博士の愛した数式 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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レビュー : 3086
  • Amazon.co.jp ・本 (291ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101215235

作品紹介・あらすじ

「ぼくの記憶は80分しかもたない」博士の背広の袖には、そう書かれた古びたメモが留められていた-記憶力を失った博士にとって、私は常に"新しい"家政婦。博士は"初対面"の私に、靴のサイズや誕生日を尋ねた。数字が博士の言葉だった。やがて私の10歳の息子が加わり、ぎこちない日々は驚きと歓びに満ちたものに変わった。あまりに悲しく暖かい、奇跡の愛の物語。第1回本屋大賞受賞。

感想・レビュー・書評

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  • 人は生きていくうちに何かを失くしたり何かが欠けてしまうことがある。そんな時に、そっと耳元でそれが人なんですよ、それでいいのですと囁く声がする。
    人と違う自分を受け入れられず苦しむことになるかもしれない。けれど、この世に一人しか存在しないあなた、そのあなたが私はいいのですと肯定してくれる声が聞こえる。
    それが私にとっては小川洋子さんの物語だ。この「博士の愛した数式」は特に強くそう思える作品だった。

    80分の記憶しかもたない博士と、家政婦の私、私の息子ルート。3人の過ごした日々はお互いをいたわりあいながら、歓びや驚きに満ち溢れた日々だった。過去から前に進むことが出来ない、記憶力を失くした博士。けれど、失くすことの出来ない博士の数学への崇高な愛に触れた私とルートは、博士の欠くことの出来ない本質に惹かれていったのだろう。

    失くすことは悲しい。それでも、それがあなたの全てじゃない。あなたがいてくれてよかった。
    あなたがいるから、私がいるのですよ。
    私にも伝えたい人がいる。

    • mayutochibu9さん
      私はこの本を読んで心が温まりました。
      昨今、シングルマザーが多い時代ですが、博士の影響を受け、立派な大人になったのがとても感動をしたところ...
      私はこの本を読んで心が温まりました。
      昨今、シングルマザーが多い時代ですが、博士の影響を受け、立派な大人になったのがとても感動をしたところです。
      私も子供たちにどれだけいい影響を与えられるか、日々、考えております
      2019/12/07
    • 地球っこさん
      mayutochibu9さん、こんばんは。
      コメントありがとうございます♪
      そうですね、私もとても心が温まりました。
      子どもというのは...
      mayutochibu9さん、こんばんは。
      コメントありがとうございます♪
      そうですね、私もとても心が温まりました。
      子どもというのは、大人が思う以上にいろいろ考えてますよね。
      ルートが「私」が博士を信じていなかったと涙を流して怒る場面がありましたが、それは自分が博士を守れなかったと自分自身に対する怒りでもあったと思います。
      私はそこに博士と過ごすうちに成長したルートの姿を見ました。
      きっと「私」もルートの怒りの意味を判っていた思います。
      「子どもたちにどれだけいい影響を与えられるか」
      mayutochibu9さんのお言葉に、身の引き締まる思いがいたしました。
      ありがとうございました(*^-^*)


      2019/12/07
  • とてもとても素敵な話しだ

    80分しか記憶がもたない博士
    シングルマザーの私
    父親を知らないその息子

    皆何かが(結構)欠けている人たちばかりだ
    そんな3人が欠けているものをまるで補うような、そんな素敵な関係を壊れ物をそっと直すかのように優しさで埋め合う
    幸せって何か価値のあるものを持ってることじゃないんだ
    こんなふうにそっとそっと作り上げていく時に感じるものだ 
    改めて人の幸せについて考えさせられた
    幸せの尺度を勘違いしている世の中に
    「大事なことはこういうことなのですよ」
    と静かにそっと囁いて下さるようなそんな小説だ

