檀 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.72
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本棚登録 : 595
レビュー : 83
  • Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101235134

作品紹介・あらすじ

愛人との暮しを綴って逝った檀一雄。その17回忌も過ぎた頃、妻である私のもとを訪ねる人があった。その方に私は、私の見てきた檀のことをぽつぽつと語り始めた。けれど、それを切掛けに初めて遺作『火宅の人』を通読した私は、作中で描かれた自分の姿に、思わず胸の中で声を上げた。「それは違います、そんなことを思っていたのですか」と-。「作家の妻」30年の愛の痛みと真実。

感想・レビュー・書評

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  • 『火宅の人』の作者壇一雄氏の妻であるヨソ子氏の視点で描かれる30年の愛憎物語。不倫相手との詳述な蜜月の日々を小説で知るとはどのような気持ちであろう。嫉妬に身を焦がしながらそれでも夫を愁うとはどのような想いであろう。壇氏の持つ人間的魅力(人としては相当屑だと思うが・・・)とヨソ子氏の底知れぬ強さが相見えた結果、この不思議な夫婦関係が生まれた。

    本作品は夫妻の関係は然ることながら、ノンフィクション作家沢木耕太郎の本領発揮といったところだろう。文庫本解説でも語られるように「四人称」というほかに類をみない手法で本作品は描かれる。作品内容は個人的にあまり好きではなかったが、解説を見て「四人称」という表現にはなるほどなと感心させられた。

  • 『火宅の人』で、愛人との暮らしを綴って死んだ檀一雄。
    その妻の語り。どう育ち、どうやって檀と出会い、結婚したのか。愛人ができてからの暮らし、晩年。
    中島らも夫人の『らも』を彷彿させる。
    『火宅の人』を読んで面白かった方は、ぜひ。

  • 作家檀一雄の妻よそ子が語る火宅の人,檀一雄.

    「火宅の人」は昔,本も読んだし,(それほど好きなわけでもないのに)映画も見た.
    そしてNHKスペシャルで,病室で肺がんに苦しみながら,火宅の人の最後の章の口述筆記を記録したテープをもとにした番組もみた.

    この本は,その「火宅の人」の舞台裏をのぞくような感じ.
    小説を苦しみ出しながら書く作家と,その小説に苦しめられるその家族との葛藤がなまなましい.
    しかし,この奥様,最後には自分が夫のことを好きだと気付いて許すんだな.檀一雄にそれだけ魅力があったということか.

  • そう言えばこれは違う人が書き起こした本だった。
    そう思うほど、ヨソ子さんと一体化していた。
    完全にヨソ子さんのイメージしかない、沢木耕太郎さんと言う作者の姿が出てこない、それはそれでなんかすごい。

    これまた「火宅の人」を読んで触発された一冊。
    その中では、正直これが一番おもしろかった。
    愛人の本よりも、娘さんの本よりも(娘さんの本は別な意味ですごくおもしろかった)。

    なんだかんだありながらも、一生檀一雄が信頼し、寄り添い、苦労をともにしながら生きてきた人の言葉の重みを一つ一つに感じて...

    そして、この本を読むことで、生きている人をモデルにした「私小説」を書くことの難しさも、ひしひしと伝わった。

    書かれた本人である奥様、愛人はもとより、書いている本人の心を切り裂く、とても危険なものであることも...

    檀一雄は愛人との生活を「火宅の人」で昇華しようとした。
    しかしそれは、忘れかけていた奥様の心、愛人の心、そして二人の現在に重く影を残す。

    書いていた本人も、その二人に新しく出来てしまった傷を思い、自分にも新しく傷を作り、苦しんで苦しんで書けなくなる姿、それでも時折訪れる穏やかな日々、ポルトガルでの寄り添い温かく過ごした毎日、などが読みやすく綴られています。

    奥様は、「火宅の人」に綴られていたような、冷血な人ではなかったようです。
    それも、ご本人が言うように「ご都合主義」な部分もあるのかもしれませんが、一緒に沖まで泳いだり、サイドカーに檀一雄を乗せてスクーターに乗ったり、意外とアクティブな方でした。

    そう言えば「火宅の人」にもスクーターエピソードはあるけど、その時はなんとなく「ヨリ子さん」のイメージと合わなくて唐突な感じしたなぁ。

    私小説は難しい。
    でも逆から考えるとだからこそ、「火宅の人」を巡ってそこに書かれた人たちの新たな作品が生まれるんだな、とも思いました。

    「火宅の人」一つを取っても、
    この作品、愛人の作品、檀一雄の母親、編集者、作者の娘、さまざまな人が「火宅の人」と「檀一雄」について語っている。

    みんな自分をきれいに見せたい。
    誤解だと思われる部分は解きたい。
    だからこそ新たな作品が生まれて、それによっていろんな視点が出来て、作品の一群が出来て、もしかしたらそれが本来の作品により重みを与えてくれるのかもしれない。
    「火宅の人」は、ある意味では幸せな作品なのかも!

