生 (新潮文庫 ゆ 8-8 命四部作 第 3幕)

著者 :
  • 新潮社
3.38
  • (7)
  • (13)
  • (43)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 141
感想 : 12
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (345ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101229287

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 最後の最後まで回復ののぞみを捨てなかったが、ついに…訃報、というところまで。時々挿入される東氏と柳氏の思い出がほほえましいほど、闘病中、看病中の現在時制との対比がいたましい。ただ、露天だと思ってふたりして入ったら川だった、通りがかった人に笑われたてエピソードには、ふふっとなってしまったけど。命を維持するための医療にはすべて値段がついているというリアル。自らを証明するための一切合財を強盗に持ち去られるという痛恨事。それらをくぐりぬけての、いつか息子が東氏の写真を指差して、このひとだれ?とたずねてきた時のために、自分の言葉を鍛えなければならないと思っている、というあとがきに覚悟を感じ。

  • 東さん、私と同じ長崎出身。懐かしい言葉。人をひきつけないではいられない存在。一度会ってみたかったな・・・

  • 【本の内容】
    <第1幕>
    家庭ある男性との恋愛によって身ごもった作家・柳美里。

    時を同じくして、かつての恋人・東由多加氏の癌発症が判明する…。

    忍び寄る死への覚悟、恋人の裏切り、一人で生きてゆくことへの迷い、やがて誕生する新しい生命への希求。

    そのすべてをありのままにさらけ出し、血を流しながら綴った大ベストセラー「命四部作」第一幕。

    <第2幕>
    わたしたちのあいだでは“末期”という言葉は禁句だった。

    ―わたしはあと二年で死んでもいいですから、東由多加をあと二年生かしてください。

    なんとか丈陽と東由多加と三人で二年間生きたいのです。

    神さま、どうかわたしの祈りを叶えてください―最先端の治療を受けるためにアメリカに渡る東。

    しかし過酷な現実は静かに進行する…。

    「命四部作」第二幕。

    <第3幕>
    余命一週間―元恋人・東由多加へのあまりにも残酷な宣告が下される。

    それでも希望は失わなかった。

    治療が続く限り、延命の可能性はゼロにはならないと信じて…。

    しかし、さらなる悲劇が襲いかかる。深夜のマンションに忍び込んだレイプ強盗犯―ナゼワタシダケガコンナメニ!

    そして何よりも辛い結末が待っていた…。

    <第4幕>
    祈りは叶わなかった。子どもが生まれたわずか三ヶ月後に東由多加は命を落とした。

    もはや瞬きをしなくなった瞼、息をしなくなった唇…。

    それから四十九日間、死者があの世に旅立つ日まで、空白は空白のまま、不在は不在のまま、血を流すため、囚われるため、沈黙するために、書き続けられた葬送と鎮魂の最終章。

    [ 目次 ]


    [ POP ]
    人は慣れる生きものだ。

    どんな悲しみであっても、そうした瞬間を重ね、時間を経るに従って、ある程度は鈍麻していく。

    まして本の中の出来事ならなおのこと。

    人生も読書も経験を積み上げてきた分、大人の女はそうそう安く泣いたりできない。

    本書は、そんな人の涙腺さえ緩めてしまう自伝的小説だ。

    家庭のある男性の子を妊娠した著者。

    それとほぼ同時期に、かつての恋人であり、作家として生きることの道筋をつけてくれた恩師・東由多加氏ががんであることを知る。

    生まれゆく命と消えゆく命を握りしめ、著者は“人はどう生きるべきか”という命題を自分に、そして読者にも突きつける。

    「愛」「命」「弱者」といったよくある泣かせの題材が、慈しみ合う者たちの命懸けの「献身」が加わることで見事な化学反応を起こし、俄然高貴な輝きを帯びていく。

    『命』は『魂』『生』『声』と続く四部作で、東氏の闘病生活から死までの時間、そして妊娠発覚や長男誕生のドラマをたどる。

    読み始めたらきっと、彼女たちの絆のすべてを見届けたくなるはずだ。

    ちなみに『命』の解説を担当しているのはリリー・フランキー氏。

    この数ページに、私、『東京タワー』よりうるっとさせられました。

    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 柳さんの本は、ココロがえぐられるような気持ちになりますが、一気に読んでしまいます。

    壮絶な闘いの末に東さんが亡くなります。

  • 妻ある男性の子どもの妊娠・出産と、師として、父親として、そして恋人としての関係を15年間続けてきた劇作家の東由多加の闘病生活の介護の日々を、2つの命の交錯として描き、センセーションを呼び起こした『命』、『魂』に続く「命三部作」完結編である。

  • 「死が死ねば良い。」只々、この一言が突き刺さる。
    前作までにはなかった回想シーンが織り込まれることによって、より一層現実の時間の重さ、短さ、過酷さが際立っていた。

  • 2001年9月 読了

  • 命、魂、生、声の4部作。中途半端にもたまたま家にあった「生」だけを読んだ。前作読んでないせいで、?な所もあったが、こんな哀しい運命ってあるのか〜?他3部も読みたい、と思った。

  • 05/02/19

  • 生きてやるんだ、生きたいんだ、そんな気持ちをもって1日でも過ごしたことがあっただろうか?

全12件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

柳美里(ゆう・みり) 小説家・劇作家。1968年、神奈川県出身。高校中退後、劇団「東京キッドブラザース」に入団。女優、演出助手を経て、1987年、演劇ユニット「青春五月党」を結成。1993年、『魚の祭』で、第37回岸田國士戯曲賞を受賞。1994年、初の小説作品「石に泳ぐ魚」を「新潮」に発表。1996年、『フルハウス』で、第18回野間文芸新人賞、第24回泉鏡花文学賞を受賞。1997年、「家族シネマ」で、第116回芥川賞を受賞。著書多数。2015年から福島県南相馬市に居住。2018年4月、南相馬市小高区の自宅で本屋「フルハウス」をオープン。同年9月には、自宅敷地内の「La MaMa ODAKA」で「青春五月党」の復活公演を実施。

「2020年 『南相馬メドレー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

柳美里の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×