- Amazon.co.jp ・本 (334ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101215259
感想・レビュー・書評
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以前に読んだ小川洋子さんのエッセイ集2冊とはまた違った小川さんを見られました。
その2冊からわたしが窺い知る小川さんは、作品と地続きになっているような静謐な空気が流れる日常を過ごされながら、魅惑的だったり幻想的だったり……そんな素敵な作品のイメージからは想像できない、クスッと笑ってしまうお茶目で可愛らしい女性です。
そこに今回、「作家」小川洋子としての本に対する真摯な眼差しを知ることができました。
小川さんは自分の読書への向き合い方について“『中国行きのスロウ・ボート』を開きたくなる時”に、敬愛する作家の最も好きな作品を読むとき、純粋な読み手としてではなく書き手として向かい合ようになったことから、いかに物語が豊かであるか、より実感を持って知ることができたと綴っておられます。と同時に、これほどまでに愛される作品書いた村上春樹に、奇妙な嫉妬を感じたりもしていると明かしておられます。この「奇妙な」の部分が小川さんの人柄を表しているようで、決してそれはネガティブな性質の嫉妬なんかじゃないだろうなと思えます。
作家小川洋子が愛する物語を紹介したエッセイ集でした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「博士の本棚」エッセー
小川洋子さんはエッセーもおもしろい。
短編集なので、ちょっと空いた時間にサラッと読める。
「博士の愛した数式」を執筆するエピソード(ちょっとだけ抜粋)
「完全数を背負う投手」
『28は完全数。この一行を眺めてひらめいた。江夏の背番号じゃないか、と。ここから江夏豊を愛する数学者を主人公にした小説がスタートした。(中略)28が持つ永遠の完全さに比べ、人間とは何とはかなく、不完全な存在であろうか』といった具合に...。
「読書は楽しい」 -
読みたい本がいくつも見つかった。
言葉の力とそれに伴う責任を再確認した。
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印象的だった一節
「言葉がぐさっと胸に刺さった時は、かつて私の口から吐き出された言葉によって傷ついた誰かに向かい、心の中で謝ることにする。」
言葉遣い、言葉選びには自分なりに気をつけているつもり。子どもたちと向かい合う時にはなおさら。
それでも、やっぱり「誰1人傷つけない」はきっと難しくて、でもそれを諦めたくはなくて。
悩んでた時に出会ったこの言葉、大事にしよう。
言葉を向ける人にも、それを発する自分にも心を留めよう。 -
小川洋子が愛する本たちのエッセイ集。本のことだけでなく、彼女の愛犬ラブ(永遠のやんちゃ君)のことや、『博士の愛した数式』にまつわる話、生活の一片を綴ったものなども。かつてタイトルからエッセイと思って手にした『原稿零枚日記』のような日記もある。エッセイに出てきた本、どれも読みたいと思う。作家への敬意と本への愛が溢れている一冊。
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人の本棚を覗くのは、どうしてこんなに楽しいんだろう?
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「どうしてこんなに楽しいんだろう? 」
ビビっときたり、ふふんとなったり、おーとなったりするからでしょう。。。「どうしてこんなに楽しいんだろう? 」
ビビっときたり、ふふんとなったり、おーとなったりするからでしょう。。。2014/05/22
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読書エッセイを読むのがたまらなく好き。
本の話ができる友達が周りにほとんどいないから、(友達自体ほとんどいないが)自分が好きな作品や既読の作品について書いてあると心のなかで相槌打ったり言葉を返したりしながら読んでいる。
それで、その中の気になった作品を本屋に買いに走ったり、また読み返して、もう一度そのエッセイを読む。報告するみたいな感じで。
というわけで今回は「アンネの日記」を読み返し、「富士日記」を買いに行きます。-
「もう一度そのエッセイを読む」
マメですねぇ~
知らない本や、喰わず嫌いで読んでなかった本に、思いもかけない光が当たったり。。。
先入観無し...「もう一度そのエッセイを読む」
マメですねぇ~
知らない本や、喰わず嫌いで読んでなかった本に、思いもかけない光が当たったり。。。
先入観無しで本と対峙したいと思いつつ。本に纏わるエッセイを読むのは止められませんね。2012/07/24 -
>nyancomaruさん☆
一度読んでイマイチと思った作品でもエッセイとか書評読んでからまた読み直すといい部分を感じ取れたりするから...>nyancomaruさん☆
一度読んでイマイチと思った作品でもエッセイとか書評読んでからまた読み直すといい部分を感じ取れたりするから好きです。2012/07/25 -
「いい部分を感じ取れたりするから好きです」
読み直して良かったと思えたら、紹介エッセイや書評を書かれた人の信頼度が増しますよね。
自分では全...「いい部分を感じ取れたりするから好きです」
読み直して良かったと思えたら、紹介エッセイや書評を書かれた人の信頼度が増しますよね。
自分では全然手に取らないような本を読んで、世界が広がります。。。2012/07/27
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こうやって読みたい本は増えてゆく。もう抱えきれないくらいなんだけどなあ。
読むことでも、書くことでも、世界は広がってゆく。 -
小川洋子先生、圧倒的に自分の内面をさらけ出すエッセイよりも赤の他人とか隣人だとか、社会的第三者と接しているネタのときのエッセイが圧倒的に読みやすいしおお…と思わされるのを書いていてなんか…なるほど…って思った……
書いているものと人格ってか、人当たりはやっぱり乖離するもんなんだな…
少なくとも”小川洋子”はそういう作家だったんだな… -
子どもの頃に読んだ本についての思い出、影響を受けた本、飼っている犬の話、食卓日記などのエッセイ。いろんなことがちりばめられていて飽きなかった。何冊か読んでみようと思える本にも出会えた。
一番多く書かれていたことは影響を受けた本への思い。同じ本を読んでいても細かいところ、深いところに気づくのが作家になる人なのかもと思った。
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あとがきすら乱暴な文体の作品が増えてきた日本の文学界にあって、小川洋子は気持ちがいい。
作家の読む本というのは、それだけで気になるもの。
ある作家が書いた本をさらに魅力的に見せる魔法のようなものがある。もちろん逆もあるが。読む方は文が短いと読むのが楽という単純な調子になるが、書くほうが短くまとめるのは特に気に入った本については難しいものだ。
そんな難しさを見せず、しかし生きた日本語でありながらその世界に入れる文を書く小川洋子。
若い頃、同時代日本人の作品をほとんど読まなかったが、今は特に女性ならではの感情の豊かさに惹かれる。
蠅取り紙は、私も薬品や電気を使いたくないので今でも使っているのだが、ひっかかったハエの気持ちはいつも複雑になる。と言っても現代では蝿すらあまりいないが、小さい頃同じような気持ちになったものだ。
蝿取り紙のカモ井加工紙の皆さんが「蝿供養」をしているのは知らなかった。有難いことである。