生きるとは、自分の物語をつくること (新潮文庫)

  • 新潮社 (2011年2月28日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (160ページ) / ISBN・EAN: 9784101215266

感想・レビュー・書評

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  • 20250304読了
    臨床心理学者の河合隼雄先生と、『博士の愛した数式』の著者である小川洋子さんの対談をまとめた作品。
    『カウンセリングを語る』からも伝わってきた河合隼雄先生の、温かくて大きい器のようなお人柄、そばにいてくれるだけで安心できる存在であったことが、本作からも、みしみしと伝わってきた。

    生前の母との関係がうまく行っていなかったこと、母を亡くした直後であることもあり、出家と家出、絆し(ほだし)と絆(きずな)の場面と、"やさしさの根源は死ぬ自覚"の箇所は特に胸に響いた。
    初めから限られた命であること、人には必ず死が訪れるということを本当の意味で理解していたら、私も母の闘病に寄り添い、一緒に帽子を選ぶような、"永遠を感じさせる至福の時"を過ごすことができただろうか…。どこまでいっても、タラレバになってしまうが、やはり悔いは残る。

    一方で、本作の中の『原罪』と『原悲』のお話は、母の死に対して後悔の気持ちが大きい私にとって、大きな"気づき"であり、救いとなった。罪悪感(私にとっては病死した母の死)を重荷として苦しんでばかりいるのではなく、礎(荷物を頭の上に載っけるのではなくて、生きていくために踏ん張る足を支えるものに変える)にしなければいけない。
    今このタイミングで、本作を読むことができて、本当によかった。

  • 生きるとは自分の物語をつくること。題名の深い今は2人の対談の中から汲み取るとしても、なかなか理解するのが難しいかも。小川洋子さんと河合隼雄先生の対談集。河合隼雄さんと言えばよく村上春樹さんと対談、共著もあったと思う。人は結局、矛盾を物語をつくって消化し理解して受け入れて生きていくしかないのかな。みんな辛い、それを克服して生きていく。

  • 当時、文化庁長官もつとめていた心理学者で心理療法家の河合隼雄と、小説家である小川洋子の対談が主な内容です。2005年と2006年に行われた二回分の対談が約100ページ、対談の翌年に亡くなった河合氏に向けた小川氏による追悼文が約30ページです。

    第一回は2005年の雑誌・週刊新潮における対談で、映画化作品も含めて小川氏の小説『博士の愛した数式』を主要な話題としています。これを受けて翌年に行われた第二回は、カウンセリング、箱庭療法、『源氏物語』、宗教(小川氏の両親・祖父母が信仰していた金光教についてを含む)、日本と西洋の価値観の比較など、扱うトピックは様々ですが、大きくは物語とは何であるかを巡る対話となっています。全般に、どちらかといえば小川氏が河合氏から知見を引き出す傾向が強かったように思います。河合氏がときおりダジャレを発すのは、村上春樹との対談同様でした。

    二回目の対談の終わり方を見る限り、継続的な対談が企画されていたように見受けられます。文字サイズも大きく一冊の書籍としてはボリュームが不自然に少ないのは、対談から二か月後に河合氏が倒れて翌年に亡くなったために計画が頓挫した影響でしょう。自然と小川氏による追悼文は、二回の対談を振り返る意味合いが色濃くなっています。

    以下、印象に残った言葉を私なりに箇条書きで要約して残します。

    ・友情は属性を超える
    ・良い作品(仕事)は作り手の意図を超えて生まれる
    ・分けられないものを明確に分けた途端に消えるものが魂
    ・やさしさの根本は死ぬ自覚
    ・魂だけで生きようとする人は挫折する
    ・カウンセラーには感激する才能が必須
    ・一流のプレイヤーほど選択肢が多い
    ・奇跡のような都合のよい偶然は、それを否定している人には起こらない
    ・物語を必要としなかった民族は歴史上、存在しない
    ・小さい個に執着すると行き詰まる
    ・人間は矛盾しているから生きている
    ・矛盾との折り合いにこそ個性が発揮され、そこで個人を支えるのが物語
    ・望みを持ってずっと傍にいることが大事