    皆の境遇からして重くなりがちな内容であるが、阪神タイガースネタが何ともこの小説に明るいユーモアを挿し色のように添えている
    残念ながら私は巨人ファンであるが当時の選手たちの名前に懐かしさを覚え、楽しくなった(亀山はかっこよかったなぁ)
    3人で初めて球場に行ったときの描写も素晴らしい!
    自分も初めて球場に行ったときのことを思い出した
    想像を越えた球場の広さ
    まっさらで綺麗な手付かずのベース
    応援席の歓声のボリューム
    すべての圧倒的な臨場感
    3人の興奮は私の思い出の興奮と同じだ
    何か嬉しい

    数字の世界も良い
    知らないことがほとんどだが、数学って綺麗な世界なんだ
    こんな目線で数字を見るって素敵じゃないか
    数学の苦手な自分だがとても興味深くキラキラしたものとして博士に教えていただいた(笑)

    そしてルート君
    君はなんて良い子なんだ
    決して恵まれた境遇ではないのに
    なんて公正で思いやりがあるのだろう
    君の行動や発言には何度も感動したよ
    (息子になって欲しいと思う女性が続出に違いない)


    自然で嫌味がなく居心地が良い
    地味なんだけど、じんわりくる暖かさが本当に素敵である
    幸せのお裾分けをしていただいたような、
    そんなほっこりと優しい気持ちになれる

    大切なことは身近にあるし、ただ気づいていけばいいのですよ
    気づくことが大事なのです
    「私」が博士の背中を優しく撫でながら
    「大丈夫ですよ すぐ良くなりますよ」と言って下さっているように…そんなふうにに優しく教えていただいた
    そんな小説だった
    他にももっとたくさんの想いがあるが、言葉にするより、心に暖めて噛みしめていたいなぁ…


    とてもとても感謝の本

    • やまさん
      新年明けまして、おめでとうございます。
      今年も宜しくお願い致しますm(_ _)m。
      いつもいいね!有難う御座います。
      やま
      新年明けまして、おめでとうございます。
      今年も宜しくお願い致しますm(_ _)m。
      いつもいいね!有難う御座います。
      やま
      2020/01/01
    • ハイジさん
      やまさん
      あけましておめでとうございます。
      今年もどうぞ宜しくお願い致します。
      こちらこそいつもいいねをありがとうございます!
      やまさん
      あけましておめでとうございます。
      今年もどうぞ宜しくお願い致します。
      こちらこそいつもいいねをありがとうございます!
      2020/01/01
  • 登場人物の語る言葉の素直さ(嘘・偽りのなさ)が心地よく、そこに数式の美しさが溶け込んで品の良さを感じることができる作品でした。

    完全数、28、江夏の背番号。
    約数を足すと、その数になるのが完全数: 28 = 1 + 2 + 4 + 7 + 14
    連続した自然数の和で表すことができる: 28 = 1 + 2 + 3 + 4 + 5 + 6 + 7 (本当だ、美しい!)

    素数、11、村山の背番号。
    偶数である素数は2だけ。
    2以外の素数は 4n + 1 か 4n - 1 のどちらかで表すことができる: 11 = 4 * 3 - 1
    前者(4n + 1)なら2つの二乗の和で表せる: 13 = 4 * 3 + 1 = 2² + 3² (これも美しい!)

    私は数学も好きなので、博士の語る数式の説明に過剰に反応してしまった。

    阪神ファンの博士が集めた野球カードが大切に保管されているくだりを読んで、野球好きな私も収集していた野球カードを何年かぶりに取り出しました。
    気が付けばルートが博士に喜んでもらおうと一所懸命に江夏のレアカードを探したように、西武ライオンズを応援している同じ職場のお嬢さんが喜びそうなカードはないかと思いながら見直していました。

    数学と野球が好きな人には絶好の作品ですね。

    最後まで分からなかったのは、ルートを守るために博士が書いた数式の意味。
    その数式は 《 e^(πi) + 1 = 0 》 オイラーの等式(本書ではオイラーの公式と言っている)。
    √を守る?ための式。
    ルートに関係あるのは 虚数の i (= √-1)だ。
    どこかで謎解きがあることを期待するも、最後まで説明されず意味不明でこれだけモヤモヤが残りました。

    ただ、博士が最も美しいと感じ愛した数式が《 e^(πi) + 1 = 0 》であり、義姉は確実にその意味することを知っていたということ。
    「博士の愛した数式」が言わんとしていることは、読者がそれぞれ自由に考えてみればいいということなのでしょう。

