命 (新潮文庫)

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レビュー : 38
  • Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101229256

感想・レビュー・書評

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  • 文章からも、自分自身から発する熱に良い意味で振り回されている作者の様子が浮かび上がる。
    生と死がごく身近なところに存在し板挟みになる感覚ってどんか感じだろうか。

  • 思わず吸い寄せられるように買ってしまった。東さんの丈陽くんに向けられるまなざしが素敵だと思う。

  •  柳美里著 『命』『魂』 『生(いきる)』『声』(新潮文庫)読了。

     いわゆる『命』四部作である。
     著者が不倫相手の子を身ごもったとき、元恋人で「作家・柳美里」の生みの親・育ての親でもある東由多加(劇作家・演出家)のガンが発覚する。東と過ごす最後の日々と、私生児を産み、育てていく過程が並行して進行する。死にゆく命と生まれいずる命が交錯する物語。
      『命』『魂』 『生』で東の闘病と死までが描かれ、最後の『声』は彼の葬儀と四十九日までが描かれる。

     大ベストセラーになった作品ゆえ、これまで敬して遠ざけてきたのだが、仕事上の必要があって読んだ。
     想像していたよりもずっとよい作品だった。特異な愛の物語としても、ガン闘病記としても、一人の作家の内面をつぶさに描いた作品としても優れている。
     意外なほど読みやすく、四部作を一気に読ませる。一冊読んだら次に手を伸ばさずにいられない。柳美里の筆力はやはり大したものだと思う。

     すべてをさらけ出し、血を流すようにして書かれた、“究極の私小説”ともいうべき作品。
     最終作『声』のあとがきには、次のような印象的な一節がある。

    《空白を、文字と〈物語〉で埋め立てたのではない。空白は空白のままで、不在は不在のままだ。それでもわたしは書かずにはいられなかった。止血するためではなく血を流すために、解放されるためではなく囚われるために、語るためではなく沈黙するために。》

     いちばん胸打たれたのは、柳と東の表現者同士としての深い絆が示されるくだり。たとえば、東の葬儀で読まれた柳の弔辞には、次のような一節がある。

    《あなたを失ったわたしは不幸です。けれど、役者を目指していた十代のわたしに、不幸から逃げるな、不幸のなかに身を置いて、書くことによって、その不幸を直視しろ、といったのはあなたです。
     もう現実のなかであなたと逢うことはできませんが、さよならはいいません。
     書くことによって、あなたと再会できると、わたしは信じています。》

     「感動の実話」の文脈で捉えられがちな四部作(じっさい、私はそういうイメージで食わず嫌いしていた)だが、じつは「感動もの」とかラブストーリーの域を超え、文学として正当に評価されてしかるべき作品だと思った。

  • 「貧乏の神様 芥川賞作家困窮生活記」を読んで、柳美里さんの行動とか考え方がどうしてこうなったのかな?が知りたくて読むことにしました。「貧乏の神様」の中にもこのいきさつは「命」に詳しく、と書いてありましたし。
    読んでみると、がんで亡くなった東さんのイメージが大分違っていました。
    もっと、わがまま三昧なめんどくさい大人の男の人かと思っていた。
    東さんが亡くなって、そのあとどうしたのかな?と思ってしまったので芋づる式に魂も読む事になりそうです。

  • 多分話題になって大分経ってから購入して放置してた本。

    うーん、なんだろう。筆者に同調しえない、理解しがたい部分が多すぎる。。。
    私、自分が清廉潔白な人間だとは思っていないけれど、自分の正しいと思った方向に生きてきた人間だからだろうか。何だか、いろいろと勝手だなという印象。上手く言葉にできない…でも、そういうことを嘘偽りなく吐露できる人は少ないと思うから、まぁいいんじゃないだろうか。世の中いろんな人がいるね、と思う事にした。それでも私は嘘偽って、キレイゴトを並べ立てたお涙ちょうだいの方が私にとって良いけど、まず妻ある男の子を身ごもる時点で、共感できないからなぁ。
    このお子さんとか、子供自身に言われのないことでいじめられたりしてないんだろうかと、心配になっちゃうよ。

    しかしこの人の書く文章はさらさらととてもきれいで、詩的で、そこがとてもよい。文章の書き方がとても好きだから、なおのこともったいない…その才能を是非もっと違うステキな作品に生かしてくれたらと何度も思った。
    だから、このシリーズの続きは多分もう読まないけど、他の作品は読んでみるよ。できればもっとハッピーなお話がいいなぁ。。。

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    家庭ある男性との恋愛によって身ごもった作家・柳美里。時を同じくして、かつての恋人・東由多加氏の癌発症が判明する…。忍び寄る死への覚悟、恋人の裏切り、一人で生きてゆくことへの迷い、やがて誕生する新しい生命への希求。そのすべてをありのままにさらけ出し、血を流しながら綴った大ベストセラー「命四部作」第一幕。

  • 本当に、本当に読み進めるのが辛かった作品。柳美里さんの作品は「ルージュ」しか読んだことがなく、今回授業の課題で書評を書くにあたり、柳美里さんの他の作品を読もうと思って手に取ったのが本作だったのだが、ただただ茫然としてしまった。「ルージュ」の透明感や煌めきの影は一切見られず、頁すべてに血痕がこびりついているように痛々しく、思わず何度か本を閉じた。
    まだ二十歳になりたてで、結婚や出産は疎か死について漠然とした思いを抱えていた私に、この本はありのままの現実を鼻の先に突きつけて来た。

    「風景の発見」というものがある。それは、風景はいつもそこにあるはずなのに、見ようとしなければ見えないもの、ということで、今回はそれが生と死となって浮かび上がった。人間は必ず死ぬ。それじゃあ、私たちは死ぬために生きているのかと。