  • 裏表紙にある通り河合隼雄さんの最後の対談なのだと認識して読み始めたはずなのに、終わりに差し掛かる頃にはすっかり頭の隅っこの方に追いやってしまっていたようです。「また今度」と手を振った直後に死を思い出した(?)とでも言えばいいのか、強烈な余韻の中に取り残された気分です。ハリーポッターのシリウスかダンブルドア先生かが死ぬ場面か、最終巻で夢か現か分からない状態でプラットホームで先生と話していたはずがホワイトアウトする場面か、辺りと似たような感覚かもしれません。要するに「もっと話を聞きたいのに!」「教えて下さい、どうしたらいいのか!」という気持ちの問題です。心を落ち着かせてくれる、ときにはクスッとさせてくれる、絶妙な話を展開してくれただけに。

    二人の対談の中で今の自分の心にビビッと来たのが、昔の人は死ぬことを考えていたけれど、今では生きている時間が長くなって生きることを考えるようになった、というようなくだりです。学生の間はテキトウな間隔で社会的な区切り目があったのが、大人になったら還暦辺りまではしばらくノンストップな感じがあって、イマドキお年寄りと呼ばれるようになっても大病をしない限り寿命が分からない具合になっていて、そういうことを考えてたまに広場恐怖症のような感覚に苛まれることがあります。それと同じ位、人間どれだけスケジュールが未定でも、最後の一日に死ぬことだけは決まっているという事実を唐突に考えて背筋が凍るような気分になることもあります。ただし極端に気持ちが沈んでいるというわけでもなく。でも、どちらも割と人として普通なことで、そこに伴う恐怖心が物語を生んでいるということ、そして死んでからの方が長いという表現。別に新しい言葉だったわけではないような気もするけれど、悶々としていたこのタイミングで欲しい言葉に会えた感じがして嬉しかったのです。

    後は西欧一神教の世界観の話。日本人もキッパリしている人はキッパリしているけれど、ケースごとに細かったり、自覚無く軸が曖昧だったりして、一神教の世界の人からみたときに全く一貫していないと思われてもおかしくないのでしょう。私はキリスト教に触れざるを得ない生活をしてきたからか、一時その点で馬鹿みたいに葛藤したことがありました。細々としたところにおける自己矛盾に対する罪悪感みたいなものです。変なベクトルの真面目さはもう捨てよう、とどこかで思ったもので、今では若干思考を放棄していますが。でも、とにかく言わんとすることがよく分かった分、印象に残る話でした。尻つぼみ気味に終わっておきます。いくらでも対談に混ざり込んで傍で勝手に適当に雑談する感じで、ペラペラ話せそうですが。

  • 物語を作り出す作家・小川洋子さんと、人が生きる上での困難を受け入れるための物語作りに伴走する臨床心理学者・河合隼雄さんが「物語」について語り合う。一見全く専門性の異なる二人の世界が「物語」を介して交わるのが面白い。

    短いけれども示唆に富む内容で、物語の意義に加えて、日本の曖昧さ・混沌への許容度に接して何か癒されるものがあった。(104p. 人間は矛盾しているから生きている。)

    対談道半ばで河合さんがこの世を去ってしまったことは残念だけど、この本のヒントを手がかりに河合さんの他の著書を読んでもう少しお話を聞いてみたくなった。

  • 硬くなった心や頭をゆっくりとほぐして深く考える時間をもたらしてくれた1冊。
    何気なく手に取ったので、河合隼雄さんの最期の対談であったことも読み始めてから知りました。
    河合さんと小川さん、お二人の温かさと穏やかさがほくほくと感じられ、まるでお風呂に入っているような気分になりました。

    ですが、内容は穏やかなものばかりではありません。
    箱庭療法、御巣鷹山の飛行機墜落事故やアウシュビッツ、信仰、秘密を守ること…。
    そういった話題についての会話がやさしい言葉ですぅっと読み手の中に入ってきて、ゆっくりととどまる。
    それらはきっと、長い間とどまって、じわじわとにじみだすように後から効いてくるような気がします。