    《 e^(πi) = -1 》としなかったのは、0 が必要だったからと想像します。
    作品の中で0の発見や0の意味について語っている場面がありますので、間違いないかと思います。
    0 は、ゼロであると同時に"円・輪"の意味を持たせようとしたのだと考えると、なんとなく分かったような気になります。

    • kuma0504さん
      こんにちは。小説も読みましたが、映画の時に私が「教えてもらった」のは以下の「解」です。いろんな解釈があるのはいいですね。

      月一回、映画好き...
      こんにちは。小説も読みましたが、映画の時に私が「教えてもらった」のは以下の「解」です。いろんな解釈があるのはいいですね。

      月一回、映画好きが集まっておしゃべり会をしている。今日は午後から三々五々やってきて、最終的には老若男女8人が熱心な話をした。本当に映画を好きな人間が思いっきり映画のことを話すことの出来る場所というのは、実はほとんど無い。私の知り合いはみんな私が映画を良く観ていることを知っているので、「今面白い映画ない?」とは聞いてきてはくれる。時には観た映画の感想を交換することはある。しかし、さらにもう一歩突っ込んだ話をしようとすると、「私そこまで真剣に映画は観ていないのに……」という顔をするので、それ以上言えなくなるのである。そのことで失敗もいくつかした。

      この会は純粋に自説を30分延々としゃべってもいやな顔はされない。今日は例えば「単騎、千里を走る。」で意見が真っ二つに分かれたけど、しこりは残らない。お互いの意見を尊重するからである。しかも映画音楽に関してはこの人、昔の映画については、ハリウッド映画については、ジョニーデップについては、と、それぞれ得意分野がある人もいて勉強になる。

      (というわけで前置きが非常に長くなりましたが)能の話に詳しい女性から「博士の愛した数式」についての講義を伺った。まさに講義だった。何しろ資料を五枚もコピーしてきてくれたのだから。

      この映画に関しては映画にうるさい全員が絶賛していた。小泉監督は原作を上手いこと換骨奪胎し、わかりやすく奥深い世界をつくっていた。謎として残されていたのは、最終場面である。浅丘ルリ子の義弟(この呼び方についても「おとうと」と言わないのは意味があるだろう)寺尾聰に対する態度は、非常に複雑なものがある。そこに現れた深津絵里、齋藤隆成親子。深津も実は禁じられた恋の体験者である。そして浅丘には無い子供をもうけている。「潔い足のサイズだ」と寺尾に誉められる深津は足を怪我している浅丘にできなかった行動力で寺尾の心を開いていく。浅丘が中尾と深津親子の仲を裂こうとしたときに出てくるのが、「オイラーの公式」である。

      私はこの公式の意味がわからなかった。しかし、とりあえず映画としての意味はすっきりわかった。

      オイラーの公式を示された浅丘はなぜか深津親子が中尾の世話を再開するのを認める。その場面の間に出てくるのが、中尾と浅丘が事故をする前に見たという能の場面なのである。

      能は「江口」という題目である。諸国一見の僧が江口の里を訪れ、西行法師と遊女とのやり取りを思い出す。そこへ里女、実は遊女・江口の君の幽霊が現れ、そのときのやり取りを回想する。西行法師は一夜の宿を遊女に求め、断られる。しかし、それは遊女が出家に対して世捨て人を思う心からで、宿を惜しんだのではないと弁明する。今江口の君はそのときを回想し、仮の宿であるこの世への執着を捨てれば、心に迷いも生じないし、人との別れの悲しさもないと仏教の悟りを開く。そしてその姿は普賢菩薩と変じ、西方浄土に去っていく。そういう「筋」であるが、講師は「後半は言葉では説明できない。」という。たから少し長いと思える能の場面をじっくり見て感じるしかないのである。

