逍遙大賞をそれぞれ受賞。芥川賞、太宰治賞、読売文学賞、河合隼雄物語賞などの選考委員を務める。
『博士の愛した数式』は映画化され、大ヒットとなった。受賞作以外の代表作として、『薬指の標本』『人質の朗読会』『猫を抱いて象と泳ぐ』。

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