噂 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (492ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101230320

作品紹介・あらすじ

「レインマンが出没して、女のコの足首を切っちゃうんだ。でもね、ミリエルをつけてると狙われないんだって」。香水の新ブランドを売り出すため、渋谷でモニターの女子高生がスカウトされた。口コミを利用し、噂を広めるのが狙いだった。販売戦略どおり、噂は都市伝説化し、香水は大ヒットするが、やがて噂は現実となり、足首のない少女の遺体が発見された。衝撃の結末を迎えるサイコ・サスペンス。

感想・レビュー・書評

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  • 「レインマンに会うと両足首を切断される。ただし、ミリエルと言う香水をつけていると狙われない」という『噂』が東京渋谷区から発信・伝播する中、女子高生が足首を切られ殺害される事件が立て続けに発生。警視庁の小倉と名島コンビがレインマンこと犯人を追うサイコサスペンス。

    初萩原浩作品。
    私が小説読書デビュー間もなく本作品を入手、長きにわたり本棚に鎮座していたが、いよいよ機は熟したと今般通読に至った。

    久々にスリリングな作品に出逢った。ハラハラドキドキしながら夜通しページをめくり続けた。とても面白かった。著者の名前は存じ上げていたが、このような作品を手掛ける方だったとは恐れ入った。殊能将之のハサミ男を読んだ時と同じ衝撃が走った。
    そして何より予備知識無しで読んだことが良かった。

    香水の新ブランドを売り出すため、渋谷でモニターとなる女子高生をスカウト。冒頭の口コミを利用する販売戦略どおり噂は都市伝説化し、香水は大ヒットする。一方、その都市伝説の主人公レインマンによる猟奇的殺戮が始まる。追う警察組織と名コンビ。兎角、登場人物がユニークでキャラ立ちも良いので表情が伝わってくる。

    その中でも、口コミ戦略を提唱したコムサイト女社長の説法が印象的だった。

    --------------------
    心って、脳の中の神経細胞のネットワークに流れてる化学物質の量や質のことなのよ。それが身体中のあらゆる器官へ伝えられて、人にしかるべき行動を起こさせる。とってもシンプル。なんだか口コミ情報の伝達方法と似ているわ。
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    道徳で学ぶべき【こころ】を科学的に説く。これもあながち間違いではないなと。人間の行動と動機の関係は至ってシンプルなのだと。更に女社長が饒舌に語る情報伝播の分析、仮説から数値的かつ論理的な見解を警察に説くシーンは読み応えがありワクワクした。

    また、捜査していく刑事の手法、心理戦など捜査のセンスが印象的なのも見どころだ。特に私は警察小説が好物なので最初から最後まで堪能した。

    そして書評にもあったラスト1行の終い方、私も唐突過ぎて1度スルーしたクチだ。2度見して受けた衝撃たるや否や、わや。

    しばらくこの余韻は続くのだろう。

    まだ本作品を体験されていないミステリ好きの方へ是非ともお薦めしたい作品である。

    • misachi68さん
      akodam さんこんにちは!
      荻原浩さんの作品はカテゴリーも幅広くて何から読もうか迷いました。何作か読みましたが、二千七百の夏と冬が一番好...
      akodam さんこんにちは!
      荻原浩さんの作品はカテゴリーも幅広くて何から読もうか迷いました。何作か読みましたが、二千七百の夏と冬が一番好きだったりします。座敷わらしも好きだけど。
      ミステリー作品も面白いなんてすごいですね。
      チェックしておきますφ(σ_σ)メモメモ
      2022/04/25
    • akodamさん
      misachi68さん、こんばんは!
      コメントいただき嬉しいです。

      私も荻原浩の名は存じあげていて、代表的な作品から受けていた印象が180...
      misachi68さん、こんばんは!
      コメントいただき嬉しいです。

      私も荻原浩の名は存じあげていて、代表的な作品から受けていた印象が180度違いました。こんな周到なミステリを描かれる著者だったとは…。評価はそのギャップ(事前期待を超えた)も反映しました。

      二千七百の夏と冬
      座敷わらし

      が良いのですね!私もチェックしておきます!
      ありがとうございます^ ^
      2022/04/25
    • akodamさん
      ミキマルさん、こんばんは!
      こちらこそ、いつも『いいね』とコメントいただきありがとうございます♪

      私の本棚の愛しい作品達、どうぞミキマルさ...
      ミキマルさん、こんばんは!
      こちらこそ、いつも『いいね』とコメントいただきありがとうございます♪