      映画で使われた能の場面は後半のクライマックスである。地謡は以下の如し。
      思えば仮の宿に、
      心となむ人をだに諌めしわれなり
      (映画ではここで二人は手をつなぐのである。)
      これまでなりや帰るとて、
      即ち普賢菩薩とあらわれ、
      (能ではここでシテは普賢菩薩になる)
      舟は白象となりつつ光とともに白砂の
      白雲にうちのりて西の空に行き給ふ
      ありがたくとぞ覚ゆる
      ありがたくこそは覚ゆれ

      オイラーの公式のe(πi)+1=0は調和の0悟りの0でした。
      能「江口」はオイラーの公式の「解」だったのです。
      悟りを開いたのは浅丘ルリ子です。
      だから彼女は「仮の宿」という執着を捨て、木戸を開いたのです。

      私はこの説明でものすごくすっきりしました。
      言葉では説明できない何かを感じたような気がしました。
      0は確かに「無」ではない。博士はこの公式を悲しんだのではない。
      やはり愛していたのだ。
      興味がある方は能の「江口」でいろいろ調べるといいかもしれません。
      2021/03/03
    • Kazuさん
      kuma0504さん、こんばんは。
      詳しい説明、ありがとうございます。
      能「江口」は、私にはよくわかりませんが、私が感じたことに近いよう...
      kuma0504さん、こんばんは。
      詳しい説明、ありがとうございます。
      能「江口」は、私にはよくわかりませんが、私が感じたことに近いようですね。
      やっぱり 0 が大切な要素だったと言ってくれているので、なんだか少し安心しました。
      2021/03/03
  • この小説も西加奈子さんの「i」と同じく虚数から始まる。
    年末の旅行、帰省のお供にと購入した2冊の文庫本が、期せずして共に虚数から始まる偶然に、まずニヤニヤしてしまった。

    何だよ、アイはあちこちに存在するじゃないか、曽田アイ。

    この本は、
    80分しか記憶が維持できない博士、シングルマザーの家政婦(私)、そして、家政婦の息子ルートの3人が織りなす、何かが欠けていつつも心あたたまる交流の話。

    80分の記憶ではどこにも到達し得ない。だからこそ、美しくかけがえのない、純粋な愛がそこにはある。

    幸せとは何か?ということを考えてしまった。

    感想書きながら気がついたんだけど…
    そうか、博士と義姉(未亡人)はかつて恋仲だったのね。事故で博士の脳挫傷を負って、その禁断の愛は永遠に封じざるを得なくなったんだ。

    それは、義姉の胸中を察すると、大変重くて辛いものがある。

    でも、「オイラーの等式」が全てを包み込んでくれた。
    数学に疎い僕は、まだその部分がぼやっとしているけど、もう少しこの数式を勉強すれば、もしかするとまた違うものが見えるのかもしれない。

    あと、背番号が完全数の江夏豊が大々的にフィーチャーされていて…というか、江夏豊なしにはこの小説は成立しない。
    江夏豊がこんなインテリジェンスな小説の中で、そんなに重要な存在であるということも、よくよく考えてみると笑える。

    じわじわっといろいろなものが広がってゆく。
    とても不思議で奥が深い小説。
    すごいっす。

  • なんだろう。この心が温かくなる感じ。
    小川洋子さんの紡ぎ出す文章の美しさと暖かさ。
    日々の生活に追われ殺伐とした心が真っ白で太陽の香りで満たされたシーツに優しく包まれていくような心地よさ。
    いくらでもこの文章を目で追っていけるような、そして文章から生み出されるこの美しき世界に取り込まれていくようなそんな感じがするのです。

    小川洋子さんの小説を読むのは『密やかな結晶』に続いてまだ2作目ですが、もう完全に小川洋子さんの生み出す文章の心地よさに身をゆだねてしまっています。

    『コンビニ人間』や『消滅世界』のような普通の生活をまるで異次元世界のように描くことができる村田沙耶香さんの小説にも中毒性がありますが、このごく普通の生活のなかにある美しい部分、それだけを抽出して読者の目の前に広げてくれる小川洋子さんの小説にもまた違った意味での中毒性があるのです。
    例えるなら、村田沙耶香さんの小説が日頃歩いている道がいきなり崩れ落ち、気がつくと全く価値観の異なったパラレルワールドに迷い込んでしまっているような気持ちにさせられるのだとしたら、小川洋子さんの小説は日頃歩いている道に落ちている石ころが実はダイヤモンドだったり、エメラルドだったりということを気づかせてくれるような小説だと言えば分かりやすいでしょうか。それくらい、何気なく過ごしている毎日の生活には小さいけれどかけがえのない美しいものが詰まっているということを小川洋子さんの小説は教えてくれるのです。

