エトロフ発緊急電 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 601
レビュー : 91
  • Amazon.co.jp ・本 (630ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101223124

作品紹介・あらすじ

1941年12月8日、日本海軍機動部隊は真珠湾を奇襲。この攻撃の情報をルーズベルトは事前に入手していたか!?海軍機動部隊が極秘裡に集結する択捉島に潜入したアメリカ合衆国の日系人スパイ、ケニー・サイトウ。義勇兵として戦ったスペイン戦争で革命に幻滅し、殺し屋となっていた彼が、激烈な諜報戦が繰り広げられる北海の小島に見たものは何だったのか。山本賞受賞の冒険巨篇。

感想・レビュー・書評

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  •  太平洋戦争開戦前の日本、アメリカ、択捉島を舞台に繰り広げられるスパイ小説。真珠湾攻撃に関する諜報活動を取り扱っている。実際の歴史の結末の制限がある中で、ドキドキとするようなスパイものを描いている。最初は登場人物も舞台もあちこちに飛ぶことにちょっと戸惑ったが、だんだんと話の筋が見えてくる。登場人物も様々な背景を抱え、さらにまさに戦争が始まろうとする時代には民族の国籍の違いによる差別や弾圧も受けながら、それぞれに生きていこうとする姿が描かれている。映画に知れたらいいのにと思ったが、調べてみるとNHKでドラマ化はされたらしい。

  • まず、凄い長編だった。佐々木さんの本は警察小説しか読んだことがなく、ストーリーの重厚さ故背景の説明が長くなってしまうのは仕方がないのだが…。
    主人公がヒロインと出会うのが遅すぎた感は否めない。勿論、テーマはそこではないのは承知している。日本人の一人として過去の過ちを忘れてはならないという思いを新たにした。

    • kakaneさん
      chieさん、もし未読なら以下の本もおすすめです。同系統で私は続けざまにはまりました。
      藤田宜永「鋼鉄の騎士」
      船戸与一「砂のクロニクル」
      ...
      chieさん、もし未読なら以下の本もおすすめです。同系統で私は続けざまにはまりました。
      藤田宜永「鋼鉄の騎士」
      船戸与一「砂のクロニクル」
      逢坂剛「カディスの赤い星」
      参考まで
      2017/09/24
  • 初めて読んだ佐々木譲作品、これでファンになった。

  • 【256冊目】バーのママに「佐々木譲先生の作品で一番おもしろい」と勧められて読んだ本。山本周五郎賞とってるのね。知らなかった。真珠湾攻撃に択捉島が関わっているとは知らなかったけど、それよりも佐々木先生の物語構成力と人間像の描き方に注目が行く。スペインと函館から始まった物語は、ニューヨーク、ハワイ、東京、そして択捉島へとダイナミックに場を移しながら展開していく。複数の人物を並行して描きながらも、物語の筋を読み失うことがない。良い意味できちんとまとまっている。こういうのが文章力というか、小説家の力なんだなぁと痛感。
    それと、前半で出てくるセックスと後半で出てくるセックスの対比が良い。詳細に描いているわけではないけど、主人公の獰猛さから愛情への変遷を印象づける上手い小道具として使っている。

  • 悲劇の島「択捉島」。太平洋戦争の開戦のキーポイントとなり、戦後はソ連の実効支配化となる。緊急電はいまだに鳴りやんでいない。

  •  こちら「面白いおすすめ本」として記憶にあって、やっと読むことができた。すすめていたのが雑誌なのか小説のあとがきだったのかは不明。『エトロフ発緊急電』は太平洋戦争三部作の2冊目、他に『ベルリン飛行指令』『ストックホルムの密使』がある。この2冊もぜひ読んでみたいものだ。ところで『エトロフ発緊急電』は吉村昭著『大本営が震えた日』(新潮社 1968年)の日本軍が真珠湾攻撃に際し、敵軍の発見を恐れ北上海路を取った経緯が細かく小説になっているが・・・1989年新潮社発行された本書はこの本を参考にしているのだろうか、ちょっと気になる。

  • 自分でもどうかとは思うけれど、読み始めてようやく題名のエトロフと択捉島がつながった。島の地名が北海道ととても似通っていて懐かしく、ああ同じ国だったのだな、と初めて実感できた気がする。国という枠組みは本当は流動的なもので、帰属意識を感じられない登場人物たちは、国のためというよりは出会った人のために動き、だからこそ共感できる。ずっと読みたかった名作に満足。山本周五郎賞キャンペーン。

