夜のピクニック (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.88
  • (4512)
  • (5181)
  • (4795)
  • (594)
  • (136)
本棚登録 : 49401
感想 : 4050
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (455ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101234175

作品紹介・あらすじ

夜のピクニックは恩田陸さんが高校生を主人公にして描いた小説です。
小説の舞台の高校で、24時間耐久のピクニックが学校行事として行われます。高校生が昼食と夕食を食べ、仮眠をとりながらひたすら歩きます、ただ歩くだけということですが、その非日常的な行事を通して、登場人物たちが成長していく作品です。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 「本屋大賞受賞作は全て読むことにしている。受賞作を私は流行小説の窓としている」(「かがみの孤城」)などと宣言したものだから、ちょっと急いで過去の未読作品を読むことを、来年「流浪の月」文庫化までの課題としたいと思う。殆ど映画化されているので読んだ気になっていたんだよね。今のところ読む気のない一作(※)を除いては、あと5作残っている。

    ※誰とは言わないけど、一人だけ受賞者の中に嫌いな作家がいるだけの話。映画は公開時に観ている。

    「夜のピクニック」は2005年、第二回本屋大賞受賞作にして恩田睦受賞一作目。06年に映画化されて、当時高校生の多部未華子が主演した。終始怒った顔をしながら、ラスト場面でとても可愛い笑顔で締めたのが印象的だった(印象的な台詞を吐いた戸田忍役の郭智博くんは今どうしているのだろう)。

    進学校の北高は、毎年全生徒一昼夜を歩く80キロの鍛錬歩行祭をする。三年生最後の歩行祭の数人の男女の一部始終を描いた小説である。映画は残念なものに終わったが、小説は傑作だったと思う。やはり読んでみなければわからない。

    暫く読んで「恩田睦さん、絶対何処かで一昼夜歩いてみてるな」と思った。関係者の取材だけではわからない、歩いてみた者しかわからない「実感」に満ちていたからである。ところが調べると、彼女の母校の年中行事だったらしい。実際は70キロと少し短いけど、恩田睦は3回も実体験している。

    私もある年中行事で、約30数年間、一日で20-30キロ歩く体験(最高は40キロ)を続けてきた。少し彼女たちの気持ちもわかる。準備のための煩わしさや実行委員たちは彼女たちの倍の運動量が要ることも理解している。だからこそ、それに乗っかってただ歩くことが、どんなに貴重な経験なのかも少しだけ知っている。



     みんなで、夜歩く。たったそれだけのことなのにね。どうして、それだけのことが、こんなに特別なんだろうね。

     あとで振り返ると、一瞬なのに、その時はこんなにも長い。1メートル歩くだけでも泣きたくなるのに、あんなに長い距離の移動が全部繋がっていて、同じ一分一秒の連続だったということが信じられない。
     それはひょっとするとこの1日だけではないのかもしれない。
     濃密であっという間だったこの一年や、ついこのあいだ入ったばかりのような気がする高校生活や、もしかして、この先の一生だって、そんなそんな「信じられない」ことの繰り返しなのかもしれない。

    「つまんねえ風景だな」
    融は、そう呟いた。
    「だな」
    忍も同意する。
    何もない田んぼに、屋敷林に囲まれた住宅が点在するだけ。田んぼの中を横断するように、送電線の鉄塔が点々と連なっている。確かに風光明媚とは言いがたい。
    「でもさ、もう一生のうちで、二度とこの場所に座って、このアングルからこの景色を眺めることなんてないんだぜ」
    忍は例によって淡々と言った。
    「んだな。足挫いてここに座ってることもないだろうし」



    不良生徒がたむろする怒涛の高校生活を描いた小説よりも、進学校の生徒の青春を描いたこの小説が、先ずは本屋大賞に選ばれたことを私は喜ぶ。

  • 3年前に「まなの本棚」を読み終わった時に、
    「不思議の国のアリス」「夜のピクニック」「そして誰もいなくなった」を読もう!と決めました。
    残っていたのが「夜のピクニック」でしたが、ようやく読めました。

