旅する力―深夜特急ノート (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 1964
レビュー : 193
  • Amazon.co.jp ・本 (382ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101235189

作品紹介・あらすじ

旅とは何か、なぜ人は旅へと駆り立てられるのか?冒険と叙情に満ちた紀行文学であり、瑞々しい青春記でもある名作『深夜特急』の誕生前夜、若き著者には秘められた物語の数々があった…。幾多の読者からの絶えざる問いかけに初めて、そして誠実に応えた"旅"論の集大成、著者初の長篇エッセイ。

感想・レビュー・書評

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  • 紀行小説「深夜特急」シリーズの著者による<旅>論の集大成となる長篇エッセイ。

    自分も21歳の頃、一人バックパックを背負って鉄道で1ヶ月半かけて欧州を巡った。
    夜のピカデリーサーカスの喧騒、夕暮れ眩しく煌めくナポリ湾のさざ波、早朝到着したウィーン中央駅でかじかむ手で飲んだ熱いカプチーノ、独りグラスを手にしたマドリードのバー。
    本書を読みながら、まだ携帯電話もない時代の宿も決めず行き当たりばったりでやや無鉄砲だった貧乏旅行をなつかしむ。

    その後何度か海外に行く機会に恵まれたが、それらは“旅行”であって“旅”ではなかったように思う。
    まさに旅は「途上にあること」であって、<旅>論を通して若く途上にあった日に“旅”した人のノスタルジアを掻き立てる一冊。

    • kiyotchanさん
      なるほど。「旅」は「旅行」とは違うのですね。決まった目的地はなく、プロセス自体を楽しむのが「旅」だと理解しました。
      なるほど。「旅」は「旅行」とは違うのですね。決まった目的地はなく、プロセス自体を楽しむのが「旅」だと理解しました。
      2016/05/15
  • 久しぶりにまとめて休みが取れて、ボルネオの海に行くこととなった。機上で読んでみた。

    著者の「深夜特急」はあまりにも有名ですが、正直バックパックの旅にはあまり興味がなかったのでこれまで読んでいませんでした。この作品は、「深夜特急」がうまれることとなったのか、背景や動機などを中心にまとめられています。面白い!

    行こうと思えば、それほど苦労をすることなく世界中のどこにでも行ける世の中です。

    ・「どこへ行く」ということよりも、行って「どう感じたか」が重要

    ・旅を面白くする年齢がある訳についても触れられていて、ある程度経験をつんでいて、なおかつ知りすぎてもいない年齢が旬だという。なるほど。
    その年齢でしかできない旅がある。

    ・旅は自分の身の丈を示してくれる。困難やトラブルに対応する力が試される。まさにアドベンチャーですね。このへんはやっぱり一人旅でないと味わえないでしょう。

    最近自分も意図的に一人旅を好むようになってきたのですが、このようなことを魅力に感じてきていたからかもしれません。

    旅はやっぱりいい!本物に触れられる。

  • 70も過ぎる義祖母は、旅が大好き。
    そんな彼女が、同じく旅を愛する私に言った言葉は、『あのとき、旅に使ったお金が、旅をしなかったからといって、今ここにそのお金が残るわけじゃない。』
    旅の適齢期にあった旅を惜しむことなくしておくべきだと。
    70過ぎてから行けるところには限りがあると言っていた。
    また、この本の中で沢木耕太郎は、旅の適齢期は、ズバリ26歳だと言っている。


    ーーーーーー
    つまり、あの当時の私には、未経験という財産つきの若さがあったということなのだろう。もちろん経験は大きな財産だが、未経験もとても重要な財産なのだ。本来、未経験は負の要素だが、旅においては大きな財産になり得る。なぜなら、未経験ということ、経験していないということは、新しいことに遭遇して興奮し、感動できるということであるからだ。
    もしそうだとするなら、旅をするには幼ければ幼いほどいいということにならないか、という疑問が湧いてくるかもしれない。しかし、それはそうならない。極めて逆説的な言い方になるが、未経験者が新たな経験をしてそれに感動することができるためには、あるていどの経験が必要なのだ。経験と未経験とがどのようにバランスされていればいいのか。それは『旅の適齢期』ということに関わってくるのかもしれない。
    ーーーーーーー

    旅の適齢期を過ぎた私の、これからの旅は、一泊300円のシーツに包まり、安いビールをたらふく飲むことではないことは確かだ。
    うーむ、考えさせられた。
    2012年始めに読んで良かった旅の力。

  •  『深夜特急』を読んで丁度10年目、書店で目に止まり購入した。『深夜特急』を読んだ頃は大学を休学して引きこもっている時で、この本を読んで家を飛び出してどこか旅に行ってしまえたらと強く思っていた。当時の自分も、「自分のこの気持ちは現実逃避だな」と気付いていたが、その上で、どうせ何も持っていないのなら、無計画に、がむしゃらになってみたいと思っていた。
     『旅する力』巻末の対談で、「旅に出たのは、やっぱり逃げ出すためだった」とあり、少し救われた気分になった。

