凍 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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レビュー : 244
  • Amazon.co.jp ・本 (366ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101235172

作品紹介・あらすじ

最強のクライマーとの呼び声も高い山野井泰史。世界的名声を得ながら、ストイックなほど厳しい登山を続けている彼が選んだのは、ヒマラヤの難峰ギャチュンカンだった。だが彼は、妻とともにその美しい氷壁に挑み始めたとき、二人を待ち受ける壮絶な闘いの結末を知るはずもなかった-。絶望的状況下、究極の選択。鮮かに浮かび上がる奇跡の登山行と人間の絆、ノンフィクションの極北。講談社ノンフィクション賞受賞。

感想・レビュー・書評

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  • 読んでいく内に、心が震えて、凍っていた何かが溶けていく感じがした。山野井夫妻のあり方、生き方が素敵だった。

    この人だという人に出会えるのは、一生にあるのかな。早く忘れようとしてるのに、ふと思い出したり、何気ない一言を覚えていたり。ずっとひとりで生きていくって思ってたから、心配する対象ができて、こんなにも好きになったことがなくて、自分の普通の状態というか、チューニングがおかしくなってた。自分の器、そんなでかくなかった。壊れてしまってた。自分が回りに伝えてた言葉が悪い意味で繋がって、無意識に突きつけられた感じで、そんなことあるはずないのに、自分は死ねばいいとか、酷い愚かだとか、ごめんなさいとか、思ってしまってた。ほんとヤバい状態だった。やっとひとりで、と思ったのに、いまさらだけど、自分の生き方はどーなんだろうって考えるようになってた。

    寡黙になったり、ときどき苛立ったり、そして、二人がスピリットを尊重し合っているのが、かっこいい。

    なんとなく「へー」くらいに読んでいた一冊一冊が、すごい。やっぱり、君のセレクトする本はすごいなぁと思う。ぼくは、どんなに満たされて、安全地帯にいたとしても、好きな人が選んだ本を読んでいたいな。そして、そういう人を笑顔にさせられたらと思うけど。。。原点の山に、アタックして、ぼんやり自分の生き方を考えてみる。なにか違う景色に見えてくる気がする。人生の折り返しに新しい挑戦ができる。嬉しい。

    今日は、大丈夫だ。ひとりじゃないよ。それは、ぼくじゃないのが哀しいけど。人を引き寄せて、相手の魅力を最大限に引き出す愛で溢れてる。君といることは、みんなの喜びなんだろう。独り占めしちゃいけないんだろう。

    君と出逢って死ぬのが怖くなった。好奇心がわいてきたからなんだって、やっとわかった。

  • 本当に命を懸けるものをもっているならば、手足の指を失ってもこれほどまでに前向きにいられる。そういうものなのかと驚かされる。

  • 山岳小説というと、新田次郎を思い出すが、本著者のものも中々おもしろかった。 山野井夫妻のギャチュンカン登頂記だが、夫の泰史のストイックさと妻の妙子の楽天家さがなんとも言えず本書の味を出している。著者も、変に美談として泰史を書くのではなく、生きて帰ることに必死になり、妻をおいてけぼりにしてしまった泰史のことや、それを特に根に持つことなく追い付いてくる妙子のことを正直にかいている。 最後に、指を凍傷で失った泰史にお見舞いに来た、親戚の子供が、なぜ無いのか聞いたときの泰史のコメントが、おもしろかった。山で食べ物がなくて食べちゃった、と。

  • 珍しく一気読み。山への挑戦の記録、物語としても面白いが、そこに人の気持ち、考え方、想いが乗って没頭できる。

    あとがきで池澤夏樹さんも書いているが、自由って改めて深いな、と思った。

    著者の沢木耕太郎さんは、有名な深夜特急が自己陶酔的に写ってしまって苦手だったけど、第3者のフィクションの書き手としてはいいかもしれない。他も興味を持った。

    2019.6.16

  • とんでもなく面白い。気軽にこんなことを言っていいものではないが、当に山野井泰史と妙子と一緒にギャチュンカンに登り、降りて来た気にさせられる。登る困難、達成感だけでなく、こんなにも降りる困難と達成を感じられる本に出会ったことがない。また、こんなにも恐ろしい山に嬉々として向かう人間を幾人もこの本は生み出してしまうだろう。恐ろしいことに!

  • いやー、ほんとに読み応えあった。状況が厳しすぎてずっと眉根に皺をいかせながら読んでた。降りたら甘いお菓子を食べるんだなんて考えながら。
    このお二人を存じ上げなかったのだがすごいお二人だと思った。夫婦の形もまたいい。いろんな生き方があっていいんだ。そしてなんといっても人間の底力が熱い。

  • 壮絶な山登りが素晴らしい文学表現で再現されている名著。この本が嫌いな人に会ったことがない。どの指だったら失ってもよいかなと考えながら、一本ずつ指を犠牲にしつつ妻妙子を救出に向かう壮絶さ。読んでいて耳元で唸りをあげる豪風の音が聞こえるよう。山野井さん本人の文も好きだけど、これは流石に素晴らしい作家の仕事。