    ...ところでタグに「断捨離」があるのはなぜに?(笑

  • 『火宅の人』→『壇』
    の順番で読むと、視点としてはおもしろい。
    破滅と分かっていてもその道を進んでしまう人間の一面を
    よくあらわしている『火宅の人』と、
    その世界に触れていたのに穏やかな回想としての『壇』、
    あわせて読んでほしい。

  • 久しぶりに再読。深夜特急は青春のバイブルだとして、沢木作品で一番好きなのはこれ。いつもながら、絶妙な視点に引き込まれ、小説のようでいてノンフィクションの体裁を崩さないスタイルは、沢木作品の真骨頂。女性の本質が、リアルに、客観的に、そして凛と書かれていて、とても共感できる。筆者が男性なことにハッとさせられます。これは小説家には書けない小説。ノンフィクションライターだから書ける小説。リアルな人生が濃縮された作品。

    • mktfryさん
      読みたくなりました。レビューの文章、良いですね。短いけれども中身が詰まっていると思いました。すっと読めたのは、体言止めを多く使っていてリズム...
      読みたくなりました。レビューの文章、良いですね。短いけれども中身が詰まっていると思いました。すっと読めたのは、体言止めを多く使っていてリズムがあるからかもと後付けで思ったり。
      2012/02/10
  • 沢木耕太郎と言えば(私の中では)「深夜特急」だけど、この本が一番好き。
    檀一雄の妻が夫について思いを馳せる。
    檀一雄ってそんなに流行作家だったのね、と不思議な気持ち。
    作家の私生活がそこまで注目されるのも時代だなあ、と。
    ヨソ子は不器用だし「貧しい」し、愛情表現が足りないし、でも一所懸命で、物事に動じなくて、好ましく思える。
    それは檀一雄も一緒なのだろうな。
    ずっと覚えているのが、ヨソ子が評される「小気は利かないけど大気は利く」という言葉。
    なんか憧れる。私は小気も大気も利かないからな‥。

  • 火宅の人、檀一雄氏の奥さまのインタビューを基にしたノンフィクション作品です。奥さまの心情を見事に表す描写。檀一雄氏の魅力と夫としての身勝手さを淡々と描きつらねる力量は沢木耕太郎氏だからこそ。かなりオススメしたい本です。離婚しない先にある幸せを知りたい方に。

  • なんだか知ってる人がいっぱい出てきて、太宰治とか坂口安吾とか、あー知ってる知ってるーっていうね、そういう有名人と知り合ってる一般人なん?ってくらいに檀一雄って人のことは、まぁぶっちゃけ良く知らんかった。でも檀ふみは知ってた。連想ゲームで。古い。
    まぁこの人が有名かどうかはともあれ、やっぱりこの時代の作家と言えばダメ人間だよねー、というのをしっかり体現したりしなかったり、ちょっと変な人っぷりなわけだけど、しょうがねーなーって思うだけだったりするだけなのに、なんとなく読んでしまうのは著者の力なのか。
    そういや沢木耕太郎って人も名前は知ってるやね。なんかこう、全体的に、昭和。

  • 檀一雄の最後の妻の回顧。
    なんとなく途中で嫌になって読み切れなかった「火宅の人」、なんだか最後まで読めそうな気がしてきた。

  • 火宅の人を呼んでみようと思った。

  • 本文にも書かれているように、今や「火宅の人」だけで知られ、それ以前に檀ふみの父としての方が有名になった作家の奥さんの話。
    内容としては、まあ昔の作家ならさもありなん、その奥さんもまた然り、といったところで、特に発見も感動もなし。
    サワコーなら最終章でまた何か仕掛けてくるかな!?......と期待したけど、それもなし(>_<)。
    ブクログ評を読むと、皆さんハッセーの解説にミスリードされてるんじゃないかな?と思う。
    何が「四人称」やら。こんなの、サワコーが昔からやってる手法じゃん。「二人称」の概念も間違えてるんじゃないかな?
    まあ、叙述法以外、さして語るべきものがない作品ではあるけれど......サワコーも、本心ではもっとスキャンダラスな「真実」を期待して取材を始めたんじゃないかな?