     本の内容は、『深夜特急』が生まれる前後の著者の物語。様々なエピソードを楽しみながら、「旅とはなんだろう」という終着点に知らず知らずのうちに向かってゆく構成だ。
     私は著者のような旅をしたことはないが、いわゆる旅行は去年から頻繁におこなっている。その上で、「旅とはなにか」と思いを馳せることもあった。
     先日旅行した際には、旅とは自分にとって大切なものは何なのか見つけに行くためのものなのだと考えた。心の琴線に触れたものを編み直し、自分というものが見えてくるのだと。「自分探しの旅」と、(時に冷笑的に)呼ばれるものの正体は、これなんだろうなと。
     この本では、それだけでなく、自分の力の不足や自分の背丈を示してくれるのだという。旅という不確定要素の多い環境で、危険と安全の分水嶺がどこにあるのか、距離を測ることになる。あえて教訓めいた事を掬い上げるならば、偶然に対し柔らかく対応することが、旅する力の一つのようだ。

     また、『深夜特急』第一便でも触れられていた、「旅の適齢期」についても改めて語られる。何かを始めるのに遅すぎるということはない、という文句はあくまでお年寄り向けのもので、私自身やはり適齢期というものはあると思う。
     例えば本にしてみても、人生経験をある程度積んだからこそ分かる小説というものもあろう(分からないという思いを抱く経験もまた財産、という考え方もアリだとは思うけど)。逆に、まだ若いからこそ胸に刺さり心を揺さぶってくれる小説もあろう。
     この本では、特に若さがクローズアップされる。

    「~経験は大きな財産だが、未経験もとても重要な財産なのだ。本来、未経験は負の要素だが、旅においては大きな財産になり得る。なぜなら、未経験ということ、経験していないということは、新しいことに遭遇して興奮し、感動できるということであるからだ。
     もしそうだとするならば、旅をするには押さなければ幼いほどいいということにならないか、という疑問が湧いてくるかもしれない。しかし、それはそうならない。きわめて逆説的な言い方になるが、未経験者が新たな経験をしてそれに感動することができるためには、あるていどの経験が必要なのだ。」

     経験と未経験のバランス。いかにも難しそうだが、そのギリギリを突くことで、きっと心が締め付けられるような何かを心に刻み付けることができるのだろう。
     そして、仕事や生活に忙殺されていれば、きっと時期尚早なことよりも、やり残したことの方が多くなっているのではないかと思う。今しかできないことを、時間の許す限り味わって行けたらと思った。

  • 深夜特急の旅に至るまで、深夜特急を書くまで、タイトルの由来が書かれてる!
    持っていった荷物も参考になる!
    旅をしていると自分が人として小さいことに気づき、1人が好きでも人といることが好きなことに気づける!
    危険を察知する力と危険を回避する力は自然に身につく!
    恐れずに。しかし、気をつけて。

  • あの「深夜特急」の
    「出発前」「本作には入れられなかった旅行中の裏話」
    「ロンドン到着後」の話がショート・エッセイ集になって。

    「旅には適齢期がある」という言葉、
    なんとなくわかるような気がする。
    そういえば26歳の時に行ったスペイン以来、
    外国旅行をしていないなぁ。
    20歳になってからそこらへんにかけては、
    チャンスがあれば外国に行きたくて仕方ないような気がした。
    それがいつの間にやら旅行といえば国内になり、それも
    疲労がたまらないような無難なスケジュールにして・・・。

    しかし、たとえかつてのような旅が出来ないとしても、
    またどこかを旅したいと思う。
    26歳のあの時から約10年間、
    今の私はどのような旅が出来る人間になっているのだろう。
    旅を通じて己の身の丈を知りたいような気がする。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「「旅には適齢期がある」という言葉」
      沢木耕太郎は割りと好きなのですが、この番外編?は読んでません。
      若い頃は、何故かカッチリ決めて旅行に出...
      「「旅には適齢期がある」という言葉」
      沢木耕太郎は割りと好きなのですが、この番外編?は読んでません。
      若い頃は、何故かカッチリ決めて旅行に出ましたが、今はアテも無くブラブラする旅と言うか放浪に近いコトをしています(国内ですが)。だんだん、その時に興味が湧いた方へ行く方が面白いと、、、久々に「深夜特急」読みたくなってきました。
      2013/04/08
  • 『深夜特急』を一気に読みすすめたのは、社会人になって1年半が経った頃だった。
    深夜特急は「バックパッカーのバイブル」と評され、多くの学生バックパッカーに読まれていた。そのことは、私が学生にみた、なにかのウェブサイトで知っていた。当時の私は留学とひとり旅に強い憧れを抱いていた。
    しかし、そのときは何故か、明確な理由もなく、これは読まない、と決めていた。
    あるいはそれは、あえて読まない、という反骨心のようなものだったかもしれない。

    そして、深夜特急を読まないまま、学生時代の私はフランス南部からスペイン最西端まで900キロの道のりを踏破した。ひとり旅の楽しさに取り憑かれた私はその後、中欧の国々に赴き、そして南米を旅した。