    それから、この『博士の愛した小説』を読む前に事前に(これは偶然ですけれど・・・)、サイモン・シン氏の傑作『フェルマーの最終定理』を読んでおいたことが、本書を読むときに非常に役に立ちました。
    本書は、ある自動車事故から「記憶が80分しかもたない」という障害を負ってしまった数学者である博士が主人公なのですが、自分が数学者であった時の記憶ははっきりとしているので、障害を負った後でさえ、数学への愛はまったく以前と変わっていません。そんな博士のお世話をすることとなった家政婦の「私」とその10歳の息子・ルート(これは本名ではなく、博士が息子に付けたあだ名です)との数学を通じた交流が描かれるのです。

    本書には、「友愛数」「完全数」などという数学の神秘がなんども出てくるのですが、これは『フェルマーの最終定理』を事前に読んでいたので「ああ、あのことね」と難解な数論の話もついていくことができました。『フェルマーの最終定理』には数々の数学者が登場するのですが、この主人公の博士も彼らのように数学の美しさに取り憑かれた一人なのだなと、本書を読みながら一人で勝手に納得していました。

    それからもう一つ個人的に良かったことは、この小説の舞台が1992年のことなのですが、ルートが大の阪神タイガースのファンだったこともあって、本書には当時の阪神タイガースの試合の動向や選手の名前などが頻繁に出てきたところです。僕も、ちょうどこの頃、阪神タイガースのファンとして一番応援に力が入っていた時期で、背番号00を背負った亀山やパチョレック、久慈、和田、ノーヒットノーランを達成した湯舟、メジャーに行く前で若手とした大活躍していた新庄などの名前と出会うたびに、学生だった当時の僕の記憶が色鮮やかに浮かびあがり、この小説を読むことで僕だけの楽しみ方が出来たことでした。
    そして、阪神タイガースが博士の数学と絶妙に結びつき、博士の記憶の中で燦然と輝く阪神の大投手・江夏豊の背番号の秘密とが相まって、このラストへの壮大な伏線となっているところは見事でした。

    本書は、記憶が80分しかもたない博士と、家政婦の「私」と、その息子ルートとの「大人の愛の物語」と言い切ってしまっていいと思います。
    そこには、ドロドロとした恋愛ではなく、あくまでも真摯で崇高な愛の姿が描かれます。
    数学への愛、尊敬すべき者への愛、家族愛、庇護されるべき小さき者への愛、そして秘めたる愛。いろいろな形の愛が描かれ、そして、その一つ一つが暖かな光となって、この小説を読む者の心の中に優しく灯っていくのです。

    小川洋子さんの描くこのような美しく柔らかで暖かな小説は、僕の読書人としての今後の人生に非常に大きな部分を占めていくことになるのは間違いないと思います。
    本当に素晴らしい読書経験でした。ありがとうございました。

  • 「博士の愛した数式」 小川洋子(著)

    平成17年12/1 文庫初版 (株)新潮社
    令和2年1/20 51刷

    再読。
    改めて第1回本屋大賞受賞作品を読んでみた。

    はっきりした輪郭を持たない登場人物たちが
    しっかりとした生活を続け

    意味のある力強い未来を作り出していく。

    本当に素晴らしい作品だった。
    いや、本当に本当に素晴らしい作品でした。

    原田マハにハマって
    次は村上春樹をまた読んでみようかなぁ…
    って思っていたのですが

    小川洋子にします。

    文庫の楽しみでもある巻末解説は

    小川洋子の取材を受けた数学者 藤原正彦氏
    素晴らしい解説をありがとう!