    一番心に残ったのは、檀一雄を初期に診察した医師や病院の無能さ(>_<)。これが昭和40〜50年代の話だもんなあ......(>_<)
    2015/09/23

  • この本の形式には驚かされる。一人称での語りでありながら、その語りは別人間によってなされる。その結果、この評伝は本当に評伝なのか?全てフィクションではないのか?とさえ勘繰りたくなるくらい、濃密な内容。
    ただ沢木耕太郎の手になるものであるなという感はある。どんなにウエットな私事を描いてもどこか冷めた空気を漂わせるというこの作家の特徴により本作に入り込むことが出来た気がする。
    何せ題材そのものはあまりに日本的特徴たる甘えの構造が露出している作家、多分沢木耕太郎の文体でなければ結構読むのがしんどかった内容・対象ではないかと思われ。
    檀みたいな作家は最早絶滅種だと思うが、それは日本の小説が基本的には昇華した(要するに成長した)結果と当方としては解釈しております、はい。

  • あなたにとって私とは何だったのか。私にとってあなたはすべてであったけれど。
    浮気され、それでも夫を愛し続ける檀一雄の妻・ヨリ子の姿に胸を打たれる傑作ノンフィクション。

  • 「火宅の人」の読後に読みました。
    文中のモデルの奥さんに後に1年以上かけて話を聞いてかいたものらしい。はやり自伝的とはいうものの全く事実で書いている訳ではないことがわかって、良かったなと思うところと知らない方が良かったなと思うところがありました。
    壇一雄という人の他の面を見られた気がした。
    奥さんが以前にもらった手紙の内容がよかった。
    沢木耕太郎もすごい。

  • なかなか読み進められなかった。文庫なのに、重かった。家族って、本当に手強い。でも、そこから逃げなかった檀一雄。関係ないけど、檀一雄と自分は同じ誕生日だった。

  • 26
    丹念な取材をベースとした本人視点での語り口技法を取り入れ、壇一雄の半生を妻ソト子の視点から切り出したノンフィクション。
    壇一雄、ソト子のあぶり出し方がこれでいてリアリティに溢れ、秀逸な書きっぷり。

  • 愛人と暮らす旦那を受け入れてしまった彼女の心の内はどうだったにせよ、いがみ合ったエピソードも恨み事もほとんど語られていない。
    凄いな~、強いです。

  •  
    「火宅の人」を読んだ後で気になるのは、
    この後の壇がどう過ごしたのかと、
    夫に振り回されているようにしか見えない夫人の胸中であった。

    火宅の人と同じく、前半は壇に呆れながら、
    時には憤りを覚えながら読んでいたのだが、
    後半になるとやっぱり壇本人の持つ寂しさというものが見えてきて
    何故かかわいそうになってしまう。
    かといって、私はこの人の行動や考え方は
    やはり肯定できないのだが。


    火宅の人を読んでいる時は、
    どうしてもこの夫人は淡々としていているように見えて、
    冷たい人のように見えてしまう。
    が、やっぱり嫉妬したり、
    怒ったりといった様々な葛藤を抱えて当時過ごされていたのだなと。
    (当たり前か)

    終章で語られる昔の手紙の文面はぐっときた。

  • 実際に生きている人の言葉は時間を超えて胸に突き刺さる。壇一雄の人生に特に興味があるわけではなかった。しかし、何度も読むうちに、彼の人生と家族の人生。どちらにも引き込まれていった。人の死はいつまでも哀しく、何故そんなに哀しいのかを確かめるように何度も読んでみる。最終的に壇の妻ヨソ子の彼を愛する切ない気持ちに同調しているのだろうな~とおもいつつ、また読むのだろうな。

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著者プロフィール

沢木 耕太郎(さわき こうたろう)
1947年東京生まれのノンフィクション作家、小説家。横浜国立大学経済学部卒業。大学卒業後、ルポライターとして活動、注目を集める。
浅沼稲次郎暗殺事件で刺殺された浅沼と、その犯人である少年を描いた『テロルの決算』で第10回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。以後、バックパッカーのバイブル『深夜特急』をはじめ、スポーツや旅などを題材にした多数のノンフィクション作品、小説などを発表。2000年に初めての書き下ろし長編小説『血の味』を刊行し話題となる。
2003年これまでの作家活動で第51回菊池寛賞、2006年 『凍』で第28回講談社ノンフィクション賞、2013年 『キャパの十字架』で第17回司馬遼太郎賞をそれぞれ受賞。

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