    図書館などで何度も手に取りながら先延ばしにしていたのですが、1月と2月を

    ・読みかけて途中で放置したままの期間が長い本。
    ・読みたい、読みたいと思いながら、ずっと読めていない本。

    を10冊くらい読了するための期間とすることにしたんです。

    とても読みたいor読みかけの本が40冊程たまっているので、これを半分くらいにしたいから。

    この「夜のピクニック」は、まず最初の印象が「こんなに分厚いの!」でした。
    450ページもあるので気楽に手を付けられず、3年も放置してました。

    いざ読み始めると、すぐにのめり込んでいました。
    青春時代の恋物語。
    誰と誰がつき合ってるとか、誰が誰に好意を寄せているとか、自身の学生時代もこんな感じだった。

    好きなんだけど打ち明けられない。
    告白して断られたらこの後の日々が辛い。
    この気持ちは自分の中だけにしまっておこう。
    いやいや、いろんな経験をするのが青春だ。
    いつかデートに誘ってみよう。
    でも、どこに行って何を話せばいいのかわからない。

    いろいろと、探りを入れたり、冷やかしてみたり、しらばっくれたり、友人と同じ人に恋してるのに気づいたり。
    大人になっても変わりはしないが、青春時代は経験値が少ない分、想像と現実がゴチャゴチャになっていたなあ。

    さて、本物語の主人公は、西脇融と甲田貴子の二人であるが、この状況に自分が置かれたら辛い。
    この相手にだけは「誕生日、おめでとう」という言葉が重苦しい関係性で、しかも毎日顔を合わせる同級生。
    傍から見ると、お互いに相手のことを気にしているのが分かるのに、常に距離を置いていて会話も交わさない。
    歩行祭で何が起こり、何が語られ、この二人がどうなるのかに注目しながら読み進めることになる。

    貴子は融とある約束を取り交わすことに成功したが、その時の親の気持ちを考えると複雑だ。

    「夜のピクニック」は本屋大賞受賞作品であり、ブクログでも5000人以上の人がレビューを書いている。
    もっと早くに読んでおけばよかったという本は何冊かあるけど、本書もそのうちの1冊でまさに名作だと思います。

    登場人物と同じ高校生が読むといいのかな?と思ったが、芦田愛菜さんは中学生の時に読んで感銘を受けているんですね。
    幅広い年齢層に広く受け入れられる物語なのでしょう。

    • まいけるさん
      わたしはこの高校の卒業生なので親近感があります。ありがとうございます!
      わたしはこの高校の卒業生なので親近感があります。ありがとうございます!
      2024/01/30
  • 恩田さんの作品二作目に読んだのがこちらでした。先に映画を観てどうしてこの作品が本屋大賞を受賞するような作品なのかと思い読むことにしました。
    読んでみて驚いたのは、映画が非常に忠実に原作をなぞっていたことでした。その事実から感じたのは、この作品では本という文字だけの媒体の方が、映画という映像と音楽を駆使した媒体よりもはるかに多くの情報を持って迫ってきて、自分自身が融や貴子と一緒に歩行祭に参加しているかのように感じさせられたことでした。映像よりも活き活きとした世界を描きだす文章のマジック。これは凄いと思いました。80キロ歩くなんてとんでもない距離ですが、彼らと一緒の一昼夜の時間はとても楽しかったです。映画ではすっかり浮いた存在だった光一郎も原作ではぐんと魅力を増して、より歩行祭を盛り上げてくれましたし、忍と美和子にも原作の方が俄然魅力を感じました。映像と音楽を駆使しても全く足りなかった映画の情報量が後から本を読むことによって補完され、あのシーン、このシーンの意味が後から肉付けされてくる、なんとも不思議な気分でした。

    たった一昼夜のただただ歩くだけの時間が、こんなにも美しく輝くなんて。
    素敵な作品に出会えて良かったです。

    爽やかな読後感を味わせていただいた素敵な一冊でした。

  • 第2回本屋大賞
    第26回吉川英治文学新人賞受賞作
    既刊の2冊に続き、高校三部作の3作目

    少し複雑な家庭環境はあるものの、青春。

    今作の舞台となっている歩行祭
    個人的には大学時代に夜通しの100km歩行があったので、その空気感がリアルだった。

    さらりと爽やかな読後感
    (図書本)

  • 本が途切れちゃって、読みたいリスト見てたら活字欠乏症が止まらない。図書館に行って補充したいけど手っとり早く次男の部屋を物色してみることに。国語の教師をしているわりに良書がなく、かび臭い万年床の脇にミステリーホラーばかり積んである。そのうち何かやらかすのではと心配で、早く彼女とか作ってまっとうな暮らしをしてほしいとボヤキながら発掘しましたww
    恩田陸の『夜のピクニック』、へーこんなんも読んでるんだと少し安心。早速読んでみることにしましたw