  • 2020年積読本消化1冊目。
    記憶という閉ざされた空間と数字が絡む物語。思っていたよりも内容が難しかったせいもあり読み終えてからも、どうまとめたらいいのか分からない…という日が続いた。

    小川さんの作品を読むといつも感じることがある。物語はスノードームの内部ように完全で美しくて静か。陽だまりでふんわりしているけど寂しさが含まれている。本を読んでいるのに、輝くひんやりとしたスノードームを手に取って外から眺めている感じがした。

    記憶が80分しか持たない博士が言う「祝福」という言葉がとても素敵だった。世界中の子どもがルートくんみたいに大切に、意思を尊重されて育つことが出来たなら、どんなに素敵なことだろうか…。本当に儚くていとおしい世界観でした。

    「お祝いをしよう。子供には祝福が必要だ。いくら祝ってやってもやり過ぎということがない。ご馳走とろうそくと拍手があれば、子供は幸せなのだ。」(239ページ)

    ママと二人暮らしのルートくんが、博士と出合い、抱擁されて祝福されて日々成長してゆく。博士に愛された数式というのは、きっとルートのことなんだろう。
    博士にとっては、たとえ消えてなくなってしまう記憶だとしても博士の身体の隅々深部に間違いなく影響を与えてくれていた家政婦さんと、家政婦さんの子どものルートくん。特にルートくんと博士のあたたかい友愛で結ばれた心の絆は、読むものの心を温める不思議な空気が流れていて、何度もじーん…としてしまいました。よい作品でした。(第一回本屋大賞…本屋大賞なめてた、ゴメンね)
    次あたりは『生きるとは、自分の物語をつくること』を読むこと。

    • nejidonさん
      まっきーさん、こんにちは(^^♪
      すごい!一発クリックで読めたことに感動してます!
      この本を読んだのはかなり前ですが、記憶の糸を手繰り寄...
      まっきーさん、こんにちは(^^♪
      すごい!一発クリックで読めたことに感動してます!
      この本を読んだのはかなり前ですが、記憶の糸を手繰り寄せてレビューを
      読みました。
      そして私もカッコ内と同じことを思いましたよ。
      全作品ではないですけどね、小川さんのこの作品は素晴らしいです。
      すぐに読めた喜びとともに書きこみました。
      2020/01/11
    • まっきーさん
      nejidonさん、コメントありがとうございます!
      一発クリックで行き来できて、相互フォロー出来てよかったです(^^)便利ですね。

      ...
      nejidonさん、コメントありがとうございます!
      一発クリックで行き来できて、相互フォロー出来てよかったです(^^)便利ですね。

      小川洋子さんは色々な方がお薦めしてくれていたのですが、ここ数年で読み始めて
      世界観に魅了されてしまいます。本当に素敵ですね。
      あとカッコ内のことは私だけじゃなかったのね…と、すこしホッとしています。
      これからもどうぞよろしくお願いします<(_ _)>
      2020/01/11
  • 数学は得意じゃないけど数字の美しさが少しだけわかった気がして嬉しかった。博士とルートの真っ直ぐな心に感動でした。暖かい小説で、ゆっくりと再読したい!

  • 博士と私とルートのお互いを思いやる空気感がほのぼのとして良かった。
    いわゆるアルツハイマー認知症と違って、記憶が80分しかもたないと自覚のある博士は辛いだろうなぁと思う。そして私とルートがそれを理解してほんとに優しい。
    誰一人、名前が分からないままなだけに登場人物がすごく身近に感じられた。

  • 『自分』とは思考だ。
    思考を積み重ねることができない事を悟った朝、『自分』が崩壊する衝撃が痛かった。

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著者プロフィール

1943年 鹿児島県生まれ
1974年 東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位
取得退学

主な訳書
テオプラストス『植物誌1』(京都大学学術出版会)
フィンレイ編著『西洋古代の奴隷制』(共訳、東京大学
出版会)
クラウト編著『ロンドン歴史地図』(共訳、東京書籍)
ストライスグス『ギリシア』(国土社)

「2015年 『植物誌2』 で使われていた紹介文から引用しています。」

小川洋子の作品

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