【旧版】深夜特急5 ートルコ・ギリシャ・地中海 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (247ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101235097

作品紹介・あらすじ

アンカラでは一人のトルコ人女性を訪ね、東京から預かってきたものを渡すことができた。イスタンブールの街角では熊をけしかけられ、ギリシャの田舎町では路上ですれ違った男にパーティーに誘われて。ふと気がつくと、あまたの出会いと別れを繰り返した旅もいつのまにか〔壮年期〕にさしかかり、は、旅をいつ、どのように終えればよいのか、考えるようになっていた。

感想・レビュー・書評

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  • 第5弾。いよいよアジアからヨーロッパへ。
    トルコではアジアとヨーロッパが渾然一体となった文化を体感し、徐々にヨーロッパが近くなってくると主人公はこれまでの旅の意味を振り返る時間が増えてきます。

    香港を皮切りに旅を続けてきてもうすぐ終わるというのはどんな気持ちなのだろうと一緒に旅してる自分がいます。

    オススメ!

  • 人生は旅に似ているというが、長い旅もまた人生に似ている。幼年期があって、青年期、壮年期、老年期がある。

    実際に旅をしてから十数年経ってからの執筆だと知り、それだけ熟成させたから、これだけ、落ち着いた雰囲気を出せたのかと思う。

  • 沢木耕太郎さんの深夜特急の旅はテヘランからイランの国境を越え
    隣国・トルコへと入りイスタンブールへと向います。

    沢木さんはこの当時26歳位だったかしらと記憶していますが
    少々無謀で無鉄砲かとも思える沢木さんの旅道中での行動や
    出会っていくものの一つ一つは、かなり危険なところをすれすれで
    切り抜けていっているようにも見えて、私には到底なしえない事を
    やってのけている沢木さんにはとにかくいつもハラハラドキドキ
    そしてわくわくさせられてもいます。

    とはいえ....沢木さんには不安だとか、恐怖心だとか心細いとか
    そういうことを感じることは少しも何もないのだろうか...。
    これは怖いもの知らずだからこそできる、若さがゆえんの
    若気のいたりなのかもしれないけれど...などと思った矢先

    "自分はどのような状況でも生き抜いていけるだろうという自信と
    それとは裏腹の危険に対する鈍感さの二つを旅が与えてくれた気がする"

    という沢木さんの気持ちが目に飛び込んできて、なんか通じた...?という
    驚きととともに(笑) あぁ..やっぱりそうよね...人間だもの....と安堵して
    肩の力が抜けてほっとした気持ちになりました。

    窮地に立たされた時に振り絞った勇気が自信へと繋がっていく一方で
    それも度重なると自信はマヒして過剰(鈍感)になってしまう....。
    これはほんの紙一重のことなんでしょうね...。

    沢木さんの旅はほんとその紙一重そのもののようでした。

  • 一気にヨーロッパに入りました。5冊目はとても感傷的。その理由として、「疲労感の蓄積」と「終わってしまった感」。さすがに長期間気が張り詰めて過ごし、食事も貧弱、だんだん寒くなる、心許せる相手としゃべる機会がない、という過酷な条件。次はいよいよロンドンでのフィナーレ(できる?)。読んでいて、残りのお金は足りるの?ロンドンに到着しても帰りの飛行機代は持っているの?など、私の気が病んでしまいそう、小心者なので。私にはこのような一人旅は無理そうです。最後、笑顔でロンドンに到着しできるのかな?いざロンドンへ!