    80kmを24時間かけて歩くとゆう進学校の伝統行事。
    うへぇー、80kmと言えば日本橋から小田原までの距離だ。今だと歩けるか不安なんですが、ダイエットから始めたウォーキングが次第にエスカレートしてしまい旧東海道500kmを踏破したことあるのですが、当時は1日50km(MAX)歩けたので東海道は10日移動と始めたのですが50km歩けたのは初回だけでしたorz
    実際は下方修正していき延べ20日かかってしまいました。

    さてこのお話はたった1日の出来事が447ページの膨大な紙面に収まっている。
    融(とおる)が捻挫した一瞬のアクシデントにも4ページ割いているから読者はアドレナリン放出して文字を追ってしまう。
    気力体力の限界を迎えて歩いている時、脳に酸素はあまり行かない状態になると思いますが・・
    余談ですが、赤岳から県界尾根の下降中にTJARの人に偶然お会いしたことがありました。あの日本一過酷な山岳レースの完走者だったので興奮してツーショット撮ってもらったりしながら、「幻覚とか幻聴はあるんですか?」と尋ねた時、「当然ありますけど」って答えと逆に「ないんですか?」って返されてしまい次元の違いとまだまだ越えなければいけない壁があることに圧倒された経験がありました。
    さておき、流石は偏差値高そうな高校生。意識が朦朧とするどころか互いを尊重し思いやることのできる余裕もあるし機転の効いた判断もできてるっw

    『並んで一緒に歩く。ただそれだけのことがこんなにも難しく凄いことだなんて。』
    この1日の出来事が一生忘れられない思い出になるばかりかここから未来へスタートしていくんだっw
    読後の清涼感、なんか青春してる。

    気になってたことは、貴子の誕生日は融の前か後どっちだろうなって大人の事情でしたっw

  • 高校生活最後の歩行祭。80キロを丸一日かけて歩き通すというイベントで、貴子は同じクラスに在籍する異母きょうだいの融との蟠りを解消するという、小さな賭けに出る…。

    という話。
    歩行祭の一日のみがこの小説の舞台。つまり、ほぼ高校生が歩いているだけの小説。はっきり言って読み始めは、地味な印象が拭いきれなかった。特に大きな事件もなくどこにでもありそうな風景なのだけど、奥行があって、喜怒哀楽や心情が豊かで、登場人物がそれぞれ魅力的なので、内容にどんどん引き込まれていった。貴子や融たちと一緒に歩いている気分にすらなった。
    「蜂蜜と遠雷」を読んで「恩田陸さんってすごい!天才!」と思ったけど、改めて舌を巻いた。

    「おまえにはノイズにしか聞こえないだろうけど、このノイズが、聞こえるのって、今だけだから、あとからテープ巻き戻して聞こうと思った時にはもう聞こえない…」
    忍が融に対して吐く青春そのもののセリフ。
    その瞬間、あっという間の瞬間をどう生きるべきか。正解があるのかはわからない。でも言えるのは、若いうちは無駄なものなんて何一つない、ということ。

    融と貴子、そして2人を取り巻く友人たちの優しさが胸を打つ。2人の成長を通して生きていることへの肯定感を感じることができて、読み終わって爽快な気分になる本。

    名作。まさしく永遠の青春小説。

    • ちゃたさん
      たけさん、こんばんは

      ちゃたともうします。フォロー返しありがとうございました。ブクログアワード受賞おめでとうございます。
      こちらの本スゴく...
      たけさん、こんばんは

      ちゃたともうします。フォロー返しありがとうございました。ブクログアワード受賞おめでとうございます。
      こちらの本スゴくハマりました。登場人物たちとひたすら青春を歩く、これがなんとも素敵でした。今でもスゴくいい読書体験でした。

      今後ともよろしくお願いします(^o^)
      2023/01/25
    • たけさん
      ちゃたさん!
      こんばんは。
      ありがとうございます!
      ちゃたさんもブクログアワードおめでとうございます。

      この本、これぞ青春って感じがいいで...
      ちゃたさん!
      こんばんは。
      ありがとうございます!
      ちゃたさんもブクログアワードおめでとうございます。