      私の本棚の愛しい作品達、どうぞミキマルさんの本棚へ連れていってあげてください(´∀`✴︎)
      2022/05/16
  • 「ラストの衝撃」ふれこみに釣られて購入
    そのこと忘れてて、普通に読後に浸ってたがネタバレサイト見て再読
    なるほど!ひっくり返りました!気持ちいい!!

    iモード ルーズソックス ガングロ懐かしい。 
    WOM これは死語?
    SNS普及の今、拡大の速さは段違いでしょうか?
    渋谷は昔から情報発信源なのですね。行ってみたい

  • あーあ、やってくれたわ
    やってくれましたわ

    自他ともに認める(「他」の方のサンプル0)ハッピーエンド大好きおじさんである私です
    頑なにイヤミスを避けて読書人生を歩んできたのに
    どんなに面白いと評判になっても湊かなえさんとか一切触らなかったのに

    あたしゃこう見えて頑固なんだよ!(浅香光代)

    だったのに…
    知らなかったとは言え…
    こうも立て続けにイヤミスの傑作を読まされたら…(誰も強制してない)
    もう完全に新しい扉が開かれてしまいましたよ!

    あーそうですよ
    認めますよ
    食わず嫌いでしたよ

    ということで本編です

    帯に「衝撃のラスト一行に瞠目」とありますが本当に衝撃でした
    そして直接的な伏線はもちろんですが、物語のすべてつまりは何気ない日常の風景や聞き込み中の女の子たちとの会話、刑事二人のぎこちないスタートからだんだんに息があっていく様、全てがこのラスト一行のために積み上げられてたんだなと思いました
    このラスト一行が言いたいために作られた物語むしろラストではなく始まりの一行だったのでは?
    そんな気がしたお話しでした

  • WOM
    “Word of Mouth”の略語でいわゆる「クチコミ」のこと。
    クチコミとか、都市伝説に踊らされるのは、ネット社会で更に増えてきてるんとちゃうかな?
    クチコミが殺人と繋がってんの?って気はする。確かにクチコミを仕掛けた事が影響はしてるけどね。
    といって、面白くない訳ではない!むしろ面白い!かなり!
    どんでん返し系のお勧めで読んだけど、「確かに最後の一行で!」やけど、これは、凄いというか、酷い…辛い…
    まぁ、何となく予想出来なくはないけど、それはやめて欲しいと、思ってたのに…
    お前ら〜…

  • チョ→とか流行ってたなぁ。時代背景が懐かしい。

    中盤で犯人に確信を持ち、わりとわかりやすい伏線だったなぁーと偉っそうに思ってました。ごめんなさい。

    最後そういうこと?!とゾッしたと同時に悲しくなった。新しい家族が始まりそうな予感に、明るい未来が見えそうだったのに…。一番ほのぼのとページをめくっていた、そこが伏線だったの!だからあの時そんなこと聞いてたの?と驚き唸りました。

    こういうジャンルの名作と言われてるものは(殺戮にいたる病や、ハサミ男など)やはり好みだなぁ。面白かった。

  • WOM(口コミ)を販売戦略とした、新ブランドの香水。香水の販売拡大の為、戦略的に流された噂。それは、渋谷に所属する少女達の中で都市伝説化していく。そして、噂と類似した殺人事件が現実のものとなる。
    警察ミステリでサイコサスペンス。バディのバランスの絶妙。噂が広まっていく状況も丁寧に描かれている。そうね、知人の口からの話、ここだけの話って、何故か広めたくなる。
    犯人の異常な性癖。事件は猟奇的。そして、書き込みすぎないラストのサイコが好きです。

    25日 水曜日 晴れ
    今日は、T京に用事があって、移動時間が長いのでこの読みかけの「噂」を持って出かける。ちょっと乗り換えながら、読み続ける。p340 22 を読み始める“R本木を過ぎるとH比谷線のスピードが上がり” 全く同じ状況に居てしまった。おお、読書史上初体験。あんまりびっくりしたので記録(°▽°)

    • akodamさん
      おびのりさん、こんばんは。
      R線固しなのですね。私も涙本とは滅多と出逢えておりませんでして。涙活コメントの参戦は烏滸がましいので、こちらから...
      おびのりさん、こんばんは。
      R線固しなのですね。私も涙本とは滅多と出逢えておりませんでして。涙活コメントの参戦は烏滸がましいので、こちらから失礼します。唯一O薦めするならば早見和真のイノセント・デイズです。気分がMかれたならば是非♪

      こちらのコメントからおまつへのコンタクト失礼します。

      おまつ、コメント遅くなりました(>人<;)
      残業税読んでるのね!野澤キャラ良いよね!
      気が向いたならばレビュー楽しみにしてます^ ^
      2022/05/27
    • おびのりさん
      akodamさん

