靖国 (新潮文庫)

  • 新潮社
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感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101226316

感想・レビュー・書評

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  •  いわゆる私たちが普段認識している靖国とは違う側面を知ることができる本です。とりわけ新鮮だったのは、かつて境内に競馬場が存在していたことと、奉納プロレスの催しがあったことです。九段坂周辺の歴史にも触れ、当時のものとは思えない野々宮アパートなる超ハイカラな建物に度肝を抜かれました。
     本の最後に、靖国と終戦日という、もともと両者の間で関係のなかったものを、無理やりくっつけた当時の為政者を厳しく批判している点に共感できます。

  • 靖国ではかつて、競馬や博覧会、大相撲、プロレスなどが行われていた。勧工場と呼ばれる百貨店の元祖のような施設も。境内には日露戦争などの戦利品の大砲も置かれ、神社近くには野々宮アパートと呼ばれるモダニズム建築もあった。終戦後、GHQの圧力で、靖国境内の遊就館に小劇場と映画館、文化講座さらに外苑に能楽堂、マーケット、国技館を作る計画が持ち上がったことも初めて知った。東京新聞のスクープで幻になったようだが、実現していたらどうなっていただろう。引用文献で、近代国家として国民の自覚を持たせるために、天皇という伝統を作り上げ、宗教的中心として祭り上げていった過程を追う「天皇のページェント」も興味深い。

  • ゲニウス・ロキとしての靖国の土地を、その成立からひもといた著作。
    九段坂というスリバチ。山の手・下町を遮る物。大村益次郎の遠眼鏡。上野との対比。モダニズムの拠点という視点。競馬やプロレス興行といった興行の場所としての靖国。そして帝冠様式たる九段会館と対峙するインターナショナルスタイルの野々宮アパート。
    文学や芸術、舞台(黙阿弥!)をとおして靖国神社の(イデオロギーのそとで)リアルを見つめる著作だった。
    (個人的には、この保守系論客化するまえの坪内祐三のスタイルは大変に好みである。こういった本をまた書いてくれないかな。)

  • 新書文庫

  • ★2.5かなぁ。
    面白い観点に立っていて素直に感心する一方、執筆当時(そして今の)現在の靖国が置かれている立場をある程度確信犯的に踏まえて、一方向から裏読みした所謂文化人的態度かなとも思う。
    こういう感じは一時流行ったなぁ、でもこういった日本だけに閉じた、したたかさに欠けた姿勢は世界では通用しない。この本が書かれてからおそらく15年程度経過していると思うけれど、ますますその感が強くなっていると感じる今日この頃。

  • たしか廃刊だったのでブックオフにて購入。 日本精神の象徴として扱われてしまっている靖国の当初の姿を明らかにしている。 靖国神社に対するステレオタイプとは異なる他面な視点を得ることができる一冊。

  • 今日の歴史問題とも外交問題とも全く関係のなかった場所としての靖国。今までそういう認識を持ったことがなかったから、新鮮で愉しかった。ところで、この本だけ他の新潮文庫と紙質が違う気がしたのは僕だけだろうか。

  • 靖国神社の境内では、相撲やプロレスが行われたり、戦利品が陳列されていたり、仕掛け花火が打ち上げられたり、ということは、本来、靖国神社は今でいうアミューズメントパークであったのだ。とにかく、氏の廻り道や脱線が楽しい。それと、日本人が靖国神社に抱いているイメージに肩すかしをくらわすところが小気味良い。

  • 今や左右両派の論戦の場としてしか認識されない靖国神社(旧・招魂社)は、「君」の戦で斃れた者を祀るだけではなく、競馬場・博品館・サーカス・モダン建築等、当時の新奇なる物が集まってくる実験的空間であり、日本の近代の象徴であったことを、靖国神社の資料・日本の文学作品・歴史や美術の研究書等から克明に描き出した著作。

    【配架場所】 図書館1F 175.936/TSU

  • 2008/12/8購入
    2012/4/29読了

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著者プロフィール

坪内 祐三(つぼうち・ゆうぞう):1958年、東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒業、同大学院修士課程修了。編集者を経て文筆家へ。1997年『ストリートワイズ』でデビュー。2001年『慶応三年生まれ 七人の旋毛曲り』で講談社エッセイ賞受賞。著書に『靖国』『『別れる理由』が気になって』『探訪記者 松崎天民』『文庫本を狙え!』など多数。2020年逝去。

「2024年 『新版 禁酒宣言 上林暁・酒場小説集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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