    村上春樹さんと河合さんの対談は私にはなかなか難しかったのですが、本書は私にちょうどよい感じでした。
    またいつか読み返そうと思います。

  • やさしさの根本は死ぬ自覚という言葉が強く心に刺さった。

  • 『小川洋子のつくり方』の中の全作品紹介を読んで興味を持った一冊。
    大学で心理学を専攻した身として、河合隼雄はもちろん知っていたけれども、なぜかどうしても著書を読む気持ちにならず、当時周りがみんな読んでいたのに、何となく話を合わせて読まなかったわたし。
    今この本に出会えて良かった。

    ''人間は矛盾しているから生きている、整合性のあるものは生き物ではなく機械です''
    矛盾を意識し、折り合いをつける。その折り合いの付け方が個性であり、物語だ、と。2人がそこで共感していて、共感し合えることが素晴らしいと思った。

    その物語を小説にして見せてくれる小川洋子さんの作品は、だから心に響くのか。

    「傍にいること」の章では、''苦しみ、悲しみを受け止め、一緒に苦しむけど、望みを失わずにピッタリ傍にいれればもう完璧''だ、と。
    娘に対しても、仕事上でも、常に心に留めて行動すべき金言だと思った。

    必要な時に必要な本に出会えるんだなぁ。

  • 私の人生の教科書がまたひとつ増えました。
    大切な、大切な本になると思います。
    あとがきで泣いてしまったのは初めてです。

  • 昔、ユングに興味があった時、河合さんの講演を聴きに行ったことがある。
    ユーモアに溢れたとても面白い公演だった。
    一番最後に、質問を受け付けていて、手を挙げた人がいた。
    「どうしてこの道に入ろうかと思ったのか」という問いだった。
    著作を読むと、動機について、教師をしていた時期に生徒の悩みを聞き、それを何とかしたいと思ったと、よく書かれてあった。
    しかし、その時の答えはちょっと違っていた。
    「何かこういう研究をしないと、自分がおかしくなってしまうのではないかと思った」と吐き出すように言われたのだった。
    私もこんな闊達で明るい人が、どうして重く苦しい心の研究をしているのだろうと不思議に感じていたので、何となく得心がいったのをよく覚えている。
    ご自分の中にも患者さんの抱えているものに匹敵する重い何かがあったのだろう。何かは知らないけど。
    恐らく仕事を通してそれは浄化されるのだろう。

    小川洋子さんの小説の世界を題材に、和やか、かつ刺激的。河合さんの最後の対談。
    西洋人と日本人の倫理観の違いが興味深い。

  • ブクログ談話室でオススメしていただいて読了。
    恥ずかしながら河合隼雄さんの存在を初めて知ったのですが、こんなにも真の意味で人は暖かくなれるのかと、その功績に触れてみたいと思う。ご存命でないのが非常に残念。
    ありのままに、死をも受け入れて生きていけば人はもっと優しくなれる。あなたも死ぬし、わたしも死ぬ。当たり前のことなのに、改めてその事実を受け入れて生きていきたいと願う。
    何かにつまづいている時にゆっくり読みたい本。

  • 対談の柔らかくあたたかい雰囲気が良い。
    カウンセリングと物語の話もとても興味深いが、個人的には、河合隼雄さんの著書や対談を通して小川洋子さんが「なぜ小説を書くのか」という、若い頃には答えるのが苦痛だった問いに対して、「誰もが物語を作っているのだ」という気づきを得て答えを見つけていった、というあとがきの文章がとても素敵だった。

  • #生きるとは自分の物語をつくること
    #小川洋子
    #河合隼雄
    #読了
    二人の対談。難しいけど難しくない。難しくないけど難しい。思考力のいる文章だった。