    帰国後、アルバイト先で出会った筋金入りの社会人バックパッカーの女性にプレゼントされたのが、沢木耕太郎の『イルカと墜落』だった。
    しかし、その時も何となしに読む気にはなれず、書棚に仕舞われたままだった。

    外国での日々を忘れられないまま社会人になり一年が経った頃、新型コロナウイルスという感染症が世界中でパンデミックを引き起こした。
    私の勤めていた会社は直接的に大打撃を受け、2ヶ月間の休業が決まった。
    またいつか外国へ行きたい、と思いながら、あるいは外国に行くために仕事を辞めたいと思いながらもだらだらと社会人を続けていた私は、仕事も、外国へ行くことの出来る世界をも失った。

    私が旅に行けないなら、本で旅に行こうと思い手にしたのが『イルカの墜落』であり、『深夜特急』だった。社会人になり、いつの間にか自分自身は何かに縛られているように感じていた私は、活字の上で自由に旅する沢木耕太郎にある種のヒロイズムを感じた。

    その3ヶ月後、私はあてもなく仕事を辞め、さまざまな本を読んだ。
    その多くは、沢木耕太郎の本だった。

    別に本を多く読んでも何かが変わるわけではない。
    しかし、今回『旅する力』を読んでこれまでの読後感とは違うものを感じている。
    それは、ある種自身の経験に基づく忘れかけていた、旅する力なのかも知れない。
    この本に出会えて良かったと心から思う。


  • 驚いたことに、旅の価値観がほぼ自分と同じで
    共感の嵐だった。

    この本に出会う前から似た旅のスタイルを身に付けていたと思うが、果たしてどこでみつけたのか

  • 深夜特急の裏話のようなものも載ったエッセイ集。作者がライターとして駆け出しの頃の時代の空気というものも感じた。エッセイ集なので深夜特急のようなものを期待するとやや肩透かしを喰らうが、それぞれのエッセイを読んでいるとやはり気分が高揚し、紹介されている書籍を読みたくなったり、深夜特急で訪れていた国の政治経済歴史文化についてもっと知りたくなったりした。人に恵まれている人は、人にはたらきかける力がそもそも強いんだなと思う。うらやましい。

  • 私の紀行文学の最高傑作『深夜特急』。やってみたかったの
    だよね、アジアからヨーロッパまで乗り合いバスで行く旅。

    憧れながらも結局は実行できずに今まで来てしまった。でも、
    今から同じような旅をしようとしても、気力・体力共に衰え
    ているなら無理なんだよね。

    本書のなかで著者も書いているが、旅をするには適齢期がある
    のだ。そう考えると、もう若い頃に憧れた旅のスタイルは憧れ
    のままで終わるのが自然なのだと思う。

    だから、本書は私の憧憬を再認識する為の読書でもあった。大学
    卒業後の著者が物書きになったきっかけや、その時に培った人脈、
    『深夜特急』が生まれるまでの過程、旅に出る為の荷造りメモ、
    訪れた地でのエピソードが満載。

    若き日の著者はとにかく周囲の人たちに恵まれていたのではないか
    と感じた。それは著者の人柄が、そういう人たちを惹きつけたこと
    もあるのだろうな。

    だって、サイン会では流れ作業的にサインをするだけではなく、会場
    に訪れた人たちと必ず会話することを心がけていたというのだもの。

    このサイン会でのファンとのやり取りが一部収録されており、著者の
    人に接する時の温かさも伝わって来る。特に小学生の男の子との会話
    にはほっこりさせられた。

    『深夜特急』を読み、その世界に魅了された読み手には2度おいしい
    作品である。

    映像版「劇的紀行 深夜特急」に出演した大沢たかおとの対談も収録
    されている。

    こうやって『深夜特急』誕生前夜からのエッセイを読んでしまうと、
    本編を再読したくなる誘惑と、旅に出たくなる衝動と闘わなけれな
    らないことにある。

    あ~~~、行きたいっ!アジアからヨーロッパまで。

    あ、極東ロシアからモスクワまでは行ったことがあるぞ。シベリア鉄道
    だったけどね。モスクワに到着したした時、「さらばシベリア鉄道」を
    口ずさんでいたわ。

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著者プロフィール

さわきこうたろう
作家。
1947年、東京都生まれ。横浜国立大学卒業。79年『テロルの決算』で大宅壮一ノンフィクション賞、82年『一瞬の夏』で新田次郎文学賞、85年『バーボン・ストリート』で講談社エッセイ賞、93年『深夜特急第三便』でJTB紀行文学大賞、2003年それまでの作家活動に対して菊池寛賞、06年 『凍』で講談社ノンフィクション賞を受賞。近著に、短編小説集『あなたがいる場所』、エッセイ集『ポーカー・フェース』、児童書『月の少年』、絵本『わるいことがしたい!』などがある。

「2013年 『いろは いろいろ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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