ボクの音楽武者修行 (新潮文庫)

  • 新潮社
3.83
  • (209)
  • (235)
  • (276)
  • (25)
  • (3)
本棚登録 : 2472
感想 : 292
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (244ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101228013

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 青年は原野をめざす。
    小澤征爾さんの訃報が届いた。若い頃、この本がエネルギーを与えてくれた。小田実さんの「何でもみてやろう」とともに私のバイブルだった。
    貨物船で2ヶ月かけて、ヨーロッパをめざす。見えてくる島に、燃えるような夕焼けにひとつひとつどきどきを感じながら。どきどきの瑞々しさが若さであり、エネルギーだ。
    スクーターと日の丸で人とつながり、不安を自信に変え、やがては大きなコンクールで一等賞をとる。
    才能は覚悟。昨日読んだ本の通りだ。
    行き当たりばったりの旅が指揮者への道につながっていく。
    尊敬するシャルル・ミュンシュの懐に飛び込み、カラヤンの弟子になり、バーンスタインの友となっていく。
    ホームシックにかかり、家族に手紙を綴る。
    3年の月日を経て日本に帰ってきた時の大いなる喜びが思い浮かぶ。

    娘達にプロコフィエフの「ピーターとおおかみ」を聴かせた時、怖がって怯えた。あのアルバムは小澤征爾さんのCDだった。水戸の管弦楽団との演奏も何度か聴いた。

    ラグビーを愛した指揮者。
    指揮棒、いや身体全体でハーモニーを引き出した指揮者。
    自分の筋肉の力を抜き切る状態をつくることが、指揮の一つのテクニックと語る小澤征爾さん。
    ゆっくりおやすみください。
    今までお疲れ様でした。合掌。

    • workmaさん
      まいけるさん
      こんにちは(^^)
       いいね をありがとうございます。
      おそらく同年代と思われますが…『ボクの音楽武者修行』と『何でも観てやろ...
      まいけるさん
      こんにちは(^^)
       いいね をありがとうございます。
      おそらく同年代と思われますが…『ボクの音楽武者修行』と『何でも観てやろう』…、兄の影響で読み、「よその国へ行ってみたい、」と、感銘を受けたおかげで、3ヶ月と短い間、外国に滞在できました。レビューを読んで、そんなことを思い出しました。
      2024/02/11
    • まいけるさん
      はじめまして。3か月も?羨ましいです!
      でも若いうちに海外を体験することは宝ですよね。
      これからもよろしくお願いします。
      はじめまして。3か月も?羨ましいです!
      でも若いうちに海外を体験することは宝ですよね。
      これからもよろしくお願いします。
      2024/02/11
  • 世界的指揮者小澤征爾さんが26歳の時に書いた作品。

    スクーターとギター一本持って貨物船でヨーロッパに渡ってからの2年間を家族に宛てた書簡とともに振り返るエッセイです。

    予想を超えて、超面白かった。

    リコーダーすらまともに吹けないし、小澤征爾さんの指揮してる場面もネスカフェゴールドブレンドのCMでしか見たことない私ですが、音楽抜きにおもしろい。

    まず小澤征爾さんが魅力的。

    文章の中に散りばめられた感受性豊かな表現力や家族を含めた周囲の人への愛情がみずみずしく伝わる素敵な本です。

    終盤はYouTubeで小澤さんが指揮したオーケストラの演奏聴きながら読みました。

    軽い気持ちで読んでみてください。

    60年前の作品とは思えない!オススメです♪

  • ニュースで小澤征爾さんの訃報を知り再読。

    ブザンソンの川で美人がビキニを着ていたから対抗して裸になったり、愛嬌があってとにかくお茶目な人だったんだろうなと思う。
    この1冊だけでも小澤征爾さんはほんとに多くの人に愛されていたということが伝わった。

    24歳で1人で世界に渡り、不安も大きかったろうに手紙には離れていてもこまやかな家族への気づかいが書かれていたのが素敵。

    作中には「僕は幸せだ」ということが繰り返し書かれている。
    周りの人や環境、この時代に世界を旅出来るということを考えれば誰もが当然のようにそのことを幸せだと思うけど、それを時間が経っても世界のどんな場所にいようと忘れず常日頃感じることは誰もが当たり前にできることでは無いと思った。

    この本は小澤征爾さんが音楽家として駆け出しの時に書かれた本であるから他の人が彼と同じ環境を味わって書いたのならもっと音楽に対するもがきや葛藤が描かれていたと思う。
    けどこの本にそういった描写が無いのは小澤征爾さん自身がずっと音楽を心から楽しんでいたからじゃないかと思う。
    さらば、ヨーロッパの章に書かれている内容から伺える通り、小澤征爾さんが音楽にひたむきに情熱を注いで、純粋な姿勢で音楽に向き合っている様が感じられて読んでいて清々しかった。

    いい音楽を精いっぱい作りたいということ、たったそれだけを願い、音楽家としての多くの名誉や富を求めずただまっすぐに音楽に向き合った彼は本当に素晴らしい音楽家だったのだと思う。

