図書室の海 (新潮文庫)

  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101234168

作品紹介・あらすじ

あたしは主人公にはなれない-。関根夏はそう思っていた。だが半年前の卒業式、夏はテニス部の先輩・志田から、秘密の使命を授かった。高校で代々語り継がれる"サヨコ"伝説に関わる使命を…。少女の一瞬のときめきを描く『六番目の小夜子』の番外篇(表題作)、『夜のピクニック』の前日譚「ピクニックの準備」など全10話。恩田ワールドの魅力を凝縮したあまりにも贅沢な短篇玉手箱。

感想・レビュー・書評

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  • 渡すだけの小夜子
    サヨコの番外編とは知っていたはずだった。2ページ目にそれを暗示する名もあったではないか。でも彼はそれと気づくこともないままにこの話の主人公となるべき者を探し求めていたのだった。サヨコを読んでからもう2週間以上経つのだし、社会人にとって読み終えた本というのは、正直言って半分過去の一部みたいなものだと思う。自分が生きているこの場所、この読んでいる本だけが世界の中心で、ここだけが色を持って存在しているような感じだ。いや、過去の一部という言葉は語弊がある。彼はサヨコの面影を求めて番外編を読もうと思い立ったのは、単なる思い付きではなかったのかもしれない。4分の3を過ぎた頃だった。彼は、おや、と思った。デジャ・ヴを見たような感覚。それは、見覚えのある名前のせいだと気付いた。「関根さんが鍵を持っている」ー関根 夏ー。ようやくたどり着いた名前に、じわりと胸が熱くなる。そう、彼女だったのだ。ふと、後ろで誰かが動いたような気がした。彼は思わず後ろを振り返った。薄暗い書架の奥を見る。書架の奥には誰もいなかった。彼は、かすかに首の後ろが強張るのを感じた。理由のない胸騒ぎが心をかすめるのにも似た風景だった。そして彼はその場所にうずくまった。顔も知らず、名前も知らない、まだ見ぬ「彼女」を思って。

    10の短編からなるこの一冊。やはり、サヨコと会える!「図書室の海」は面白かったです。誰が登場するのかと思っていたら関根秋君のお姉さんでした。そうするとお兄さんは 春 なのか?いずれにしてもこの独特な世界観にははまりますね。その他には、サヨコよりももっと会いたかった融と貴子が登場する「ピクニックの準備」。前夜のワクワク感があって、本編の前にあってもおかしくない感じがしました。さらに興味深かったのは、二人の友人の名前、肇?美夜?さらには何かを計画しようとする「私」。この直後に恩田さんが一気に続きを書いていたら「夜のピクニック」はどんな内容になっていたのでしょうね。そして、最後にもう一つ。「春よ、こい」。これも良かったです。春の霞の中のような茫洋とした薄桃色に彩られた世界。この世界観で書かれた長編を是非読んでみたい、そう思いました。

    ということで、短編集なので一気に読み終えてしまいましたが、何だか不思議なまとまり感もあって、とても楽しませていただきました。

  • 読んだものや、これから読もうと思っていたもの、知らなかったもの、沢山のお話があり楽しい時間でした。

  • 『夜のピクニック』の前日譚『ピクニックの準備』をはじめ 全10話からなる物語は、本編からスピンオフしたもの、唐突に始まる語り口から前段の物語が存在し、さらに続編が予想されるものなど、ホラ-、ミステリ-、SFの世界に読者のイマジネーションを奮い起こさせる<恩田陸ワ-ルド>の短編集。 お気に入りは『茶色の小壜』『ある映画の記憶』『国境の南』『ノスタルジア』など、続編へのイメ-ジが膨らむ作品。

  • 睡蓮とピクニックの準備はどちらも先に読んでいたのでまた図書室の海で出会えて良かったです。
    オデュッセイアは読み始めてすぐにこれってハウルの動く城みたい?って思いました。恩田さんは多種多様な引き出しを持っていて毎回ドキドキしたりゾワッとしたり楽しませてくれますね。

  • 短編が10篇。どれもページ数が短くサクサク読める。
    小夜子の番外編が目当てだったけれど、他の作品も楽しめた。

    恩田作品はわたしには合う合わないの差がすごくあって、学園モノ以外はあまり合わない方だけど、この本の10篇はどれも面白い。

    年代記を凝縮したという「オデュッセイア」。
    SFというよりファンタジー風味で好きです。
    ヴィジュアル的にはどうしても某動く城を思い浮かべてしまうけれど(苦笑)

    あとは、「夜のピクニック」の前日譚。うまく本編へ煽ってくれた感じ。
    もちろん、このあと「夜のピクニック」を読む予定。

  • 本の名前に引っ張られてか、学生の時の図書室で本をつまみ読みしてる気分になった。物によっては映画の予告のような気分になるものもあった。
    短編の中でここまで、物語をイメージし読み手の中で想像を膨らませていくことができるのは面白いなと感じた。
    個人的な感想だが、恩田陸の自分の中で想像を膨らませていく感覚を短編でも味わえたことが嬉しかった。

  • 「夜のピクニック」の予告編「ピクニックの準備」、
    「六番目の小夜子」の番外編「図書室の海」ほか、代表的な恩田作品の別編がまとめられた短編集。
    ホラーな雰囲気満載の一冊。
    けれど基本はミステリーだから、私でも読めるくらいのホラー度合い。知っている登場人物たちに会えて、なんだか懐かしかった。「夜のピクニック」、買いたくなってしまった。

  • なんとなく もわっとして…確かに恩田ワールドな短編でした。六番目の小夜子や夜のピクニックとリンクしてる所もなんか?良かった。

  • 私が初めて読んだ恩田作品。短編集で他の作品の番外編みたいな話も入っているので、本編を読んでから改めて再読したい。
    …と思いつつも、多くの恩田作品を読んだ今になってもまだ再読できていなかったりする。

  • 再読。『ピクニックの準備』を読み直したくて、改めて図書館で借りてきた。結局、全作読んだ。『夜のピクニック』や『蜜蜂と遠雷』を読んだ後で忘れていたけど、恩田陸さんの作品は不思議な世界観があることを思い出したよ。ホラー系は得意じゃないから敬遠していた作品も挑戦してみようかな?あとがき読んで、恩田陸さんが不動産屋に勤めていたことを知った。最初から小説家!という人は少ないんだろうね!

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著者プロフィール

1964年宮城県生まれ。92年『六番目の小夜子』で、「日本ファンタジーノベル大賞」の最終候補作となり、デビュー。2005年『夜のピクニック』で「吉川英治文学新人賞」および「本屋大賞」、06年『ユージニア』で「日本推理作家協会賞」、07年『中庭の出来事』で「山本周五郎賞」、17年『蜜蜂と遠雷』で「直木賞」「本屋大賞」を受賞する。その他著書に、『ブラック・ベルベット』『なんとかしなくちゃ。青雲編』『鈍色幻視行』等がある。

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