  • 佐々木譲『諜報3部作』中の最高傑作だろう。スペイン内戦で人間の醜い内面を垣間見て絶望した日系アメリカ人のケニー斉藤が米軍のエージェントとして帝国海軍の情勢を探るため北方領土に潜入。そこでロシア人とのハーフとして生まれ、奔放に生きてきた岡谷ゆきと邂逅する。寄る辺ない人生を送ってきた二人が交錯し、日米開戦前の緊迫した状況が拍車をかけ、物語は悲劇的ラストへと疾走する。不条理というのは実存哲学の専売特許なのだが、普通に暮らす僕らもやるせない気分になったり、疎外感を覚える。だから、アウトサイダーへの共感は強くなる。また、ケニー斉藤を追跡する憲兵隊の磯田曹長の実直な態度を描くことで、労働階級の日本人の美質としての勤勉さにも賛意を送っているように見える。佐々木譲の屈折が抒情的に結実した珠玉の名作。

  • 20年前に上梓された小説でいまさらという方も多いでしょうが、こんな面白い冒険小説があったのか!一気読みで読後にジーンと余韻が残った。文句無しに面白い冒険小説!こんな感覚は箒木蓬生の「逃亡」以来。
    最近警察小説で活躍し先日直木賞を受賞した佐々木譲の「エトロフ発緊急電」
    日米開戦前夜、日本のハワイ真珠湾奇襲をめぐる日米の情報戦争に意図せずに巻き込まれ、アメリカのスパイとなって日本に潜入したアナーキスト日系人の冒険物語。太平洋戦争のしっかりした史実をベースにまるでノンフィクションと錯覚するくらいのリアリティで緊迫感あふれるスリリングなストーリーが展開する。日本軍憲兵の追跡をかわして東京から北海道、択捉島に潜入する追いつ追われつの展開はスピード感に溢れ圧巻。登場人物は、アイヌ人、韓国人、アメリカ人、アナーキスト日系人の主人公に彼と恋に落ちる択捉生まれの日露混血女性と多様で、日米開戦という歴史の流れのなかで国家と個人、少数民族、差別と被差別などがからみあいそれぞれの運命を生きる。
    まあ解説はともかく、面白かった!
    「エトロフ発緊急電」はこの著者の太平洋戦争に取材した三部作の第二作目であり、他に「ベルリン飛行指令」「ストックホルムの密使」があるという。どちらも未読なので楽しみである。
    佐々木譲氏は近年警察小説で人気があり気にはなっていたが、まだ一冊も読んだことがない。警察小説で人気のある作家は何人かいて少しは読んだが黒川博行以外は世評のわりにはイマイチだった。こんな面白い冒険小説を書く人なら警察小説も面白いはずなので、そちらも楽しみ。

    • hs19501112さん
      この三部作、いいですね。
      自分としては「ベルリン飛行指令」が一番ですが。


      佐々木譲さんの警察小説・・・その後、お読みになりました...
      この三部作、いいですね。
      自分としては「ベルリン飛行指令」が一番ですが。


      佐々木譲さんの警察小説・・・その後、お読みになりましたでしょうか?

      黒川博行さんが好きならば、「警官の血」か「制服捜査」あたりから入るのがよさそうです。

      内容は薄めですが、エンタテイメントとして秀逸なのが「笑う警官」から始まるシリーズものも良いですよ。
      2014/01/06
  • 人物造形の巧みさ、当時ならではの雰囲気。追う者・追われる者を描いたパートは緊迫感が溢れ本当に興味深い。
    そして、結末における日系人スパイ・サイトウの心情たるや、必読。

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著者プロフィール

一九五〇年三月、北海道生まれ。七九年「鉄騎兵、跳んだ」でオール讀物新人賞を受賞。九〇年『エトロフ発緊急電』で日本推理作家協会賞、山本周五郎賞、日本冒険小説協会大賞を受賞。二〇〇二年『武揚伝』で新田次郎文学賞を、一〇年『廃墟に乞う』で直木賞を受賞する。他に『ベルリン飛行指令』『疾駆する夢』『昭南島に蘭ありや』『警官の血』『代官山コールドケース』『獅子の城塞』『犬の掟』など著書多数。

「2017年 『武揚伝 決定版(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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