警官の血 上 (新潮文庫)

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レビュー : 147
  • Amazon.co.jp ・本 (474ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101223223

作品紹介・あらすじ

昭和二十三年、警察官として歩みはじめた安城清二は、やがて谷中の天王寺駐在所に配属される。人情味溢れる駐在だった。だが五重の塔が火災に遭った夜、謎の死を遂げる。その長男・安城民雄も父の跡を追うように警察学校へ。だが卒業後、その血を見込まれ、過酷な任務を与えられる。大学生として新左翼運動に潜りこめ、というのだ。三代の警官の魂を描く、空前絶後の大河ミステリ。

感想・レビュー・書評

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  • 上下巻読んでの感想
    安城清二、民雄、和也。三代に渡り警察官として生きた男たちの物語である。
    終戦直後に警察官採用試験を受けた清二は、警察練習所で同期だった三人と共に警察官になる。
    それぞれに将来に向けた希望はあったけれど、清二の希望は駐在所勤務だった。
    やがて希望通りに天王寺駐在所に配属された清二だったが、ある日突然に謎の死を遂げる。
    万引常習犯の少年と父親との場面が印象に残っている。
    警察官でもあり父でもある清二。
    民雄にとっても印象に残る出来事だったのだろう。
    父として警察官として清二を尊敬していた民雄だからこそ、突然の清二の死が納得できなかったのだ。
    いつか事実を突き止めたい。
    それは自然な思いだったように思う。
    公安というと後ろ暗いイメージが付きまとう。
    組織だった左翼運動は次第に暴力化し、民雄が任官した頃は公安の果たす役割もいまよりは大きかったのかもしれない。
    仕事なのだから。そう納得はしていても、神経が擦り減っていくのはどうにも出来なかったのだろう。
    学生運動では多くの犠牲者が出たという。
    命を失った者も、その後の人生が変わってしまった者もいた。
    民雄もまた、その多くの犠牲者のひとりなんだと思う。
    PTSDなんて子どもだった和也にわかるはずもない。
    警察官なのに、家では母親に暴力をふるう父親。
    父親への反発もあったのだろう。成長し同じ警察官になって、あらためて父親が理解できた部分もあっただろう。
    父親としてはけっして立派な父親ではなかったけれど、警察官としては誇れるような父親だったと和也は思っていたはずだ。
    事実を突きつけられたときの和也の対応が、三代にわたる警察官の血を感じさせた。
    したたかであるけれど、間違ったことはしていない。
    父である民雄ほど弱くもなく、祖父である清二ほど純粋でもない。
    利用できるものは利用し、したたかに組織の中で生きていく。
    それが和也の選んだ道なんだろう。
    読んでいて長さをまったく感じなかった。
    それぞれの時代を感じさせるように、物語の中に流れている当時の空気感がいい。
    重厚さも、構成の巧みさも、人間描写も、細かな設定も。
    すべてが面白く、すべてを楽しむことができた。
    犯人は途中で「この人怪しい」と思った人物だった。
    やっぱり・・・とは思ったけれど、ガッカリはしなかった。
    犯人当ての物語ではないし、そこにはあまり重要性は感じずに読んでいたからかも。
    読みごたえは十分!!

  • 書き手の懐の深さみたいなのがもうバンバン
    来ます。いやジャンジャンかな。ギャンギャンか?
    もういっそ来ないです。おもそろかったです。

  • 昭和23年から平成12年まで52年間警官3代に渡る大河ミステリー小説。帝銀事件の日、清二が警察官募集の広告を妻に見せる導入部が良い。戦後の混乱の中で、清二の希望に満ちた警察官としての第1歩の様子と、3人の同僚との出会いの場面は秀逸。妻と清二のやり取りも心地よい。
    上巻は、清二が上野警察署に配属され、手柄を立て希望していた谷中の駐在所勤務となり、五重塔火災の夜の遭難から、息子民雄の警官としてのスタートを描く。浮浪者、男娼、ヒロポン、原田先生という怪しげな浮浪者のリーダー等、昭和20年代の風俗の描写が詳しく、生き生きとしている。
    ミステリーとしてはふたつの殺人事件が中心となっているが、この小説の面白さは戦後の警察の機構と警官の意識がどのように変化してゆくかである。ジャカルタから成田への夜行便の中で一気に上巻を読んでしまった。