  • 再読。トルコ、ギリシャの旅。トルコでボスポラス海峡を越えると、そこはアジアとは異なる欧州を感じさせる場所になるといいます。物価も上がり、食べ物も変わる。ギリシャにいけば、茶がコーヒーになります。そして旅も東南アジアやインドのような混沌さを感じられるものではなくなっていきます。同時に彼は満ち足りなさ、喪失感のようなものを感じ始めます。旅が終わりに近づいていることを実感しながら。

    旅の終わりを感じ始める章。さあ、次が最終巻です。

  • この「トルコ・ギリシャ・地中海」の旅では旅に対する思いの人生に対するそれとの重なり方が大きくなり始める。
    香港マカオで始まった土地へ、そして人への興味にあふれていた旅が、いつのまにか訪れた地、出会った人々への感激が薄れていく。
    そしてそれは土地が変わったのではなく自分自身が変わったのでもなく、この旅そのものが変わったのだと著者は感じる。
    旅にも幼年期、青年期、壮年期、老年期があるとすれば何を経験しても新鮮で些細なことにも心を震わせていた青年期は終わっていたのだと。そして今はこの旅をどのように終わらせるかを考えるようになっている。
    読者である自分も旅と人生を重ねるというありがちな思いがシックリとしてくる。

  • トルコからギリシアへ
    西へ行くにつれ、主人公が少しずつこの旅に興味を失いつつあるように、読者にとっても今までのような興奮が薄れてきた感がする
    やはり日本も違いはあろうが西側諸国の文化・暮らしに近いせいだろう

    文中におもしろい言い回しがあった

    「トルコからギリシアに入ることで、アジアからヨーロッパへ、イスラム教圏からキリスト教圏へ、茶の国からコーヒーの国へ、「C 」の茶の国から「T」の茶の国へと違う種類の国へと来てしまったのだ」

    言い得て妙だなと思った

    また、さらにこんな文章も
    「人の一生に幼年期があり、少年期があり・・・老年期があるように、長い旅にもそれに似た移り変わりがあるのかもしれない
    私の旅はたぶん青年期を終えつつある。何を経験しても新鮮で、どんな些細なことでも心を震わせていた時期は終わったのだ」

    主人公は、この旅をどのように終わらせるのか、しおどきをどのように見つけるのか考え出している
    それは私たち読者にしても、残念ではあるが興味のあるところだ

    さあ、残るは最終巻の第六巻へ

  • いよいよラストの前の5巻。旅の終わりが近づいてくるのを感じます。
    ヨーロッパ方面へ向かい、アジア編とは違い近代化した街並みが頭に浮かぶ。
    トルコの熊と写真を撮って膨大な金額を請求してくる詐欺師とのくだりは頬が緩んだ。
    いよいよ次は最終巻。長い期間をかけて少しずつ読み進めたので、なんだか自分の旅が終わるようで寂しい気持ちになる。

  • イランからトルコそして、いよいよヨーロッパ域のギリシャへ。
    なんだかすでに旅の終わりを感じ始めてる著者。欧米人が辿る逆ルートの方が、刺激を徐々に味わえていいのかも。
    旅は人生とな。著者のような刺激的な旅を一年近くしてたら、そりゃ好奇心は摩耗していきますね。慣れきってしまう前に、早くゴールしてほしくなってきました。
    もうこの先ヨーロッパに入ったら、インドで味わったような刺激は無いのでは。。。
    シルクロードの旅、私もしてみたいなぁ

  • 旅をどう終わらせようかと、気持ちが変わってきた。人生も子供~大人~老人になるにつれ、考え方が変化していくように、旅自体も変化していくのが面白い。一気読み。「わかったことは、わからないことがわかったということ」

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著者プロフィール

1947年東京生まれ。横浜国立大学卒業。73年『若き実力者たち』で、ルポライターとしてデビュー。79年『テロルの決算』で「大宅壮一ノンフィクション賞」、82年『一瞬の夏』で「新田次郎文学賞」、85年『バーボン・ストリート』で「講談社エッセイ賞」を受賞する。86年から刊行する『深夜特急』3部作では、93年に「JTB紀行文学賞」を受賞する。2000年、初の書き下ろし長編小説『血の味』を刊行し、06年『凍』で「講談社ノンフィクション賞」、14年『キャパの十字架』で「司馬遼太郎賞」、23年『天路の旅人』で「読売文学賞」を受賞する。

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