      お疲れ様です。
      はい。私も皆さんの熱いコメントに圧倒されています。
      実は、イノセントはそろそろ読もうと思っていました。
      ...
      akodamさん

      お疲れ様です。
      はい。私も皆さんの熱いコメントに圧倒されています。
      実は、イノセントはそろそろ読もうと思っていました。
      もしかしたら、R線固いというより、無意識に避けていたかも知れませんね。
      だって、破滅的な展開好きですもの。
      ありがとうございます♪
      2022/05/27
    • 松子さん
      akoさーん、おび、お疲れさまでっす(^^)

      akoさんのコメント見て、akoさんの本棚に行ってイノセントデイズの感想を読んだら、つい夢中...
      akoさーん、おび、お疲れさまでっす(^^)

      akoさんのコメント見て、akoさんの本棚に行ってイノセントデイズの感想を読んだら、つい夢中になって他の感想も読んでました!
      いけない、いけない、お返事が先ー!

      いつだったか、もう一度読みたいなと思っていたあこさんの感想がみつからないんですよねぇ…。あこさん、本棚削除してませんよねぇ。どこ行ったんだろう!
      短めの感想なんだけど、読んだ時に
      わぁ、この人凄い人だぁ!ってすごく感動したんですよねぇ。もう一回読みたいのに見つからない(涙)

      あっ、すみません、お返事が先!

      あこさん、お返事ありがとうございます(^^)
      お仕事、絶対にお忙しいはずなのに、おすすめ本を考えてくれたのかなと申し訳ない気持ちと、感謝の気持ちが入り混じってます。
      ありがとうございます!

      おびさんにおすすめ頂いた本ですが、私も読ませて頂きます♪
      ふふ。まずは、残業税です(^^)
      2022/05/27
  • 私が読む荻原浩氏作品(アンソロジー含む)の6冊目。
    本書の単行本は20年以上前に書かれているので、色々と古いが、その点は問題無く読めた。

    刑事コンビ(小暮と名島)がとても好ましかったし、途中で小暮が名島の代わりに組んだ津末や内藤も良かった。
    所々笑ってしまうところすら有った。

    しかし、最終章に頭がついて行けずに困っている。
    ちょっと待って、荻原さん!

    解説を読むと、評論家ですら気付かない人がいる仕掛けだと書かれている。
    ということは、たぶん、私のこの困惑は、仕掛けに気付けたからこそだとは思うのだが…

    いやいや、ちょっと待って、荻原さん!
    著者ご本人に、「これってこういうことですよね?」と、ものすごく聞きたい。




    色々とネタバレを読んでみた。
    自分の解釈で、あっていた…。
    ショックだ。

  • なるほど〜こいつが犯人か〜(相変わらず推理力はないのではっきりするまで気づかずw)からの…


    最後の一言で えっ!?
    その件…関わっちゃってるの〇〇!
    これ以上はネタバレになってしまう…

    ちょっとゾワッとしてしまった
    まさに〇〇〇〇〜!
    読めばわかります
    お薦め!
    私はなかなかまとまった時間が取れなくて途切れ途切れで何日もかけて読んでたんだけど、一気に読んだ方がいいかも
    でも一気にいけなくても他の小説と同時進行してなければ混乱する事はないと思う

  • どんどんのめり込みました!

    噂から始まる事件。

    事件を担当するチームが良かったですね。
    そのまま良い方向に行くと見せかけて...

    流行るものと流行らないものをうまく
    使ってました。

    最後の1行。

    ここのコメントに使おうと思ってたのに、
    してやられた気分。笑

  • 噂って人をも殺しかねない危うい凶器なんですね……ってことが分かったお話でした。
    人を殺す“レインマン”が誰なのか、というのがメインの謎で、私は出てくる人全員を疑って読みましたが、まさかねぇ?最後にあの人が……
    なんかホラーかな?って思ってしまった。ゾワッとしたというか。
    「うわぁ……嫌だぁ……」が最後の感想です(笑)

    夜中に読み終わったんで夢に出そうでそれも嫌だぁ……

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著者プロフィール

1956年、埼玉県生まれ。成城大学経済学部卒業後、広告制作会社勤務を経て、フリーのコピーライターに。97年『オロロ畑でつかまえて』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。2005年『明日の記憶』で山本周五郎賞。14年『二千七百の夏と冬』で山田風太郎賞。16年『海の見える理髪店』で直木賞。著作は多数。近著に『楽園の真下』『それでも空は青い』『海馬の尻尾』『ストロベリーライフ』『ギブ・ミー・ア・チャンス』『金魚姫』など。18年『人生がそんなにも美しいのなら』で漫画家デビュー。

「2022年 『ワンダーランド急行』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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