裁判官が日本を滅ぼす (新潮文庫 か 41-1)

著者 :
  • 新潮社
3.39
  • (8)
  • (23)
  • (43)
  • (2)
  • (3)
本棚登録 : 236
感想 : 32
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (431ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101231419

作品紹介・あらすじ

極悪非道の強姦殺人魔を無罪とし、悲惨な再犯を招いた支離滅裂の判決。鑑定の虚偽を見抜けぬ思考停止した裁判官。元役員の正義の内部告発を罰した裁判官。陰惨な集団リンチによる殺人事件の、事件自体の存在をも否定した裁判官…。各個の事情を顧みぬ判例主義、相場主義、無罪病、欠落した市民感覚、正義感の欠落、倣岸不遜。緻密な取材で、司法を斬る渾身の告発ノンフィクション。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 筆者の怒りを痛いほど感じ、読んでいる間、こちらもずっと沸騰笑
    裁判官は世間知らずで少しおかしい、と噂には聞いたことがあったものの、まさかここまでとは…。
    第15章を読むと、それもさもありなん。
    加害者としても被害者としても、裁判沙汰には決してなりたくない。

  • 105円購入2012-02-14

  • トンデモ本決を列挙し、裁判官の劣化に警鐘を鳴らした本。2003年執筆。

    確かに、到底妥当とは思えない判決の数々。血が通っていないというか、真実を突き詰めようとせず(特に刑事事件の場合)、弱者に厳しく、ことなかれ主義で判例踏襲のガッカリ判決が多いのには驚かされる(一方当事者の視点で解説されているので、必ずしも鵜呑みには出来ないけれど)。ここに紹介されている以外の多くの判決が妥当なものであることを祈りたい。

    とは言え、少年犯罪の扱いなど、この当時と比べて改善されたことも多いのではないだろうか。当事者が上級審で判決を勝ち取り、世論が沸騰して判例が変更され、立法され…。

    著者は、このようなトンデモ判判決の問題が、エリート裁判官の出世欲(その裏返しの最高裁から睨まれたくないという保身)と最高裁の強力な統制が生んだヒラメ裁判官=正義の指針を示すという気概も崇高な使命感の欠如した裁判官の存在と、司法修習で徹底される要件事実教育(゛なぜそんなことをしたのか゛゛どういう事情があったのか゛ということは、単なる訴訟進行上の肉付けに過ぎないとして原則的に無視し、どういう事実が判決を左右する構成要件に該当するか、それを抽出する整理の仕方を教え込む教育)に起因するとしている。

    裁判員制裁判や弁護士の裁判官任用である程度解決できるとのことだが…。既に導入済みの裁判員裁判によってどの程度改善されたのだろうか。知りたいところだ。

    本書で?と思った点が二つ。争いを裁くのは精神的にとてもタフな仕事だ。従って、裁判官のよい意味でのエリート意識というか自信と誇りは必要なのではないだろうか。当事者の気持ちになって感じてみることはとても大切だが、当事者より高い立場に立たないと、公平で妥当な判断を下すことは出来ない。どちらかに肩入れしすぎるのは危険だと思う。

    もう一つは、著者が人格権を重視し、報道の自由を狭める判決が出される傾向を批判している部分。報道の自由の下で、芸能人等にあたかもプライバシーがないかのような行き過ぎた報道や、事実無根の中傷記事の数々が是認されるのはどうかと思う。

  • 怒りのあまり後半は読まない
    人間が腐る
    門田スゲエ

  • 裁判官とて人の子
    が、しかし判例や大物に巻かれるのはちょっと・・・

  • 裁判官は正義の味方ではなく、ただの公務員ですと言うことが分かり易い例とともに解説している。ただし、罪もない人の人生を変えてしまうことに何の責任も感じない(もちろん裁判官だから罪を問われることはない)、エリート意識の固まりである最悪な公務員。普通の人がこの本を読めば、ふつふつと怒りを感じるだろう。彼ら裁判官は、裁判員制度にも反対していたことから、一般の善良な市民には、必要な制度だったことが、今更ながら理解できた。

  • これを読むと、ああ裁判員制度って必要だなと思うんだけど、その反面、裁判員ですらこうなのに法に対してドシロートの一般市民に何が出来るよ?とも思う。
    ただ、取材は緻密です。ノンフィクション作家の中では好きな作家さんです。

  • 日本の裁判官の実態を書き上げた作品。
    これを読めば絶対に怒りがこみ上げてくる。
    人権派と称される輩の恐るべき業績や光市の母子殺害事件など、
    自分がよく知っている事例を詳細に記している。

    是非とも裁判官に読ませてやりたい本。
    ここまで感情移入した作品は珍しい。

  • 間違ったことは書いていないかもしれないけれどかなりセンセーショナルな言い方で全15章を構成。知ってる裁判官の判決もちらほら。ただ「狂った裁判官」よりは理性的な印象。
    裁判が人と人の中にあるということを忘れたような裁判官の発言は、批判されて当然だと思う。多くの人が見て「さすがにこれはどうなのか」と思う判決もある。人によって何を変だと思うかはそれぞれだと思うけど、打たれ強い結論はやはり、いろんな視点で考えられた上の結論ということになるのだろう。