      この本、これぞ青春って感じがいいですよね!
      素敵な小説です。

      こちらこそ、よろしくお願いいたします!
      2023/01/25
  • あぁーー、青春だなぁ。
    高校生の何気ない会話に懐かしさを感じました。特に大きな事件が起きるわけではないけれど、高校の青春を思い出させてくれる物語です。

    舞台は、高校生活一大イベントの歩行祭。歩行祭とは、次の日まで一日中ひたすら歩き続けるイベントで、この学校では修学旅行の代わりだそう。登場人物は全員3年生で、今年最後の参加になります。

    歩行祭が楽しそうで羨ましい、、みんな疲労困憊の中、本音がポロッと出てしまう様子が良いんです。友人同士で嘘や建前もなく、頭の中に浮かんだリアルな言葉を紡いで会話する感じが微笑ましい。

    高校時代ってこういう他愛ない話が一番楽しかったりしますよね。こうやって感想をまとめていると、帰り道にマクドでだらだら喋っていた記憶が蘇ってきました。何の意味もないあの時間が今思い返すと、私の青春の1ページだったんだと感じます。

    是非、高校生の方に読んでほしい小説です。
    何気ない日常を大切に過ごしてほしいと思います。

  • 「24時間かけて80キロ歩く」という奇妙な学校行事に参加する男女の物語ですが、青春全開な感じがたまりませんでした。

    物語としてはずっと歩いてるシーンなので、特に大きいイベントが起こるわけではないのですが、高校最後というシチュエーションや、夜間を歩く雰囲気、蓄積した疲れから徐々に登場人物たちが本心等を吐露していくことで物語が進むのは非常に面白かったです。

    そして主人公2人を取り巻く友達がとにかく良い人たちばっかりで、すごく心が温まりました。ただ、中には性格悪い人も何人かいるので、そこが上手く対比されてて印象的だったのかなとも思います。

    個人的にはこの小説を読んでこなかった理由がありまして、私の兄の高校で、実際に10時間で40キロ歩く謎の学校行事があり、妙なリアリティがありました。
    まぁこの小説を読んでると私の兄も青春してたのだろうと思えて、思わず笑みがこぼれてしまいました。

  • 好きな作者さんだけれども表紙の絵から高校生の恋愛ものかなと思い中々読む機会が無かったのが、読みだしたら止まらなくなり。恋愛も多少は絡むけれども主人公の主軸は別にあり彼女の願いをどう叶えていくのか、ただ歩くだけでどう繋がっていくのか先を先を知りたくなる。主人公だけでなく皆ちょっと高校生には思えないような大人びいた所もあるけれどもそれがあるから高校生は随分昔に通り過ぎた私でも読めたのかも。

  • まさに、「タイミング逃した〜」と思いました。
    友人忍が、「読むべき本には読むべきタイミングがある」と主人公融に言っていました。
    その言葉をたった今痛感した本です。
    できれば、青春真っ只中の学生時代に読みたかった本です。
    朝の8時から翌日の朝の8時まで歩き通すという行事も珍しく、歩きながらたくさんある時間の中で物事をゆっくり考える機会があるって、とても素晴らしい時間だなと思いました。
    高校時代のその時には気付かないですが、後から辛い事や楽しい事をその時に精一杯楽しんでたなぁと、全力で恥ずかしかったなぁと思い出せる時を過ごせたのが、まさに青春。
    大半の人がそうではなかったかもしれませんが、そうでなくても、それもまた青春なのだと思います。
    歩行祭で、色々思いを巡らせ、友人と話ているうちに主人公たちが徐々に心境を変化させ、気付いていく。
    私のように遅くに本を読んでから気付いたスタートでも、気付かないよりいいなと前向きに思いたい。
    今現在を楽しまなきゃと思わせてくれた本です。

全4050件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1964年宮城県生まれ。92年『六番目の小夜子』で、「日本ファンタジーノベル大賞」の最終候補作となり、デビュー。2005年『夜のピクニック』で「吉川英治文学新人賞」および「本屋大賞」、06年『ユージニア』で「日本推理作家協会賞」、07年『中庭の出来事』で「山本周五郎賞」、17年『蜜蜂と遠雷』で「直木賞」「本屋大賞」を受賞する。その他著書に、『ブラック・ベルベット』『なんとかしなくちゃ。青雲編』『鈍色幻視行』等がある。

恩田陸の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
宮部みゆき
あさの あつこ
三浦 しをん
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×