眩 (くらら) (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
4.38
  • (29)
  • (33)
  • (4)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 287
レビュー : 33
  • Amazon.co.jp ・本 (454ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101216317

作品紹介・あらすじ

あたしは絵師だ。筆さえ握れば、どこでだって生きていける──。北斎の娘・お栄は、偉大な父の背中を追い、絵の道を志す。好きでもない夫との別れ、病に倒れた父の看病、厄介な甥の尻拭い、そして兄弟子・善次郎へのままならぬ恋情。日々に翻弄され、己の才に歯がゆさを覚えながらも、彼女は自分だけの光と影を見出していく。「江戸のレンブラント」こと葛飾応為、絵に命を燃やした熱き生涯。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 北斎の娘の一生
    派手な事件が起きるわけでもないのだけれど物語は起伏に富み、最後まで飽きさせない作者の力量が素晴らしい。

  • 北斎の娘・お栄。父同様に絵の道を進む、彼女の熱い生涯を描く。
    第一章 悪玉踊り  第二章 カナアリア  第三章 揚羽
    第四章 花魁と禿図 第五章 手踊図    第六章 柚子
    第七章 鷽     第八章 冨嶽三十六景 
    第九章 夜桜美人図   第十章 三曲合奏図 
    第十一章 冨士越龍図  第十二章 吉原格子先之図
    参考文献有り。葉室麟による解説と対しての謝辞。
    絵を描くこと、色彩に魅せられ、絵師の道を歩む北斎の娘・お栄。
    家族との確執、報われぬ恋、老いた父・北斎の世話等、
    ままならぬ生活の中での、彼女の生き様を描いています。
    それにしても北斎の存在の重さ。独り立ちした者にも、お栄にも、
    北斎の側にいた喜びと共に“本物の絵師”への憬れからは
    逃れられない。絵師を辞めた善次郎。苦悩する五助。時太郎も?
    人生ばくち打ちなのは“北斎の孫”が付き纏うからなのか?
    悪事に手を染めるのも、自分を見て欲しいという愛への渇望か?
    だからこそ、大地震の時の「姉ちゃんっ」の叫びは、本心と
    思いたいです。
    先に画集と評伝に接していたため、史料と作品の少なさは
    知っていましたが、それらを創作に取り込み描いたお栄の姿。
    なんて生き生きと動いていることか!
    ラスト・・・どこでも行ける。どこで生きてもあたしは絵師。
    60歳になっても絵師と言い切る潔さは、素晴らしい!
    章も、応為の絵の題名や関連のある名称で、画集で観た絵を
    思い出させてくれました。

  • 北斎ほどには知られてないが、彼の画業を手伝いながら、自らも絵師として活躍した北斎の娘お栄が主人公。
    史実とフィクションとの融合により、圧巻の時代小説となっている。
    表紙は現代作家のイラストかと思っていたが、本書の主人公お栄=葛飾応為作だったとは!!
    江戸時代の絵は、浮世絵に代表される平面的な絵ばかりだと思っていた浅学を恥じたい。江戸のレンブラントと謳われるのも御意。
    彼女の描いた絵が、後半の章の題名になっている。
    「夜桜美人図」
    「三曲合奏図」
    「吉原格子先之図」
    どれも、実物を見たいものだ。

  • 葛飾応為こと北斎の娘・お栄の物語。

    今の時代にも通じる、女性にありがちの日常のあれこれのわずらわしさ、家族のごたごた、こちらの思いを理解しようともせず、自分の価値観を押し付けてくる母親との軋轢、泡沫の恋・・・そんなものを背中にしょったまま、絵画の道を歩く女性の姿が、身に染みる。お栄は、作者の分身でもあるのかしら。

    この作品をもとにしたドラマがあった(と思う)せいか、冒頭の北斎が絵筆を取る場面を読んでいたら、絵が浮かび上がってきて動き出すのが見えたような気がしました。合奏の場面も、3人の姿が見え、音が聞こえるようで、楽しかったです。

  • 初まかて。兎に角、葛飾応為こと北斎の娘・お栄の人物描写が秀逸。絵に真っ直ぐな、お栄の姿が眩しい。こんなにまで自分を捧げる“何か”があるってのは本当に羨ましい——。ただ物語を描く上で必要だったとは言え、北斎の孫・時太郎が最後の最後までクズすぎて…。評価は星四つ。

  • 2018/4/6
    北斎の娘お栄の話。
    芸術家の業の話大好物。
    とは言え、お栄は芸術家だから仕方ないと周りから保護される部分が少なくもどかしい。
    そしてそのもどかしさがなかなか新鮮。
    疫病神の甥っ子や弟の嫁なんかは本気で腹が立つんだけどね。あと贋作作らせようとした奴らとか。
    家出してくれてスッキリしたわ。
    芸術ってやっぱりウチから迸り出るものなのだろうね。
    マグマのように溜まっているものがあるのだろうね。
    それを写し取るべく技術を磨くのだろうか。
    シンプルで美しいよね。