    少年の実名報道に対して賠償を認めた判決への批判などは疑問。「殺人を犯した少年の精神的慰謝料を認めたコンピュータ裁判官」とか徹底的に批判しているけど、被疑者の少年がどんなに酷いと思われるようでも、被疑者の権利も考えなければいけない。訴訟になる前に「そんな訴訟はやめろ」と諭せればよかったと思うけど、裁判所に出てきてしまった以上、裁判官として取れる手段は…比較衡量位か。事件の重大性からどこまで必要性相当性を広げるかは考え方が分かれうるだろう。実名報道によってリアリティのあるニュースにするという価値への評価の違いもあると思う。どこを「正しい」と考えるのかは、少年法61条のような拠り所のない限り、はっきり言って物差しの設定の仕様がないけれども、いずれの結論を出すにせよ、反対の考えも考慮したことをわかってもらうようにする努力は必要だろう。

    「日本は法治国家ではない、徳治国家だ」という言葉を別の文脈で批判として最近聞いた。当然の前提として裁判は法律にのっとって平等に行わなれるべき。

    全ての人に納得してもらえる裁判というのはなかなか難しいとおもうけれども、いろんな立場から考えて、極力、血の通った裁判にしていかなくちゃならないと思う。

  •  裁判員制度がはじまって、もうすぐ4年になるが、当時、なぜそんなことをするのかと疑問を持った人も少なくないだろう。法律の知識を持たない人間が人を裁く、その人の人生を決めるかもしれない決断を一般市民に委ねる、そんなことが可能であるのか、また許されることなのか。私だけかも知らないが、人を「裁く」には遠山の金さんや大岡越前のイメージが強い。そんな現在のお白州の長である裁判官は、絶対的な正義があり、かつ品行方正な存在だと思っていたが、どうやらそれは大きな誤解であった。
     本書は、裁判官がいかに官僚的で、世間的な常識知らずかということを過去の裁判例を引き合いにして説明している。全ての裁判官がこうであるといい難いが、そんな裁判官がいるかと思うと、腸が煮えくり返ってくる。特に第3章の犯人が消えてなくなる仰天判決が印象的だった。山形マット死事件を扱った裁判だが、「事件性は無い」という判断を正義の使者がどうして下せるのだろう。
     そうした判断の矛盾から見えてくるのが、裁判官の実状である。社会的にエリートな裁判官の世界も所詮、官僚社会である。勤務評定があり、手持ちの件数がいかに順調に処理されているかが最重視される。ともすると、件数を多く処理できれば、エリート中のエリートであり、当然出世もしていく。逆に評価が低い裁判官は、地方へ転々と移動させられる。エリートであればあるほど、権威的になっていく構造である。
     そして、正しい裁判官を育成するはずの教育も、人格者の育成としての機能を持ち合わせていない。「要件事実教育」というのが司法教育にあるが、そこでは、事件の争点を「用件事実」と「事情」に振り分け、「事情」を原則的に無視し、どういう事実が判決を左右する構成要件に該当するか、それを抽出する整理の仕方を教え込む教育がされているそうである。裁判官は「要件事実」も基づいて判決文を書く。しかし、事件というものは時、場所、地域、生育歴、生活における様々な事情など、いろんな角度から見なくては全体像がつかめないはずである。だから、この要件事実教育は、裁判官が判決を出しやすくするための教育、すなわち機械的に整理作業の訓練教育なのである。こうして過去の判例にとらわれた、ロボット化された裁判官が生まれるのである。
     多くの人が裁判とはかけ離れた人生を送っているが、民事や刑事を問わず、いざ自分が何らかの事件に巻き込まれた時、こんな裁判官にあたってしまったら、憤りを覚えるであろう。裁判員制度や最高裁判所長官をチェックするシステムもあるが、裁判というものが身近になってきているが、正義であるべき者がいつも正しいという考え方は捨てなくてはいけないと感じた。

全32件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

作家、ジャーナリスト。1958年、高知県生まれ。中央大学法学部卒業後、新潮社入社。『週刊新潮』編集部記者、デスク、次長、副部長を経て2008年独立。『この命、義に捧ぐ─台湾を救った陸軍中将根本博の奇跡』(集英社、後に角川文庫)で第19回山本七平賞受賞。主な著書に『死の淵を見た男─吉田昌郎と福島第一原発』(角川文庫)、『日本、遥かなり─エルトゥールルの「奇跡」と邦人救出の「迷走」』(PHP研究所)、『なぜ君は絶望と闘えたのか─本村洋の3300日』(新潮文庫)、『甲子園への遺言』(講談社文庫)、『汝、ふたつの故国に殉ず』(KADOKAWA)、『疫病2020』『新聞という病』(ともに産経新聞出版)、『新・階級闘争論』(ワック)など。

「2022年 『“安倍後”を襲う日本という病 マスコミと警察の劣化、極まれり!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

門田隆将の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×