    望みのないときにどうするか

    望みをもってただそばにいる

    人に寄り添うとはそういうこと。

    小川さんの物語を書く意味についての語りが好きだ。

  • 生きることは物語であり、他者との繋がりもまた物語である。身近で大切な誰かの喪失を受け止め乗り越えるのためにもまた物語が必要である。

  • 河合隼雄先生が、各界の著名人とインタビューするシリーズの、一番最後の本となってしまった小川洋子さんとの対談。河合先生の対談の中で一番好きかもしれない!!
    一人一人の「物語」に興味を抱いている私にとっては、そうなの〜〜〜〜〜〜!!と身悶えするようなフレーズが満載。
    すみずみまで、実の伴った(「実感がこもった」どころじゃないよ)珠玉の言葉たちが詰まっていて、…河合先生がすごいのはもちろんなんだけど、これ、作家の小川洋子さんがやっぱりすごい方なんだなと。

    河合先生の死によって、この対談は心ならずも途中で終わってしまうのだけど、それによって書かれた小川洋子さんの「長すぎるあとがき」も素晴らしい。

    「物語」とはなんなのか、なぜ人は物語るのか、そんな問いを胸においている方はぜひ読んでほしい。


    好きな言葉はフレーズに登録したので見てください(笑)

    いや、読んだ方が早い。文庫だし、例によってスラスラ読める。ぜひ!

  • 悲しい出来事を受け入れるには、その事実だけでなく
    物語が必要とのこと。
    なるほどなぁ。

    大切な人が病気で亡くなった事実だけでは受け付けない。
    こんなタイミングだったから、とか
    これだけ頑張ってた人だから、とか
    それぞれの物語をつけたくなる衝動を言語化してもらった。

  • 読むだけで、カウンセリングを受けてるような気分になる。悪いものを悪いまま受け入れる「原罪」の話は、河合隼雄先生の包容力を感じると同時に、ポジティブ思考だけではかえって自分を見失うんじゃないかという、私の違和感への答えになった。不思議な物語を生み出す小川洋子さんとの対談は、期待通り、面白かったのだけど、それよりも「あとがき」が素晴らしくて。
    長いあとがきを読むことで、少しずつ、読むことの叶わなかった対談の続きの物語が、別の形で昇華されて行く気がした。
    それにしても、河合隼雄先生の遺作が小説であったことと、この対談のタイトルとの間に不思議な符合を感じるのは、考えすぎだろうか。

  • 臨床心理学者の河合隼雄先生と人の心を描き続ける小説家小川洋子が『博士の愛した数式』を皮切りに様々なテーマについて語った対談集。

    各ページのやり取りに心がポッと温かくなります。
    長い本ではないので、割とすぐに読めます。

    要約やかいつまんでの書評はできない内容ですが、自分の人生を物語として捉えるのっていいですね。

    特に様々な人生と苦悩に向き合ってきた河合隼雄先生が言うと説得力がある。

    特に最後の欧州と日本の違いは面白かった。
    日本人は意志を曲げたり、間違いを認めることは何とも思わないが、西洋の文化からすると、どうしても認めらないようなことになる。
    それは西洋には確固たる主体の自分がいるから、そしてそれは一神教をベースにしているからではないか。

    あと西洋宗教は原罪であり、日本宗教は原悲であるというのもなるほどと思った。

  • 数学は科学の女王。優しい、優しい、優しい。

  • 数年前に読んだときはピンと来なかった2人の会話が染み込んできた。

    曖昧を持ち合わせたまま生きてよいのだということ励まされた。合理性を過剰に求めなくていいことにも。なぜ小説が、物語が人間に必要なのかがよくわかります。とても癒される。

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著者プロフィール

1962年、岡山市生まれ。88年、「揚羽蝶が壊れる時」により海燕新人文学賞、91年、「妊娠カレンダー」により芥川賞を受賞。『博士の愛した数式』で読売文学賞及び本屋大賞、『ブラフマンの埋葬』で泉鏡花文学賞、『ミーナの行進』で谷崎潤一郎賞、『ことり』で芸術選奨文部科学大臣賞受賞。その他の小説作品に『猫を抱いて象と泳ぐ』『琥珀のまたたき』『約束された移動』などがある。

「2023年 『川端康成の話をしようじゃないか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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