檀 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101235134

感想・レビュー・書評

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  • 「私は、お父様のことを少し美化しすぎていたのかもしれないわ」
     私が言うと、『火宅の人』はあまり正月にふさわしい読書ではないかもしれないと笑っていた娘が、努めて明るい口調で言った。
    「お母さん、死んでもチチのところへは行かれないかもしれないわね」


    :::::::::::::::::::::::::


    秋頃から近所のとある作家の家が改築でもするのだろう一部取り壊しが始まった。
    母屋はそのままなのだが先日気づくと離れが綺麗さっぱりなくなっている。
    その離れは夜に前を通り掛かり見上げると縦に細長く穿った窓越しに黄橙の明かりの奥に壁一面の本棚が眺められ私のお気に入りであった。

    そういえば私はその作家の小説を読んだことがなかった。

    ふとそう思った私は丁度心に掛かることもあったのでその足で駅前に引き返し小さいが遅い時間まで開いている本屋に入るとやや厚めの上下巻二冊の文庫を買い求めた。
    そしてこの正月の課題図書とすることにしたその本を年の瀬の大掃除の合間に帰省しても部屋に篭り遊びに来た甥達とさいころを振りながら初売りの百貨店のフロアの隅のベンチで読み耽った。

    こうして新しい年を迎えたわけだがそれにふさわしい読書だったかいまはまだ分からない。
    思うところ多く感ずるところ多くしかしながらいまだ形を成さず答はこれからのときが解くところと思う。
    私は心にしたがう。

    ただ漠然とこの作家はきっとこれからのときとともに人びとの記憶から忘却されていくことは免れまいと不思議に強くした。

  • 「檀」は、檀一雄の妻、ヨソ子さんの独白という形で進行していく。
    出会いから始まって「火宅の人」執筆の裏側、晩年に至るまで、ベストセラーになった当時「火宅の人」を読んだ私としてはとても面白かった。 
    檀ふみさんのお母さんでもあるヨソ子さん、私の母と同年代でもあり、我慢我慢の人生でも檀一雄本人のことが本当に好きだったんだろうなぁ~と実感する。
    また、インタビューを受けないヨソ子さんが、沢木耕太郎氏のインタビューを受ける気になったのは、やはり作家の魅力によるところが大きかったのでは?とも思った。

  • 『火宅の人』を読んだことのある人なら、これはきっと楽しめる。
    奥さんの語り口だけど、沢木耕太郎の視点も混じる。こんな裏事情があったんだ…奥さんはこんな思いだったんだ…と思うと同時に、壇一雄という人物像が新たに浮き彫りになる。
    一気に読んでしまった。とても面白い。

  • なぜかハワイで読んだ

  • 檀一雄の未亡人、ヨソ子さんへのインタビューを一人称の形でまとめた不思議な小説。檀一雄のどうしようもない部分も見えてくるけれども、読み進めるうちに(特に晩年)、ヨソ子さんの檀一雄に対する愛の深さが分かります。

    沢木耕太郎はかつて1回だけゴーストライターをしたことがあるらしいけれども、そのときの経験も生きたのでしょうか。鮮やかな一人称形式のまとめかたに唸らされます。ハードカバーも文庫本も、緒方修一さんによる装丁がお洒落で好きです。

  • 聞き、語る、ということについての本質がある気がします。ここから私は「火宅の人」へジャンプします。

  • 好きな本

  • あなたにとって私はなんだったのか。私にとってあなたは全てであったけれど。
    http://www.touchingword.net/che/detail.php?id=888

  • 2008.11.8読了。

  • 檀ふみさんのお父様(作家)のお話
    破天荒だけど
    とても幸せな人生だったのだろうな
    と、感じる

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著者プロフィール

1947年東京生まれ。横浜国立大学卒業。73年『若き実力者たち』で、ルポライターとしてデビュー。79年『テロルの決算』で「大宅壮一ノンフィクション賞」、82年『一瞬の夏』で「新田次郎文学賞」、85年『バーボン・ストリート』で「講談社エッセイ賞」を受賞する。86年から刊行する『深夜特急』3部作では、93年に「JTB紀行文学賞」を受賞する。2000年、初の書き下ろし長編小説『血の味』を刊行し、06年『凍』で「講談社ノンフィクション賞」、14年『キャパの十字架』で「司馬遼太郎賞」、23年『天路の旅人』で「読売文学賞」を受賞する。

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