    出産の経験や死に対面したことがない私には、この本のレビューを書く資格などないのかもしれない。しかし、私の頬には気付けば涙が伝っていた。それは、感動や同情の涙ではない。「生きることへの恐怖」の涙だ。当たり前すぎて何も見えていない自分、のうのうと大学に行き、コンビニのおにぎりをかじり、カフェで友達と雑談し、一日を終える自分は、命を削って生きているのか。こうしてベッドに潜って携帯を弄り続けている間にも私は死に向かっているというのに。限りある人生を、どう生きればいいのか。もし病に侵されてしまったとき、自分には大量の薬を投与し、吐き気や眩暈と闘いながらもそれでも生きながらえる必要性と価値はあるのか、意味はあるのか。

    そういうことを考えさせられてしまった。

  • 豊川悦司さん出演の同名映画を観てから、本作を含む原作の四部作を読んだ

    淡淡と綴られていく記録のような流れが、壮絶な状況ゆえの感覚麻痺のような辛さを感じさせる
    なくなる命に対して、うまれる命は救いだ

  • 妊娠中に読んだので、出産が怖くなったが、リアルな話で引き込まれた。作者と友達にはなれなそう(笑)

  • 在日韓国人である芥川賞受賞作家・柳美里。プライベートや作品が時に話題になったり叩かれたりしているけれど、わたしは「家族の標本」という短編集があまりに暗くて何か好きだったので、こちらも読んでみた。
    妻子ある男性の子どもを身籠もるのと同時に、身近な人間が末期癌にかかり、その狭間で格闘する作者自身の物語。
    わたしの感想は、、、ただただ哀れな人だなぁと。命について考えるとかそんな大義な本では全然ない。妊娠した後の作者の、彼に対する執着がとにかく恐ろしい…奥さんと別れないことに腹を立て、恨みつらみ書いた手紙を送ったり…最初は産むだけで迷惑はかけないとか言っときながら、認知と養育費を取立て屋のように主張して誓約させたり…
    「自分の子どもに逢わないでいられる父親なんてこの世にはいないわよ」という母親の言葉を鵜呑みにした作者が(この言葉自体は沁みる言葉ですが)、今度は定期的に子どもに会えだの彼に喚くくだりなんてもう…。
    最後の最後でとことん自分の本性を出して、大好きな相手に嫌われて別れるというのは、はたから見ると何と惨めに見えるのでしょうか。
    本の中で、作者の妹が「あいつ(彼)は自分が被害者で、私たちが加害者だと思ってるんだ。」って彼を非難するところがあるけど、浮気して子ども出来たらお互いに加害者だろ!って思わず突っ込みたくなるところ。
    あと、この作者は家族というものに対してかなりのコンプレックスがあり、世間の様々な「いびつな」家族を取材し、作品にしてきたはずなのに、彼が子どもに会うことを拒否したとき、「3歳以前の子どもに会わないなんて考えはあり得ない!!」と彼を痛烈に批判しているのが意外だった。色んないびつな家族を冷静に綴る印象があった作者の、正反対の一面を見て、何だか少し残念。
    この「彼」という人、加害者扱いされるわ、成り行きを本にして出版させられるわ、ホント最悪な女に引っかかったって思ってるんだろうな。

  • 随分前に『命』から『声』までの四冊を買ったのだが、そのあいだに先に映画を観てしまい、ページを開く勇気を持てなかった。四冊を一気に、丁寧に読みたいと思い、今になってようやく手に取った。
    知らなかった事、知らなかったからわかった事、知らなければならなかった事を『命』のなかで多く見つけ、読後、付箋とアンダーラインばかりになったこの本をしばらく茫然と見つめていた。
    柳美里という作家は自身のうまれや家族について、幼少時からずっと、疑問を抱きながら生きている人だという事を本書を読むとわかる。
    一切の衒いを裂いた文章は、涙を誘うようなわざとらしい工夫をされているわけでもないのに生々しく、切実だ。それは真実を画いているからうまれてくる独特なものにほかならず、フィクションでは絶対に出せない。
    在日という柵は、生まれてくる子どもにまで絡みついてくるのか。在日でも韓国人だからといって、韓国のことばや文化を知っているわけではなく、だから子どもにも伝えられないという柳さんの考えを本書で読んで、日本人はなんの疑いもなく自分を日本人だと名乗り、日本国籍に入り、そもそも国籍について考えた事のない人のほうが多いのではないか、と、自戒するところがあった。
    将来、子どもを産み育てるとして、私は柳さんの言うように、「子どもが十一、二歳になるまでのあいだに、なぜひとを殺してはいけないのかを、きちんと教えられる」自信がない。否、誰にでもない、私自身に、私が納得できる答を言い諭す事ができない。
    私はまだ何も知らない子どもである事を、厭でも思い知らされる一冊だった。

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著者プロフィール

柳美里(ゆう・みり) 小説家・劇作家。1968年、神奈川県出身。高校中退後、劇団「東京キッドブラザース」に入団。女優、演出助手を経て、1987年、演劇ユニット「青春五月党」を結成。1993年、『魚の祭』で、第37回岸田國士戯曲賞を受賞。1994年、初の小説作品「石に泳ぐ魚」を「新潮」に発表。1996年、『フルハウス』で、第18回野間文芸新人賞、第24回泉鏡花文学賞を受賞。1997年、「家族シネマ」で、第116回芥川賞を受賞。著書多数。2015年から福島県南相馬市に居住。2018年4月、南相馬市小高区の自宅で本屋「フルハウス」をオープン。同年9月には、自宅敷地内の「La MaMa ODAKA」で「青春五月党」の復活公演を実施。

「2020年 『南相馬メドレー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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