  • 世界的クライマー山野井夫妻のギャチュンカン登山の記録。泰史さんは登頂したものの、行きも帰りも壮絶なものとなったことが、読んでいて苦しくなるくらい詳細に書いてある。一気読み。
    登山家のニュースを聞くたびに、登山家という人たちはどういう人たちなのかとその心理に尊敬と興味をもって山岳ものを読みたくなる。山野井夫妻がすごいクライマーだというのは聞いてはいたが、ここまですごいとは。なんでもっと日本で評価されてないの。それに登山家って文字通り死と隣り合わせで、それをちゃんと理解してるというのが、凄まじい精神力だなと感じた。

  • 読み応え抜群の作品。
    小説ではなくノンフィクション。

    【本の内容】
    「ギャチュンカン」という、決して大した勲章はないが非常に難易度の高い山を登攀した、日本人夫婦のノンフィクション・ストーリー
    男女2人だけのアルパイン・スタイルで、夫婦というより「パートナー」である夫婦2人で登り、山野井泰史だけが頂上を踏み、2人とも凍傷で大怪我をしたが無事生還した、前後9日間にわたる不屈の戦い。

    ※「登攀」・・・登山で、険しい岩壁や高所によじ登ること。


    【感想】
    まず始めに、このギャチュンカン登攀に同行していない沢木耕太郎がここまで繊細にノンフィクションでストーリー化できるのが凄い。
    なんてゆうことだ、一体どれほどの取材力をしているってゆうねん。あんなにリアルタイムで書けるのは化け物レベルだろう。

    次に山野井夫婦について。
    この人たちは一体何者なんだ?
    あれだけ絶望的な状況でも一切うろたえず、客観的いうか落ち着いた状況で死も受け入れていらっしゃる。
    なんでこんな極限状態で、危険な思いをしてまで登攀するんだ?
    大した稼ぎにも名誉にもならない(むしろ出費になる)のに、何故生活の全てを「趣味」である登攀に賭けれるんだ?
    凍傷して大きな手術を行ない、指もほとんど切断してしまったのに、何故また登りに行くんだ?
    この夫婦の人生って何なんだ?

    そもそもマトモな神経している人は、こんな危険な登山なんてしないのだろう。
    本当に人としてスゴイと尊敬する反面、一切自分とは相容れることのない人達だ。

    まぁ、納得できないというか到底真似できない生き方だが、何はともあれこの1冊の読み応えは専門的だが相当凄まじい。
    沢木耕太郎の熱意も感じるくらい、面白い作品だった。


    【初めて知ったこと】
    ・世界には8000メートルを超える山が14座ある。
    ・世界で初めて登られた山やルートには自身で命名できる。
    ・登攀前は、様々なデータを収集して複数名で解析し、アタックポイントをミーティングする。


    【引用】
    ・ギャチュンカン
    標高7952メートル。
    ヒマラヤ高峰群の100の谷が集まるところにある雪山。
    高峰群の中でも、とりわけ未踏の谷の奥深く。
    登頂するのが難しいのに、8000メートル未満なので勲章を得ることが出来ない。

    ※世界には8000メートルを超える山が14座ある。


    ・ギャチュンカンの登攀費用は2人で150万円ほど。
    航空費、ビザ代、現地近くまでの輸送費、一緒に行くコックの賃金、食料や燃料費、山岳協会への支払いなど


    ・2人の普段の生活は非常に慎ましい
    →家は奥多摩の古民家で家賃2.5万円(近くにクライミングできる岩場があるため)
    →家具はほとんど友人から貰い受けたもので、車は廃車同然のもの、食べ物は近くの山で採れた山菜ベース
    →収入は山野井が冬の山場でする強力(ごうりき)作業と、妻・妙子の宿坊パートが基本。
     スポンサー契約は自身が登りたい山に行けないため行なっていない。
     登山用具メーカーとのアドバイザリー契約も少しだけしているが、決して多い額ではない。


    p21
    登れるかどうかは全く分からないが、分からないという部分に強く惹かれるところがある。
    すべてが分かっており、全く安全だというなら、登る必要がない。


    p?
    その山を頂上まで登ったのなら、次はルートに視線が行く。
    新しいルートを突くことが一番の楽しみ。


    p169
    登攀中は上しか見ないが、下降中は下が見える。
    それは自分がどれだけ高いところにいるかを常に意識しなくてはならないということである。
    「オマケが全くないなぁ。」
    ギャチュンカンは「オマケ」を中々くれようとしなかった。
    予想通りの、あるいは予想以上の難しさだった。


    p?
    頂を前にした自分には常に焦っているところがある。
    決して功名心からではなく、そこに確かな山があるとき、その山を登りたいという思いが自分を焦らせてしまう。

  • この本が好きな人は、山際淳司さんの『みんな山が大好きだった』もおすすめです。

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著者プロフィール

沢木 耕太郎(さわき こうたろう)
1947年東京生まれのノンフィクション作家、小説家。横浜国立大学経済学部卒業。大学卒業後、ルポライターとして活動、注目を集める。
浅沼稲次郎暗殺事件で刺殺された浅沼と、その犯人である少年を描いた『テロルの決算』で第10回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。以後、バックパッカーのバイブル『深夜特急』をはじめ、スポーツや旅などを題材にした多数のノンフィクション作品、小説などを発表。2000年に初めての書き下ろし長編小説『血の味』を刊行し話題となる。
2003年これまでの作家活動で第51回菊池寛賞、2006年 『凍』で第28回講談社ノンフィクション賞、2013年 『キャパの十字架』で第17回司馬遼太郎賞をそれぞれ受賞。

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