  • 清二、民雄、和也の親子3代に渡って描かれる物語。

    戦後の民主警察の黎明期に警視庁に採用された清二。
    ある事件を追うなか、突如として・・・

    民雄が公安警察で潜入捜査する場面も、
    とてもスリリングで、読んでいるこちらがドキドキしてしまう。

    続きが気になる作品。

  • 舞台は終戦直後の東京。定職を探してみつけた『警官募集』広告で
    主人公:安城清二は警視庁警察官採用試験を受ける。

    昭和初期の警察官から入り昭和後期、平成と
    父、息子、孫と三代続く警官の御話。

    歴史に忠実にそった内容で
    非常に興味深い内容になってます。

    上巻で出てくる歴史的な事件時系列は
    父親:清二(駐在警官)の時に
    上野公園不法滞在者強制退去代執行、
    御徒町親善マーケット(アメ横)手入れ、
    谷中:天王寺五重塔放火心中事件、

    父はこの五重塔火災の夜近くの
    線路で不審な死をとげます。


    息子:民雄(公安部出向、潜入捜査員)の時に
    共産同赤軍派大菩薩峠事件

    本庁公安エリートコースを辞退し
    本来希望していた念願の駐在警官になった
    息子の話は下巻に続き、
    父:清二の自殺とされた不審死に
    民雄は単独捜査を始める。

  • ★★★☆☆

  • ホイッスルの吹鳴が響く。その音は告げる。犯罪と、犯罪者のありかを。ここに、罪がある。ここに、罪人がいる――。

    昭和昭和32年7月、谷中・天王寺の五重塔が炎上した未明、天王寺駐在所の警察官、安城清二が謎の死を遂げる。
    その長男・民雄もまた父の死の真相を追い警官となるが、赤軍派への長い潜入任務のなかで精神を消耗していく。
    清二、民雄、そして和也。3代にわたって警察官となった安城家の男たちが追い続ける殺人事件の謎を、敗戦直後から高度成長期、バブル崩壊後まで時代の変遷を交えて描く。

    警視庁はその血筋、毛並に期待する。
    父親の仕事を継いだ2代目、3代目の警察官。それは父親が子供の教育を間違えなかったということの証明、父の職業を子供が誇りにしていたことの証。
    その血のために、与えられた任務が彼らを蝕む。警察官となり、そのために非業の死を遂げる。それは宿命だったのか、否か。
    戦後間もない上野公園で起きた男娼殺害事件。そこから実に数十年を経て続く、罪と血の物語。

  • 時代ごとの警察人小説
    警察官も普通の生活があり家族がある。それでも警察官としての使命を負っているのはどの時代でも同じなんだろうなと
    下巻が気になるところ

  • 期待どおりの面白さ。絶妙なミステリー度合いが気持ちよい。

    終戦直後に警察官になった安城清二が、谷中の天王寺駐在所に勤務中、五重の塔が火事に遭った夜に、謎の死を遂げた。彼の近くで起きた、犯人が挙がらない二つの殺人事件と、安城清二の死に関連はあるのか。

    清二の息子の民雄も警官に。その一つの動機は、父の死の真相を突き止めること。しかし、彼の最初の勤務は、大学生として新左翼運動へ潜入するというもの。手柄を上げたものの、過酷な任務が数年も続いたことで、精神崩壊寸前まで追い込まれた民雄。自分のこどもたちの前で、奥さんに手を上げてしまう。

    父清二の仲間の警官から助けてもらい、いよいよ民雄は念願の駐在所配属となるか。下巻へ続く。

  • 安城清二の死の真相が気になります。息子の民雄の病状、今後の進展。まずは下巻を読んでからですね。

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著者プロフィール

一九五〇年三月、北海道生まれ。七九年「鉄騎兵、跳んだ」でオール讀物新人賞を受賞。九〇年『エトロフ発緊急電』で日本推理作家協会賞、山本周五郎賞、日本冒険小説協会大賞を受賞。二〇〇二年『武揚伝』で新田次郎文学賞を、一〇年『廃墟に乞う』で直木賞を受賞する。他に『ベルリン飛行指令』『疾駆する夢』『昭南島に蘭ありや』『警官の血』『代官山コールドケース』『獅子の城塞』『犬の掟』など著書多数。

「2017年 『武揚伝 決定版(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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