ダブルオー・バック (新潮文庫 い 40-1)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101218113

感想・レビュー・書評

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  • 『銃が人手を巡り、生みだされた四つの切ない物語。ハードボイルド連作短編』
    流れる文体がとてもきれい
    作り出されている世界観が澄んでいてカッコよい

    稲見さん(1931/1/1 - 1994/2/24)はもうなくなっている作家
    裏表紙に載っているオヤジの写真を見て
    この人がこんな文章を??!と思ってしまった

    山歩きに出かけたくなる

  • 2・3年前に再読した。
    『アーリィタイムス・ドリーム』はハードボイルドを軽いタッチにした、とても良い作品でした。

  • ポンプ・アクション6連発銃、ウィンチェスターM12。通称“シャクリ”と呼ばれる一丁の銃が人から人へ渡る。その銃を手にした者たちの物語を綴った連作短編集。
    これが稲見氏の小説で一冊の本として纏められた実質上のデビュー作となる。

    その端緒となる第一話「オープン・シーズン」は腰だめで撃つ自分の射撃スタイルにこだわった男が落ちていくさまを描いた哀しい物語。これを筆頭に、収められた4つの物語は何がしか魂を震えさせるものを感じさせてくれる。

    「斧という字の中に父がいる、ということに今頃気づいた」
    という印象的な一文から始まる「斧」は離別し、山に篭って生活する父の許に息子が訪ね、大自然で生きていく術を教えていく、親子の交流を描いた作品。

    「アーリィタイムス・ドリーム」はうってかわって洒脱で軽妙な語り口で進むバーのマスターの物語。悪徳業者相手に無手勝流に立ち向かうマスターと彼を慕う若者たちを描いた好編。ハードボイルド調の語りが妄想混じりに挟まれるのが非常に面白い。

    最後「銃執るもののの掟」は北の工作員が出くわした老猟師の話。この老猟師の生きることに対する考え・構えは心が震えるものがある。

    どれも甲乙つけがたい短編集。軽妙さもありつつ、ストイックさも兼ね備えた、「男」による「男」のための短編集。硝煙の匂いが立ち昇ってくるかのようだ。
    ガンに侵されていた著者が生きた証を残そうと著した本作は、まさにこの作者が読みたかった作品を書いたのだという強い思いが行間から立ち上ってくる。

    これらの登場人物の考え、思い、譲れない領域などは全て作者自身の影が色濃く投影されている。
    デビュー作にして人生の酸いも甘いも経験してきた作者の人間としての懐の深さが窺える作品だ。

    これも絶版で手に入らない。全くもって勿体無い話だ。

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