  • 小澤征爾が2024/2/6にご逝去。有名な指揮者ということしか存じ上げなかったので、司書さんに薦められて読んでみた。とても面白かった。文章もモタモタするところもなく、若き小澤征爾が、臆することなくチャレンジしていく様子が、伸びやかに語られていた。コンクールに次々と優勝していくのはやっぱり凄い人なんだなーと思う。ミュンシェ?バーンスタイン、カラヤン、バックハウス?フィッシャー・ディースカウ?最後の2人は、世界中の音楽家の中で、一番尊敬している人らしい。理由は百回演奏会して、九十九回まで同じ様に完璧に演奏できるから。
    カラヤンに飯を食おうと誘われてもしめたとは思わないが、バーンスタインに誘われたら、しめた今日は美味いものにありつけると思うー
    オーケストラのお国柄というものがあって、ベルリン・フィルハーモニーはどんな指揮者でも崩れない。フランスは、一人一人の楽員の音がバラバラに。
    アメリカはビジネスに結びつき、指揮者の技量に出来が左右される。
    手紙に出てくる、弟のポンがいい子みたいで、小澤征爾もとても可愛がっているし、頼りにもしている。

  • 「理想の本箱」という番組で
    紹介されていたので読んでみた。

    若き小澤征爾さんの
    爽やかな
    男性版シンデレラストーリー

    才能があって
    努力家なのは勿論、
    その上
    度胸があって
    逞しく
    大らかで
    前向きで明るく
    人懐っこい。
    そんなセイジ君は
    誰もが応援したくなる人なのだろう。

    今なら
    音楽留学することなどは
    よく聞く話だが
    まだまだ戦後が続いていて
    こんなに才能がある若者でも
    正式な手続きで留学できなかった時代。
    自分の道を自分で選び
    果敢に挑戦し
    切り拓いていく姿が
    心に響く。

  • まだ海外に飛び出す日本人が少なかった時代の話です。特別に恵まれた経済状況にあったわけでもなかった無名の若者が情熱だけで欧米を渡り歩き、幸運な出会いに助けられ続け、音楽について勉強したわけですが、読んでいて非常にワクワクさせられます。本人による硬すぎない文章もリアルな印象をもたらしてくれます。

  • 若くまだ無名な頃に渡欧し少しずつ有名になっていくのを、淡々と語る感じ。

    成功するには努力も重要だが、やっぱり生まれついての実力やセンスは不可欠だと思った。
    だってどんなに頑張っても、誰もが小澤征爾みたいになれる訳ない。
    この本の頃はまだまだ駆け出しの指揮者なのだが、「特別な人」であると感じざるを得ないのだ。

  • 「世界の小澤」の称号とお顔くらいは知っているものの、どんな方なのか人となりはほとんど知らなかった。この本を読むと、小澤征爾という指揮者がどのように成功していったか、その破天荒ぶり、ざっくばらんな性格、いかに才能があり、音楽仲間や聴衆に愛されているかがよくわかる。
    回想録のわりには妙に現在進行形だなと思ったら、本書が書かれたのは身一つで日本を飛び出してから、やがて指揮者として認められ、ニューヨーク・フィルの副指揮者として日本に凱旋するまでのほんの数年間を直後に振り返ってまとめたものだった。
    文章はお世辞にもうまいとは言えないけれど、その時々に何を感じたかが生き生きと素直な言葉で綴られている。
    その当時ならではの偏見も多分に混ざっているが、各国の特徴を音楽を通して捉えているのが面白かった。
    バーンスタインの楽曲が大好きなのだが、指揮者だったとは知らなかった。

  • 26歳の時の瑞々しく、青春の書という感じでこちらも面白かった。話、ふつうに上手いんだよなあ。ブザンソンを優勝しているとはいえ、音楽家とどうなるかまだわからない26歳の記録なのだけれど、この時期に書いてもらっていて良かったねと思う貴重な内容。。一人でこの時代に渡欧することは苦労の連続だっただろうに、それを感じさせない明るさがなんとも気持ちが良い。日本の土壁の陰影はなく、青い空という感じの読了感。

    日本のオーケストラは、どちらかというとアメリカ式に発展していくにちがいないと言っているのは「それな...」となったのだが、やっぱりそう思っていて良いんだという安心感と(?)、先見の明に改めて感服する。そこでこう続けるのが小澤征爾だし、偉大な人間だということを思う。「...雰囲気、匂いというものは、まったく伝統、古い歴史から出てくるもので、それを日本のオーケストラや、アメリカのオーケストラに要求することは、少し無理なんじゃないかと思う。ぼくたちはその匂い、あるいは雰囲気をもたないがゆえに、もっと自由な、広い可能性をもっているのだと、ぼくはそんなふうに感じている。」(p.185)

  • 前を向いて颯爽と新しい道を歩いていく小澤さんの人懐こい笑顔が見えてきそう
    何度読んでも元気になれる

全292件中 1 - 10件を表示

小澤征爾の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×