  • 杉浦日向子の『百日紅』でもお馴染み、北斎の娘・お栄ちゃんが主人公。以前テレ東の「美の巨人たち」で「夜桜美人図」が紹介されていた回を見たけれど、この文庫の表紙になっている「吉原夜景図」共々、本当に光と影の使い方というかライティング(照明の当て方)が絶妙で、江戸のレンブラントと呼ばれるのも納得、まさに天才の名が相応しい絵師だったのだと感心した。

    主要登場人物はもちろん父で師匠の北斎、母・小兎(こと)と可愛げのない甥っ子・時太郎、そして渓斎英泉こと池田善次郎、たまに馬琴先生。北斎と馬琴は喧嘩ばかりしているが、北斎が病で倒れて死にかけているときに馬琴に罵倒されて蘇るあたり、偏屈頑固ツンデレじいさんたちの友情が胸アツで、ぐっとくる。

    お栄の姉・お美与と北斎の弟子の柳川重信夫婦の子である時太郎(離縁後、お美与が死去して祖父北斎に引き取られる)が、どうしようもないクズで終始イライラ。お栄ちゃんのほうは同じく浮世絵師の南沢等明に嫁ぐも自分より才能のない夫を小馬鹿にしすぎて離婚、出戻りで生涯父である北斎に師事する。火事、飢饉、天保の改革による絵師や戯作者への厳しい取り締まり、ペリー来航、安政の大地震など、時代の波に翻弄されたり家族の不幸に見舞われつつも、とにかく絵のことしか頭にない似たもの父娘。でもこれがカッコイイんだよなあ。

    一方で、お栄ちゃんにとって気の置けない絵師仲間であり、ライバルでもあり、ちょっと恋心を抱いちゃったりする善次郎(英泉)との関係はもどかしくも切ない。善次郎、一見女にだらしないようでいて、こういう男って絶対モテるんだよなあ。2017年にNHKでドラマ化したときのキャストは善次郎:松田龍平だったようで、ちゃんとチェックしておけばよかった・・・(見損ねた)(でもお栄ちゃんが宮崎あおいは可愛すぎると思う。百日紅アニメで声優やった杏ちゃんのほうが実写のイメージ近い)

    やがて善次郎も父・北斎も死去、60才を過ぎてもお栄はひたすら絵を描き続け、女一人で生きていく。これ、と決めた生き様を貫くさまは男女問わずかっこいい。背筋が伸びました。

  • 葛飾北斎の娘、お栄。偉大な絵師が父だと絵師を目指す娘にはかなりの重圧と思いきや、ひたすらに己の絵を追求する彼女の姿勢には惚れ惚れする。老いた父の世話、とんでもない甥の後始末、ままならない淡い恋、先立つものの無い辛さ。みんなばっと抱えてどんどん前へ進んでいくそのエネルギーに眩々する。

  • 歴史小説としてはやや短いけど、葛飾親子の生涯が1章ごと1作品ごと、人生の節目をコンパクトに描いていて疾走感がありました。北斎大好きだし長命だったのでもっと読んでたいなぁとは思ったけど。。日本人本来の職人気質と少しのドロ臭さがカッコよくて、日本が誇る偉人だと再認識しました。北斎に滝沢馬琴が喝を入れるシーンと宮崎あおいが好きです

  • 北斎の娘、栄の生涯。
    何か一つのことをとことん突き詰めるのは凄い。

全33件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

朝井 まかて(あさい まかて)
1959年生まれ。甲南女子大学文学部国文学科卒業後、コピーライターとして広告制作会社に勤務。独立。2006年から大阪文学学校で学び、2008年第3回小説現代長編新人賞奨励賞を受賞してデビュー。受賞作は『花競べ 向嶋なずな屋繁盛記』と改題され、講談社文庫に収録されている。
2013年、幕末から明治を生きた歌人・中島歌子の半生を描いた『恋歌』で第3回本屋が選ぶ時代小説大賞、2014年第150回直木賞を受賞。ほか、2014年『阿蘭陀西鶴』で第31回織田作之助賞、2016年『眩』で第22回中山義秀文学賞、2017年『福袋』で第11回舟橋聖一文学賞、2018年『雲上雲下』で中央公論文芸賞、『悪玉伝』で司馬遼太郎賞をそれぞれ受賞。
他の著書に『ちゃんちゃら』『すかたん』『先生のお庭番』『ぬけまいる』がある。『眩』は2017年に宮崎あおい主演でドラマ化された。

朝井まかての作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
有効な右矢印 無効な右矢印

眩 (くらら) (新潮文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする
×