不安な童話 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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レビュー : 327
  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101234144

感想・レビュー・書評

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  • 表紙は酒井駒子さんの描く黒色のワンピースを着た女性です。すっきりした輪郭に紅い唇。目元から上は黒く塗りつぶされ、背景にはどんよりした砂浜と波が立った寒々とした海。その周囲はワンピースの色と同化するように黒く激しいタッチで覆われています。それは心の奥底をひんやりとさせるような、あまりにも不安な気持ちを思い起こさせます。それでも美しい。魅惑的な印象深い絵なのです。そして、物語へどうしても引き寄せられてしまう魔力を秘めたような表紙でもあります。
    物語もそのとおり、最初から最後まで掴みどころのない漠然とした不安定な感情を漂わせながら進んでいきます。一度かかわったら最後、蜘蛛の糸に絡まったかのように抜け出すことができないのです。怖い。でもこの先を知りたい。そんな思いを抱いたまま、真実が露わになりました。
    真実を突きつけられた者。真実を思い出した者。真実を隠し続けた者。真実に巻き込まれた者。
    真実を知ることによって、新たに人は重い足枷を背負うことになることもあるんだなと深くため息をつきました。
    ただ、それが不幸だとも限らないということも、嵐のあとの海に思いを馳せながら、ぼんやりと心に残ったのです。

  • 久しぶりの恩田陸作品。
    落ち着いて読める。
    なんだか自分も実際に絵を見たような気分にさせられる。
    もしかして……やっぱりという展開だったけど、姉まで関わっているとは思わなかった。

  •  うーん、タイトルがうまい。まさに不安感いっぱい。この作者ってこういうわけもない不安感を書かせるとうまいな。ましてこれは正当なミステリーときている。他人の記憶が見える特異体質なんてところですでにファンタジーなのではという向きもあるかもしれないけれど、これには京極夏彦描くところの榎木津礼二郎という大物の前例があるので違和感はまったく感じない。あれでもどっちが早いんだろうか。
     ラストの意外な登場人物に驚かされ、そのからくりにそういうことだったのかと感心しきりで読み終えようという寸前に、あの恐ろしいエピローグ。陽画が突然陰画に転換するような衝撃。そして何が真実なのだろうという不安と疑惑を秘めたままに幕が閉じられる。おそろしい作品だ。

  • 読んでると不穏な気分になる。
    ずっとイメージは黒。
    重苦しい雰囲気で全編語られていて、ずっと緊張感がある。
    最後はスッキリ伏線がまとまった気がします。
    表紙の酒井駒子さんの絵が好きです。見てると不穏な感じがします。。

  • 本の最後のページに「15歳おめでとう!」とメモが挟んであった。中3の誕生日に友人からもらった1冊だった。もう9年も前なのか。

    そのとき読んだはずなのに、読み返してみるとほとんど内容を覚えていなかった。

    結末は「ええっ!」となった。そういうことだったのか。

    脇役の登場人物が魅力的だった。特に俊太郎。

  • 人は死んでから49日目にふたたび別の生に生まれ変わる。

    若くして殺された天才肌の画家である高槻倫子の遺作展に
    出かけた万由子。

    会場の入口で感じた不安は、会場に入るとますます強くなり、
    絵を観た瞬間に感じる。
    “この絵に描かれている風景を知っている”

    誰が画家を殺したのか?
    万由子は画家の生まれ変わりなのか?

    自作の絵を4人に渡して欲しいという画家の遺言を
    実行していく内に深まる謎。

    ラストもまずまず。

  • お盆休みに何気なく手に取った本です。
    大抵 外れのない作者なので、普通に読み始めたのですが・・・。
    いやぁ~ 本文の中心になる人物は、非常にエキセントリックで面白く読めました。
    「心を感じる」相手の共鳴は、私が日常生活で感じているままであったので、そこもびっくり。
    私・・・すぐに心が読まれちゃうんだろうなぁ~。

  • ちょっと不思議な能力持った女性が、あなたは私の母親生まれ変わりだと言われて、その母親を殺した犯人を探す手伝いをする物語り。

    彼女の見えてしまう能力が、感化の様な事だから、相手の強い想いや、その人が沢山の引き出しをオープンにしていないと見えない。そこがポイントだった。
    彼女に見える物が、確かに自分の記憶なのか、側にいる人の影響なのか。本人もわかっていない様な状態。
    むしろ余計な先入観となりそうな感じで、 これがちょっとしたトリックにもなってるし、 物語りの外にいる読者が気がついているのに、主人公は気がついてない状態になって、起承転結の結部分が盛り上がれなかった。

    恩田さんの本は、光の帝国と上と外がとても好きで、他の本を読むとき、光の帝国を越えてくれるかなあと、ついつい思ってしまう。

  • 誰が高槻倫子を殺したか、なぜ万由子が倫子の生まれ変わりなのか、高槻倫子が描いた絵の意味と取り巻く人達との関係とは。
    .
    誰かを守る為に真実を隠すことの美しさと残酷さが垣間見えました。

  • 恩田さんの小説の大人の中二感(ほめ言葉)が好きでたまらない。日常と非日常の境界が曖昧になっていくこの感じ。現実逃避したい時の読書にほんと最適だと思う。至福の時間でした。

    この話シリーズとかじゃなくて、単独なのかなあ?「先生」なんかこれだけキャラ立ちしてて、これっきりじゃもったいなさすぎるような。
    幼馴染の彼も設定てんこ盛りな割に出番少ないのが逆に不自然に感じるくらい。それだけ登場人物がみんな魅力的だってことではあるのですが。

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著者プロフィール

恩田陸(おんだ りく)
1964年、青森市生まれ。水戸第一高校を卒業し、早稲田大学進学・卒業。1991年、第3回日本ファンタジーノベル大賞最終候補作となった「六番目の小夜子」でデビュー。2004年刊行『夜のピクニック』で第26回吉川英治文学新人賞及び第2回本屋大賞、2007年『中庭の出来事』で第20回山本周五郎賞をそれぞれ受賞。2017年『蜜蜂と遠雷』で第156回直木三十五賞、第14回本屋大賞、第5回ブクログ大賞などを受賞した。同作品による直木賞・本屋大賞のW受賞、そして同作家2度目の本屋大賞受賞は史上初。大変大きな話題となり、代表作の一つに挙げられるようになった。同作は2019年4月に文庫化され、同年秋に石川慶監督、松岡茉優・松坂桃李らのキャストで映画化される。

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